1996年8月5日


****** うそばっかりのうささぎの話 御殿場へ ******



父「お母さん、宇宙人さんたちに向かって”ぬいぐるみ”とは失礼じゃないか。」

母「あら、そう?

  どうみてもぬいぐるみにしか見えないけど。」

大介「宇宙にはいろいろな形の生物がいるんだ。

   ぬいぐるみの形をした宇宙人がいても不思議はない。」

母「ぬいぐるみちゃん、あなたたちほんとうに宇宙人なの?」

うささぎ「おばさん、すみません。

     うささぎたちは本当はただのぬいぐるみです。」

大介「お母さん、なんてこと言うんだ。

   宇宙人さんたちは気を悪くしてしまったじゃないか。



   宇宙人のことを信用する人にだけ、宇宙人さんは正体を

   明かしてくれる。

   お母さんのように信用しない人に対しては、決して

   ”自分達が宇宙人だ”って正体を明かさないさ。」

母「なぜ?」

大介「信じない人に”宇宙人だ”って納得させることは不可能だからさ。

   無駄な努力はしないだけさ。」

母「そんなことないわよ。」

大介「そんなことある。

   たとえば、お母さんのことを”日本人だ”って信用しない人に

   どうやって”お母さんが日本人だ”って納得させる?」

母「簡単よ。日本語話すし、日本で生まれたし、旅券(パスポート)持っているわ。」

大介「日本語話したり日本で生まれた外国人はたくさんいるし、

   旅券は偽造物かもしれない。

   完璧に証明する方法はないさ。」

母「大介は理屈っぽいわねえ。

  みんなに嫌われるわよ。

  だれもが”お母さんのこと日本人だ”って信用するに決まっているじゃない。」

父「お母さん、宇宙人さんたちはぬいぐるみに変装しているだけなんだ。

  いかにも宇宙人らしい恰好をしていると、警察か軍隊に捕まって

  研究材料にされてしまうかもしれない。

  だから変装している。



  ぬいぐるみに見えるけど実は宇宙人というわけだ。」

うささぎ「うささぎたちはぬいぐるみのように見えるけど、

     本当は宇宙人だったのかなあ? クロクロ。」

クロクロ「そんなことはない。どうみてもただのぬいぐるみさ。」

うささぎ「やっぱりそうかあ。」

つづく



******* うそばっかりのうささぎの話 御殿場へ *******



母「ぬいぐるみに変装しているのかねえ。」

父「そうだ。このさもしい世の中、宇宙人だってわかるとテレビのワイドショーが

  よってたかって食い物にしてしまうからな。

  テレビに限らず利用しようとするやつも出てくるだろう。」

大介「あっ、それってお父さんだ。」

父「なにー!」

大介「宇宙人のことを本に書いて金儲けをしようとしたじゃないか。

   会社からリストラされそうだからって。」

父「うるさい! 大介だって、宇宙人と知り合いってことを利用して

  女にモテようとしたじゃないか。

  ひとのこと言えるか!」

大介「お父さんがもっとハンサムに生んでくれなら、宇宙人と知り合いじゃ

   なくたってモテたんだ。」

父「なにをー! だれのおかげでメシが食えると思っているんだ!」



大介「くそー。」

うささぎ「クロクロ、なんかヤバい雰囲気になってきたね。」

クロクロ「やっぱりウソついたのがマズかったかな。」

うささぎ「とりあえず退散しますか?」

クロクロ「その時期のようで。」

うささぎ「では、ご先祖ピーターラビット以来代々伝わる必殺技を出しましょう。」

クロクロ「その件に関し反対意見ありません。」

うささぎ「準備はイイですか。」

クロクロ「はい。」

うささぎ「では。」

うさ&クロ「せーの。

      逃げろー!」

             (必殺技とはただ単に逃げることだった。)

クロクロ「うささぎ、荷物忘れるなー。」

うささぎ「おおっ」

大介「あれ、宇宙人さんたち、どこへ行くの?」

うささぎ「急用を思い出しまして。」

大介「宇宙人さん、待って!

   テレビの人が来るから。」

クロクロ「時間がないので、さよなら。」

父「待てー、宇宙人!」

うささぎ「宇宙人じゃないから待たないよー。」



母「お父さん、大介、ぬいぐるみたちは正体がバレて逃げて行くんだから、

  ほっておきなさい。」

父「なに言っているんだ。

  テレビ局の人が来るぞ。」

大介「テレビ局の人に、何て言えばイイんだ。」

母「にせものの宇宙人を紹介するほうが、もっと恥ずかしいわ。」

父「うーん」

大介「でもウソつきは許さない。まてー。」

うささぎ「うわっ、入ってきた窓がまだ開いているはず。

     そこから逃げよう。」

クロクロ「よしきた。ひょい。」

大介「ちくしょー、外に逃げられたか。」

つづく


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