*** うそばっかりのうささぎのはなし ***

(第14話)



さてダンボール箱を買いに八百屋さんへやってきた、うささぎとクロクロ。

うささぎはダンボール箱で自分の家を作ろうとしているんだ。



うささぎ「八百屋さん、こんにちは。ダンボール箱をひとつ分けて

     もらえませんか?」

八百屋 「はいよ。1個100円だよ。」

うささぎ「ありゃ。お金が 82 円しか持っていないや。

     クロクロ、お金持っていない?」

クロクロ「いや。」

うささぎ「八百屋さん、うささぎは 82 円しかないんで、82 円分だけ

     売ってもらえますか?」

八百屋 「82円分だと底の部分はあげられないけど、いいかい?」

うささぎ「しかたありません。底の部分はあきらめます。」

八百屋 「冗談だよ。1個まるごと82円におまけしといてあげるから、

     持って行きな。」

うささぎ「うわー、ありがとうございます。

     18円も得したよ、クロクロ。」

クロクロ「好調な出だしだね。」

うささぎ「さっそく、ダンボールの家を建てるぞ。クロクロ手伝ってくれ。」

     よっこらしょ。」

八百屋 「おいおい、ぬいぐるみちゃんたち、うちの店先にぬいぐるみ

     ちゃんたちの家を建てられちゃあ困るな。商売の邪魔だよ。」

うささぎ「あっ、すみません。

     すぐに移動しますから。」

クロクロ「やっぱり、八百屋さんの軒先に家を建てちゃあ、

     怒られちゃうよね。

     うささぎ、クロクロのお姉さんの家の方に来なよ。

     あそこの歩道なら、人通り少ないし。」

うささぎ「うん、そうするよ。

     悪いけど、家を運ぶのを手伝ってくれるかい?」

クロクロ「まかしとけって。」



そんなわけで、家を担いで住宅地の歩道にやってきたうささぎとクロクロ。



うささぎ「よし、この辺でいいだろう。

     クロクロ、手伝ってくれてありがとう。」

クロクロ「お安いご用で。」

うささぎ「さっそく家を建てるからちょっと待っててね。

     よっこらしょっと。

     さあ、クロクロ、うささぎの家ができたぞ。

     まあ、遠慮なくあがってくれよ。」

クロクロ「では、お言葉に甘えて、おじゃましまーす。」



********************************



うささぎ「うーん、やっぱり自分の家はくつろぐなあ。」

クロクロ「うささぎ、この家なんかホウレンソウくさくない?」

うささぎ「そうかい? まあ、化粧のにおいプンプンとか

     酒のにおいプンプンよりは健康的だろ。」

クロクロ「そうだね。



     ねえ、うささぎ、こうやって道端のダンボール箱にうささぎと

     クロクロが入っていると、なんか『捨てられてしまった

     ぬいぐるみ』のようじゃないか?」

うささぎ「そんなことないよ。 

     せっかくうささぎの家に招待してやったのに、なんてこと

     言うんだ。」

クロクロ「ごめんよ。」

うささぎ「いやー落ち着くなああ。うささぎもやっと自分の家を持てるくらい

     に立派になったかと思うと、自分でもうれしいよ。」

クロクロ「よかったね。」

うささぎ「クロクロも、いつまでもお姉さんの家の居候していないで、

     自分の家くらい持った方がいいよ。」

クロクロ「そうかい? じゃあクロクロも立派になるよう努力するよ。」

うささぎ「そうそう。」

クロクロ「時にうささぎ、このダンボールの家、雨の時はどうするんだい?」

うささぎ「考えていなかったなあ。どうなっちゃうんだろ?」

クロクロ「雨でグシャグシャになっちゃわない?」

うささぎ「そりゃ、大変だ。」

クロクロ「それに、うささぎ、家を離れて公園とかに遊びに行っている時は

     この家どうするんだ? 留守番なしだとだれかが持って

     行っちゃうかもしれないよ。」

うささぎ「それも大変だ。遊びに行っている間に家ごと泥棒に取られ

     ちゃうのはやだな。」

クロクロ「そうだよ、帰ってきたら、『家泥棒』にあってもう家はなくなって

     ありませんでした、なんていったら間抜けだよ。

     家ごと盗まれる奴ってあんまりいないからね。」

うささぎ「そうだね。

     いったい、ダンボールを家にしている人たちはどうやってしのいで

     いるんだろう。」

クロクロ「一度観察してみる必要がありそうだね。」

うささぎ「うん。」



チリンチリン



クロクロ「うささぎ、向こうから自転車が来るよ。

     田中さんのおばさんかな?」

うささぎ「ちがうんじゃないかな。田中さんのおばさんなら先週ひき逃げに

     会ったばかりだから、まだ病院にいるんじゃないかな?」

クロクロ「そりゃ知らなかった。とんだ災難だったね。」

うささぎ「うん」



チリンチリン



自転車のおばさん「あなたたち、こんなところにダンボール箱おいて

     何やっているの? 自転車が通るのに邪魔でしょ。」

うささぎ「あっ、すみません。」

おばさん「こんなとこにいないで、さあ、家に帰りなさい。」

うささぎ「ここが家なんですけど。」

おばさん「とにかく邪魔でしょ。

     ここは自転車の通るところよ。」



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うささぎ「怒られちゃったね。」

クロクロ「でも、歩道って歩行者の通るところじゃないのか?

     ちっちゃなクロクロたちに文句言う前に駐車違反の車とかを

     何とかしろよ、ってんだ。」

うささぎ「まあまあ、クロクロ怒らないで。

     『注意してくれた』ってことはいい事さ。

     注意してもらえなかったら、うささぎはずっと

     みんなの邪魔をしたことになったかもしれないんだ。

     早めに教えてくれたから、みんなにも迷惑かけずにすんだって

     ものさ。」

クロクロ「ずいぶんと物分かりがいいんだな。で、どこに家を移すんだい?」

うささぎ「歩道がダメなら、車道があるさ。

     さあ、家を車道に出すぞ。クロクロ手伝っておくれ。」

クロクロ「いいけど、、、よっこらしょっと。」

うささぎ「さあ、車道に移ったぞ。」

クロクロ「でも、うささぎ、歩道で歩行者の邪魔になるなら、

     車道では、車の邪魔になるんじゃないかい?」

うささぎ「仮にそうだとしたら、また車の人が教えてくれるよ、きっと。」

クロクロ「そんなあ、車は急に停まれないから注意してくれる前に、家ごと

     車にひかれちゃうよ。」

うささぎ「まあ、そういう考え方もあるね。」

クロクロ「考え方じゃなくて事実だよ。

     ほら、車がやってきた。」



パパラパパラ



うささぎ「うわー、車がこっちへ来る。」

クロクロ「うささぎ、ここにいると車にひかれちゃうよ。」

うささぎ「やばい、クロクロ、速く家の中に避難するんだ。」

クロクロ「だめだよ。家の中にいたら、家ごとひきつぶされちゃうよ。

     外に逃げるんだ。」

うささぎ「うわー、逃げろー。」



パパラパパラ、、、グシャ、、



クロクロ「ふうー、間一髪助かったね。」

うささぎ「うん。でも家の方は助からなかったみたい。」

クロクロ「あーあ、ダンボールの家、グシャグシャにつぶれちゃったね。」

うささぎ「あーあ、せっかく全財産をつぎ込んで買った家だったのになあ。」

クロクロ「ガッカリだね。」

うささぎ「ガッカリ。うささぎの家が一瞬にしてスクラップに

     なっちゃったよ。」

クロクロ「心配するなよ。燃えるゴミだったら、お姉さんに頼んで火曜日の

     朝に出してもらうよ。燃えるゴミは火、木、土なんだ。」

うささぎ「気をつかってくれてありがとう、クロクロ。」

クロクロ「遠慮するなよ。

     じゃあ、ここにゴミを置きっぱなしにすると怒られちゃうから、

     お姉さんの家まで運ぼう。」

うささぎ「ゴミじゃなくて、元うささぎの家だよ。」

クロクロ「今はもうゴミだよ。」

うささぎ「そうだね。

     あーあ

     うささぎは一文無しになったばかりか、家まで失っちゃったよ。」



ズルズルズル


           つづく


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