*** うそばっかりのうささぎのはなし ***

(第9話)



クロクロのお姉さんのところへ『家を二つにする』と報告に来たクロクロと

うささぎ。

(もともとは、クロクロは黒木のお姉さんのところに、

 うささぎはウサギ小屋に住んでいるんだ。)

クロクロ「そんなわけで、今度から家を二つにするからね。」

お姉さん「ダメ。新しい飼い主を作るなんて、冗談も休み休み言いなさい。」

クロクロ「冗談じゃないよ。ちゃんとした話しだよ。」

お姉さん「ダメ、ダメ、ダメ。他の家に住むなんて許さないからね。」

クロクロ「えっー。なんでー?」

お姉さん「あたしも、お母さんも、お父さんも、みんな、住んでいる家は

     ここの家一つだよ。家が二つも三つもある人いないよ。」

うささぎ「いるよー。丘の上の貿易会社の社長さん。

     週末は奥さんや子どものいる家に住んでいるんだけど、

     平日は愛人さんの家に住んでいるんだ。

     うささぎ達は時々週末に愛人さんの家に行くんだよ。

     週末なら、愛人さんが遊んでくれるし。」

お姉さん「うささぎは横から邪魔しないで。」

うささぎ「はーい」

お姉さん「とにかくダメだからね。」

クロクロ「ちょっとくらいイイじゃん。」

お姉さん「だいたい、クロクロはあたしが買ってもらったぬいぐるみ

     なんだから。あたしの物なんだから、ここにいなさい。」

クロクロ「そんなのは人間だけの都合だよ。

     クロクロは別にお金もらってないし。

     犬や猫に『あなたはあたしが買ってきたものだから』なんて

     言ったって、犬や猫は『そんな事知ったこっちゃ無い』って

     思うに決まっているじゃないか。」

お姉さん「何と言おうとダメ。」

クロクロ「エッー。」

お姉さん「たとえば、クロクロの大切な物がある日、急になくなったら、

     クロクロはどう思う?」

クロクロ「すごく悲しい。」

お姉さん「それと同じ事。クロクロがいなくなったら、すごく悲しく

     なるよ。」

クロクロ「ふーん。悲しい?」

お姉さん「そう、クロクロがいなくなったら悲しい。

     あたしとクロクロとは、これからもずっと一緒。

     あたしが就職や結婚で家を出たとしても一緒に連れて行く

     からね。」

クロクロ「結婚した後って、旦那さんにいじめられない?」

お姉さん「心配するなって。守ってあげる。」

クロクロ「ふーん」

お姉さん「わかったら、もう家を二つにするなんて言うのは

     やめにしようね。」

クロクロ「えっー。

     じゃあ3日間だけ、マリエちゃんの家にいさせて。

     そうしたら気が済むから。」

お姉さん「とか、なんとか言って、逃げてマリエちゃんの家に行くつもり

     だな。」

クロクロ「へへっー。

     ぬいぐるみにだって刺激は必要さ。ずっと同じ所にいたらカビが

     生えちまう。

     うささぎ、頼んだぞ。」

うささぎ「合点っだ。

     逃げろクロクロ! ここはうささぎに任せて。」

お姉さん「クロクロ、ちょっと。待ちなさい。

     コラッ、うささぎ、邪魔するなーー!」

うささぎ「クロクロ、今のうち。」

クロクロ「じゃあねえー」

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お姉さん「うー、逃がしたかー。」

うささぎ「お姉さん。クロクロは、きっと戻ってくるから。

     心配しないで。じゃあ、うささぎも行ってくるね。」


           つづく


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