【第2部】 Vol.6



*** うそばっかりのうささぎのはなし ***



さてさて、お寺で修行するには坊主頭にしなければならないと言われて

困ってしまったうささぎとクロクロ。



クロクロ「やっぱり修行はやめにしよう」

うささぎ「そうだよね」

博士  「やめちゃうのかい? うささぎ、クロクロ、『修行してみよう』

     と思った時から修行は始まっているんだ。

     ちょっとむずかしいことがあるからといって簡単にあきらめたり

     しないで、何とか切り抜ける方法を考えてみたらどうかな?」

クロクロ「そうだね。うささぎ何かイイ手はないかい?」

うささぎ「うーん。

     そうだ。カツラをつけるっていうのはどうだい? 坊主頭の

     カツラをつければ見かけ上は坊主頭になるよ」

クロクロ「それはイイ案だね。カツラならば耳が無くなっちゃう事も

     ないしね」

うささぎ「うん」

クロクロ「でも、そんなウソっぱちの坊主頭で修行してもいいのかなあ?」

うささぎ「大丈夫だよ。もともとぬいぐるみ自体が動物の形をかたどった

     まがい物なんだ。ニセモノの上にニセモノをのっけても問題

     無いよ」

クロクロ「言えてるね。

     じゃあ早速坊主頭のカツラを作ろう」



そして3日後。

カツラを作って来たうささぎとクロクロ。お互いのカツラを見せ合う事に。

どんなカツラを作ってきたのでしょう? これです。



クロクロ「うささぎの頭、なんか七福神の神様みたいになったね」

うささぎ「それはまた縁起がいいや」

クロクロ「何の縁起がいいんだかわからないけど、まあいいか」

うささぎ「ときにクロクロのその山芋みたいなカツラは何だい?」

クロクロ「これかい? これは流体力学を考えて作った

     『空気抵抗の小さいカツラ』さ」

うささぎ「空気抵抗の小さいカツラ?」

クロクロ「そう。うささぎのカツラと比べてみるとよくわかると思うんだ。

     まず、クロクロのカツラは風にあたる面積が小さいし、真ん中の

     切れ目から風が吹き抜けるだろ。要するに、歩く時は風を切って

     歩けるってことさ」

うささぎ「おお、すごいね」

クロクロ「うん。世界広しといえど、空気抵抗の小さい坊主頭をしているの

     はクロクロぐらいなもんだろう」

うささぎ「かもね。さすがはミミズク博士の助手だね」

クロクロ「だろ」

うささぎ「じゃあ明日からの修行、がんばろう」



さあさあ修行の当日になりました。

朝早くからお寺に坊主頭のカツラをつけてやって来たのはうささぎとクロクロ。



うささぎ「おっ、サラリーマンの人たちも来ているね。10人くらいいるよ」

クロクロ「うささぎ、あの人たちも修行に来たんだよね」

うささぎ「そうだと思うよ」

クロクロ「でも、あの人たち別に坊主頭じゃないよ」

うささぎ「修行が始まる直前に剃るんじゃないかな。きっと坊主にするヒマが

     なかったんだよ」

クロクロ「そうだね」

うささぎ「あっ、ご住職が来た来た」



住職  「みなさん、おはようございます。

     えー、今日から一週間みなさんは当山で修行をしていただくわけ

     ですが、どうでしょう、みなさん覚悟はよろしいですかな?

     大丈夫ですよね。

     今回参加されているのは、ここにお集まりの10名の方と、こちらの

    『近所のぬいぐるみ』2体です。

     そして、みなさんのお手伝いをさせていただくのが、私の隣にいる

     正覚(しょうがく)法師。では法師、あとは頼みましたよ」

正覚法師「正覚です。私がみなさんの案内役を勤めさせていただきます。

     その前に、そこのぬいぐるみちゃんたち、お寺の中では帽子を

     とってくれ」

うささぎ「帽子? うささぎたちは別に帽子なんかかぶっていませんが」

正覚法師「じゃあ、その頭にかぶっているものは何ですか?」

うささぎ「何もかぶっていません。ここの部分は坊主頭です」

正覚法師「坊主頭?」

クロクロ「お寺での修行に合わせて、ちゃんと坊主頭にしてきたんだ」

正覚法師「わざわざ坊主頭にする必要はありません。体験修行コースですから。

     さあ、かぶり物を取って取って」

うささぎ「はーい」

クロクロ「坊主頭とっちゃうのかい?

     せっかく3日間徹夜して作った坊主頭だったのにな。

     役に立たないなんて残念」

うささぎ「うささぎたちの努力はいつも実らないね」

クロクロ「そういう宿命なんだ。きっと」

うささぎ「ちがうよ。ただ単に努力の方向が間違っているんだ。いつも」

クロクロ「そうだね。

     しかし、よく考えてみると、『わざわざ坊主頭にする必要はない』

     って、始めにわかったようなもんだけどね」

うささぎ「うん。サラリーマンの人とかが一週間の修行のために、わざわざ

     坊主頭になんかしないもんね」

クロクロ「となると、やっぱり、、」

うささぎ「やっぱり、、、

クロクロ「ミミズク博士にはめられたんだ。 

     くそー、博士ったら。この借りは返させてもらうぞ」



正覚法師「そこの方、静かにしてもらえますか。

     では体験修行コースを始めます」


                          つづく

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