1996年11月

****** うそばっかりのうささぎの話 ******

うささぎ「クロクロ、お巡りさん、うささぎ達を逮捕するって。」

クロクロ「じゃあ、クロクロに手錠はめてみ! はめられるんなら。」

警官  「よし、手錠をはめてやる。」

うささぎ「うささぎの手は細いから、手錠かからないよ。」

クロクロ「残念ながら、クロクロたちには手錠はかかりません。

     どうだ。」

警官  「なら、首にかける。」

       ガチャ ガチャ

うささぎ「ゲー、ゲー、うささぎの首は手錠がかかるほど細くないよ。」

警官  「首にははまらないな。」

クロクロ「手錠をはめられない、ってことは逮捕できない、ってことさ。」

警官  「まだ方法はある。

     手錠のなかった昔はどうやって犯人を捕まえたか知っているか?」

うささぎ「知っている。

     縄で結わいたんだ。」

警官  「そのとおり。

     それでは、きさまに”お縄ちょうだい”だ。」

うささぎ「ひえっ」

警官  「人質篭城事件の犯人として逮捕したぞ。

     どうだ。」

うささぎ「うささぎは人間じゃないから、

     ”犯人”として捕まえることはできないよ。」

クロクロ「そうだそうだ、人じゃないから、”犯人”でもないさ。」

警官  「たしかにそうだ。」

うささぎ「じゃあ、縄をほどいて。」

警官  「わかった。

     おまえたちはたしかに犯人じゃない。

     ぬいぐるみを逮捕した警官ってあんまり聞かないしな。

     でも事件にかかわった物だ。」

うささぎ「うん」

警官  「よって、おまえたちを事件の証拠物件として押収する。」

クロクロ「押収?」

警官  「そうだ。

     おまえたちは薄暗い証拠物件の倉庫に入れられ、一生を

     そこで過ごすんだ。」

うささぎ「”押収”はあんまり面白くなさそう。」

クロクロ「つまらなそうだね。」

タケシ 「たまにはオレが面会に行ってやるよ。」

うささぎ「ありがとうタケシさん。」

クロクロ「来る人みんなに”本町交番のおまわりさんはウソつきだ”

     っていいふらしちゃうもんね。」

警官  「コラッ、何を考えてんだ。

     まあ、おまえたちが今後は心を入れ替えて、悪口をいわなように

     すれば、今回は大目に見て”押収”はしないでおくがな。」

うささぎ「うん、心を入れ替える。

     ”本町交番のおまわりさんはウソつきだ”って言うのは

     できるだけがまんして、言ったとしても一日一回にする。」

警官  「やっぱり証拠物件として押収する。」

クロクロ「一年に一回。」

警官  「さあ、証拠を入れる袋をだして、っと。」

うささぎ「こんりんざい言わないから。」

警官  「まあ、きみたちの将来もあることだし、

     許してやろう。」

クロクロ「わーい」

つづく


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