*** うそばっかりのうささぎのはなし ***

(第4話)


次の日、クロクロが入っていったという青い屋根の家へやってきた

うささぎとくまった。

塀越しに覗いてみると。



うささぎ「ここだね。」

くまった「うん。」

うささぎ「玄関の前には大きな犬がいるね。」

くまった「怖そう。」

うささぎ「噛み付かれたら一たまりもないね。」

くまった「うささぎ、やっぱり潜入するのは、やめようよ。

     噛み付かれたらどうするんだよ。」

うささぎ「大丈夫だよ。犬くらい。」

くまった「大丈夫じゃないよ。くまったは帰る。ここにクロクロがいるとは限

     らない。」

うささぎ「そんなあ。クロクロが捕まっちゃっているかもしれないのに。」

くまった「・・・・」

うささぎ「じゃあ、まず、うささぎが入っていくから後からついて来て。」

くまった「やだなあ。」



トコトコと犬の前を通過しようとするうささぎ。

犬   「ちょっと。そこのうさぎのぬいぐるみ。あたしのことが目に入らな

     いの?」

うささぎ「いや、はいっています。」

犬   「ここは私有地だよ。さあ、帰った。帰った。」

うささぎ「ちょっと友達を捜しているんですけど、通してもらえませんか?」

犬   「友達???」

うささぎ「では、前を失礼します。先を急ぎますので。」

犬   「ちょっと! あたしはこの家の番犬なんだから。怪しいぬいぐるみ

     通すわけにはいかないんだよ。」

うささぎ「決して怪しいものではありません。

     かといって、おいしいものでもありませんが。」

犬   「素直じゃないわね。通ると噛み付くわよ。ガウッ。」

うささぎ「うわー、噛み付いちゃヤダヨ。逃げろ。」

犬   「待ちなさい。ガウッ」

うささぎ「うわっ。犬さん、放してください。

     うわー、くまった、助けてよ。くまったあ。」

くまった「あー、うささぎが捕まった。だから、やめようって言ったんだ。」

うささぎ「くまったあ!」

くまった「くまったは知らないよ。うささぎが勝手に入っていくからだ。」

うささぎ「そんなこと言わないで。」

くまった「うささぎがいけないんだ。

     くまったは関係ない。知らない。帰る。さよなら。」


******************************


うささぎ「くまった。見捨ててっちゃやだよ。

     あーあ、行っちゃった。」

犬   「あなたの友達、意外と薄情ね。」

うささぎ「まったく、くまったは頼りにならないんだから。」

犬   「ブツブツ言ってないで、放してあげるから、

     あなたも帰りなさい。」

うささぎ「えー、そんなこと言わないで。

     友達を捜さなきゃいけないんだ。

     犬さん、黒いうさぎのぬいぐるみを見かけませんでしたか。」

犬   「黒いぬいぐるみ!? その子なら知ってるわよ。」

うささぎ「ほんとですか?」

犬   「私を疑うつもりかい、噛み付くわよ。」

うささぎ「すみませんでした。噛み付かないでいください。

     やっぱり、うささぎは退散します。」

犬   「さっさとお行き。」

うささぎ「いや、やっぱり、うささぎは退散できない。

     うささぎはクロクロを助けに来たんだ! 強行突破、、、、」

犬   「できるわけないでしょ。ガウッ」

うささぎ「ひえー、犬さん、許してください。ひえー。

     犬さん、ほら、あそこアリが玄関へ向かって不法侵入していきます

     よ。番犬として止めなくていいんですか?」

犬   「いいのよ。アリはかまわないわ。」

うささぎ「アリはよくて、なぜぬいぐるみはいけないんですか?」

犬   「そうねえ、、、まあ、、、、ぬいぐるみも良しとしましょう。

     世の中、危険なのは人間だけだし、ぬいぐるみはそんなに危なそう

     じゃないわね。」

うささぎ「ふう、ありがとうございます。これでやっとクロクロを助けに

     行くことができます。」

犬   「そのクロクロっていう子なら、マリエちゃんの部屋にいるよ。

     きっと。」

うささぎ「マリエちゃんって?」

犬   「ここの家の女の子だよ。」

うささぎ「じゃあ、クロクロはそのマリエちゃんに誘拐されたんですね。」

犬   「まあ、そうとも言えるわね。マリエちゃんは気に入ったおもちゃは

     何でも自分の物にしちゃうからねえ。」

うささぎ「それはたいへん。クロクロを助け出さないと。

     マリエちゃんの部屋はどこだか教えてもらえますか?」

犬   「いいけど、私が教えたってことは内緒にしておいてくれよ。」

うささぎ「大丈夫です。だれもぬいぐるみの言う事を信用しませんから。」

犬   「フーン。あそこの出窓のある部屋だよ。」

うささぎ「ありがとうございます。」

犬   「クロクロを助けておやりよ。」

うささぎ「はい。いってきます。」


           つづく


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