1996年7月16日

********* うそばっかりのうささぎの話 御殿場へ ****

ついに電車に乗ったうささぎたち



うささぎ「バスの時みたいに、やっぱり座るところがないね。」

クロクロ「いすは人で一杯だし。」

うささぎ「いすに座ったとしても、うささぎたち目立たないから、

     きっと、おっちょこちょいのオバサンが”あっ空いている”

     と思って、うささぎの上に座っちゃうよね。」

クロクロ「オバサンのおしりにつぶされるのはイヤだ。」

うささぎ「床にいると蹴られるしね。」

クロクロ「いいや。網棚の上に座ろう。」

うささぎ「そうだね。

     よいしょ、っと。

     登頂成功。」

クロクロ「わーい」

うささぎ「電車に揺られていると、なんか気持ちイイね。」

クロクロ「なんか、眠くなってきた。」

うささぎ「一休みしよう。」

クロクロ「グーグーグー」

うささぎ「クロクロはもう寝ちゃった。うささぎも寝よう。

     スースースー」

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電車の網棚で寝てしまったうささぎたち。

電車はうささぎたちを乗せたまま往復し、役目を終え車庫に入ってしまった。



さあ、忘れ物の点検をする車掌さんがやってきた。

車掌「あらら、だれか網棚にぬいぐるみを忘れちゃって。2つも。」

うささぎ「グーグーグー」

クロクロ「スヤスヤスヤ」

車掌「さあ、ぬいぐるみちゃんたち。

   きみたちは”忘れ物預かり所”で持ち主を待つんだよ。

   さあ、車掌さんと行こう。

   と言っても、ぬいぐるみがオレの言っている事、わかるわけないよなあ。」

うささぎ「グーグーグー」

クロクロ「スヤスヤスヤ」



そんなわけでうささぎたちは”忘れ物預かり所”に収容されてしまった。

つづく



クロクロ「スヤスヤスヤ」



212 [96/07/19 00:34] PFG00435 うささぎ

****  うそばっかりのうささぎの話 御殿場へ ********



忘れ物預かり所へ収容されてしまったうささぎたち。

やっと目をさましたところ。



うささぎ「ムニャムニャ。クロクロ、もう乗り換えの駅かなあ?」

クロクロ「ふにゃ、よくわからない。」

うささぎ「あれ、まわりが暗いよ。電車は停電になったのかな?」

クロクロ「ほんとだ。暗い。

     それよりもうささぎ、たしかふたりで網棚に乗っていたはずなのに

     なんか全然違うところにいるよ。」

うささぎ「ほんとだ。電車の中じゃないみたい。」

クロクロ「ここはどこだろう?」

うささぎ「となりのカバンさんに尋ねてみよう。

     カバンさん、ここはどこですか?」

カバン「忘れ物の保管場所だよ。

    持ち主に忘れられたものが、置いておかれる場所さ。」

うささぎ「ありがとうカバンさん。

     自己紹介するね。

     こっちがうささぎ。こっちがクロクロだよ。

     クロクロ、ここ忘れ物保管場所だって。」

クロクロ「寝ている間に忘れ物と間違えられて、ここに入れられちゃったんだ。」

うささぎ「ひょえ。」

クロクロ「困ったね。」

カバン「ぬいぐるみちゃんたち、安心しな。

    きっと持ち主が迎えに来てくれるよ。」

うささぎ「そうかなあ。

     カバンさんの持ち主ももうすぐ来るの?」

カバン「オレか? オレの持ち主はあてにならない。

    忘れられて、もう3日目になるけど、まだ迎えに来てくれないんだ。」

うささぎ「ありゃ。」

カバン「オレの持ち主って、酔っ払いのオヤジさ。

    3日前も酔っ払って電車にカバン、まあオレのことだけど、

    カバンを忘れちゃったんだ。

    きっと、どこにカバンを忘れたかも覚えていないんだ。」

うささぎ「ひどいね。」

カバン「それにオヤジは物の扱いが乱暴。

    家に着けばカバンをそのへんにドンって置くし、

    この間酔っ払った時なんか、”気持ち悪いな、カバンにゲロ吐いちゃおう”

    ってオレの中にゲロはいちゃったんだ。」

うささぎ「うわー」

カバン「正直言って、忘れられて、オヤジからさよならできると思うと

    せいせいする。」

うささぎ「そうだよ、そんなオヤジのところになんか居ることないよ。

     もっとイイ人を見つけて、その人の持ち物になれば?」

カバン「でも、酔っ払いオヤジとはいつも一緒に旅してきたし、

    さよならしてしまうのも、ちょっと悲しい。」

うささぎ「じゃあ、まず酔っ払いオヤジのところへ戻って、

     また一緒に旅をする。」

カバン「うん」

うささぎ「そしてやっぱりイヤだったら、新しい持ち主を探したらどう?」

カバン「新しい持ち主?」

うささぎ「そうだよ。カバンさんが持ち主を自分で決めるんだ。

     いつまでも無理して誰かの持ち物である必要はないよ。」

カバン「自分でだれと一緒にいるか決めるのかあ。

    よし、そうしよう。」

うささぎ「そうだ」

カバン「持ち主を自分で選べるんだ。」

うささぎ「そうだ」

カバン「でもそんなことできるかなあ?」

うささぎ「できるよ。さっそく酔っ払いオヤジのところに帰ったほうがいいよ。

     いってらっしゃい。」

カバン「ちょっと待ってくれ。

    オレは君達のように動くことができない。」

うささぎ「そう?」

カバン「オヤジが引き取りに来てくれるのを待たなきゃ。」

うささぎ「大丈夫、もうカバンさん動けるよ。

     だれでも”もう自分はだれかの持ち物じゃない”

     と思ったときから、自分自身で歩けるようになるんだ。」

カバン「えっ?」

うささぎ「自分は自由だって思ったときから歩けるようになるんだ。

     歩いてみて!」

カバン「ほんとだ、歩ける。

    よし、酔っ払いオヤジを訪ねよう!」

うささぎ「やったあ!」

つづく


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