いきなり意味不明で申し訳ない。ここ数日作っていた簡易 httpd のバグがようやく取れたのだ。 問題のコードはこんな感じである。

コード1

    DWORD ConnThread(Socket *pSock)     /* クライアントのリクエストを処理するスレッド   */
    {
        Socket ConnSock = *pSock;
            :
            :
    }

    DWORD AcceptThread(Socket *pSock)   /* クライアントからの接続を受け付けるスレッド   */
    {
        SOCKET ConnSock;
        DWORD  thid;

        while (TcpAccept(&ConnSock, *pSock, 0) == TCP4U_SUCCESS) {
            CreateThread(NULL, 0, (LPTHREAD_START_ROUTINE)ConnThread, &ConnSock, 0, &thid);
        }
        return 0;
    }
    

という具合に並列に処理が進んでいくわけである。

　ところがこれを実際に動かしてみると、リクエストをやたらと取りこぼすし、一般保護例外が頻発、 挙げ句の果てにシステムごと落ちてしまう。

　問題は ConnSock を参照渡しで ConnThread に渡していた点にあった。つまり、上の処理の流れを もっと細かく見ると、

という具合になるのだが、このように新たな接続 [2] が ConnThread 側で ConnSock をコピーした後[1]で発生すれば問題ないのだが、そんな保証はどこにもないのであった。 ConnThread のスレッドが生成されてから [1] のコピー処理が行われるまではごく短い時間ではあるのだが、 その間に AcceptThread が新しい接続を受け付けて [2] の処理が行われるとどうなるか。

と、いうような事が起こってしまい、本来 ConnThread が処理するはずだった最初の接続 (ソケット₁) は処理されず、次の接続 (ソケット₂) が二重に処理されてしまう。 これでは取りこぼしやエラーが出るのは当然である。

　さて、ではどう対処するか。

　まず考えられるのは、新たな接続ごとに異なるアドレスを使う、という方法である。具体的には、

コード2-(1)

    DWORD ConnThread(Socket *pSock)     /* クライアントのリクエストを処理するスレッド   */
    {
        Socket ConnSock = *pSock;       /* 渡されたアドレスからソケットをコピーし終えたら */
        free(pSock);                    /* もうそのアドレスは不要である */
            :
            :
    }

    DWORD AcceptThread(SOCKET *pSock)   /* クライアントからの接続を受け付けるスレッド   */
    {
        SOCKET  *pConnSock;
        DWORD   thid;
    
        while (1) {
            pConnSock = malloc(sizeof(SOCKET)); /* 接続のたびに新しいアドレスを確保 */
            if (TcpAccept(pConnSock, *pSock, 0) != TCP4U_SUCCESS) {
                free(pConnSock);
                break;
            }
            CreateThread(NULL, 0, (LPTHREAD_START_ROUTINE)ConnThread, pConnSock, 0, &thid);
        }
        return 0;
    }
    

コード2-(2)

    DWORD ConnThread(Socket *pSock)     /* クライアントのリクエストを処理するスレッド   */
    {
        Socket ConnSock = *pSock;       /* 渡されたアドレスからソケットをコピーし終えたら */
        ReleaseSemaphore(hSemConn, 1, NULL);    /* セマフォを解放する   */
            :
            :
    }

    DWORD AcceptThread(SOCKET *pSock)   /* クライアントからの接続を受け付けるスレッド   */
    {
        SOCKET  ConnSock;
        DWORD   thid;

        while (1) {
            WaitForSingleObject(hSemConn, INFINITE);    /* 最初にここでセットしたセマフォ */
                                                        /* が ConnThread で解放されるまで */
                                                        /* 次の TcpAccept に進めない    */
            if (TcpAccept(&ConnSock, *pSock, 0) != TCP4U_SUCCESS) {
                ReleaseSemaphore(hSemConn, 1, NULL);
                break;
            }
            CreateThread(NULL, 0, (LPTHREAD_START_ROUTINE)ConnThread, &ConnSock, 0, &thid);
        }
        return 0;
    }
    

　第三の方法をコードで示すとこうである。

コード3

    DWORD ConnThread(Socket *pSock)     /* もはやスレッドではないが便宜上同じ名前 ConnThread を使う */
    {
        Socket ConnSock = *pSock;
            :
            :
    }

    DWORD AcceptThread(Socket *pSock)   /* クライアントからの接続を受け付けるスレッド   */
    {
        SOCKET ConnSock;
        DWORD  thid;

        if (TcpAccept(&ConnSock, *pSock, 0) == TCP4U_SUCCESS) {
            /* 新たに生成するスレッドは ConnThread ではなく、AcceptThread 自身である */
            CreateThread(NULL, 0, (LPTHREAD_START_ROUTINE)AcceptThread, pSock, 0, &thid);

            /* ConnThread はもはや独立したスレッドではなく、単にサブルーチンとして呼び出される */
            ConnThread(&ConnSock);
        }
        return 0;
    }
    

　このようになる。ソケットを格納する ConnSock はスレッドが生成されるたびに新たに用意されるし、 スレッドが消滅すれば自動的に消えるから、malloc したり free したりする必要がない。 実に上手い方法である(もちろん私が考えたわけではない)。

　なぜこれが本当の大恥かというと、私が参考にしたサンプルプログラムは最初からこの方法を使っていたのである。 そしてそれを参考にして作った私のプログラムも、最初はこの方法を使っていた。 だからその時は全く問題がでなかったのである。

　それを、最初に挙げた方法(コード1)に書き換えたとたんに、エラーが出まくったわけで、 本来なら直ぐに原因に気がついてしかるべきだったのだ^*3。 なぜそんな書き換えをしたかというと、

「その方がよさそうに思えた(笑)」

「接続の受付けは逐次的」
「接続の処理は並行に」

「接続を受け付けるスレッドは一つだけ」
「接続を受け付ける度にそれを処理するスレッドが生成される」

　もし生成されるスレッドにパラメータ(この場合はソケット)を渡す方法が値渡しであれば、 この考えは正しかっただろう。むしろ最後に挙げた「上手いやり方」は少々トリッキーな方法とも言える^*4。

　だが、だからこそなおさらなぜサンプルはそういうひねくれた(?)方法を使っているのか考えるべきであった。

(*1) 見る人が見れば問題点はすぐに指摘できるのだろうけど。
(*2) 生の WinSock をプログラムするのは面倒なので、TCP4W というライブラリを使っている。
(*3) 問題点の心当たりが多すぎて (爆汗) 気がつかなかった。
(*4) ソケットを格納するアドレスを malloc する方法(コード2-(1))が一番素直な方法かも
(*5) 今回は「Ｃマガジン」の某連載のようになってしまった

　更新などが滞っています。頂いたメールへの返信も。申し訳ありません。ちょっと今、 全ページのレイアウトなどを見直しています。何しろ、このサイトのページの多くは HTML を覚えながら書いたものなので...^*1

　手始めに全ページの文字コードを JIS に変更し、<meta> タグによる charset 指定を加えました^*2。 あと、<!DOCTYPE...> 宣言などもつけてみました(正しいかどうか自信なし)。それから、'<'、'>'、'&' を表す"&lt;" "&gt;"、"&amp;" のセミコロンをサボってつけていなかった罰^*3がてきめんに当たったので、これも修正しました。

　もう一つ、今までは各サブディレクトリの index.html へのリンクが "..../index.html" になってましたが、 これを "...../" に改めました。

　"..../" にすると、ローカルで見たとき index.html ではなくディレクトリが表示されてしまう^*4のがいやで、 今まで "..../index.html" にしていましたが、 簡易 httpd のおかげ (笑) でこの問題が解決したのをきっかけに改める事にしました。

　当面の修正は以上^*5で、以後より正しく見やすい HTML への修正を進めていきます。 また内容についても適宜修正を進めるつもりです。もちろん更新も。

(*1) あのころはインターネットのしくみ(笑)なんて全然わかってなかった(今も?)
(*2) RFC2068 (HTTP/1.1) には、charset を指定していないドキュメントは ISO-8859-1 とみなされる、等と恐ろしい事が書いてあるので(読み違いでなければ/あれば良いが)...
(*3) もぢら 4.0x はセミコロンがないと表示してくれないのだった。
(*4) これが何故なのかも昔はわからなかったな
(*5) 以上の項目は Perl スクリプトで全自動でやれたから、という話も