1996年8月14日

***** うそばっかりのうささぎの話 御殿場へ ****

クロクロ「お兄さん、なに驚いているの?」

タケシ「わー、ぬいぐるみがしゃべった!

    ケイコ、たいへんだ。ぬいぐるみがしゃべった!」

ケイコ「タケシ、落ち着いて!」

タケシ「ドッキリカメラじゃないだろうな。」

ケイコ「タケシ、なに言っているの? 

    ぬいぐるみだったらしゃべるに決まっているじゃないの。」

タケシ「えっ?」

ケイコ「うちのカバディ、カバディは妹のぬいぐるみだけど、

    カバディもしゃべるわよ。」

タケシ「そんなバカな。」

ケイコ「バカじゃないわよ。

    現にそこにいるぬいぐるみだってしゃべっているでしょう。」

タケシ「ウーン。



    オレはあんまりぬいぐるみとは縁がなかったからなあ。

    ぬいぐるみがしゃべるって知らなかった。」

ケイコ「あっそう。

    ところでぬいぐるみは何をしているの?」

タケシ「きいてみるよ。

    うさぎくん、何してんの?」

うささぎ「雨宿りしてるんだ。」

タケシ 「家は近く?」

クロクロ「いや、東京だよ。クロクロたちは静岡の御殿場にいる友達のところへ

     遊びに行く途中なんだ。

     いま話しているのがクロクロ、となりのがうささぎ。よろしく。」

タケシ 「きみたちがいると電話で話しがしずらいなあ。」

うささぎ「電話ボックスから出ていけって言うの?

     外は雨が降っているよ。

     雨に濡れるのはイヤだ。」

タケシ 「じゃあ傘貸してあげるから。」

うささぎ「そんなに言うんならいいよ。

     じゃあ傘さして外で待っているから。」

ケイコ 「もしもし、タケシ、なにブツブツ言っているの?」

タケシ 「いまからぬいぐるみに出ていってもらうところ。

     傘貸してあげて。

     オレって親切。」



ケイコ 「雨の中、ぬいぐるみを外に出しちゃかわいそうでしょ。」

タケシ 「そっ、そうかあ。」

ケイコ 「冷たい人。」

タケシ 「おい、うささぎ、クロクロ、出ていかなくてイイよ。」

うささぎ&クロクロ「わーい。」

タケシ 「そんなに電話器の上で跳びはねて喜ばなくてもいいだろ。」

クロクロ「はーい」

うささぎ「はー(ガチャッ)  あっ、しまった。」

タケシ 「あー、電話切っちゃいやんの。

     なんで、受話器フックの上に着地するんだ。」

うささぎ「ごめんなさい。」

つづく




***** うそばっかりのうささぎの話 御殿場へ ****

タケシ「もう一度電話しなきゃ。」

       ピポパポ

タケシ「もしもし、タケシですけど、ケイコさんお願いします。」

電話の声「あー、ケイコはお風呂はいちゃったねえ。」

タケシ「そうですか、それでは失礼します。」

       ガチャン

タケシ「じゃあ、家に帰るか。」

うささぎ「もう帰っちゃうの?

     せっかく来たんだから遊ぼ!」



タケシ「ぬいぐるみなんかと遊んでられるか。」

うささぎ「えっー!

     なぜ?」

タケシ「だいたい何して遊ぶっていうんだ?」

うささぎ「壊れて止まった目覚まし時計のマネ!」

クロクロ「今雨が降っているけど、次に雨粒が落ちてくる点を当てる遊び。

     ”次はココに雨が落ちるぞ”って。」

タケシ「なにそれ? ちっとも面白くなさそう。

    カラオケとかテレビゲームとかだったら面白そうだけど。」

うささぎ「そうかあ、つまんなそうかあ。がっかり。

     うささぎたちは面白いと思うんだけど。

     遊びは知っているものじゃなくて、作るものさ。」

タケシ「人間はカラオケや酒飲みが楽しいって決まっているんだ。

    とにかくオレは帰るからね。

    さよなら。」

うささぎ「えっー、帰っちゃうの。さよなら。」

クロクロ「さよなら。」

うささぎ「お兄さん、行っちゃったね。」

クロクロ「うん、でもすぐ戻ってくると思うよ。

     そこにサイフ忘れていったから。」

うささぎ「わー、大変だ。警察に届けよう。」

つづく


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