*** うそばっかりのうささぎのはなし ***

(第13話)



うささぎ「博士、うささぎはこれからどうすればいいんだ?」

ミミズク「そうだなあ?

     クロクロはどう思う?」

クロクロ「博士、さっき『持ち主から相手にされなくなったぬいぐるみからは

     魂が抜けちゃう』って言ったよね。」

ミミズク「ああ、そうだ。」

クロクロ「だったら、うささぎはまだ動いているけど、なぜなんだろう?

     ねえ、うささぎ?」

うささぎ「うささぎはどうせ『相手にされなくなったぬいぐるみ』だよ。

     いずれ電池が切れるように動かなくなっちゃうんだ。」

ミミズク「まあまあ。でも、たしかに不思議だな。

     止まってしまう気配はまったくないし。

     うささぎ、なにか秘密を隠しているだろう?」

うささぎ「何も。

     うささぎは『勝手にしろ』って言われたから勝手にしている

     だけさ。」

ミミズク「なるほどね。

     じゃあ、たぶん、『勝手にしろ』という言葉がうささぎを

     動かしているんじゃないかな?」

クロクロ「何だそれ?」

ミミズク「昔、人間には2種類あったんだ。主人と奴隷という2種類さ。

     奴隷は住む家も自分では決められなかった。でもある日、主人から

     『勝手にしていい』って言われた奴隷は、自分自身で生きていく

     ようになったんだ。

     うささぎの場合もそれにちょっと似ているかもしれない。」

クロクロ「へえー、じゃあひょっとして、『だれかの家のぬいぐるみ』

     じゃなくても、うささぎは、ずっと動いていけるんだね。

     すごいじゃないか、うささぎ。」

うささぎ「そうかなあ?」

クロクロ「そうだよ。もう『このぬいぐるみは要らなくなったから』って

     押し入れにしまわれることないよ。」

うささぎ「ほんと?」

クロクロ「絶対そうだよ。うささぎ、未来は明るいぞ。」

うささぎ「うん、少しだけ力が湧いてきたよ。

     ・・・

     でも、ひとりで勝手に暮らしていくのと、自由はないけど持ち主に

     大事にしてもらうのと、どっちがいいのかはよくわからないな?」

ミミズク「もう、ひとりでやって行くしかないんだから、がんばるしか

     ないだろう。」

うささぎ「うん、博士、わかったよ。

     うささぎはがんばる。」

ミミズク「その意気だ。」

クロクロ「クロクロも協力するよ。」

うささぎ「よし、うささぎはやるぞ。

     まず始めに、うささぎは自分自身の家を建てるぞ。

     もうマリエちゃんの家には戻らない。」

ミミズク「また大きくでたな。」

うささぎ「さっそく、斜向かいの八百屋さんへ家を買いに行こう。

     クロクロ、家を買いに行くの手伝ってくれよ。」

クロクロ「いいけど。八百屋さんに家なん売っているか?」

うささぎ「もちろんさ。」

クロクロ「かぼちゃと人参で家を作るのか?」

うささぎ「ちがうよ。ダンボール箱を分けてもらうんだ。

     人間の中にもダンボールを家にしている人いるだろ。」

クロクロ「そうだね。」

うささぎ「さあ行こう。」

ミミズク「じゃあ、うささぎ、クロクロ、しっかりな。」


           つづく


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