俳 句 の 歴 史

10人の俳人とその作品

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第7章
原 石鼎(1889〜1951)
はら せきてい

高浜虚子が主宰した俳句雑誌「ホトトギス」は数多
くの有力作家を輩出した。

その第1の波とも言うべき作家群は、大正初期に集
中して登場した村上鬼城(1865〜1938)、渡邊水
巴(1882〜1946)、前田普羅(1884〜1954)、
飯田蛇笏(1885〜1962)、原石鼎等であり、これ
らの作家は「大正ホトトギス作家」と総称される。

大正ホトトギス作家の作品の特徴は、自然の事物の
描写を通して、永遠なるもの、神秘的なものへの憧れを高らかに表現する
ところにあった。その文体は古風で格調高い。俳句の題材となるのは、山
や谷、海、空など、スケールの大きい景色であり、またそのような大自然
に囲まれた人間の生活であった。

ここでは大正ホトトギスの代表として原石鼎の作品を採り上げる。原は二
十代の後半に、辺境の地東吉野に居住し、厳しい自然を俳句で描写しつつ、
その中に研ぎ澄まされた美を表現してみせることに成功して、俳壇に衝撃
を与えた。


 頂上や殊に野菊の吹かれ居り

 鉞に裂く木ねばしや鵙の声

 爆竹や瀬々を流るる山の影

 雪峰の月は霰を落しけり

 杣が頬に触るる真葛や雲の峰

 山の色釣り上げし鮎に動くかな

 淋しさにまた銅鑼打つや鹿火屋守

 花烏賊の腹ぬくためや女の手

 秋風や模様のちがふ皿二つ

 とんぼうの薄羽ならしし虚空かな


執 筆  四 ッ 谷  龍


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