−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
＊＊＊ うそばっかりのうささぎのはなし ＊＊＊
（第11話）
マリエちゃんの家にやってきたうささぎ。セオドアもいるよ。
マリエ 「そう、クロクロはお姉さんの所に帰ったの。」
うささぎ「うん。
セオドアの方が人気者になっちゃったからね。
クロクロはいつも自分が一番の人気者でいたいんだよ。」
マリエ 「ふーん。うささぎも？」
うささぎ「いや、うささぎはお金さえあれば、それでいいんだ。」
マリエ 「そう。じゃあ、10円あげるから、ここでおとなしく
していてね。」
うささぎ「うん。」
マリエ 「テディ、クロクロは帰っちゃったんだって。」
うささぎ「テディ？ セオドアっていう名前じゃなかったの？」
マリエ 「アメリカでは、セオドアのことをテディって呼ぶんだって。」
うささぎ「へえー、テディベアってわけか。」
マリエ 「そうそう。
クロクロは帰っちゃってもテディがいるから寂しくない
よね、テディ。」
うささぎ「うささぎもいるから寂しくないよね。」
マリエ 「そうね。
さあ、テディ、むこうでテレビ見ましょ。」
うささぎ（あっ、行っちゃった。テレビかあ、いいなあ。水戸黄門かな？
うささぎも見たいな。
・・・・いいや、うささぎは呼ばれていないし。
することないから金魚でも見てようっと。）
それから一週間たって
クロクロがうささぎを訪ねてマリエちゃんの家にやってきました。
クロクロ「うささぎ、元気かい。
ずっと来られなくてゴメンよ。」
うささぎ「何かあったのかい？」
クロクロ「お姉さんが風邪ひいちゃって。
ずっとお姉さんの看病をしていたんだ。
ほら、この間クロクロがお姉さんのところから逃げる時、
うささぎが『妨害工作だ』ってお姉さんの頭の上から
オレンジジュースをかけただろ。あれがいけなかったみたい。」
うささぎ「そうかあ。悪い事しちゃったね。」
クロクロ「いいんだよ。ぬいぐるみごときにやられちゃうお姉さんが
いけないんだ。」
うささぎ「そうかい？」
クロクロ「で、うささぎはそんな部屋の端で何やってんだい？」
うささぎ「次はどんな商売で金もうけしようか考えてるんだ。」
クロクロ「ほう。
マリエちゃんとセオドアは？」
うささぎ「むこうでコンピュータのゲームしている。」
クロクロ「うささぎは一緒に遊ばないのかい？」
うささぎ「うん、呼ばれていないし。いいんだ、別に。」
クロクロ「そうかあ。
いつもは一緒に遊んでいるの？」
うささぎ「ちがうよ。
うささぎは、いつもは金魚を観察したり、次の金儲けのことを
考えたりしているんだ。」
クロクロ「ねえ、うささぎ、明日のことばかり考えていないで、
今の事を考えようよ。」
うささぎ「そうだね。」
クロクロ「そういえば、くまったの持ち主、サヤカちゃんも病気で
寝込んでいるらしいよ。
サヤカちゃん、体が弱いんだ。
お見舞いに行ってみようよ。」
うささぎ「うん」
というわけで、うささぎとクロクロはくまったの家にやってきました。
くまった「サヤカちゃん、うささぎとクロクロがお見舞いに来てくれたよ。」
サヤカ 「ああ、うささぎちゃん、クロクロちゃん、ありがとう。」
クロクロ「具合はどう？
クロクロのお姉さんも昨日まで風邪で寝込んでいたんだよ。」
サヤカ 「ほんとう。治ってよかったね。
うささぎちゃんのところの飼い主、カステラさんでしたっけ？
元気？」
うささぎ「どうかなあ？」
くまった「サヤカちゃん、実を言うと、うささぎは引っ越したんだ。
ウサギ小屋を出て、今はマリエちゃんの家にいるんだよ。」
サヤカ 「へえー。
うささぎちゃん、新しい家の住み心地はどう？」
うささぎ「まあまあっていったところかな。
ウサギ小屋にはなかったものがあって、それを
観察していると楽しいんだ。」
サヤカ 「新しいものって？」
うささぎ「たとえば金魚。
うささぎは、何時金魚が目をつぶって寝るのか知りたくて
観察しているんだ。」
サヤカ 「いつ寝ているんだかわかった？」
うささぎ「それがまだなんだ。金魚はなかなか目をつぶらないね。」
クロクロ「うささぎは寝むる時、目をつぶるか？」
うささぎ「ん？ そうかあー。」
くまった「何はともあれ、うささぎの新生活も面白そうだね。」
うささぎ「そんなに面白くないよ。」
くまった「そうかい？ でも今までにないものを見られるなんて
楽しいじゃないか。ねえ、サヤカちゃん。」
サヤカ 「いえてるね。くまったもどこかへ引っ越したい？」
くまった「えっ？ サヤカちゃん何言ってんだ。くまったはどこへも
行かないよ。
くまったは、いつまでもサヤカちゃんと一緒にいるんだ。」
サヤカ 「そう」
くまった「サヤカちゃんをおいてどこかへ行ったりしないさ。
くまったはサヤカちゃんのいないところで暮らすなんて
イヤなこった。」
サヤカ 「ありがとう。くまった。」
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
くまったの家をあとにしたうささぎ達
クロクロ「サヤカちゃん、早く良くなるといいね。」
うささぎ「うん」
クロクロ「ところでカステラはどうしているかな？」
うささぎ「さあ？」
クロクロ「ひょっとしたら、うささぎがいなくなったから寂しがっている
かもよ？」
うささぎ「どうかなあ？」
クロクロ「ねえねえ、うささぎ、ウサギ小屋に行ってみようよ。
カステラがうささぎのこと待っているかもしれないよ。
クロクロが出て行った時も、お姉さんクロクロの帰りを待って
いたもん。」
うささぎ「そうかあ。待っているかなあ？
ウサギ小屋に行ったら『今までどこほっつき歩っていたんだ！』
って怒られちゃうかな？」
クロクロ「かもね。」
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
また場面がかわって。
今度はカステラの居るウサギ小屋だよ。
うささぎとクロクロがカステラを訪ねてきたんだ。
カステラ「よお、うささぎ、クロクロ。
ちょうどいいところに来た。
電話帳を読むの手伝ってくれ。」
うささぎ「何それ？」
カステラ「古い電話帳を捨てる事にしたんだけど、これらの電話帳は
まだ一度も読んでいないんだ。読む前に電話帳を捨てちゃったら、
電話帳がかわいそうってもんだろ。
せっかく電話帳として作られたのに、一回も読まれずに捨てられて
しまうのは電話帳としても無念だろうと思って。」
うささぎ「ふーん」
カステラ「じゃあ、そっちの職業別をクロクロと手分けして読んでくれ。」
うささぎ「うん。
えーっと456ページは、アデランス、青山発毛センター、
伊藤かつら店、大森かつら店、かつら岡米、、、、、、、、、、、
読んでてても全然面白くないよ。
カステラ、電話帳がもったいないというより、時間の方が
もったいないよ。」
カステラ「言えてるね。
電話帳を読むのはやめよう。」
うささぎ「よし、じゃあ、うささぎは次の仕事をするよ。
冷蔵庫の中身の点検をしなくちゃ。賞味期限の点検はうささぎの仕事
だからね。
やっぱりうささぎがいないと不便だよね。」
カステラ［うん。」
うささぎ「じゃあ、やっぱり、うささぎはウサギ小屋にずっといなくちゃ
ダメだよね。」
カステラ「ダメってことはないさ。」
うささぎ「なぜ？」
カステラ「なぜって、ウサギ小屋ではみんな『自分勝手にする』って
決まっているんだ。」
うささぎ「なぜ、うささぎがいなくなってもかまわないんだ？
クロクロのお姉さんならダメって言うよ。」
カステラ「誰かが引き留める事じゃないだろ。」
うささぎ「なぜ？」
カステラ「もう、うささぎはくどいな。」
うささぎ「わかったよ。ほんとうは、うささぎがいなくなっても寂しく
なんかないんだ。いいよ、出て行くよ。」
カステラ「お気に召すまま。」
うささぎ「あばよ。
二度と戻って来ないからね。」
クロクロ「カステラ！ うささぎを止めなくていいのかい？
うささぎはウサギ小屋に戻って来たいんだよ。」
カステラ「そうかい？」
つづく
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
第1話／ 第2話／ 第3話／ 第4話／ 第5話／ 第6話／ 第7話／ 第8話／
第9話／ 第10話／ ここは第11話／ 第12話／ 第13話／ 第14話／ 第15話／ 最終回
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−