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＊＊＊ うそばっかりのうささぎのはなし ＊＊＊ （第15話）
せっかく買ったダンボールの家を交通事故で失ってしまったうささぎ。
うささぎ「あーあ、一文無しだし、家ももう買えないや。」
クロクロ「うささぎ、とりあえずクロクロの家へ来なよ。
行くとこ無いんだろ。」
うささぎ「うん、じゃあやっかいになるよ。」
でも、うささぎだけ『家がない』っていうのは悲しいな。
みんなの家も竜巻か何かで壊れちゃえばいいのにな。
みんなの家がなくなれば、うささぎだけが『家がなくて悲しい』
ってことにはならないじゃないか。」
クロクロ「ダメだよ。何言ってるんだ。
みんなの家がなくなったら困るじゃないか。」
うささぎ「そうかあ。せめてクロクロの家だけでも地吹雪か何かで、こう
ゴーっとつぶれちゃわないかなあ。」
クロクロ「つぶれない！」
うささぎ「つまんないなあ。」
クロクロ「つまんなくない！
友達の不幸を願う奴なんか嫌いだ。」
うささぎ「ひえー、クロクロ、見捨てないでおくれよ。」
クロクロの家へ着いたうささぎ達。
クロクロ「あっ、お姉さんのお母さんがいる。」
うささぎ「こんにちわ」
クロクロ「お姉さんのお母さん、今日はうささぎを連れてきたよ。
うささぎの家に車が突っ込んだんで、うささぎは家を
失っちゃったんだ。」
お母さん「えっ、ほんと？ ウサギ小屋に車が？
カステラさんは大丈夫？ バブルのころは地上げで
家にダンプが突っ込むって噂を聞いた事があるけど、
最近はあんまりそういう話し聞かなかったのにねえ。」
クロクロ「ウサギ小屋にじゃなくて、ダンボールの家に車が突っ込んだ。」
お母さん「あら、そう。
なにはともあれ、うささぎちゃん、大変だったわねえ。」
うささぎ「ええ、まあ。心配していただきありがとうございます。」
クロクロ「それで、お姉さんのお母さん、うささぎは行くところないから
ここの家にいてもいいかい？」
お母さん「かまわないけど、ウサギ小屋に帰らなくていいの？」
クロクロ「うささぎはウサギ小屋から卒業したんだ。」
お母さん「えっ？」
うささぎ「カステラが『勝手にしろ』って言うから、『二度と帰るか』って
言って出てきたんだ。」
お母さん「あら、あら」
クロクロ「うささぎは、勝手にしたのはよかったんだけど、結局一文無し
になって、おまけに家もつぶれちゃったんだ。」
うささぎ「やっぱり、ひとりで勝手に暮らしていくって、大変さ。
自由の身になるのも良し悪しだね。」
お母さん「なに、贅沢言ってるの。
おばさんなんか、いつも『あー、もっと好き勝手にやりたい』
って思いながら、毎日生活しているんだから。
おばさんがパートに働きに出る時も、おじさんが『俺の給料じゃ
食えないのか！』なんて反対しちゃって。そんな意味じゃないのに
ねえ。みんな勝手にはやらせてくれないんだから。」
うささぎ「へえ、そうなんだ。じゃあうささぎも勝手にできる事を大切に
しなくちゃ。
でも、やっぱりひとりで暮らして行くって面倒くさいな。」
お母さん「そうねえ、うささぎちゃんには、『ひとりで暮らしてく』
っていうのは、まだ早いのかもねえ。」
うささぎ「ふーん。」
お母さん「まあ、そのうちにできるようになるから大丈夫。」
うささぎ「ふーん。
あーあ、だれかうささぎを引き取ってくれないかなあ？」
クロクロ「うささぎ、だらしないぞ。
さっきまでは『ガンバル』って言っていたのに。」
うささぎ「家があるクロクロにうささぎのことがわかるか、ってんだ。」
クロクロ「じゃあ、カステラの居るウサギ小屋に帰ればいいじゃないか。」
うささぎ「それがダメなんだ。『二度と帰るか』って言って出てきちゃった
から。」
クロクロ「まったくしょうがないなあ。」
うささぎ「クロクロ、うささぎはどうしたらいいんだい？」
クロクロ「そうだなあ？ 考えてみるよ。
全然話し変わるけど、うささぎ、クロクロは明日ちょっとお寺へ
行ってくるね。
うささぎに引き取り手が現れるよう、拝みに行ってくるよ。」
うささぎ「えっ？」
クロクロ「へへ。」
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クロクロ「みんな、うささぎには内緒だけど、ほんとうはお寺に行くん
じゃなくて、カステラのいるウサギ小屋に行くんだ。
うささぎがウサギ小屋に戻れるよう頼んでみるのさ。」
つづく
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