*** うそばっかりのうささぎのはなし ***

(第6話)



うささぎ「じゃあ、クロクロはお姉さんのところには帰らないんだね。」

クロクロ「うん」

うささぎ「家に帰らないなんて、変な新興宗教にはまった奴みたい。」

クロクロ「そんな言い方ないじゃないか!

     うささぎだって、『58円あげるから泊っていきなさい』って

     誘われたら泊まるだろ!」

うささぎ「それは言えてる。クロクロ、するどい。」

クロクロ「わかったなら、今日はもう帰ってくれよ。」

うささぎ「うん、帰る。じゃあね。」



そんなわけで、うささぎは、すごすごとマリエちゃんの家をあとにしながら

ブツブツと、、、



うささぎ「まったく、クロクロには困っちゃうよ。

     『クロクロは引っ越しました。お姉さんのところには帰りません。』

     だって、どうやってクロクロのお姉さんに言えばいいんだ?

     困ったなあ、ミミズク博士に相談してみようっと。」



ミミズク博士の実験室は、とあるビル(バブル崩壊のあおりを受けて誰も

住まなくなった廃虚ビル)の一角にあります。勝手に住み着いちゃったんだ。



うささぎ「はーかせー、っと。(あっ、くまったがいる)」

くまった「あっ、うささぎ。」

うささぎ(くまったのやつ、逃げたと思ったら、こんなところに。

     よくもうささぎのことを見捨てたな。どうしてくれよう、、、)

くまった「うささぎ、怒ってないよね。」

うささぎ「ここにいるのはうささぎではない。ここにいるのは何を隠そう、

     うささぎの怨霊だ。」

くまった「怨霊? ひえー。」

うささぎ「くまった、よくもさっきはうささぎを見捨ててくれたな。

     おかげでうささぎは犬にかまれて死んでしまった。

     ここにいるのは、見捨てた『くまった』に復讐をしに来た

     怨霊なり。」

くまった「うわー。そんなの知らないよー。」

うささぎ「よくもうささぎを見捨てたな。」

くまった「うささぎ、許してくれよ。まさか死ぬなんて思わなかったんだ。」

うささぎ「何も考えずに逃げたくせに何を言っている。」

くまった「ほんとうはそうだけど。ひえー、怨霊退散しろ。」

うささぎ「素直に引き下がる怨霊がいるか。とり殺してやる。」

くまった「博士、助けてー。」

うささぎ「待てえ、くまった。」



********************************



くまった「あっ、博士! うささぎの怨霊だよ。助けてー!」

ミミズク博士「なんだ、くまった、あわてて。怨霊? 怨霊なんかいないぞ。

       そこにいるのは、うささぎじゃないか。」

くまった「ちがうよ。うささぎは犬に噛まれて死んだんだ。

     そこに居るのは怨霊だよ。」

ミミズク(ははーん、うささぎのイタズラが始まったな)

くまった「博士、何とかして。」

ミミズク「そうか! 怨霊とは大変だ。よし、このキョンシーの御札で

     退治しよう。この怨霊退治の御札を食らえ。」

うささぎ「しまった、怨霊退治の御札を貼られてしまった。

     く、苦しい。退治されてしまいそうだ。」

くまった「まいったか!」

ミミズク「私を楯にして威勢のいい事を言うんじゃない、くまった!」

くまった「だってえ」

うささぎ「く、苦しい、というのは冗談。全然苦しくないぞ。

     実は怨霊でなく吸血鬼だったのだ。」

くまった「そんなあ。」

うささぎ「待てえ、くまった。血を吸ってやる。」

くまった「博士、吸血鬼だ。助けてえ。」

ミミズク「あわてるな。くまったには血は流れていないだろ。

     吸血鬼を恐れる事はない!」

くまった「そんな事言ったって、怖いものは怖いんだ。

     テレビの吸血鬼だって怖いじゃないか。テレビから出て来ないって

     わかっているのに。」

ミミズク「そうだな。じゃあ、吸血鬼には十字架攻撃だ! 十字架を食らえ。」

うささぎ「しまった、十字架だ。

     く、苦しい。退治されてしまいそうだ。」

くまった「まいったか!」

ミミズク「だから、私の陰に隠れて威勢のいい事を言うなって。」

くまった「だってえ」

うささぎ「く、苦しい、というのは冗談。全然苦しくないぞ。

     実は吸血鬼ではなく地獄の鬼だったのだ。

     くまったも地獄送りだ。」

くまった「そんなあ。博士、なんとかして!」

ミミズク「わたしの見たところ、あれは鬼ではない。ゾンビだ。」

くまった「ゾンビ。ほんと?」

ミミズク「私にはわかる。なぜなら、今まで秘密にしていたが実は

     私もゾンビだからだ。はっはっは」

くまった「そんなあ。」

ミミズク「捕まえて、くまったもゾンビにしてやる。」

くまった「やだよ。助けてー。」

ミミズク「捕まえたぞ。」

くまった「触るなゾンビ!」

ミミズク「触られたからには、もうおまえはゾンビだ。」

くまった「やだよ。ゾンビなんかになりたくないよ。」

ミミズク「騒ぐな。」

くまった「ゾンビはやだよう。」

ミミズク「怖がることはない。なぜゾンビになるのがいやなのか?」

くまった「ゾンビだからだよう。」

ミミズク「答えになっていない。

     私もうささぎもゾンビだ。くまったもゾンビになれば仲間だぞ。

     みんなでゾンビになれば怖くない。」

くまった「やだ、ったら、やだ。」

ミミズク「世界中のみんながゾンビになっても、それでもまだゾンビには

     なりたくないか?

     ひとりだけぬいぐるみだと、仲間はずれにされるぞ。」

くまった「いいんだ。くまったはぬいぐるみとして作られたんだから、

     最後の一匹になってもぬいぐるみでいたいんだ。」

ミミズク「えらい!

     その心意気に免じてゾンビにするのは勘弁してやろう。」

くまった「くまったはもう起き上がれないよう。」

ミミズク「もう大丈夫だ。私もうささぎもゾンビをやめて元に戻るぞ。」

くまった「ああっー。」

ミミズク「くまった、元気を出せ。みんな戻ったんだ。」

くまった「うささぎも生き返ったんだね。」

うささぎ「もとから生きているよ。」

くまった「えっ?」

うささぎ「ちょっと、くまったを驚かせてみただけさ。」

くまった「ひどいなあ」

うささぎ「後ろめたい事があるから、うささぎのことが怨霊に見えるんだ。

     くまったが見捨てていくからだよ。」

くまった「そんな事言ったって。

     うささぎは犬のこと平気かもしれないけど、他のぬいぐるみも

     犬のこと平気とは限らないよ。」

うささぎ「そうだね」

くまった「それなのに、くまったのこと無理に連れて行こうとするなんて。」

うささぎ「ゴメン、ゴメン、無理言ったうささぎが悪かったよ。」

くまった「うん」

うささぎ「でも、友達が困っているときは助けて欲しいな。」

くまった「そうだね。逃げてゴメンよ。

     今度からは勇気出すよ。」

うささぎ「うん」

ミミズク「うささぎ、ところでクロクロは?」

うささぎ「誘拐じゃなく家出だった。」

ミミズク「そうか! クロクロも一人前になったな。」

うささぎ「クロクロはお寿司食べないから一人前も二人前もないよ。」

ミミズク「そういう意味じゃなくて、、、、、、」



と、クロクロの家出のおかげで、もめているうささぎ達。

次回うささぎは、クロクロのお姉さんのところへクロクロ家出の報告に行きます。


           つづく


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