*** うそばっかりのうささぎのはなし ***

(第16話)



さて、次の週末、カステラのいるウサギ小屋に『うささぎが戻れるよう』

頼みに来たクロクロ。



ピンポーン

クロクロ「おーい、カステラ。

     クロクロだよ、いるかい?」

カステラ「やあ、クロクロ。

     どうしたんだい?」

クロクロ「どうしたも、こうしたも、うささぎが大変なんだ。

     うささぎの家に車が突っ込んで、家がつぶれちゃったんだ。」

カステラ「げげっ。 マリエちゃんの家に車が?

     みんなは大丈夫だった? バブルのころは地上げで

     家にダンプが突っ込むって噂を聞いた事があるけど、

     最近はあんまりそういう話し聞かなかったけどなあ。」

クロクロ「マリエちゃんの家にじゃなく、ダンボールの家に車が

     突っ込んだんだ。」

カステラ「なんだそれ?」

クロクロ「うささぎはマリエちゃんの家を出たのさ。

     今はクロクロの家にいるけど。

     ねえ、カステラ、うささぎを呼び戻す気はないかい?

     やっぱり、冷蔵庫の中身の点検にはうささぎが必要だろ。」

カステラ「うささぎがどこに行くかは、うささぎ自身が決めることさ。」

クロクロ「そんな冷たい事言わないで。

     うささぎは家を失ってガッカリしているんだ。元気づけて

     やってくれよ。」

カステラ「考えとくよ。」

クロクロ「考えるだけじゃなくて。

     ねえ、もっとうささぎと仲良くしてやって

     くれよう。うささぎ、寂しがっているよ。」

カステラ「人間は人間同士仲良くするもんなんだ。

     ぬいぐるみとは仲良くできない。」

クロクロ「そんなあ。

     じゃあ、ぬいぐるみは誰と仲良くすればいいんだ。

     ぬいぐるみは人間と仲良くするために作られてきたんだよー。

     そんなんじゃあ、うささぎがかわいそうだよ。

     うささぎが落ち込んでいたなら、まず、カステラが助けてあげる

     べきじゃないか。それなのに仲良くできないなんて。」

カステラ「たしかにクロクロの言うとおりかも知れないね。」

クロクロ「そうだよ。」

 

カステラ「まあ大丈夫だよ。うささぎは気が向いたら自分で帰ってくるさ。

 

     ほら、部屋の隅のダンボール箱見えるだろ。

     箱の上がうささぎの指定席さ。帰ってくる場所はちゃんと

     用意してあるんだから」



*********************************



ウサギ小屋を後にして、お寺にやって来たクロクロ。



クロクロ「ウサギ小屋まで行ってみたけど、クロクロが出て行くまでも

     なかったかな?

     さて、お寺にお参りでもしていくか。

     あれ、あそこに居るのは、うささぎと『お姉さんのお母さん』だ。

     おーい。」

うささぎ「あっ、クロクロだ。」

クロクロ「やあ。うささぎ達は、どうしてここにいるんだい?」

うささぎ「クロクロばかりにお参りに行かせちゃ悪いと思って。

     おばさんが買い物ついでにお寺に寄るって言うから、

     ついてきたんだ。ね、おばさん。」

お母さん「そうそう。

     みんな揃ったし、せっかくだから、うささぎに

     おみくじを買ってあげるからね。」

うささぎ「うわー。でも、おばさん、おみくじ要りませんから、その

     代わりにその100円をうささぎにくれませんか?」

お母さん「ダメダメ。これはおみくじを買うお金。

     さあ、ひいたからね。」

クロクロ「ねえねえ、何て出ている?」

お母さん「凶。」

うささぎ「あーあ、やっぱり。うささぎって、とことんツイテいないんだ。

     うささぎの体中に『不運のお化け』がたかっていないかい?」

クロクロ「そんなのたかっていないって。」

うささぎ「そうかい?」

クロクロ「そうだよ。うささぎは不運どころか、結構幸せな奴かもしれ

     ないよ。」

うささぎ「ふーん」

クロクロ「幸せって意外とすぐそばにあるんじゃないかな。みんな気が

     つかないだけさ。」

うささぎ「へえー。

     ときにクロクロ、うささぎはイイ事を思い付いたんだ。」

クロクロ「なに?」

うささぎ「クロクロはキャンプとかで使うテントを知っているよね?」

クロクロ「うん。」

うささぎ「うささぎはそのテントを自分の家にしようと思うんだ。

     テントだったら、雨も心配ないし、持ち運べるから家泥棒に

     あうこともないさ。」

クロクロ「それはいい考えだね。」

うささぎ「だろ。うささぎがいつの日か人間に頼らなくても暮らして

     行けるようになったら、テントをしょって旅に出るんだ。

     どこに住んでいたって、きっと楽しく暮らせるさ。」

クロクロ「うわー。」

うささぎ「その日が来るまでは悪いけど、クロクロ、クロクロの家に

     いさせてくれるかい?」

クロクロ「もちろんさ。

     お姉さんのお母さん、うささぎに居てもらってもイイよね。」

お母さん「大歓迎よ。

     でも、うささぎちゃんは、ほんとうはウサギ小屋に帰りたいん

     じゃないの?」

うささぎ「へへ。実を言うとそうなんだけど。」

お母さん「じゃあ、ウサギ小屋に帰った方がいいわね。」

うささぎ「でも、『二度と帰らない』って言って出てきたから、

     帰れないんだ。」

お母さん「あらー、それは困ったわね。

     でも、いい方法がある。おばさんは無事に帰る事ができるように

     なる魔法の呪文を知っているから、それを教えてあげる。」

クロクロ「それって『開け! ゴマ』とか言うんでしょ。」

お母さん「ちがう、ちがう。」

うささぎ「うわー、魔法の呪文、教えてください。」

お母さん「あわてない、あわてない。」



*********************************



次の日の夜



クロクロ「さあ、魔法の呪文も覚えたし、いよいよウサギ小屋に乗り込む日が

     来たね。」

うささぎ「うん。」



クロクロ「さあ、ウサギ小屋についたぞ。

     カステラはいるかな?」

     おーい、カステラ。」

カステラ「よう、クロクロ。」

クロクロ「そら、うささぎ、魔法の呪文だ。」

うささぎ「うん。

     カステラ、ただいま!」

カステラ「よう、うささぎ。」

うささぎ「うささぎは『ただいま』って言ったんだよ。」

カステラ「ああ、おかえりなさい、、、、??、、、!」



うささぎ「そうだよ。帰ってきたんだ。」

カステラ「みたいだね。」



うささぎ「た・だ・い・ま」

カステラ「おかえり、うささぎ、

     きみの『我が家』へ。」

うささぎ「へへっ。」



カステラ「そう言えば、今日はまだ冷蔵庫の中身点検していなかった。

     うささぎ、賞味期限の点検してくれるかい?」

うささぎ「あいよ。

     やっぱり、冷蔵庫の点検はうささぎがしないとダメだよね。」

カステラ「そうだね。うささぎじゃないとダメさ。」

うささぎ「だよね。

     クロクロ、悪いけど手伝ってくれるかい?」

クロクロ「ほいさ。」



そんなわけで、うささぎは無事ウサギ小屋に戻りました。

旅に出られるようになるまで、ウサギ小屋で勉強するそうです。

これにて、うそばっかりのうささぎの話し『クロクロをさがせ』の巻は

終わりです。みなさま長い間のお付き合いありがとうございました。


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