*** うそばっかりのうささぎのはなし ***

(第2話)



夜の街をクロクロ(黒いうさぎのぬいぐるみ)を捜して歩く、

”うささぎ”と”くまった”。



うささぎ「クロクロは黒いから、夜には見つけにくね。」

くまった「声を出しながら、捜そう。

     おーいクロクロ。」

うささぎ「おーいクロクロ」

近所のおじさん「おーい、そこのぬいぐるみ。夜中にうるさいぞ。」

うささぎ「すみません。」

くまった「おこられちゃったね。」

うささぎ「声を出しても怒られないようにすればいいさ。」

くまった「どうするの?」

うささぎ「声に出してもいいような内容のことを言うんだ。」

くまった「なんて言うの?」

うささぎ「火の用心。カンカン。」

くまった「火の用心。カンカン。」

うささぎ「火の用心。カンカン。」

くまった「ねえ、うささぎ、火の用心とクロクロを探すことと何の

     関係があるの?」

うささぎ「何もない。」

くまった「じゃあ、火の用心って言っていてもクロクロは見つからないよ。」

うささぎ「クロクロにはうささぎの声だ、ってわかるから大丈夫だよ。

     火の用心。カンカン。」

近所のおばさん「こんばんわ。見回りご苦労様です。

        体に放火されないよう気をつけてください。」

うささぎ「はい。

     ときにおばさん。黒いうさぎのぬいぐるみを見かけません

     でしたか?」

おばさん「見ましたよ。」

うささぎ「えっ。どこで?」

おばさん「駅前商店街のおもちゃ屋で。」

(おばさんが見たのは、新品のぬいぐるみだね。クロクロは新品のぬいぐる

 みじゃないんだ。残念。)

うささぎ「そうですかあ。どうもありがとうございます。」



くまった「ねえうささぎ、おばさんはなぜ”体に放火されないよう気をつけ

     てください”って言ってたのかなあ?」

うささぎ「世の中には危ない人もいて、そのへんの燃えるものに火をつけよ

     うとする人がいるんだ。」

くまった「ほんと?」

うささぎ「うん、うささぎも去年危ないお兄さんに放火されそうになった。」

くまった「わ、こわいね。」

うささぎ「うん」

くまった「魂のあるぬいぐるみに放火しようとするなんて。まったくひどい

     奴だ。そんなひどい奴は人間じゃない!」

うささぎ「人間だったよ。第一、人間だけが放火をするのさ。犬や猫は放火

     しない。」

くまった「そうだったね。

     ちょっと間違えたかな。」

うささぎ「誰にでも勘違いはあるさ。

     さあ、クロクロ捜しに戻ろう。」

くまった「火の用心。カンカン。」

うささぎ「火の用心。カンカン。」

くまった「いないねえ。」

うささぎ「急に面倒くさくなってきたから帰ろう。」

くまった「そうだね。」

うささぎ「だいたいクロクロのやつ勝手にいなくなっちゃって。

     なんでうささぎがクロクロのこと捜さなきゃいけないんだ。

     そう思わない? くまった。」

くまった「うささぎが”捜そう”って言い始めたんだよ。

     だから、くまったが、しょうがなく付き合っているのに、今度は

     面倒くさい、なんて勝手だよ。」

うささぎ「”しょうがなく捜している”、ってどういうこどだよ。

     クロクロのこと心配じゃないの?

     クロクロは大事な友達じゃないか。」

くまった「言い間違えたんだよ。

     それに、捜すのやめるって言っているのは、うささぎの方じゃな

     いか。」

うささぎ「うーん。クロクロがいなくなるからいけないんだ。悪いのはクロ

     クロだ」

くまった「そうだ」

うささぎ「捜し出して、文句を言おう。」

くまった「そうだ。クロクロを捜すぞ。」

うささぎ「なんか振り出しに戻ったね。」

くまった「だね」

うささぎ「うーん。やっぱりクロクロがいないと寂しいし。」

     いったいどこへ行っちゃったのかなあ?」


           つづく


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