楽しい植物画 FAQ

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【 余談 】 第2回小品展「車内の人々-2」‥‥ケーブルTVが取材に来ました


 植物画展の会場の「けやきコミュニテイセンター」に頼まれて、私の個展を4月5日から12日まで行いました。電車のなかでスケッチしてきた葉書大のペン画にパステルで少し色をつけたものを35点並べました。前の年に仕上げながら展示の機会のなかった作品を、そのまま展示するつもりでしたが、取り出してみるとやはり修正や追加が必要なことが分かりました。時をおくことで見方がかわるのでしょうか。会場でお会いできない方のために簡単なパンフレット(無料)とアンケート用紙を置きました。
 広告を武蔵野市報の伝言板という欄に載せてもらい、それを見て来られた方も10人ほど。電車の中の人々を描いたということで興味を持たれた方が多いようでした。
 また、武蔵野三鷹ケーブルテレビからも取材申し入れがあり、6日の夕方、 2人で 1.5時間かけて撮影していきました。電車の中で描くようになったいきさつの説明や、 作品3点の紹介を含め、5分ほどに編集するとのことでした。 それが「遊YOU情報局」という番組の一部として、 2〜3時間置きに1週間続けて放映されましたが、 ケーブルTVは1万余軒が契約しているとはいえ、実際に見ている人は少ないらしく、 これを見て展覧会に来た方は一人だけでした。ただその番組を収録したテープが郵送されてきたので、 私にはいい記念になりました。





【 余談 】 父の水彩画
 父の水彩画が一枚、我が家の玄関にかけてあります。札幌の発寒川の風景で炎天下に砂利採取作業をする人々が描かれています。暮れの大掃除のとき、絵の入れ方がおかしいのと父が描いたにしては何となく変な絵だと思って裏蓋を開けてみました。すると驚いたことに出てきたのは大きな絵で、近景には色鮮やかな花、背景には高々と青い夏空‥‥いままでは折りたたまれて一部だけを見せられていたわけです。絵の感じがまるで変わって明快で、勢いのある画風、これでこそ父の絵だと、思わず感嘆の声をあげました。
 すぐに大きな額に入れなおして玄関に飾ったのはもちろんですが、それにしてもなぜこんな入れ方をしていたのでしょう。額の裏蓋に「48年9月30日退職記念、同窓生有志より」と書かれていて、贈られた額だとわかります。父は若い頃によく「(北海)道展」に入選し、ときには受賞もしましたが、それらの絵は、色彩も筆致も明快で勢いのあるものでした。今思うと私は絵を判断するときに無意識のうちに父の絵を基準にしてきました。小学校の教師だった父は戦争中の栄養失調と過労で肺結核にかかり大手術して、体力が衰えた晩年には色紙程度しか描きませんでした。適当な絵がなく、この絵を折りたたんで入れたのなら父の無念が思いやられます。あるいはもし意図的に地味な色彩の砂利採り作業の部分だけを見せたのなら、そこに老境の思いが込められているのかもしれません。生きているうちに私が絵を始めていればそこのところを聞けたのにと思うと残念です。
 この絵の砂利採り姿を見ていると、父も近くの川や道路で石を運んで整える作業をよくやっていたことを思い出します。ほとんど趣味といってもいいほどでした。
 この絵は札幌の実家の玄関にかけられていた23年前から見てきたのに、今になって変だと開けてみたのも不思議ですが、この日は、実は初めて絵を買うことになって、 故・金野新一画伯のお宅にうかがい、作品を持ち帰った日だったのも奇縁でした。





【 余談 】  植物画の絵葉書を作りました
 この6年、年賀状は植物のペン画を謄写版式ではがきにプリントし、水彩をつけています。200枚以上手塗りするのでだいぶ慣れました。でもこのやり方は多品種・少量の絵はがきを作るには不経済です。色々試した結果、パソコンでプリントする方法がよいようです。線画をスキャナーでパソコンに取込み、レーザープリンターではがきにプリントします。このパソコンプリント・手塗り絵はがきを2月の「お昼休みのアーティスト展」に並べたところご希望が多く、アンケートにお答えいただいたお礼として差し上げました。その後、何人かからご注文をいただきながら、売るのはどうも‥‥と値段を付けられずにいましたら、あまりに高額の「お礼」をいただくこと になったので、30枚まとまったご注文をいただいた際に4枚1000円と決めました。現在はがきにプリントしたのは、イヌタデなど野草15種、ソメイヨシノなど樹の花17種、マユミなど木の実5種ですが、少しずつ増やしていくつもりです。( サンプルはインターネットの私のページ http://www.big.or.jp/~wakamatu/bot_painting/p-cards/p-cards.html を御覧下さい  現在88種)






【 余談 】 ロスアンゼルスで感じたこと
 夏休みに初めてアメリカに行ってきました。かねてから招かれていたロサンゼルス在住の従兄弟の家に、妻と車椅子持参で訪れ、1週間滞在です。
 まず、「アメリカは何でも大きい」ですね。飲食で何を買っても量は2倍近く、またそれを残らず平らげている人々‥‥、当然ながら凄く太っています。道幅も家も広いです。
 あと、感心したのは、「障害者が徹底して優先されている」ことでした。車椅子だと、空港はもちろんテーマパークの長蛇の列にも並ばずに、優先して受付けてくれました。ステージを見る場所でも、前の方に床を青く塗り分けて大きく車椅子マークが描かれた席が一列分確保されていて、障害者が着席します。健常者はそこには座りません。幼い子供が座ろうとしたら父親がそのマークを指して言い聞かせ、別の席に移らせていました。混雑の中でも車椅子にすすんで道を空けてくれたのはアメリカ在住らしい人たちで、アジア人とか中近東からの旅行者らしい人たちはほとんどだめでした。従兄弟の娘は小学校の教師なので聞いてみると、小さいときからそう教えるそうです。考えてみればどこでもだれでもが教えることはできます、徹底しようと思えばあのようにできるわけですから、こちらも早くそういう社会になってほしいと思いました。
 それからロサンゼルスは冬以外に雨が降らないそうで砂漠のような気候でした。とても高温ですが、乾燥しているから日陰に入ると暑苦しいことはありません。そんなわけで生えている植物はすべて人々が水を撒いて育てたものです。キョウチクトウとかタイサンボク以外にはあまり見覚えのある樹はなく、異国を感じました。少し街外れになるとむき出しの土が目立ちます。そして日本に帰ってきたら、飛行機が着陸姿勢にはいったとき眼下に緑豊かな景色と青々した水田が広がり、隣の席の金髪娘が歓声をあげました。私も緑多い日本のありがたさを感じました。しかしその数十分後‥‥空港ビルの冷房を出たところでサウナのような蒸し暑さに襲われ、「ああ豊かな緑はこの湿度と抱き合わせなんだ」と実感した次第です。






【 余談 】 若い女性はなぜ、ザクロの絵が欲しい?  
 98年8月のある日、見知らぬ若い女性からこんなメールが届きました。  「ホームページを拝見し、初めてメールします。ザクロの絵を、書店の絵画集やインターネットで探したのですが、良い絵が見つかりません。こちらのホームページのようなタッチのザクロの絵があったら、譲って頂きたいと思います。絵葉書購入のメ ニューがありましたので、ザクロの絵の絵葉書がありましたら、是非とも購入したいです」 昔の鉛筆スケッチをインターネット上で見てもらい、6回のメールのやりとりをし ながら、絵葉書に仕上げて郵送しました。ところでなぜ彼女がザクロにこだわるのか不思議に思いませんか?こんな返事をもらいました。
 「実は友人にプレゼントしたかったからです。『風水』ってご存知ですか?おまじないのようなものなんですけど。で、ザクロの絵というのは、女性にとって良い絵なんです。幸せになれるとか、子宝に恵まれるとか、そういった意味で。私の友人は、最近子供を亡くして落ち込んでいて、ザクロの絵を壁にかけると良いと聞いて、かな り探して見つからず、輪をかけて落ち込んでいました。私も探し、なかったので若松さんにお願いしたという次第でした。いまザクロの絵は、友人宅の壁に飾ってあると思います。とても喜んでいました」3日後にまた別の女性からザクロの絵が欲しいというメールが来ました。
 「はじめておたよりします。ホームページのおばあちやん画伯たちの絵を拝見しました。私の祖母も96歳で他界しましたが、92歳から我流で絵を始め、よく庭の花等をかいていたので懐かしくなりました。皆様とてもお上手ですね。
 ところで、ざくろの絵と桃の絵をお譲りいただけますか?多額にはお支払いできないのですが‥‥理由あって飾りたく、植物画を検索したところ若松様のホームページに出会いました。」桃の絵はまだ描いたことがなかったので、買ってパステルで描き、額装、宅急便で送りました。「絵は火暖日に入手、夜遅く主人と飾りました。主人も1歳7ケ月の子供も大喜びです。子供は桃をまるのままをみせてあげたことがないので、自分がよく知っているアップルだと思って、「アップル、アップル」と大騒きです。今、主人と『もも』を教えています」なお、こちらの女性の理由は「風水」ではないそうです。






【 余談 】 微笑む絵
 植物画と直接の関係はありませんが、少しおつきあい下さい。
 名画に笑顔が少ないのはなぜでしょう?
 笑いは一瞬の表情なので描くのが難しい からでしょうか?
 いや本当に難しいものですね。まず、私の失敗談をひとつ。
 笑顔がとても魅力的なある若い女性に似顔を描かせてもらったことがありました。彼女のその魅力を引き出そうと、描いている間も話しかけ、彼女におおいに笑ってもらうようにしながら、口を開けて笑っている表情をスケッチしました。ところが、私の絵ときたら彼女の魅力はおろか、笑っている顔にさえもみえてきません。悪戦苦闘のすえ時間切れで本人に見せたときの彼女の沈黙。若いのに思慮深く忍耐強い女性だったので、私が冷や汗を一升かいただけで、事件にはならずにすみましたが、‥‥とうぶんの間、再挑戦する気にはなれません。
 これはしろうとの私の話、古今の名画となると多くの天才たちにとってはそんな困難はないはずです。笑顔の名画が少ない原因が描きにくいからだとは思えませんから、別の角度から考えてみましょう。立場を描く側から見る側に変えてみます。私たちは笑顔の絵を見せられたときどんな気持ちになるでしょう?
 大口を開けた笑いの場合、なぜそれほど笑っているのかが見ている人によくわからなければ白けるしかありません。多くの人にすぐにわかってもらえる場面なんてあるでしょうか?頭にくることが多い今の世に、誰もが底抜けに笑えるような、しかも感動を与える場面となると‥‥。なかなか難しそうです。
 ニヤリとばかりの皮肉な笑顔なら共感することもあるでしょうが、それも「感動の名画」にはなりそうもありません。
 あどけない子供の笑顔ならどうでしょう。これはだれでも心和む風景ですからよさそうです。でも深い感銘をあたえるかというと‥‥。
 こう考えてみますと、ダビンチのモナリザの偉大さに想いが至ります。どんな女性なのかを表すリアルな衣装もアクセサリもつけず、こちらにむけた謎の微笑みに、私たちは様々な思いにふけることができ、時を忘れてしまいます。
 「モナリザ」という歌をナットキングコールが歌っていますが、こんな意味の歌詞でしたね。


 ♪ モナリザ、あなたは神秘の微笑みをたたえたレディのよう
 ♪ モナリザ、あなたがそんなに孤独なのは、
  不可解な笑みなどと言われるから?
 ♪ それとも、恋人を誘う微笑み?いや、失恋をかくす微笑み?
 ♪ こうしてさまざまな想像や夢が持ちだされたけれど、
   未だに答えは出ていない
 ♪ あなたは暖かい?、誠実?、モナリザ
 ♪ それとも、ただ芸術が作り上げた冷たく孤独な、
   それでいて愛らしい作品というだけ?


 ダビンチのモナリザの成功の秘密の一つは時代を超越し、多様に解釈できる微笑みを描いたことではないかと思います。
 これに対して庶民の側から応える笑顔を描いたといわれるのが、オランダはハールレムのフランツ・ハルスです。オランダがスペインの「圧政」をはねのけたばかりで、 その中心勢力となったブルジョアたちが進歩的役割をはたしていた時代、ハルスは豊かさを楽しむ庶民の笑顔を描きました。それまでにない軽快で達者なタッチ、色使い が見事だと後年ゴッホが賞賛し、ハルスが世界的に知られるようになったそうです。私もハルスの生きいきした笑顔のとりこになり、ルーブル美術館でも、何度もハルス の絵に戻って見たほどでした。
 それから数年を経たいま、少し冷静になってハルツの笑顔の絵とモナリザをくらべてみますと‥‥。ハルツの絵はやはりその時代のオランダの市民たちだけが深く共感 できた絵であって、今の人々がその笑顔にそれほどの共感をもって見ることは少ないだろうと気付きました。もちろんあのいきいきと笑う描写に感心させられることには 変わりありませんが。一方、モナリザのほうは、かすかに微笑んでいる程度なのでその表情に何を感じるかはいろいろの可能性が残されています。また衣装も背景もどの時代と限定されませんし、見る人が自分に引き寄せた感じ方をできるような表現になっていますから‥ ‥。(1999年1月号に掲載)


 さて、このシリーズも25回、ブーイングが出ないうちに終わりたい(エッ最初から出ているですって?!)。余談の方が面白いとのお声に甘えた脱線や素人の勝手な話の連続に、埋め草記事とはいえ、長らくおつきあい下さった読者のみなさんに、また毎回草稿の段階で懇切なご忠告をいただいた浦崎黎明氏に心から感謝いたします。 )



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