1996年7月8日


**** うそばっかりのうささぎの話 御殿場へ ******



結局、田中さんのおばさんに連れられてスーパーまで来てしまった

うささぎたち。

+++++++++++++++++++++++++++

うささぎ「何とか降ろしてもらったからよかったけど、あのままだと

     うさぎ小屋まで連れていかれて”振り出しに戻る”

     になるところだったね。」

クロクロ「いやあ危なかった。」

うささぎ「反対方向だ、って言ったのに、なんで田中さんは

     いじわるするんだろう。」

クロ「この前うささぎが餃子に”ハナをかんだあとのチリ紙”なんかを

   入れるからだよ。(うささぎと遊ぼ2 参照)

   恨みに思っているんだ。きっと」

うさ「そうかなあ。

   まあいいや。さてどうしようか?」

クロ「むこうにバス停があるから、バスに乗ってみよう。」

うさ「そうだね。

   さっそく出発!」



++++++++++ バス停にやってきたうささぎたち ++++++++

クロ「だれもバスを待っていないね。」

うさ「すいていてイイや。

   ちょうどいい具合にバスが来たよ。」

クロ「オーイ、バスに乗せてえ。」

      パアーーン

うさ「あれ、バスは止まらずに通り過ぎて行っちゃった。」

クロ「やっぱりクロクロたちだけで、人間が待っていないと

   止まってくれないのかな?」

うさ「そうかもね。」

クロ「だれか来るのを待とう。」

うさ「あっ、なんか、おじいさんが来たよ。」

クロ「こんにちは。おじいさん、バスに乗るの?」

じいさん「はっ? わしは耳が遠いんじゃ。

     大きい声で話してくれ。」

クロ「じゃあ、思いっきり大きい声で言うね。

   <おじいさん、バスに乗るの?>」

うさ「うわ、でかい声。」

じいさん「いきなりでかい声を出してびっくりするじゃないか。

     わしが耳が遠いからといって、叫ぶことはないじゃろ。

     まったく、年寄だと思ってバカにしよって。」

クロ「別にバカになんかしていないよ。」

じいさん「くちごたえまでしよって。

     最近の若いもんは、年寄を敬うということを知らんのか?」

クロ「人間の世界では、年寄は大切かもしれないけど、

   ぬいぐるみから見れば、人間は人間。

   赤んぼうも年寄も関係ないやい。」

じいさん「なにを!」

クロ「おじいさんは、古いぬいぐるみだからって尊敬するかい?

   郵便ポストが古いからって尊敬するかい?

   おとといの刺身だからって尊敬するかい?」

じいさん「まったく口の減らない奴だ!

     日本はなっとらん。」

うささぎ「あっ、バスが来たよ。」

つづく




***** うそばっかりのうささぎの話 御殿場へ ****



うささぎ「今度はおじいさんがいたからバス止まったね。」

クロクロ「おじいさん、お先にどうぞ。」

じいさん「ふん」

バスの運転手「あっ、お客さん、ウサギをバスにもちこむことはできませんよ。」

じいさん「はっ? 

     わしは耳が遠いもんで、大きな声で言ってもらえんかね?」

運転手「じゃあ、思いっきり大きい声で言いますね。

    <お客さん、ウサギをバスにもちこむことはできませんよ!>」

じいさん「大きな声でびっくりするじゃないか。」

運転手「お客さんが大きい声で言え、って言ったんですよ。」

じいさん「まったく、どいつもこいつも人をバカにして。

     だいたい、わしは戦争中、飛行機乗りだったんじゃ。

     バスの運転手ごときになめられる筋合いはない。

     わしは降りる。

     家に帰るぞ。」

うささぎ「あっ、おじいさん怒って行っちゃった。

     うささぎたちのせいかなあ?」

運転手「おじいさん、ウサギを忘れているよ。」

うささぎ「運転手さん、うささぎたちはおじいさんとは関係ないよ。」

運転手「なんだ君たちは?」

うささぎ「ぬいぐるみのうささぎとクロクロだよ。」

運転手「ほう」

クロ「クロクロたちはバスに乗りたいんだ。」

運転手「はい、じゃあひとり200円をここにいれて。」

うささぎ「えー、お金払うの?

     タダじゃダメ?」

運転手「タダで乗れるのは6歳以下のこどもだけだよ。

    ただし保護者同伴に限るけどね。

    きみたち歳はいくつ?」

クロ「クロクロもうささぎも、もうおとなだよ。」

運転手「じゃあ、やっぱりひとり200円だ。」

うさ「お金持ってない。」

運転手「残念だけど、乗せてあげられないな。」

うさ「じゃあ、降ります。」

運転手「次はちゃんとお金もって来るんだよ。

    さよなら。」

うさ&クロ「さよなら」

うさ「あーあ、ダメだったね。」

クロ「お金払わないで乗る方法を考えないと。」

うさ「だれかの持ち物、ということにしてもらって、

   それでバスに乗せてもらおうよ。」

クロ「それはいい考え!」

うさ「むこうからおじさんが来たよ。」

クロ「どこ?」

うさ「ほら、背広を着たおじさんふたりだ。」

クロ「ほんとだ」

うさ「でも、おじさんだから、ぬいぐるみの相手はしてくれないかな?」

クロ「頼んでみなけりゃわからないさ。」

うさ「そうだね。

   おじさんー!」

つづく


つづきへ  目次へ戻る      表紙へ戻る