*** うそばっかりのうささぎのはなし ***

(第8話)



クロクロの居るマリエちゃんの家に再びやってきた、うささぎ。

クロクロに『家に帰るよう』説得しに来たんだ。



    コン、コン

うささぎ「クロクロ、うささぎだよ。開けておくれ。」

クロクロ「よお、うささぎ。今日は何の報せだい? ついにミミズク博士でも

     おっ死んだか? そろそろくたばる頃じゃないかな、と思っていた

     んだ。」

うささぎ「ちがうよ。クロクロの様子を見に来たんだよ。」

クロクロ「クロクロは観察日記用の朝顔と違うんだから、毎日様子を見に来る

     事ないだろ。」

うささぎ「まあまあ。

     実は『くまった』も一緒に来たんだけど。門の外で待っている

     って。番犬さんがいるから。」

クロクロ「なんだ、くまったは番犬さんのこと恐れているのかな?」

うささぎ「いや。くまったに限って『犬を恐れるなんて』そんなこと無いと

     思うよ。くまったは、その、、、あの、、、そうそう、くまった

     は犬アレルギーだとか何とか言っていた。犬に近づくとジンマシン

     が出るらしいよ。」

クロクロ「ぬいぐるみのくせにジンマシンが出るとは『くまった』も

     大変だな。」

うささぎ「そうだね。

     ときにクロクロ、お姉さんの所へ帰ってみようかな、なんて

     気になった?」

クロクロ「全然。ここの生活は目新しい事ばかりで面白いし。それに、

     明日には新しいぬいぐるみの友達も増えるのさ。マリエちゃんが

     新しいぬいぐるみを買ってもらうんだって。」

うささぎ「へえー。

     そういえば、うささぎはクロクロのお姉さんの家に行って

     みたんだ。

     お姉さんの家、灯が消えたように静かだったよ。みんな人気者の

     クロクロがいなくなったんで、落ち込んじゃっている。」

クロクロ「ほう。」

うささぎ「お姉さんは、クロクロが引っ越しちゃったんで寂しがっているよ。

     寂しくて、もう、ご飯も喉を通らないって。」

クロクロ「ほう。」

うささぎ「うささぎにもわかるような気がするよ。なにせ、カッコよくて、

     頭もイイ、おまけに性格も良いクロクロは黒木家

     で一番の人気者だったしね。その人気者がいなくなちゃった

     んだから。黒木家はクロクロでもっていたようなものさ。」

クロクロ「ほう。」

うささぎ「黒木のお母さんは落ち込んだ後、寝込んじゃって、大変。

     かなり具合が悪いらしいよ。『死ぬ前にもう一度クロクロに

     会いたい。』って言ってるらしいし。」

クロクロ「ずいぶんと大袈裟だな。

     うささぎ、話しを作っていない?」

うささぎ「まあ、人づてに聞いた話しだから、情報に不正確な点はあるかも

     しれない。」

クロクロ「ふーん」

うささぎ「そんなわけで黒木さんの家はクロクロを必要としているんだよ。」

     一度顔出しくらいしてやって欲しいな。」

クロクロ「そうかい?」

うささぎ「そういえば黒木さんの家で『ゴキブリホイホイにゴキブリが

     かかっているかどうか』って調べるのはクロクロの役目

     だったよね。」

クロクロ「うん。クロクロがゴキブリホイホイを毎日調べて、

     ゴキブリが捕まっていたらお姉さんに報告するんだ。

     するとゴミ箱行きになる。」

うささぎ「クロクロがいなくなったら、ゴキブリホイホイをだれが調べる

     んだい? だれもいないじゃないか。困るよ、それ。」

クロクロ「うーん。」

うささぎ「そのうちにゴキブリホイホイが満員になる。

     すると、どうだ、後から来たゴキブリはゴキブリホイホイに

     入りたくても入れなくなる。入れなかったゴキブリは

    『くそっ、満員じゃねえか!』って気分悪くすると思うよ。」

クロクロ「そうだねえ。

     でも、わざわざゴキブリホイホイに入って捕まりたいって思う

     ゴキブリがいる?」

うささぎ「ゴキブリは、ゴキブリホイホイに入りたいと思うから、

     入るんだよ。だれかに強制されて入るわけじゃない。」

クロクロ「だね。」

うささぎ「ただ、出たいと思ったときに出られない。

     罠のようなものさ。」

クロクロ「人間も悪どい事考えるね。」

うささぎ「うん。気をつけないと。

     ぬいぐるみも、人間に騙されないとは限らないからね。」

クロクロ「だね。『ぬいぐるみホイホイ』とかを仕掛けられないよう

     気をつけなきゃ。」

うささぎ「その『ぬいぐるみホイホイ』っていうのはヤダな。」

クロクロ「イタズラ好きのうささぎが一番にかかるね。」

うささぎ「『うわー、ぬいぐるみホイホイのトリモチに捕まっちゃったよう、

     助けてくれー』っていうのは勘弁して欲しいな。」

クロクロ「でも、どうせ仕掛けるなら『悪い奴ホイホイ』とかを仕掛けて

     欲しいよな。」

うささぎ「賛成。

     それは良い案だよ。人間も早く『悪い奴ホイホイ』を仕掛ければ

     いいのに。何でとっとと仕掛けないんだろう?」

クロクロ「いろんな事情があるんじゃないかな?」

うささぎ「そうだね。」

クロクロ「で、お姉さんの家のゴキブリホイホイはもう満員かな?」

うささぎ「それを調べるのはクロクロの役目だよ。

     お姉さんが帰ってくる時刻を見計らって、お姉さんの家へ行って

     みようよ。」

クロクロ「そうだね。夕方にはお姉さんところへ行ってみることにするよ。

     その時分はマリエちゃん塾でいないし。」

うささぎ「じゃあ夕方ね。」

クロクロ「あっ、うささぎ、待って。マリエちゃんで思い出したけど、

     この間、ここに来た時うささぎはマリエちゃんと会っただろ。」

うささぎ「うん」

クロクロ「マリエちゃんは『うささぎ』のことも気に入っちゃって、

    『うささぎも一緒にここに住めばいいのに』って言ってたよ。」

うささぎ「ふーん。でも、うささぎの家は『ウサギ小屋』だから、ここには

     住めない。」

クロクロ「それは残念だなあ。マリエちゃんは気前がいいから、うささぎが

     マリエちゃんと一緒に住むようになったら、お小遣いくれるかも

     しれないのに。」

うささぎ「えっ! お小遣い?」

クロクロ「そう」

うささぎ「ぜひ一緒に住みたい! じゃなかった。

     うささぎの家はウサギ小屋だって。ここには住まない。」

クロクロ「残念だなあ。お小遣いは現金でくれるかもしれないのに。」

うささぎ「えっ! 現金。現金かあ、、、うーん、、、クロクロ、、、

     お姉さん寂しがっているよ、、、あー、、現金かあ。」

クロクロ「現金欲しいよね。」

うささぎ「欲しい! でもそのためには、うささぎの家を『マリエちゃん

     の家』にしなくちゃいけないし。ウサギ小屋もうささぎの家だし。

     困った。」

クロクロ「せっかくの機会なのにな。」

うささぎ「よし、決めた。家を二つにする。マリエちゃんの家もウサギ小屋も

     両方ともうささぎの家にする。そうすればみんな丸く収まると

     いうもの。」

クロクロ「それはいい手だね。クロクロも家を二つにするよ。

     そうなれば、黒木のお姉さんもマリエちゃんも二人とも喜ぶね。」

うささぎ「うん」

クロクロ「じゃあ、夕方お姉さんの所へ行った時、『家が二つになりました』

     って報告すればいいね。」

うささぎ「そうだね。この名案にきっと喜んでくれるよ。」



そんなわけで、家を二つにすると言い出したうささぎ達。

あっちも、こっちもなんて虫のいい事通じるんでしょうか?


           つづく


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