****** うそばっかりのうささぎの話 御殿場へ ******
父「お母さん、宇宙人さんたちに向かって”ぬいぐるみ”とは失礼じゃないか。」
母「あら、そう?
どうみてもぬいぐるみにしか見えないけど。」
大介「宇宙にはいろいろな形の生物がいるんだ。
ぬいぐるみの形をした宇宙人がいても不思議はない。」
母「ぬいぐるみちゃん、あなたたちほんとうに宇宙人なの?」
うささぎ「おばさん、すみません。
うささぎたちは本当はただのぬいぐるみです。」
大介「お母さん、なんてこと言うんだ。
宇宙人さんたちは気を悪くしてしまったじゃないか。
宇宙人のことを信用する人にだけ、宇宙人さんは正体を
明かしてくれる。
お母さんのように信用しない人に対しては、決して
”自分達が宇宙人だ”って正体を明かさないさ。」
母「なぜ?」
大介「信じない人に”宇宙人だ”って納得させることは不可能だからさ。
無駄な努力はしないだけさ。」
母「そんなことないわよ。」
大介「そんなことある。
たとえば、お母さんのことを”日本人だ”って信用しない人に
どうやって”お母さんが日本人だ”って納得させる?」
母「簡単よ。日本語話すし、日本で生まれたし、旅券(パスポート)持っているわ。」
大介「日本語話したり日本で生まれた外国人はたくさんいるし、
旅券は偽造物かもしれない。
完璧に証明する方法はないさ。」
母「大介は理屈っぽいわねえ。
みんなに嫌われるわよ。
だれもが”お母さんのこと日本人だ”って信用するに決まっているじゃない。」
父「お母さん、宇宙人さんたちはぬいぐるみに変装しているだけなんだ。
いかにも宇宙人らしい恰好をしていると、警察か軍隊に捕まって
研究材料にされてしまうかもしれない。
だから変装している。
ぬいぐるみに見えるけど実は宇宙人というわけだ。」
うささぎ「うささぎたちはぬいぐるみのように見えるけど、
本当は宇宙人だったのかなあ? クロクロ。」
クロクロ「そんなことはない。どうみてもただのぬいぐるみさ。」
うささぎ「やっぱりそうかあ。」
つづく
******* うそばっかりのうささぎの話 御殿場へ *******
母「ぬいぐるみに変装しているのかねえ。」
父「そうだ。このさもしい世の中、宇宙人だってわかるとテレビのワイドショーが
よってたかって食い物にしてしまうからな。
テレビに限らず利用しようとするやつも出てくるだろう。」
大介「あっ、それってお父さんだ。」
父「なにー!」
大介「宇宙人のことを本に書いて金儲けをしようとしたじゃないか。
会社からリストラされそうだからって。」
父「うるさい! 大介だって、宇宙人と知り合いってことを利用して
女にモテようとしたじゃないか。
ひとのこと言えるか!」
大介「お父さんがもっとハンサムに生んでくれなら、宇宙人と知り合いじゃ
なくたってモテたんだ。」
父「なにをー! だれのおかげでメシが食えると思っているんだ!」
大介「くそー。」
うささぎ「クロクロ、なんかヤバい雰囲気になってきたね。」
クロクロ「やっぱりウソついたのがマズかったかな。」
うささぎ「とりあえず退散しますか?」
クロクロ「その時期のようで。」
うささぎ「では、ご先祖ピーターラビット以来代々伝わる必殺技を出しましょう。」
クロクロ「その件に関し反対意見ありません。」
うささぎ「準備はイイですか。」
クロクロ「はい。」
うささぎ「では。」
うさ&クロ「せーの。
逃げろー!」
(必殺技とはただ単に逃げることだった。)
クロクロ「うささぎ、荷物忘れるなー。」
うささぎ「おおっ」
大介「あれ、宇宙人さんたち、どこへ行くの?」
うささぎ「急用を思い出しまして。」
大介「宇宙人さん、待って!
テレビの人が来るから。」
クロクロ「時間がないので、さよなら。」
父「待てー、宇宙人!」
うささぎ「宇宙人じゃないから待たないよー。」
母「お父さん、大介、ぬいぐるみたちは正体がバレて逃げて行くんだから、
ほっておきなさい。」
父「なに言っているんだ。
テレビ局の人が来るぞ。」
大介「テレビ局の人に、何て言えばイイんだ。」
母「にせものの宇宙人を紹介するほうが、もっと恥ずかしいわ。」
父「うーん」
大介「でもウソつきは許さない。まてー。」
うささぎ「うわっ、入ってきた窓がまだ開いているはず。
そこから逃げよう。」
クロクロ「よしきた。ひょい。」
大介「ちくしょー、外に逃げられたか。」
つづく