*** うそばっかりのうささぎのはなし ***

(第12話)


ウサギ小屋をあとにしたうささぎとクロクロ。



クロクロ「うささぎ、ほんとうに、もうウサギ小屋には二度と

     戻らないのかい?」

うささぎ「そうだよ。」

クロクロ「考え直した方がいいよ。カステラだって、きっと

     ほんとうはうささぎにいて欲しいと思ってるよ。」

うささぎ「余計なお世話だよ。

     クロクロはいいよな。お姉さんがやさしてくれるし。

     家に帰れば人気者さ。さぞ毎日が楽しいだろうよ」

クロクロ「そんな意地悪言わないでくれよ。

     うささぎ、怒っているかい? 

     クロクロが『マリエちゃんの家に住もう』なんて誘った

     ばっかりにこんなになっちゃって。ゴメンよ。

     もっとうまく行くと思っていたんだ。」

うささぎ「怒ってなんかないさ。

     マリエちゃんのところは楽しいことがいっぱいさ。

     誘ってくれてありがとうよ、クロクロ。」

クロクロ「うささぎ、クロクロはうささぎのことが心配なんだ。

     今のうささぎはちっとも幸せそうじゃないし。

     困った事があれば何でも相談してくれよ。

     そうだ、ミミズク博士に相談してみようよ。」

うささぎ「何も困っていないさ。」

クロクロ「ならいいんだけど。

     ・・・・・

     じゃあミミズク博士の所にいるからね。

     ミミズク博士も研究にいきづまっているらしいんだ。

     例の研究に。ほら『猫のミケさんの猫背を治す』っていう

     研究だよ。やっぱり正しい姿勢から健康は生まれるからね。」


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さて、マリエちゃんの家に戻ってきたうささぎ。

窓から覗いてみると、マリエちゃんが何か探し物をしているよ。

いつもうささぎが座っている所でだ。



うささぎ(あれ、マリエちゃん何探しているのかな?

     ひょっとして、うささぎが黙って出かけちゃったから心配して

     うささぎのこと探しているのかな?)

    「マリエちゃん、うささぎはココだよ。

     ゴメンよ、マリエちゃんがゲームしている間に出かけ

     ちゃったんだ。」

マリエ 「あれ、うささぎ出かけていたの?

     全然気が付かなかった。

     それより、色鉛筆探しているんだけど、うささぎ見かけ

     なかった?」

うささぎ「いいや、見かけなかったよ。

     なんだ、色鉛筆を探していたんだ。うささぎは勘違い

     しちゃった。」

マリエ 「なにと?」

うささぎ「いや、何でもないんだ。忘れておくれ。

     ・・・・・

     マリエちゃん、うささぎはミミズク博士の実験室に

     行ってくるね。」


********************************


ここはミミズク博士の実験室



クロクロ「やあ、うささぎ、待っていたよ。

     今、博士に事情を説明していたところさ。」

うささぎ「そうなんだよ博士。

     うささぎは誰からも相手にされなくなっちゃったんだ。

     カステラは『出て行けば』って言うし、

     マリエちゃんもうささぎがいなくなっても気づきもしないんだ。」

ミミズク「なるほど」

クロクロ「マリエちゃんもあんなに良くしてくれたのに、セオドアが来てから

     というもの、全然相手にしてくれなくなっちゃったよね。

     そりゃ、お母さんに買ってもらったセオドアの方が

     大事だろうけど。ちょっとガッカリ。」

ミミズク「人間はいつも相手をガッカリさせながら生きていく生き物

     なんだ。」

クロクロ「へえー」

ミミズク「今マリエちゃんに可愛がってもらっているセオドアも、いつの日か

     クロクロと同じようにガッカリする。

     ある日、マリエちゃんに他の仲良しの友達ができたりして。

     マリエちゃんにとっては、仲良しの友達と遊ぶ方が楽しくなるんだ。

     セオドアはだんだんと忘れられていく。」

クロクロ「うん、よくわかる。」

ミミズク「マリエちゃんが大きくなると、やがて、その友達も一番の友達じゃ

     なくなるんだ。

     マリエちゃんと仲よくしてくれる男の人が現れて。

     時がたって、仲よしの男の人がマリエちゃんにとって一番大事な

     お婿さんになったとしても、ある日お婿さんは一番の席からころげ

     落ちちゃうんだ。マリエちゃんの子どもにとって替わられて。

     でも最後にはマリエちゃん自身がおいてけぼりにされるのさ。

     自分の子どもから。マリエちゃんは、ただただ子どもを送り出す事しか

     できない。」

クロクロ「ふーん。

     クロクロもいつか、お姉さんから忘れられちゃうのかなあ?」

ミミズク「かもね。」

クロクロ「やだなあ。」

ミミズク「まあね。

     ぬいぐるみはだれでも、その役目を終えたら静かな眠りに

     つくんだよ」

クロクロ「そうやってクロクロもダンボール箱につめられて、

     押し入れにしまわれちゃうんだ。ヤダなあ。」

ミミズク「だれも死から逃れる事はできないさ。」

クロクロ「そんなのヤダよ。ねえ、うささぎ。」

うささぎ「うささぎなんか、押し入れにしまわれる前にウサギ小屋から

     放り出されちゃったよ。『もう要らない』って。」

クロクロ「そんなに悪い方向に考えるなよ、うささぎ。

     カステラは『要らない』って言っているんじゃなくて『自由に

     していい』って言っているんだよ。」

うささぎ「同じようなもんさ。」


           つづく


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