*** うそばっかりのうささぎのはなし ***

(第3話)


まだクロクロを捜している、「うささぎ」と「くまった」



くまった「いままでにクロクロが夜までに帰って来なかったことってある?」

うささぎ「うん。何回かある。」

くまった「そういう時、クロクロはどこにいたの?」

うささぎ「このあいだは缶ジュースの自動販売機に首を突っ込んだまま

     出られなくなっていた。」

くまった「自動販売機?」

うささぎ「うん、自動販売機のジュース取り出し口に挟まっていた。」

くまった「なんで、またそんな所に?」

うささぎ「話せば長くなるんだけど。。。。」

くまった「なになに?」

うささぎ「クロクロは常々みんなの役に立ちたいと思っていたんだ。」

くまった「うんうん」

うささぎ「それでクロクロは”小さな親切”運動をすることにしたんだ。」

くまった「すごいな。どんな?」

うささぎ「缶ジュースの自動販売機でお客さんが110円入れるとするだろ。

     そうしたら、その人の代わりに自動販売機のボタンを押してあげる

     という親切さ。」

くまった「自分で押した方がはやいよ。そんなの親切じゃない。」

うささぎ「たしかにそうなんだけど。

     でもお年寄りや目の不自由な人には、ひょっとしたら役立つかも?

     点字がついているジュースの自動販売機ってあんまり見かけない

     よ。」

くまった「かもね。」

うささぎ「そんなわけでクロクロは自動販売機の脇に椅子を出してお客さんが

     来るのを待った。」

くまった「お客さんは来た?」

うささぎ「うん、いよいよお客さんがやって来た。」



**** その時のクロクロの話し *****



クロクロ「お客さん、缶ジュースを買われますか?」

お客さん「ああ、ウーロン茶でも飲もうかなと思って。」

クロクロ「では、このクロクロが代わりにボタンを押しますから。」

お客さん「わるいね。よっ、110円入れたよ。」

クロクロ「ウーロン茶ですね。」

お客さん「そうそう。」



ビーッ、ガシャン。

おっと出てきたのはコーラだ。



クロクロ(しまったあ! )

    「お客さん、すみません。間違えてコーラのボタン押しちゃいました。

    もう一度110円入れてもらえますか?」

お客さん「なにーっ! ふざけているのかお前! ウーロン茶を出せ、

     ウーロン茶を!」

クロクロ「すみません、今クロクロが自動販売機の中に入って取って来ますか

     ら。」



******************************



うささぎ「って言って自動販売機の取り出し口に頭を突っ込んだら、抜けなく

     なったんだ。」

くまった「ありゃー」

うささぎ「お客さんは怒ってそのまま帰っちゃったから、クロクロは挟まりっ

     ぱなし。夜、偶然知り合いの人がクロクロを見つけて取り出してく

     れたんだ。」

くまった「大変だったね。」

うささぎ「うん」

くまった「じゃあまた自動販売機にささっているかも?」

うささぎ「クロクロは2度目は失敗しない。」

くまった「そうかあ。」

うささぎ「今日は夜12時過ぎにお寺の境内で”ぬいぐるみ集会”があるから

     そこでクロクロのことを聞いてみよう。」

くまった「多くのぬいぐるみが来るといいね。」



さて夜12時過ぎのお寺の境内。

近所のぬいぐるみたちが集まってきます。ぬいぐるみたちは飼い主が

寝静まった後、こっそりと家を抜け出して、ぬいぐるみ集会へやって来ます。

ぬいぐるみ集会の横ではネコの集会も開かれていました。



うささぎ「くまった、クロクロは来ていないねえ。」

くまった「うん。みんなにクロクロを見なかったか聞いてみようよ。」

うささぎ「ねえ、ねえ、シマリスさん。クロクロを見かけませんでしたか?

     クロクロが行方不明なんです。」

シマリス「あたしは昼間は出歩かないから、ちょっとわからないわねえ。

     あっちで集会しているネコに聞いてみたら?」

うささぎ「そうですね。

     くまった、ちょっとネコさんたちにもたずねてみよう。」

くまった「ぬいぐるみのネコじゃなくて、動物のネコ?」

うささぎ「そうそう。」



うささぎ「すみません、三毛さん。」

ネコの三毛「なんだ、うささぎかい。あたしゃ洗剤も、布団も、英会話の教材

      もいらないよ。ネコには必要ないんだ。」

うささぎ「きょうは商売の話しじゃないんです。」

くまった「うささぎはこんな所でも商売していたの?」

うささぎ「うん。」

くまった「くまったは何も買わないよ!」

うささぎ「そう警戒しなくてもいいじゃん。」

三毛  「ところで何の話しだい?」

うささぎ「友達を捜しているんです。

     うささぎの友達がいなくなっちゃったんです。

     黒いうさぎのぬいぐるみを見かけませんでしたか?」

ネコの三毛「そりゃ大変だね。

      おーい、みんな、黒いうさぎのぬいぐるみ

      を見かけなかったかい?」

ネコ2 「あー、あたし見たよ。10歳くらいの女の子と一緒に歩いていた。」

うささぎ「えっ、どのあたりですか?」

ネコ2 「公園のわきあたりだったね。青い屋根の家に入っていったよ。」

うささぎ「どうもありがとうございます。」

くまった「クロクロはその女の子に誘拐されたんだね。大変だ。」

うささぎ「うわー。それはたいへん。明日青い屋根の家に潜入してみよう。」


           つづく


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