1997年

**** うそばっかりのうささぎの話  **********

うささぎ「で、博士、寒いの正体は何?」

みみずく「人間の皮膚には寒さを感じる点があって、

     そこに冷たい空気が触れると寒いと感じるんだけどな。」

うささぎ「うーん、うささぎの期待している答えとはちょっと違う。

     ときに、冷たい空気はなぜ冷たい?」

みみずく「熱い、冷たいは、分子の運動量で決まる。

     熱いのは運動量の多い状態。寒いはその逆だ。」

うささぎ「ふーん。

     でも、うささぎの知りたいのは

     ”寒い、ってどういうことなんだろう?”

     っていうことさ。

     別の例で言えば、

     ”赤い、ってどういうことだろう?”

     ”くさい、ってどういうことだろう?”

     と同じような質問かな。」

みみずく「感覚を言葉で言い表すのむずかしいな。

     残念ながらうささぎの質問には答えられない。」

うささぎ「ちょっとがっかり。」

みみずく「たとえば、ミツバチは紫外線を見ることができる。

     でも人間は紫外線を色として感じることはできない。

     ミツバチがいくら説明しても、人間は紫外線の色を理解できない

     と思うよ。」

うささぎ「そうなんだ。残念だね。」

くまった「うささぎはいろいろなことに疑問を持つね?」

みみずく「そうだな。

     うささぎは”考えるぬいぐるみ”、

     一方、クロクロは”行動するぬいぐるみ”と言えるな。」

くまった「ふーん、

     そういえば、クロクロはまだ来ない。遅いね。」

みみずく「また、何かを思い付いて、何かやり始めているのかもな。」

うささぎ「ひょっとしたら、来る途中で事故にあったのかも。」

くまった「うわー、大変だ。きっと車にひかれたんだ?」

みみずく「おいおい、ずいぶんと物騒だな。」

うささぎ「じょうだん、冗談。」

キキー、ガシャン

くまった「ああっ、車の急ブレーキの音だ。」

みみずく「おもてで事故か?」

うささぎ「たいへんだ。

     クロクロがひかれたのかも。」

くまった「現場へ急行。」

うささぎ「そら急げ。

     デズデモーナ、乗って。」

デズデモーナ「ダー」

みみずく「おいおい、待ってくれ。」

つづく


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