「今週のマレーシア」 2008年1月から4月分のトピックス


・マレーシア経済は2007年は好調でした、2008年もそう期待されている 
新型 Proton Saga は国民車の地位を引き続き保っていけるか
このところ公務員への応募が増えてきた   ・マレーシアのビール、地元産ビール、椰子酒の話題
マレーシアの総選挙 よくある質問とその回答   ・2008年総選挙の結果及びその特徴と分析−増補版
過剰顧客サービスは不要だが基本的顧客サービスの欠如は許せません
個人の確定申告と所得税の説明及び私の意見−税コンサルタントの確定申告ガイド記事を参考にして−



マレーシア経済は2007年は好調でした、2008年もそう期待されている


昨年もマレーシア経済は好調でした。次にそれを示す経済指標を掲げます。
経済指標

2005年2006年2007年上半期 2007年下半期
推定
2007年
推定
2008年
予測
実質国内総生産高
5.0%
5.9%
5.6%
6.5%
6.1%
6.2%
農業・漁業・林業
2.6%
5.2%
0.7%
1.8%
1.2%
4.0%
鉱業・採石業
-1.3%
-0.4%
3.6%
3.7%
3.6%
6.0
製造業
5.3%
7.1%
1.8%
3.5%
2.6%
4.0%
建設業
-1.8%
-0.5%
4.4%
5.6%
5.0%
8.0%
サービス業
6.7%
7.2%
9.5%
9.6%
3.6%
7.7%
民間部門消費
8.7%
7.1%
10.8%
12.5%
11.7%
9.0%
公共部門消費
6.4%
5.0%
8.7%
5.2%
6.6%
5.7%
固定資本形成
5.0%
7.9%
8.2%
12.3%
10.2%
10.6%
物品とサービスの輸出
7.9%
7.4%
2.4%
1.1%
1.7%
2.0%
物品とサービスの輸入
8.9%
8.6%
2.4%
2.1%
2.2%
4.4%


消費者物価

2007年1月から11月までの消費者物価指数は103.5 から2%上昇して 105.6 になりました。消費者物価は数字上ではこの程度の上昇ですが、数字に現れない実質的な物価上昇感はとてもこの程度ではありませんね。
世界の原油高及び穀物価格高を受けて、2008年の物価はもっと上昇することが確実のようです。国内のガソリン関係の値上げも推測されていますので、これは物価上昇の大きな要因です。中央銀行の2008年物価上昇率予測は3%であり、多くの経済アナリストの予測もこの数字に近いとのことです。

消費支出の堅調さ

上記表にあるように、民間部門消費は2007年下半期はかなり好調で、1年半ほど不調であった自動車販売も下半期に回復しました。100万人を超える公務員の給与改定があり、これはプラス要因となりました。
2008年もアナリストは消費の伸びを堅調と見ています。この下段で示している、被雇用者福祉基金の加入者が住居1軒/ユニットを購入するための資金調達としてEPF口座から毎月引き出すことができるようになった、ことを大きな要因に挙げています。アナリストはその引き出し分が、消費者、観光業などに大きな影響を持つと見ています。

Intraasia注:被雇用者福祉基金に収めた納付金は本来は定年後の蓄えなのに、マレーシア経済界と多くの国民はいつもこれを別目的に定年前に引き出すことを望み且つそれを好む傾向が非常に強いです。人生観の違いとしか言いようがありません。


主たる分野で今年実施される、またはすでに1日から実施が始まった項目を抜粋してみます:

教育面

政府管掌の被雇用者福祉基金(一般に EPFと呼ぶ)

直接税分野

観光面

ビジネス

電話分野

建設産業

道路交通面

治安・安全面


2008年の経済成長率は 6% を期待

こういったいろんな項目の実施計画、この1年ちょっとの間に発表された国内の広範囲な3大地域の長期発展プロジェクト(ジョーホール州南部、半島部北部州、半島部東海岸州を対象にした長期発展計画です)が実際に予算消化されていくこと、現行のパームオイル価格高騰調子が急激に下落する可能性も少なそうなこと、などを考慮して、国の公式な2008年国内総生産高の伸びつまり経済成長率の伸びを 6%と予測しています。 中規模発展経済国家であるマレーシアでGDPが 6%伸びればかなりの成長といえますから、2008年もマレーシア経済は好調になりそうだと期待されているわけです。

輸出先国別市場の10年の変遷が物語ること

ところでマレーシアからの輸出市場の統計を見ると興味深いことがわかります。
輸出先国別順位の推移  Bloomberg 出典
1996年
1
2
3
4
5
6
7
8

シンガポール米国日本香港台湾タイ英国韓国
割合25%22%17%7%5%5%4%4%
2006年
1
2
3
4
5
6
7
8

米国シンガポール欧州連合日本中国タイ香港韓国
割合19%15%13%9%7%5%5%4%

国別で言えば、日本は欧州連合全体より少なくても国別で言えば依然として3番目に多い輸出先ですが、比率は10年間で半減近くにも減っています。香港は中国への窓口である現実を考えれば、この輸出先市場の面で実質的にはすでに中国は日本を抜いていると言えますね。この統計でもわかるように、マレーシアの輸出先輸入元面で日本の占める比率は80年代、90年代に比べて明らかに落ちました。しかしながら、マレーシアの日系企業が中国にあるその系列会社へ輸出する場合もかなりの割合を占めるはずなので、こういった統計数字の表面だけで全てを判断することは早まった結論であると言えることも注記しておきます。



新型 Proton Saga は国民車の地位を引き続き保っていけるか


1月19日付けの「新聞の記事から」で 『国民車 Proton Saga の新型車が公開された』 という記事を載せました。アブドゥラ首相が出席して新型 Proton Saga の公開発表会が行われたという内容です。尚、首相が出席したから大ニュースであるということでも、国民車だから首相が出席したということでもありません。マレーシアのトップ政治家はあらゆることに出席してその模様が事細かに報道されるからです。

1985年登場モデルが現在まで新車販売されてきた

この場合、新型 Proton Saga ということに大きな意味があり且つ注目すべきニュースです。マレーシアの国策自動車会社として、三菱自動車をパートナーとして80年代初頭発足したProton社の最初のモデルが、1985年発売 三菱製エンジンを搭載した4ドアタイプ Proton Saga なのです。多少のマイナーチェンジとバリエーションはありましたが、Proton Sagaはつい最近までProton社の販売リストに載っているのです。その長寿命に驚きます、そして生産台数は通算 120万台だそうです。今後どんな国産モデルが発売されようと、これほど長く且つ多数台数売れる国産自動車はもう現れないでしょう。その値段が RM 4万から3万の間という手ごろさと相まって、まさに Proton Saga を国民車と呼んでもいいでしょう。

新型Proton Sagaの魅力的な価格

新型 Proton Saga は国民車としてデザインされ、排気量1300cc でマニュアル車とオートマ車があり4ドアタイプ、価格はRM 31500から4万まで、3段階のクラスに分かれています、との発表です。軽自動車でなく小型車としてこの価格帯は、中流層までには至らないが、軽自動車には物足らない下流の上から中流の下に位置する大きな人口層にとって非常に魅力的なはずです。それが発表前からすでに4千台が予約された数字にも見えますね。

写真を見る限りデザインは現代的なスタイルで、初代 Proton Sagaの角ばった時代遅れのスタイルからは離れていますね。車の性能のことは私は素人ですからもうしませんが、1300ccの国産エンジンで低価格車ということから考えれば、しろうとでもかなり推測はつきます。一部にエアバックが装備されるそうです。Proton社が自力で開発生産した車種は、Waja(2000年), GEN.2(2004年), Savy(2005年), Savvy(2005年), Persona (2007年)そしてこの新型 Proton Saga となります。

悪口や非難はあっても Proton車は成功してもらいたい

Proton社のことはマレーシア国民からもしょっちゅう非難と悪口が聞かれます。確かにそう言われる理由と原因はあると私も経験上思います。しかし忘れていけないのは、Proton車はマレーシアの発展と工業化のシンボル的意味合いを持ってきたということです。もちろん21世紀の今ではその意味合いと役割は80年代から90年代前半に比べてはるかに小さくなったとはいえです。国産車メーカーとしてはこの数年 Perodua社にトップの座を奪われてしまいましたが、Proton 社の存在意味はまだまだ重要なものがあります。こうした由来とマレーシア人の誇りの一つとして、外国メーカーと提携してでも、Proton車は維持発展させていくべきでしょう。その意味では新型Proton Sagaは幸先よい売れ行きを記録して欲しいものです。

ところで、実はProton Saga といえば、私がマレーシアの地で初めて買った車でした:Proton Saga Iswara モデルの新車で、1993年当時約 RM 4万 でした。パートナー(マレーシア華人女性)といっしょに2人ビジネスを始めるのに車がどうしても必要でしたので、乏しい開業資金の中から割安な車として買ったわけです。自家用車を持つなど夢のまた夢である2000年以降の私の状況からはとても考えられない、自動車を買える時代が私にもあったわけです(笑)。

ただ性能は別にして、その貧弱な車体がいつも心配でした。Proton Sagaの悪口に、ボディーはペラペラというのがあるように、ほんと頼りないボディーのため事故にあえば ペッちゃんこ という危険がありますからね。もちろん大衆車ですからABSとかエアバッグだのといった安全装置は付いていませんでした。それは現在まで続いた 初代 Proton Saga にも同じです。ビジネスがなんとか利益を出せたので、ちょうど2年後に外国製メーカーの1600cc乗用車に買い換えました。多少とも丈夫な車に替えたいと思っていたからです。当時は中古車市場が逼迫しており、2年前に買った値段で売れたという貴重な且つなにか儲かった気分の経験をしました。

新型Proton Sagaのボディーは初代ほど頼りないものではないことだと希望的に思います。とはいえ、価格 RM 3万から4万の国民車が、RM 9万前後するカローラに匹敵することはありえませんから、ボディーがそれなりに堅固で、安全装置が十分に装備されていると、期待することも無理なことはわかります。なにわともあれ、この価格帯しか手の出ない層のための国民車として、新型 Proton Sagaの成功を願うものです。


このところ公務員への応募が増えてきた

マレーシアの公務員は120万人近くにもなり、この人数は労働人口の1割も占めます。公務員給与に依存する家族数を含めれば、公務員の雇用面に占める影響力はまことに大きなものといえるでしょう。

公務員への応募が増えた

そこで、「このところ公務員への応募がぐっと増えた」 という 2007年12月16日の新聞記事を取り上げてみます。(「新聞の記事から」には掲載していません)

かつてマレーシアがまだ巣立ちした頃は公務員になりたい希望が非常に高かった、その後経済成長するにつれて、民間への就職傾向に変転していきました。ところが最近また公務員への就職希望が非常に上昇してきました。例えば、この数ヶ月保健省が大学卒対象の求人を掲げたところ、求人数153人に対して、なんと4万人もの応募がありました。加えて非大学卒職種への応募が急増している事実があります。

この傾向変化は今年(2007年)7月に公務員給与改正があってからさらに顕著になりました、給与が 7%から 35%増加して、民間にひけをとらないようになったのです。公務員職に人材を配置する組織である公共サービス委員会のホームページをみると、こういった傾向は保健省に限らず、各省庁に渡って公務員全体に広がっています。昨年だけでも、公共サービス委員会には67万人の応募がありました。次ぎの表を参照
公務員 2006年大学卒求人の例
大学卒職の種類省庁求人数応募者数
会計官会計庁
14
8114
調査官漁業省
2
21941
カウンセラー公共サービス庁
17
10106
工場と機械維持職人的資源省
8
4065
情報技術官公共サービス庁
100
12937
電子技官鉄道庁
1
3705
調査官反汚職庁
33
12055
法務官検察庁
146
2357


応募増加の最大の理由は給与改定で低給与でなくなったから

マレーシア雇用者連合の議長は公務員応募が増えた理由を説明する、「はっきり言って、大学卒が公務員を目指す数が増えたのはその給与が魅力的になったからです。」
公務員の給与体系を見てみましょう。公務員給与雇用などを司る役所 公共サービス庁の給与と手当て部の長は語る、「公務員の給与が低いという思い込みは間違いです。」 「大学卒の初任給等級は41等級から開始します。管理部門での基本給はRM 1993、加えていろんな手当てがあるので、支給額は約RM 2800になります」 との説明です。

大卒程度初任給 41等級の給与と手当の表 単位はRM 
職種基本給固定手当住宅手当生活手当重要手当公共保健手当総額 RM
管理・外務サービス職
1993
300
210
300
2803
医務官
1999
300
210
300
500
1040
4349
研究官
1899
300
210
300
92
2803

公務員には給与と手当に加えてその他の特典があります。その一番は、医療福祉の面です。本人だけでなく配偶者と子供、さらには両親にも適用されます。つまり政府病院と医院では公務員とその家族は一般に無料となるからです。 次いで特典には、住宅ローンと自動車ローンの利率が年4% の適用を受けます。いうまでもなく、公務員には定年後年金を受け取れる恩給制度があります。こういった諸所の面を考慮すれば、「公務員は非常に良く扱われています。」 と公共サービス庁の給与と手当て部の長は語る。

ただこういう公務員求職の増加にも関わらず、公共サービス庁によれば、保健と教育部門で10万人ほどの空席があるとのことです。それは「適職な候補者を見つけられないからです。求職者の資格に難があるのです。」


これを読むと、公務員はもう低給与の典型ではないということがわかります。もちろん高給与の代表とはとても言えませんが、公務員より低給与な職や業界はいくらでもありますし、なによりもその職の安定性はまさに公務員ならではのものでしょう。 さらに民間にはその制度自体がない、年金つまり恩給がありますから、ある民間企業と給与面で対等であれば、公務員の待遇はより良いことになりますね。

マレー人に偏重した公務員構成の課題

公務員の大きな課題の一つに、その民族構成の偏重があり、長年まったく解決されていませんし、その糸口も見えなさそうです。次の記事をご覧ください。

「華人が公務員に応募する率の低下は憂慮すべき段階になっている。2007年上半期に公務員の職に応募した華人の数はわずか9000人です、これは全応募者総数の 1.7%に過ぎない。」 と華人与党政党 馬華公会の青年部長が述べています。「70年代には公務員の20%は華人でしたが、これがだんだんと落ちて、2005年には公務員の 9%強だけが華人です。」

という事実は、日ごろ私たちが役所・官庁で感じる印象と変わりません。あまりにもマレー人に偏った民族構成は、公務員というその職位業的役割からふさわしいものとはいえませんからね。果たしてこの課題が、給与改定で改善されていくのか、多少の期待を持って気長に見て行きましょう。



マレーシアのビール、地元産ビール、椰子酒の話題


マレーシアは国教はイスラム教ですが、国の成り立ち上多民族複数宗教国ですから、飲酒及び酒類の販売は一般に認められています。一般にと書きましたのは、日本のようにどこでもいつでも飲酒でき、販売できるいうことにはならないからです。当然ながらムスリム主体の地区でコンビニやスーパーにアルコール飲料が並べられることはありませんし、ムスリム飲食店でアルコール飲料がメニューとして提供されることはありません。しかし華人地区であれば、営業免許を得た酒屋が営業できますし、スーパーの棚にビールが並んでいることはごく普通です。 観光客の多いクアラルンプール中心部の商業地区でもこれは同じで、加えて購買層が多様であるため酒類製品の選択がぐっと豊富になっています。 クアラルンプール内または近郊にある一部のアップタウンではワインショップなども人気あるそうです。

最も一般的なアルコール飲料はビールです

さてマレーシアで飲まれるアルコール飲料として最も好まれる、一般的なのはビールでしょう。マレーシアのビール市場は昔からごく最近まで外国資本である 2つのビール醸造会社グループが市場を2分してきました。即ち、第1位の Carlsberg グループと 2位の Guiness・Anchor グループです。
当サイトの 「旅行者のためになるページ」にある 『飲食物・料理・果物の話題』ページで 98年から載せている項目では、当時マレーシアで販売されていたビールの写真を掲げていますので参考にご覧ください: マレーシア産のビール をクリックすると別ウインドウで開きます。

伝統の強さを誇るCarlsberg ビール

次に2008年2月上旬に 英語紙Star 紙に載っていた記事から抜粋してみます:

マレーシアでビール市場占有率第一である Carlsberg ビール醸造マレーシアは今年は好調に復帰すると、自社予測をしています。「この何ヶ月か好調に反転して売り上げが増えました。」 「Carlsberg のマレーシアでの最も売れ人気ある ビールはグリーンラベル 製品です。最もよく知られており、最も長い間市場に出回ってきました」 「旧正月時期は華人ビール愛好家にとって大きな機会です。」 「今年の旧正月キャンペーンには、グリーンラベルの本来の色だけでなく、華人伝統の黄色と赤色も加えました。」

Carlsberg ビールの次の共同宣伝キャンペーンは、6月にある2008年ヨーロッパサッカー選手権です。 昨年11月から限定発売している Carlsberg 創立記念ビールは予想より良く売れました。 Carlsberg ビール製造マレーシアはさらに、メキシコ製 Corona ビールの販売、ライチ風味のシャンデーなどの発売も始めました。「マレーシアは世界で2番目にビール税率が高い国です。原材料の高騰も業界にとって逆風です」 とCarlsberg は訴える。 
以上記事から抜粋


伝統の強みなのか、宣伝と営業の上手さゆえなのか知りませんが、ビールを売ってる店や飲み屋ならどこでも目につくのが Carlsbergビールですね。Carlsbergビールの中で最も普及品と思われる、グリーンラベル缶ビール 320cc 入りのスーパーなどでの2008年2月時点での小売価格は RM 6.5 前後です、尚店によって価格に多少の違いはあります。円価に換算すれば、1缶200円を超すことになります。他の飲食品物価に比してビール値段はかなり高いマレーシアですが、それにも関わらずよく売れているように見受けられます。非飲酒者の視点から言えば、多少割高でも酒飲みはいとわないということなんでしょうね。

ビールコマーシャル・広告が許されるメディアと許されないメディア

テレビではビールを含めてアルコール飲料の宣伝は全く許されませんが、英語紙と華語紙ではアルコール飲料の広告が頻繁に載っています。尚その大多数はビール会社による広告です。新聞以外に目に付くビール広告といえば、非ムスリム向けの大衆食堂と屋台の店名看板または品目看板に大きく添え書きされたビール製品名や店の壁に貼られたビール製品ポスターでしょう。いうまでもなく、ムスリム用大衆食堂と屋台にこの種の広告はありません。 

シネプレックスでは毎上映回前に各社のビールコマーシャルがしつこいぐらい上映されます。都会のシネプレックスに足を運ぶ映画鑑賞層にビール愛好家が比較的多いということなんでしょうか? とにかくシネプレックスで映画を見る度に、ビール会社のコマーシャルを”見させられます”。 ところでそのコマーシャルの作り方には西欧的調子が非常に鼻につくと感じるのは多分私だけではないはずです。タイではテレビでもビール宣伝が盛んですが、西欧的調子ではありません。

上記に掲げた 「マレーシア産ビール」 の中でも書きましたように、当時はもちろんそしてつい最近までマレーシア独自のビール醸造は行われていませんでした。Carlsberg グループもGuiness・Anchor グループもスランゴール州にビール醸造工場を持ってビール醸造販売していますが、いずれも海外資本のためいわゆるライセンス生産ですね。つまりどの製品もマレーシアブランドのビールではありません。

初のマレーシアブランドのビールが登場した

私は次に載せた記事を読むまで、マレーシアには独自のビール醸造会社はないものだと思っていました。しかしそれは間違いだと知りました。2008年2月上旬の華語紙 「東方日報」 に載った記事から抜粋します。

マレーシア製ビール Jaz beer の名前は華語の 「傑士」 をそのまま訳したものです。製造会社 Napex Corporation Sdn Bhd の社長は語る、「マレーシア人は 地元ビールJaz を支持して欲しい、そしてマレーシアビールが海外に進出できるように力を合わせましょう。」 外国のものは素晴らしい という態度は不要です、それが国産品をのけ者にしてしまう。」 社長は Jaz Beer の品質を確信し他の有名ビールに伍していくとしています。「Jaz Beer は市場の他のビールに比較して10%から20%は安い。しかし品質は同じであると保証します。値段が安いことは我社の方策です。Jaz Beerのアルコール分は5.5% 、市場の他のビールより0.5%アルコール分が高い。」

Jaz Beer は2007年5月に初の市場出荷を行いました、宣伝戦略では半島部北部と南部では好評でした。町部ではいろんなところですでに販売されています。今後クアラルンプールに進出します。 社長は語る、「わが社の計画は販売チェーン網を全国に拡大していき、マレーシアのビール市場に食い込んでいきます。」 「販売量は毎月伸びています今後の展望は良い。都市部はまだだが、各地の町部には浸透していきます。」 「Jaz Beerを飲んだ人が友人など人づてに直接紹介していくという戦略です。すでに多くのレストランでは Jazビールを提供しています。レストラン主などによれば、Jazビールを一度飲んだ客からは次に指定があります。味は変わらず安い。これが消費者がJaz を受け入れてくれる原因です」

会社経営陣は社会から提議された疑問に対して強調する、「わが社は営業免許を取得しています、そしてビール生産を許可されています。完全に合法です。」 Napex Corporation Sdn Bhd のビール工場は、スランゴール州ポートクランにあります。 取材のために工場を訪れた、華語紙 東方日報の記者は最後にこ書く、「(華語紙として一番最近に創刊された)東方日報は華語紙の中で最も伸びている新聞です。Napexの場合を見ると社員一同でマレーシア第一級のビールにしようという努力を感じる。 Jaz ビールが、東方日報と同じく将来マレーシアで最も伸びるビール銘柄になるであろうと信じます。」
以上記事から抜粋


私はこの記事を読んだ時、えー、マレーシアで地元ビールの生産が始まっていたとは、とかなりの意外感を持って驚きました。ビールがよく飲まれる場である中華レストランなどにはこの何年も全く縁がないので、地元ビール出現を全く知りませんでした。読者の中に、すでに飲んだよ、という方がいらっしゃいましたら、ゲストブックで感想を聞かせてください。 私は決して禁酒主義者でも嫌酒主義者でもありませんが、身体が受け付ける酒量は限りなくゼロに近い非飲酒者なので、ビール味のことは全く語れません。ただ初の地元醸造ビールと知れば、一度ぐらいはコップ半分ぐらい味見してみたいものですなあ。

マレーシアに地酒・地ウイスキーはあるのだろうか

マレーシアに地酒・地ウイスキーはあるかという問いに、私はあまり自信を持っては言えませんが、一応あると答えておきます。というのも以前クアラルンプール中心部にある古びた酒屋の店先にマレーシア産酒と思われる小瓶が置いてあるのを何回も目撃したからです。いずれも日本酒の一升瓶のような大きなビンではなくウイスキービン程度であり、いかにも地酒風の時代遅れのデザインのビンでした。また一部の酒販売免許取得店舗では、多分マレーシア産らしきウイスキー?の小瓶を売っていますよね。 推測するに、こういう地酒・地ウイスキーは半島部のどこかの華人町で昔からほそぼぞと製造されてきたのではないだろうか。味の面でも宣伝面でも輸入酒・ウイスキーに適うはずのない且つ酒造業免許を取得するのが極めて極めて困難となった現今、新たに酒造するような地酒製造家はもう出現しないでしょうね。

椰子酒 Toddy

地酒といえば言えないことはないでしょうが、どちらかというと”どぶろく”と呼んだ方がぴったりとするのが、椰子酒 Toddyです。Toddy は白っぽい臭いの強いココナツ酒ですね。臭いを嗅いだだけで味の強さが推定されてとても私には飲めないですね。プランテーション農園がその発祥であり、その労働者が主たる消費者のようです、よって一般にインド人労働者階級の大衆アルコール飲料と捉えられています。 2007年11月ごろ、新聞に載った記事から抜粋してみます。

Toddy はココナツの木の発芽している若い花房から得た甘い樹液で、アルコール分を含む飲料です。少数の人たちにとって依然として人気ある飲み物です。とりわけプランテーション農園などを訪れると、仕事後の男たちが集まってToddy を飲みながら談笑しているのを見かけることでしょう。 ココナツプランテーションのオーナーでToddy製造業者は説明する、「ビールよりも安く、発酵してからすぐできます。1リットル当たり RM 1.50で販売しています。ビールの約10分の1の値段です。」 「多くの人が密造酒かまたはsamsu だと誤解しています。Toddyの製造に蒸留過程はありません。すべてナチュラルです。ただ違法なココナツ取りが水とサッカリンを加えて、Toddyの名前を汚している」

Toddy製造の免許を得るのは極めてたいへんであり、スランゴール州の KualaLangat郡ではこの製造者のほかは1人だけしか免許を受けていません。普通のココナツ木は樹液を、樹齢50年ぐらいに達するまで出すとのことで、木が若ければより甘くなるとのこと。 「しか木を好む、それは樹液が濃くなり味も異なるからです。」 採取した白い樹液には非常に甘くアルコール分は含まれていません、味はちょっとピリッとします。集めた樹液をプラスチックの容器に入れて、農園へ運びます。

「樹液は2時間置いておくと発酵します、最高アルコール分4%の芳香のあるワインになるのです。アルコール分を高めるために1日置いておくこともできます、長く置けばおくほど酸味がより増します。」
以上記事より


Toddy を売っている場所はごくごく限られているはずで、酒類販売免許を持ったスーパーや酒屋で探しても見つかる可能性はないでしょう。私はクアラルンプールに昔からある古びた木造の Toddy酒場を知っています。他にもクアラルンプール内にあるのかどうかは知りませんが、ない可能性の方が高そうです。このToddy酒場はなんとクアラルンプールの有名地 Bukit Bintang から至近距離の場所にあるので、いくらその場に昔からあって転居を拒んだとはいえその存在自体が奇跡的ともいえるぐらいです。看板も一切なければ店舗らしい外観にも欠けます、しかし夕方、週末ともなればたくさんのインド人が集まって来て飲んでいます。店の外にはたくさんのバイクが停めてあり、さらによくタクシーが何台か停めてあります、もちろん勤務を終えたであろう運転手が飲んでいるのですよ。外から眺めると、インド人客に混じって華人も1、2割りぐらいその中に混じっていますね。まさにどぶろく酒場といった風情です。

若い時からほとんどアルコール類を飲まない、でもホステスのいるクラブやラウンジやカラオケなどに一時期よく出入りしたIntraasia のお酒にまつわる話題でした。酒飲みでなくても、酒の話題はお伝えできるのです(笑)。



マレーシアの総選挙 よくある質問とその回答


いきさつ

2月13日にアブドゥラ首相が国会下院 ( Dewan Rakyat というのが正式名です)の解散を宣言し、憲法に従って国王がその宣言書に署名して解散が発効しました。同時にサラワク州を除く全州で州議会がその州のスルタンの承認を経て解散されました。今回の解散は2004年に選出された国会議員の任期5年を1年以上残しての解散です。

その翌日14日に、選挙管理委員会が第12回総選挙の公布日を2月24日、投票日を3月8日と発表しました。今回の選挙期間は13日となり、1982年以来短い選挙期間が続いていたので20数年ぶりの長さとなります。前回はわずか9日間でした。

総選挙時には毎回国会下院議員の選挙と同時にサラワク州を除く全州で州議会選挙も同時に実施されます。前々回まではサバ州の州議会選挙も総選挙時とは別の時期に実施されていましたが、前回から総選挙と同時期になりましたので、例外は2006年に州議会選挙が行われたサラワク州だけです。

国会と州議会の議席配分はどのようになっていますか?

 改選数は全13州及び クアラルンプールとプトゥラジャヤとラブアン島 で国会議員総議席 222議席、州議会議員総議席 505議席です(576議席−71議席)。尚クアラルンプールとプトゥラジャヤとラブアン島は連邦直轄領であり、州ではないので州議会はありません。


ペルリス州ケダー州クランタン州トレンガヌ州ペナン州ペラ州サラワク州サバ州
登録有権者数
120,081
873,674
751,682
521,597
709,322
1,196,160
912,454
887,862

国議席数
3
15
14
8
13
24
31
25

州議会議席数
15
36
45
32
40
59
(71)
60


パハン州 スラン
ゴール州
ヌグリ
スンビラン州
マラッカ州 ジョー
ホール州
クアラ
ルンプール
プトゥラ
ジャヤ
ラブアン合計
登録有権者数
603,242
1,565,494
462,015
371,594
1,312,120
687,451
6,608
20,783
10,922,139
国議席数
14
22
8
6
26
11
1
1
222
州議会議席数
42
56
36
28
56
-----
---------
576


有権者の定義は何ですか?

有権者数とは選挙登録した有権者数です。有権者になれる条件はマレーシア国民で21歳に達することです。ただし21才になったから自動的に有権者となるわけではなく、全国各地の選挙管理委員会の運営する窓口で簡単な手続で登録しなければなりません、これによって登録済み有権者となります。尚マレーシアには自治体の役所にその地に居住する住民が ”住民登録” するという制度自体が存在しません。

候補者の要件はどのようなものですか?

選挙に立候補できる要件は: 21歳以上のマレーシア国民で且つ国外居住者でない者(国会議員立候補は国内に居住していること、州議会議員に立候補者はその州に居住していること)、債務未返済の破産者でないこと、裁判で1年以上または罰金RM2000以上の判決を受けていないこと(ただし5年以上前に確定した古い場合は除く)、
尚公務員、軍人、警察官、裁判所関係者、鉄道職員、教育関係者は辞職しない限り立候補できません。

当選者はどのように決まりますか?

マレーシアの選挙は、その選挙区で単純に得票数の多い候補者が当選する方式であり、比例代表制はどのような形であれ一切取り入れられていません。さらに世論にも政党にも1議席当りの有権者数の差を問題視する風潮は全くありません。

投票率はいつもどれくらいですか?

独立後の1回目の総選挙以来、常に70%以上80%未満の間です。

過去の総選挙の結果を知りたいです

1978年以降だけを示します:

1978年1982年1986年1990年1995年1999年2004年2008年
有権者数
478万
578万
679万
796万
869万
956万
976万
1092万
投票率
75%
74%
70%
73%
71%
72
74%
国会議席数
154
154
177
180
192
193
219
222
与党連合の獲得議席数
130
132
148
127
162
148
199
与党連合の議席比率
84%
86%
84%
73%
84%
77%
91%
与党連合の得票率
57%
61%
57%
53%
65%
57%
64%

1990年を除いて、与党連合 Barisan Nasional が常に総議席数の4分の3以上を獲得しています。当選者を決める方式が単純多数方式なので、議席獲得率と投票率の差がかなり発生することになりますね。最近では99年の結果を見ると、得票率は57%しかないのに、議席獲得率は77%もあります。

立候補に当たって供託する費用などはどれくらいになりますか?

候補者の選挙供託金: 州選挙区 RM 5千、国会選挙区 RM 1万 です。
その選挙区の総投票数の 8分の1を得なければ、供託金は没収されます。

選挙運動保証金(これによってポスター、旗類の掲示ができる): 州選挙区 RM 3千、国会選挙区 RM 5千 です。
選挙結果が公表されてから14日以内に、候補者がその掲げたポスター・旗類を撤去できなかった場合、保証金が没収さえrます

選挙費用の制限はどのようになっていますか?

選挙費用の規定はあるそうです。しかし、選挙運動において候補者が資金をどのように集めたか(資金の出所)、そして資金をどのように使ったか(使用明細)を明らかにしなければならないことを定めた、法律自体が存在しません。よって選挙費用制限をどのように定めようと実効的な意味がありません。

候補者の戸別訪問は許されますか?

戸別訪問は認められています。

選挙公報といったような仕組みはありますか?

選挙公報とか、候補者ポスターの公営掲示板といったものは一切ありません。よってもうあらゆる所に政党や候補者のポスター、看板、旗が多量に掲示されています。もちろん公の施設・ビルなどには掲示できない建前です。

二重投票防止策が新しく採用されたと聞きました

今回の総選挙では、有権者が投票した印として人差し指に消えないインクを塗る方式が初めて採用されます。もし指がない場合は別の指に、もし爪がない場合は指に、印を付けます。国はそのためのインクをインドから購入して、全部で 47000ビンのインクが全国の選管に送られました。
このインクで付けた小さな印は少なくとも10日間は指に残るとのことです。女性は投票所に行く前にマニキュア液をよく落としてくださいとのことです。

追記:  3月4日に 選挙投票時の爪にインク塗り方式が突然放棄されました
この方式を妨害する行為がペルリス州、ケダー州、クランタン州で起こっているとの訴え報告が警察に出されました。 選挙管理委員会の議長は記者会見で説明する、「警察の調査によれば、密かにインクが輸入された、これを持って田舎や僻地を回って村人に、選挙に行く前に指にインクをつけなければならないと信じ込ませる計画があるとのことだ。混乱を作り出そうというものがいる。指にインクをつける方式を知らない者を信じ込ませることで、選挙に疑いを起こそうとしている。 選挙管理委員会は選挙手順と公共秩序の面からこのことを非常に重大に捉えて、妥協できないことだと考えます。」 選挙管理委員会はこのために、インク塗り方式を実施しないことを決定しました、「選管はこれを非常に遺憾に思うが、選挙をスムーズに行うためにこの決定を最終決定とします。」


解散前の与野党の勢力図はどうなっていましたか?


与党連合 Barisan Nasional 
野党陣営
政党略称名
UMNO
MCA
MIC
Gerakan
その他与党
合計
DAP
PAS
PKR
無所属
合計
政党の民族性マレー人華人インド人華人主体9つの政党
華人主体
多民族
マレー人 マレー人主体
多民族


国会下院議員
109
31
14
5
39
198
12
7
1
1
21












州議会議員




454
15
35
0
1
51


民族的に見てどういう選挙区が多いですか?

マレー人多数派の選挙区が一番数が多いのは当然です。ただその選挙区内での割合が 98%ぐらいから過半数をかろうじて超す選挙区まで様々です。華人が多数派の選挙区はペナン州とクアラルンプールの一部、ペラ州の一部など全国的に見れば数はごく少なくなります。インド人が多数派の選挙区は全国どこにもありません。

総選挙以外にどういう選挙がありますか?

サラワク州の州議会選挙は時期が違うだけです。 そして国会または州議会で議員が辞職、死亡した場合などに、補欠選挙が行われます。
つまり国会下院と州議会を選ぶこの2つの選挙だけがマレーシアで行われる選挙です。州を含めて自治体の長はすべて任命制です。そして地方自治体に議会という仕組み自体がありません。
この点からマレーシアは非常に選挙の少ない国といえます。



2008年総選挙の結果及びその特徴と分析−増補版


第12回総選挙は 2008年3月8日に投票が行われ、即日開票された結果が発表されました。サラワク州とサバ州での開票の遅れと各州での郵便投票分があるので、(最初このコラムを掲載した)9日時点では完全な結果にはなりませんが、大勢にはまったく影響はありません。追記していますので数日後にまたご覧ください。

上記のように最初にこのコラムを掲載した9日以後数回の増補を加えました。そして現在の掲載分を最終版とします。

結果を概観する

国会議員選挙 1978年以降

1978年1982年1986年1990年1995年1999年2004年2008年
登録有権者数
478万
578万
679万
796万
869万
956万
976万
1092万
投票率
75%
74%
70%
73%
71%
72
74%
約72%
国会議席数 ( 毎回増加)
154
154
177
180
192
193
219
222
与党連合の獲得議席数
130
132
148
127
162
148
199
140
与党連合の議席比率
84%
86%
84%
73%
84%
77%
91%
63%
与党連合の得票率
57%
61%
57%
53%
65%
57%
64%
? 

まず大事なことは、マレーシアの選挙制度が比例代表制を全く取り入れてない、1選挙区に議席は1つだけ、単純多数獲得候補者が当選するという仕組みなので、得票率と議席獲得率に大きな差が出るということです。前回選挙の結果が如実に示すのは、与党連合は国の発足以来政権を握っており1回の選挙で政権が移る可能性はゼロではあっても、議席の獲得数ほどには与党連合はマレーシア国民の支持を得ていないということでした。 州への議席の割り当て方、野党陣営内の選挙協力の成功度によっても、得票率と議席獲得率の現れ方に影響があることは、他国の選挙の例からもわかりますね。

国会には正確に言えば、70議席から成る上院にあたる Dewan Negara もありますが、制度上国民から選挙で選ばれませんし、下院並みの政治的権限が全くありません。そこで国会選挙とは即下院、つまりDewan Rakyat とのことを意味します。

本当の投票率を知る

有権者の資格はマレーシア国内に居住するマレーシア国民で且つ21才以上です。しかし選挙前の一定時期(2年間ぐらいある)に選挙管理委員会に登録しなければなりません、これを怠ると投票自体ができません。 これまで度々社会ニュースになってきたことですが、数百万人が有権者登録していないと言われています。

全国を網羅し且つ最も信頼度の高い全国一斉に行われる公的な調査である、”2000年国勢人口調査” の結果を基にして述べます。
2000年当時のマレーシア国民(マレーシアに居住している外国籍者を含まない)は2189万人でした。 その内15歳以上の人口は 1440万人 です。当時の15歳は2007年末にはすでに 22歳に達しています、よってこの人口1440万人は2008年の時点で全員有権者です。 正確に言えば、2000年当時の14歳も2007年末ですでに有権者資格である21才に達していますが、公式統計表が5歳毎の発表であるために正確な数はわかりませんが、大体 50万人ぐらいです。 もう一つ、2000年以降の死亡者の合計数も考えなければなりませんが、この数は当時の14歳者の数よりも少ないでしょうから、この両者の数をおおまかに差し引き ゼロと仮定します。 よって今回の総選挙時における理論的有権者数は 1440万人である、と見なしても間違いではないと言えます。

従って数百万人が有権者登録をしていないという話は正しいのです。できるだけ正確な数字を算出すれば未登録者は 約350万人にも達するわけです。よって有権者である21歳以上の国民人口に対する本当の投票率を計算すると 約 55%になります。 決して高い投票率ではないことがおわかりなると思います。 日本で伝えられるマレーシア選挙報道でこういう点に触れているニュースが果たしてあるのかな?

選挙結果の詳細

州別選挙結果 (サラワク州州議会選挙だけは時期が違うので、今回実施されていません)

ペルリス州ケダー州クランタン州トレンガヌ州ペナン州ペラ州サラワク州サバ州
登録有権者数
120,081
873,674
751,682
521,597
709,322
1,196,160
912,454
887,862

投票率
80%
75%
81%
79%
74.5%
65.7%
60%
64%

国議席数
3
15
14
8
13
24
31
25

    与党連合 
3
4
2
7
2
13
30
24

    野党陣営
0
11
12
1
11
11
1
1

州議会議席数
15
36
45
32
40
59
(71)
60

    与党連合 
14
14
6
24
11
28
--
59

    野党陣営
1
22
39
8
29
31
--
1












パハン州 スラン
ゴール州
ヌグリ
スンビラン州
マラッカ州 ジョー
ホール州
クアラ
ルンプール
プトゥラ
ジャヤ
ラブアン合計
登録有権者数
603,242
1,565,494
462,015
371,594
1,312,120
687,451
6,608
20,783
10,922,139
投票率
75.6%
74.9%
69.4%
72.2%
74.9%
75.2%
81%
59%
国議席数
14
22
8
6
26
11
1
1
222
    与党連合 
12
5
5
5
25
1
1
1
140
    野党陣営
2
17
3
1
1
10
0
0
82
州議会議席数
42
56
36
28
56
-------------------
505 + (71)
    与党連合 
37
21
21
23
51



307
    野党陣営
5
35
15
5
5



196+2

緑色の州は今回州議会選挙で野党陣営が多数派となりました。前回総選挙で野党陣営が勝利したのは、PAS党州政権下である唯一クランタン州だけでした。数日または1,2週間以内に、この5州では野党陣営内の話し合いでそれぞれ州政府が組織されることになります。ある州議会の多数派がその州政府を組織する仕組みです。

上記で、「州への議席の割り当て方、野党陣営内の選挙協力の成功度によっても、得票率と議席獲得率の現れ方に影響がある」と書きましたことと、この表とを比べてください。例えば、与党連合の伝統的砦である、ジョーホール州、サバ州、サラワク州は登録有権者数で全国の28%を占めますが、国会議席数では37%を占めます。

注:マレーシアの選挙制度では、1人の候補者が国会議席と州議会議席の両方に立候補でき、且つ当選して両議席を保持することができます。このためごく少数の与野党候補者が両議席に立候補しました。両議席に当選したのは与野党合わせて一桁数にすぎないようです。


選挙結果の特徴と分析


政党の観点からみる

政党別立候補者数と当選者数
党名略称
UMNO
MCA
MIC
Gerakan
PPP
サバ州
5 政党
サラワク州
4 政党
Barisan Nasional
華語名巫統馬華公會 マレーシア
インド人会議
民政党 人民
進歩党


国陣(与党連合)
国会候補者
117
40
9
12
1
12
31
222

当選者数
80
15
3
2
0
11
29
140

州議会
336
90
19
31
1
27
選挙なし
504

当選者数
239
31
7
4
0
26
307











党名略称
PAS
PKR
DAP

その他 サバ州
その他
サラワク州
その他


華語名回教党 人民
公正党
民主
行動党




野党陣営合計無所属
国会候補者
66
97
47

2
2
3
217
40
当選者数
23
31
28
0
0
0
82
0
州議会候補者
233
175
102

2
15
0
527
74
当選者数
83
40
73
0
0
0
196
2

注:サバ州の与党 5党:PBS, SAPP, PBRS, LDP, UPKO,  加えて UMNOがサバ州で大きな存在です
注:サラワク州の与党 4 党: PBB, SUPP, PRS, SPDP、 UMNOはサラワク州に存在しません
注:野党陣営の野党3党:半島部の PRM, サバ州のBERSEKUTU, サラワク州の SNAP

野党3党は互いにかなり違う党風と支持基盤と性格を持っているので、勝利した各州で今後の州政権運営に恐らく深刻な内部食い違い・あつれきが発生するのではないでしょうか、というのが私の感想です。

インド人有権者の動向

与党連合の MICは、30年ぐらいも党に君臨してきた総裁が落選し、大幅に当選者を減らした結果、上記のように国会3人、州議会7人の当選者となりました。一方野党陣営の 民主行動党は24人のインド人を立候補させ、人民公正党は19人のインド人候補者を立候補させ、両党の下で国会または州議会に当選したインド人は MICのそれの倍ぐらいになります。 野党のインド人政治家が一挙に何倍にも増えて、MIC が唯一インド人界の声を代表するという、MICの主張はその正当性を完全に失うことになりました。

インド人有権者が大幅に野党陣営に流れたことを象徴するできごととして、反MIC 的立場を明確にした非政党インド人グループ Hindraf の指導者の1人が、スランゴール州州議会に当選したことです。彼は今年国内治安法を適用されて拘置所に拘留されている(最低2年間)Hindraf 指導者5人組の1人です。 国内治安法下の被拘留者が選挙に当選したのは史上3人目のことだそうです。

州政権の交代がその州の地方自治体行政にもたらす影響

州政権が与党連合Barisan Nasinal から野党陣営に変われば、その州内の自治体の行政トップにも大きな影響が出ます。マレーシアの地方自治体には議会がありません、その代わりに州政府・州首相が任命する地方自治体評議員から構成される評議会が各地方自治体にあります。さらに地方自治体の長、つまり評議会の長を各州の州政府・州首相が任命します。よってある州で州政権が変われば、その州の地方自治体評議会評議員と評議会の長を一斉に交代させることができるわけです。例えば、スランゴール州では、州内に12ある地方自治体で、評議員と評議会長が総入れ替えされるとのことです。こういったことは、地方自治体法に規定されているそうです。

尚地方自治体の中で、その自治体がある規模以上である場合は ”市” という区分の地方自治体となります。その場合の評議会の長は、市長 と呼ばれます。

首都クアラルンプールは反・与党連合の勢力が全国で最も強い

クアラルンプールの国会選挙区は11あります。その内10選挙区で野党陣営が勝利し、与党連合 Barisan Nasional はわずか1選挙区で当選しただけです。登録有権者数において、華人がその選挙区の75%以上を占める選挙区4つと50%の選挙区1つ、計5つの選挙区では行動党が全員当選、マレー人過半数以上または比較多数を占めるマレー地区では公正党が候補者を立て4議席、有名な伝統的深マレー人地区のカンポンバルを主要な地とする選挙区ではなんとPAS党女性部幹部(医師)が当選しました。
クアラルンプールの選挙結果

与党連合 Barisan Nasional
野党陣営 3党
総得票数
得票数合計
188,875
308,377
502,469
得票率
37.5%
61.4%

議席獲得政党UMNO 1行動党 5、公正党 4、PAS党 1
11議席

注:総得票数には無効得票が多少ありますが表示していません。

クアラルンプールはいつも議席の3分の1前後を野党が獲得する野党の比較的強い選挙地ですが、今回はほぼ完全に近い形で野党陣営が制したわけです。UMNOがかろじて1議席確保しただけで、華人政党 馬華公会の候補者は全員落選でした。つまり伝統的に野党びいきである華人地区は今回得票差を大幅に拡大させ、UMNOが伝統的に強かったマレー人地区では公正党とPAS党候補者が当選したという図式です。つまり華人だけでなく、マレー人もインド人も野党陣営に票を投じたということです。これが11議席中10議席獲得という圧倒的結果を生みました。

国会議席における行動党と公正党とPAS党の3党の占める割合では、クアラルンプールはスランゴール州はもちろんペナン州よりも高い比率です、つまり与党連合 Barisan Nasional が最も弱い地となったわけです。それにも関わらず、選挙後のマスコミ、政界ではクアラルンプールの結果は大して話題になりません。この理由はすべて、クアラルンプールが連邦直轄領であり、州議会に匹敵する議会が存在しないことです。しかもクアラルンプール市庁の市長及び市評議会の評議員も政府の任命です。クアラルンプールで選出された国会議員はクアラルンプール行政に間接的にはできても直接関与する権限を持てないということです。 よって11選挙区中1選挙区しか獲得できなかった 与党連合 Barisan Nasional 政府の直接影響下にクアラルンプール行政は今後も行われます。

行動党は長年自治体の首長と議会の住民による直接選挙を主張していますが、与野党の利害関係に加えて憲法問題も関係しており、これが実現する可能性はまずなさそうです。

選挙結果の感想

マレーシアの工業面と商業面で最も発展した州であるスランゴール州とペナン州で、与党連合が敗北するという画期的な結果をもたらしました。 先月国会解散が決まった時点で私は次のように書きました: 政権が変わるわけでも首相が変わるわけでもない、結果の見えた選挙となるマレーシアですから、ある意味では退屈なところです 。 とはいえある選挙区に、または各政党の成績はいかに、という面に目を向ければ、選挙の極めて少ない国、マレーシアですから重大なできごとであり、それなりに興味がわくところです。

この私の発言内容の一部は訂正しなければなりません。世のマスコミ論調や自身の見聞から推測して、今回の選挙でこれほど変化が出るとは私も思いませんでした。野党陣営自身が結果に驚いているそうですから、非常に変化の生まれた選挙であることに誰も異存はないはずです。従って今後の与野党攻防で政局の難航も推測されます。

スランゴール州とペナン州のケースに戻れば、この両州が野党州政権になる、加えて首都クアラルンプールはほぼ野党陣営が制覇した、ということで、マレーシア政府と与党連合にとってかなりの難題になりそうです。つまりマレーシアの外国向けの顔にあたる3地方がいずれも野党陣営が多数派ということになったわけです。ただし、クアラルンプールだけは連邦政府の直轄地なので、議会はありませんし、市長は政府の任命です。よってクアラルンプールの行政は依然として連邦政府の支配下ということです。

これで終わったのではなく、マレー人が圧倒的に多数派であるケダー州ではかなりの差で、さらに華人割合が比較的多いペラ州では拮抗しながらも、いずれも野党陣営が制しましたから、与党連合のショックは大きいところでしょう。

マレー州と言っても間違いではないクランタン州は、PAS党が圧倒的な強みを発揮して勝利し、1990年以来の州政権を確保しました。州政権奪還を掲げていたUMNOは失望したというところです。ただクランタン州の場合は、PAS党が勝利することはそれほど不思議ではないので、与党連合のショック度は他の4州に比べれば小さいでしょう。政府与党は、選挙前に東海岸州長期発展計画を発表して、とりわけクランタン州とトレンガヌ州への今後の長期投資を強く印象付けていました。しかし半島部で一番”遅れた”州であるクランタン州民はその種の飴にあまり好意を示さなかったとも言えます。これは以前からクランタン州の他州との違いを最も際立たせる特徴ですね。

総選挙の結果マレーシア政界が激変して、次の3つの現象が出ています: 




過剰顧客サービスは不要だが基本的顧客サービスの欠如は許せません


行き過ぎを感じる日本の過剰顧客サービス

たまに日本へ行くと、全てはお客様のためにという過剰サービスに私はどうも馴染めません。日本に長年住んで生活されている方にはそれが当然で且つそうあるべきことでしょうが、私には過剰または余計なサービスだとしばしば感じます。 例えば、物売り販売業界や飲食店での絶えることのない「いらっしゃいませ」と「ありがとうございます」連呼、ぺこぺこお辞儀スタイル、いんぎん無礼とも感じかねない馬鹿丁寧さ、などなど。 当サイトでもお馴染みの看護師コタバルさんによれば、客商売ではない、例えば病院のような場にさえ、この種の過剰サービス風潮が入ってるそうで、やれやれと思います。もちろん、そうあるべきだという日本人が多数だからそうなったということは知っていますから、私のような考えをするのはごく少数派に間違いないでしょう。

ただ過剰サービスが行き着く先は、際限のない労働強化でしょう。例えば、細かな時間指定までする宅配便を考えれば、それに対応しなければならない宅配業界の労働強化は容易に想像できますよね。全てはお客様の都合と要求に合わせるためには、どんな業界であろうと、その業界で働く者には際限なき労働強化となるわけです。つまりある消費者がある分野で完璧なサービスを要求しまたは期待すれば、その消費者はまた労働者でもありますから、それが別の分野で働く労働者としての立場に跳ね返ることになります。それでも日本人は、私の言う”過剰サービス”を好むわけですから、まあ長年日本社会に暮らさない、今後もそのつもりのない私が口出すことではないかもしれませんな。

日本とはサービス概念の差が目立つマレーシア社会

以上は前書きです。なぜこれを前書きにしたかといえば、マレーシア社会は、現代日本のような”過剰サービス”を前提とした社会とはかなり縁遠い社会概念を基盤とした社会だからです。顧客サービスは必要分を満たせばそれ以上は余計であり要らないと考える、私にはかなり向いているとも言えますし、事実かなりの場合はマレーシア流の顧客サービスに私は特に不満を感じません。

しかし、全ての場合が満足とはいかないから、ゲストブックに最近載せて下記に再録した 2編のように、当サイトでもときどきその基本サービス精神のなさを批判したり、皮肉ったり、嘆いたりしています。ものには限度というものがありますよね、過剰顧客サービスは要らないし要求もしないが、基本的または必要最小限度の顧客サービスは必要だということです。

昨年だったか日本を訪問した時、関西のある鉄道駅で改札を通り抜ける全ての利用者に、「言ってらっしゃい」 とか「ありがとうございます」 と大きな声を出している駅員のいる駅を利用し、びっくりしました(顔見知りの人だけに言うのではなく、まるでロボットのように全ての利用者に向かって声を出していたからです)。関西人ではない私の知る関西弁で言えば、「あほらし」 としか感じませんでした。この種の余計な顧客サービスのありえない、マレーシア交通機関は、お客様より乗務員と駅員がむしろ主役といった趣です。 顧客サービスはあっさりとしており、それをかなりの程度までは私には許容できると感じます。ただし次に載せたような、基本的サービスの欠如だけは糾弾しなければなりません、なぜならそれは利用者に不便を強いるからです。

以下の一文は2008年 2月23日にゲストブックに書いたものに一部修正し、かつかなり増補しました。

”タッチアンドゴー”プリペードカードの使用を巡る埋まらない溝  

クアラルンプールの公共バス網は2000年前後から、90年代中ごろに比べればかなりサービス向上しました。その後政府会社である SNP が Intrakotaバスと、高架電車両路線を救済買収してその配下に収め、Rapid KLバスと高架電車網を一体化する形にしました。1昨年、昨年と Rapid KLバス網を大きく組み替え、新車両を5百台以上新規導入しました。この点を長年の広範囲なバス利用者として私は大きく評価するものです。もちろん不満点は引き続きあります。

高架電車は新車両導入とか路線組み換えなどはありませんので、この5,6年大きな変化はありません。路線延長に対して予算が付き、つい最近その路線が決定しかけている区間もあります、もちろん建設はこれからであり、完成はもっと先の話です。高架電車は相変わらず時刻表なしの運行です、ということは将来も時刻表が導入される可能性は低そうですね。

最初ハイウエーの通行料支払い手段として登場したプリペードカード Touch 'n Go は、名前通りカードを読み取り器具に接触させることで、入った地点が記憶され、出る地点で料金がカードから引き落とされます、または通行1回あたりいくらの区間では、接触時点で料金が引き落とされます。その後プリペードカード Touch 'n Goは、高架電車両路線に取り入れられ、さらに KTM Komuter電車及びモノレールでも使えるようになりました。 一部の駐車場でもプリペードカード Touch 'n Goが使えるところがあります。

ところでプリペードカード Touch 'n Goはブミプトラ系民間会社の登録商品であり、プリペードカード運営も一手にしています。プリペードカード  Touch 'n Goはマレーシア国民の身分証明書にも、希望すれば機能として組み込むことができます。交通機関で使えるその他のプリペードカードが存在しないマレーシアで、こういった点を考慮するとかなり特別な扱いを受けているプリペードカードといってもいいでしょう。

私はもっぱら高架電車利用のために、早い時期からプリペードカード Touch 'n Go を利用しています。自家用車は所有してないのでハイウエー利用は関係ありません、よってこの論評から省きます。プリペードカード Touch 'n Goは便利であることに疑いはありません、1回1回切符を買う手間を省けますからね。

さて、プリペードカード Touch 'n Goの持つ大きな問題は2つあります:
1つはプリペード料金を追加する場所と時間が非常に限られているということです。KL Sentral駅、Masjid Jamek駅、Bandar Tasik Selatan 駅など、クアラルンプール圏で10にも満たない数の限られた高架電車駅に設けられた専用窓口で、Touch 'n Go購入と料金追加ができます。この限られた駅の中には専用窓口が設置されていなくて高架電車の切符窓口に委託している駅もあります。 朝から晩までずっとこの料金払いサービスが提供されているわけではなく、日中の数時間は休み、夜間も8時ぐらい過ぎれば閉める、といったオープン時間です。さらに休日などに訪れると、閉まっているときもよくあります。委託している切符窓口では、Touch 'n Go機械を扱える職員がいない時は、窓口オープン時間であっても料金追加ができません。 この状況は、利用者がいつでもどこでもプリペード支払いが手軽にできるあり方には程遠い状況です。

2つ目の問題は、このTouch 'n Goを切符の替わりに利用できるサービスを取り入れている、高架電車と、モノレールと Komuter 電車側にあります。いまではほとんどどの駅でもTouch 'n Goを使えることになっていますが、実情はそうではないのです。 なぜ? それは切符の自動改札機の上部に取り付ける形でTouch 'n Go読み取り機が設置されており、大型駅を除いて普通の駅では2台から4台程度の自動改札機にしか読み取り機が取り付けてないことです。つまり改札機は乗る際、降りる際のそれぞれ方向が固定されているので、4台に読み取り機がついていても、片方向では2台しかないことになります。2台しかついてない小さな駅では片方向1機だけですね。

Touch 'n Goの読み取り機は感度が悪く、早いタッチでは上手くいかないことが頻繁にあります。読み取り機自体の性能が劣るのか、整備が悪いのか知りませんが、タッチもこつがいるのです。そこで問題はTouch 'n Go読み取り機の使用不能状態がいろんな駅で頻繁に起きていることです。片方向1機しか読み取り機がない駅では、仕方なく切符を買うしかありません。さらに降りる駅で、その読み取り機が使用不能だと、駅員に事情を説明しなければなりません。

なぜこうも使用不能状態の読み取り機が多いかの原因は駅 及び Touch 'n Goの運営会社の双方にあります。 一般に Touch 'n Go カードに関して、高架電車駅、TM Komuter 電車駅及びモノレール駅の職員は極めて無関心です。使用不能になっていようと我関せずという態度が非常に多い。文句を言うと、Touch 'n Go カードは高架電車、モノレール、Komter とは関係ないという言葉が返ってきます。 確かに理屈上ではTouch 'n Goカードは高架電車もモノレールもKomuter電車も直接運営に関与しているわけではありません。ですから、その駅員がTouch 'n Go読み取り機の点検などに関与する必要がないことはわかります。

しかしですよ、高架電車もモノレールもKomuter も今では積極的に利用者にTouch 'n Goカードを使ってくださいと、宣伝しています。ですから、最低限Touch 'n Goがいつも使えるようにしておくことは、駅側の責任範囲と言えます。例えていえば、ある販売店の店内に置いた自販機が故障した、金を入れても物が出てこないけど、委託自販機だから我が店は知ったことではないという態度では、商売としては失格といえますよね。 

Touch 'n Go 読み取り機能を備えた駅として、自社製品でなくてもそれの読み取り機が使用不能になれば、Touch 'n Go カードの会社に直ちに連絡して修理させるという態度に極めて欠けます。Touch 'n Go読み取り機に対する駅員の態度は、マレーシア社会によく見られる、自分の仕事に直接関係ないことには一切興味をもたないという、いわゆる ” tak apa ”症候ですね。 尚Touch 'n Go カード読み取り機の保守と修理は Touch 'n Go 会社なのかその委託会社か知りませんが、サービスマンが各駅を巡回しながら保守サービスを行っています。駅員は保守に全く関与していません。

私はこのTouch 'n Go カード読み取り不能状態にいくつもの駅で出会ってきたので、その都度駅員に文句を言いますから(もちろんマレーシア語です)、私の観察には自信があります。彼らは、Touch 'n Go カード読み取り機についてはどんなことであれ自分たちの関与することではないという態度を決して崩しません。この認識のあり方は、もう文化観の違いというしかない大きな溝です。駅のサービスの一環として取り入れられている機械が故障していれば、それは駅職員が仕事として気にするべきことの一つであり、顧客サービスの基本だという捉えかたはほとんど通じません。

今週私の地元にある 高架電車駅の片側2機ある読み取り機が両方とも使用不能になりました。1機はすでに2ヶ月くらい使用不能でした。つまりTouch 'n Go カード会社の巡回保守点検がいかにずさんかを示すものです。 残る1機がその日不能状態だったので、窓口に文句を言ったら無視されました。 そこでTouch 'n Go カード会社のサービス電話に直接電話して、これこれの事情だからその日直ちに修理の駆けつけろと、きっぱりとしかしやさしく伝えました。恐らくこれが聞いたのでしょう、翌朝には2機とも使用状態になっていました。 やれやれです。 翌日違う駅から乗ったら、その1機しかない読み取り機が使用不能でした。Touch 'n Go カード販売と読み取りに関しては万事全てこういった状況です。 

Touch 'n Go カード会社のサービス自体が今もって不充分であることはいうまでもありません、加えてそのサービスを取り入れた交通機関で働く駅員の持つ文化感の埋められない溝の存在・・・・
クアラルンプールの公共交通サービスはハード面で非常に向上しましたが、ソフト面ではまだまだである一例を書いてみました。
以上

次の一文は3月21日にゲストブックに書いたものの再録です。なお一部分の表現を修正し語句を加えました。この一文は顧客サービスに関しての捉え方の面でマレーシア企業を典型的に現していると思います。

プロバイダーの顧客サービス精神欠如には相変わらず泣かされます

マレーシアのインターネットサービスプロバイダーは Telekom翼下の TMnet が圧倒的なシェアを誇り、ブロードバンド分野でも恐らく 90%近いではないでしょうか。第2のプロバイダーはシェアでははるかに劣る老舗 Jaring です、そのブロードバンドサービス地域がごく限定されているのが泣き所です。その他プロバイダーには携帯電話会社など数社ありますが、現状ではこの2社でほとんどを占めていると言っても言い過ぎではないくらいです。日本のプロバイダー事情とかなり違います。

私は10年以上に渡ってこの両プロバイダーに加入しており、IT産業に関係ない一般市民としてはかなり早い時期から加入した組です。メールアドレスも依然として両方を使用しており、加えて複数の無料メールも加入しており、目的に合わせて使い分けています。

昨晩 Jaring メールの送信だけが突然できなくなりました。1時間程度送信または受信できないことは、よくあることですから、しかたない明朝(つまり今朝)まで待つことにしました。今朝になって数回試してみましたが、送信サーバー(SMTPサーバー)につながらないのです。これはおかしいと思って、午前午後と何回も JARING Customer Serviceに電話してみました。しかし係りに全然つながりません。

電話番号にかけると、まずお知らせが入り、次いでマレーシア語か英語を選びなさいというメッセージ、 その選択後今度は1から4までの用事に合わせて番号を押しなさいというメッセージ、その後また2つある中から用件を選んで番号を押しなさいメッセージ、といった長ったらしい手続を経てようやく、技術サポートにたどりついても、ずっと話中ばかりでらちがあきません。 この面倒で時間のかかる電話手続を繰り返して、ようやく先ほど夜になってサポート係りにつながりました。 JARING Customer Serviceは無料電話ではないので、これだけでも電話代がすでにかっているわけです。

私の訴えを聞くやいなや、サポート係りは私に Streamyx ブロードバンドを使っているのかと質問してきました。その通りです。そうしたら彼女は Smtp サーバー名とセキュリティー方針をごく最近変えたので、メーラーの設定を変えてくださいと言うではありませんか。 ということは間違いなく少なからずの人が苦情を出していることでしょう、なぜなら上記のマレーシア事情から TMnet の Streamyxを使ってJaringメールを引き続き使っている人は少なくないはずですから。

急に 送信サーバーとセキュリティ設定を変えて、それを通知しないあり方に私は腹が立ちました。くだらない製品紹介メールはこまめに送ってくるのに、重要なメール設定の変更を事前にしらせないという、この精神構造に失望しあきれます。今日午後 Jaring ホームページを2回見て、何かメールサーバー変更のお知らせがないかと探したのですが、見つかりませんでした。 利用者にメールで通知もせずに、お知らせもホームページに掲示せずに、一方的に送信サーバー設定を変更するのが、インターネットプロバイダーのあるべきあり方であるはずありませんよね。 驚くべきことに新しい送信サーバー設定は proxy 設定で、ユーザー認証なしです!  えー、なぜユーザー認証とパスワード入力が不要なのだ? という私の質問に、納得いく答えはJARING Customer Service からありませんでした。これでは迷惑メール出し放題になるのではないでしょうか?

いずれにしろ、私は10数年来マレーシアのプロバイダーに付き合ってますから、この基本的な顧客サービス精神の欠如とつながらないことがしばしば発生するという状況を評していえば、 TMnet 最悪、 Jaring 不可 という評価はいまだ変わっていませんね。これを今日また改めて思い知らされた次第です。 
以上

ということで、過ぎたるサービスは好まないが、基本的サービスの欠如も困りものですね。



個人の確定申告と所得税の説明及び私の意見−税コンサルタントの確定申告ガイド記事を参考にして−


毎年3月と4月は個人の所得確定申告と納税の季節です。そこで所得税に関する説明コラムを2004年2月に、第373回と375回 「マレーシアで個人として税金を納める −前編と後編」 で具体例の形で載せました。

今年3月に「新聞の記事から」 に訳出した記事はマレーシアにおける個人所得税の理解に役立ちますので、一部を書き加えて再録しコラムの形で掲載します。4年前のコラムと合わせて読んでいただき、マレーシアの税金の仕組み理解に役立てていただければなと思います。

在留日本人の多くは対象です

確定申告時に労働許可証があろうとなかろうと、対象年度に所得があれば外国人ももちろん対象になります。ただある年度の途中にマレーシアでの勤務を終えて日本など他国へ行く人は、その時点つまりマレーシアを去る前に所得を確定させて税金面を片付けなければなりませんので、翌年3月4月の確定申告は関係なくなります(退職してまたマレーシアで就職したり個人ビジネスを始めた場合は除く)。

日本から派遣、現地採用に関係なくいわゆるエクスパトリエイトの日本人は課税対象になり、確定申告義務があります。ただし会社が代行している場合が多いでしょうから、内容を気にしない方も少なくないことでしょう。尚エクスパトリエイトは例外なく課税対象です、なぜならその給料が年間 RM 24,000 程度という条件では労働許可証がおりないはずだからです。

”マレーシアは第2の我が家” プログラムの参加者の中にも法律上は申告義務が発生する場合が起こります。だからプログラムの公的説明文書には、税金に関してはマレーシアの法律に従うとさらっと書かれていますね。ただしマレーシア政府官庁は、プログラム参加者から課税されるのではと捉えかねられないという”誤解”を恐れてでしょう、そのことを全く強調していません。さらに参加者で進んで確定申告する人はごくわずかでしょう。こういった事情から、多くの”マレーシアは第2の我が家” プログラムの参加者は納税者番号自体を取得していないと、私は推測しています。下記でも説明されていますように、国外からマレーシアに持ってきたお金は課税対象になりません。

課税対象者は登録義務

課税対象となる人は税務庁宛てに前年度所得の確定申告をしなければなりません。課税程度は申告した所得と控除と軽減額に基づきます。例えば、独身の被雇用者で年間所得RM 27,000ある人で、控除額が基本控除及び被雇用者福祉基金納付金だけの場合は、課税対象となります。 初めて確定申告する人は、税務庁にまず納税者登録しなければなりません。その場合は、身分証明またはパスポート、雇用者からの前年度所得証明書(EA書式)、(配偶者がある場合は)婚姻証明などを税務庁に持参して登録します。

ある個人において、その人の個人控除額を差し引いた後の額に対して課税されます。その場合の課税所得額は RM 2500から始まります、最初のRM 2500は税率 0%、次いで RM 2500毎に税率が増えて、最高28%です、つまり課税所得 RM 25万以上は一律に28%となります。 税法上の非居住者個人は、その所得全体に一律 28%の税率となり、控除は一切ありません。

申告期限

納税者で申告用紙を3月までに受け取らない人は、4月14日までに自主的に税務庁へ行き用紙を入手しなければなりません。確定申告用紙は 税務庁の所定の部署に決められた期日までに提出しなければなりません。
申告用紙申告者の内容提出期限納税期限
B書式居住者でビジネス所得のある人6月30日6月30日
BE書式居住者でビジネス所得のない人4月30日4月30日
M書式非居住者4月30日4月30日

Intraasia注:居住者、非居住者という意味は、マレーシア国民である、ないとは関係ありません、あくまでも税法上の居住者です。

去年までに確定申告を e-Filing と呼ばれる電子申告方式で行った人には、もはや紙の申告用紙を郵送しません。紙の申告用紙を今年受け取った人で、電子申告方式に切り替える人は、手続後そうできます。(注: e-Filing の話題は下段に載せています)
確定申告を怠った人には、法律に基づいて罰金または懲役を科せられます。

源泉徴収

被雇用者は源泉徴収税率表に従って、毎月源泉徴収されることになっています、これを通称 PCB と呼んでいます。 雇用者は翌月の10日までにこの徴収額を税務庁に振り込む義務があります。給与所得以外に所得ある人は、その所得に対して課税され、その場合は翌年3月から 6回の2ヶ月毎の均等納税となります。

源泉徴収不充分などで収めてない税金がある場合は、上記表のように4月末または6月末までにその分を収めなければなりません。納税は、税務庁本庁カウンターで収める、申告用紙に小切手を同封する、または特定銀行の窓口で納めます。納税遅延は最高15%の追加となります。

課税対象と対象外の説明

マレーシア国内をで源泉とした所得は、特例を除き、全て課税対象になります。外国を源泉とした所得でマレーシアに送金されたものは課税対象になりません。
以下は個人にとって課税対象となる所得の分類です:

交通費、娯楽費などにおいてある程度は控除を認められることがありますが、それをビジネスの必要経費であるとして税務庁に証明しなければならないのは納税者側です。

課税対象外として報告しなくてもよい給与用所得には次のようなものです:

配当金収入

外国の配当金

利子所得

家賃所得
家賃所得は申請する必要があり、通常これは投資収入としてみなされます。家賃所得のための費用として認められるのは次のものです:

賃貸による損失は、他の所得から発生する税と相殺することはできません。

ビジネス所得
ビジネス所得は次のものを差し引いてから課税対象所得となります:

もっぱらビジネス所得を生み出すためだけに発生した全ての費用と出費の説明:

その納税者が固定資産を所有し申告対象時期の終わりにおいてもビジネス目的に使用しているという条件を満たせば、資本控除を請求することができます

個人控除

個人控除が認められるのは税法上のマレーシア居住者だけです、そしてそれは総収入から差し引かれます。控除には次のようなものがあります(証明書類が必要):

戻し税

課税額から戻し税が差し引かれます。戻し税額は:


税法上の居住者の定義

ある個人は次の条件のどれかを満たせば居住者と見なされます:

その他細かい規定は省略します

所得税率

課税所得において、最初のRM2500は 税率 0(つまりRM 2500までなら所得税なし)、その次ぎのRM 2500は 税率 1%(つまり RM 5000の人は税金 RM25)、 その次のRM15000 は税率 3% (つまりRM2万の人は税金 RM 25 + 450= 475 )、こうして計算していきます、途中省略。 最後は RM25万の人で 税金 RM 54975 です、RM25万を超える所得は 一律28%の最高税率となります。次の計算表をご覧ください。
課税額と税率と税額の計算表

課税額 RM税率税額 RM
最初の額
2,500
0
次の額
2,500
1%
25
最初の額
5,000
25
次の額
15,000
3%
450
最初の額
20,000
475
次の額
15,000
7%
1,050
最初の額
35,000
1,525
次の額
15,000
13%
1,950
最初の額
50,000
3,475
次の額
20,000
19%
3,800
最初の額
70,000
7,275
次の額
30,000
24%
7,200
最初の額
100,000
14,475
次の額
15,000
27%
40,500

250,000
54,975
25万を超える額
250,000
28%


インターネット申告 e-Filng 

3月後半の新聞に次のような記事が載っていました。

税務庁は今年の個人確定申告者数 約300万人の内、半数ぐらいがインターネット申告である e-Filng を利用するのではと推測しています。e-Filngは昨年までに比べてより使いやすくなったと、税務庁は利用を推進しています。昨年e-Filngを利用した個人申告者は87万4千人で全体の28%した、これはその前年比2倍半でした。税務庁の長官は、近い将来この数字を80%に上げたいとしています。「今年は半数の個人申告者つまり150万人ほどによる e-Filng利用を期待している。国内には個人申告者300万人と法人申告が150万社です。」

税務庁は今年から、電子証明をダウンロードしなくてもよいシステムに変更し、且つ新たに税務事務所が e-Filngを代行することを認めました。 税務庁はe-Filng ビデオガイドを(限定)配布し、ホームページからダウンロードできると、奨励しています。


確定申告対象者数300万人はいかにも少ないのではないだろうか

まずマレーシアの税制では、税還付を申請するためだけに確定申告が必要ということではなく、所得課税対象者は源泉徴収がされている、されていないに関わらず、全員確定申告の必要があるということです。なお、例えば月給がRM1,000ぐらいの人は、その低所得額ゆえに最初から課税対象にはなりません。

そこで上記で言及されている、個人の確定申告者がたった300万人という数字に驚きます。国民人口2600万人の国で、この数はいかにも少ないのではないでしょうか。国民人口中20歳以上の人口比は 約57% と計算されますので、2007年の国民人口2600万人弱の57% は大雑把に1500万人弱になります。この内、学生、無職・失業者、家庭主婦、退職者・高齢者などの人口を差し引いても、300万人強という数字はいかにも少ないと思われませんか。ちなみに関連した数字を示しますと、国民労働人口は1100万人強、その内公務員が約110万人です。

確定申告すると、被雇用者福祉基金の納付も控除されますので、独身者なら大まかに年収約 RM 2400以下は課税されませんし、夫婦子供のある人は控除額が増えて課税最低限がもっと上がります。従って給与受領時に源泉徴収されていても、申告時に税還付を請求しそれが認められれば後日に税還付があって、実質的に所得税がゼロになる人が結構でてきます。税務庁の幹部が明らかにする数字によれば、 2006年度所得及びそれ以前の所得申告に対する2007年の税還付件数は、392,000件で、その合計額はRM53億でした。この数字は税還付申請処理件数の約8割にあたり、2割は申請に不備や疑いがあり還付に至らなかったとのことです。

こういう人たちを含めて確定申告対象者が300万人強というのは、いかに所得捕捉率が低いかを示す数字だと思わざるを得ません。相当な数になる小規模個人事業者、その内のかなりの割合であるいわゆる屋台商売人はどれくらいの申告者数なんでしょうね。農民漁民の申告者数がかなり低いことはニュースなどからもよく感じます。 企業に雇用される被雇用者の場合が一番所得を捕捉しやすいというのは、多分どこの国でも事実でしょう。 私は税の専門家ではないですが、こういった事実を知るにつけ、税負担と納税の公正さの面から、労働人口における非雇用者に対する税捕捉の向上が必要であると、いつも感じます。

e-Filing で確定申告はお勧めです

私は今期 e-Filng で確定申告したのでそのことを、3月21日のゲストブックに書きました。そこで最後にそれをここに再録しておきます。

今日私は、税務庁(Lembaga Hasil Dalam Negri Malaysiaというのが正式名ですが、意味を取って訳しています)の支所を訪れて、電子申告してきました。この間のニュースに載せたように、e- Filing という方法です。つまり申告書に記入してそれを税務庁宛てに送るのではなく、税務庁のホームページを開いて自分を登録してから、一定書式を埋めて送信する仕組みです。

例年2月中には届く、申告用紙が今年は届きませんでした。私は15年ぐらい納税者番号を保持しており、毎年申告してますので、届かない理由の 99%は郵便の配達ミスでしょう。もし配達ミスがあってもそれを正しい郵便受けに入れてくれる、アパート住民意識の欠如もあります。これはこの何年か急激に増えた外国人労働者と違法滞在者の存在のため、マレーシア人居住者が半減してしまったことが恐らく大きな理由です。腰かけ的に滞在する者たちの居住意識と、そこを我が家とする住民の意識にはあきらかに差が出ていますね。

ということで、今年は初の e-Filing にしようと思ったわけです。先日税務庁行ったときに、e-Filing用の登録番号を入手し、質問もしていたので概要はわかりました。もちろん我が家のパソコンからもe-Filing できますが、税務庁オフィスでやれば、送信証明書を印刷してくれますし、記入中に質問もしやすいということで、支所へ行って e-Filingしました。

専用の部屋に20台位パソコンが用意されています。長い間毎年自分でマレーシア語100%の申告用紙の税務用語と難しい文章に格闘しながら申告してきましたので、初めての e-Filing のマレーシア語画面にもあまり違和感はありませんでした。まあ収入種がごく簡単で世の基準から言えば低額な私ですし、控除は個人の基本である RM 8,000だけですから、欄をたくさん埋める必要はないのです。

結論をいえば、e-Filingはたいへん良い方法だと思います。必要事項を埋めていくと、数字の部分はただちに自動計算されますし、記入ミスも送信前なら簡単訂正できますからね。 e-Filingは自分で申告してみようという方にはお勧めです。

ということで、個人には低所得者保護のために全員に対して戻し税がRM350あるので、それを課税額から差し引くと納税額はありません、実際は去年徴収されたわずかの税金が戻るはずです、もちろん還付請求が条件です。


2010年3月の追記

マレーシアもこの時期 3月4月は所得確定申告の時期です。ただし日本との大きな違いは、被雇用者の場合いわゆる年末調整が行われないので、被雇用者は自分で確定申告する必要があります。会社組織に雇用される場合は、初めて被雇用される時点で、その人の税納入者番号が内国収入庁つまり税務庁に登録されます。よってその番号を使って毎年、前年度所得を申告することになります。申告用紙には支払った(差し引かれた)税金額及び種種の控除額も当然記入しますから、源泉徴収額がちょうど総所得に見合っているため税金支払い面でなんら調整が要らない人、税金が戻る人、追加税を払う必要がある人、の3種に分かれることになります。

被雇用者である、ないに関わらず、納税者番号のある人は前年度所得のある人もない人も全て所得確定申告する必要があるわけです。もちろんこれは建前であり、所得があっても内国収入庁つまり税務署に個人の税納入者番号が登録漏れになっているような人たちは、確定申告をしないことになります。だから毎年実際に確定申告する人は300万人前後という、1千万人を超える勤労者人口に比していかにも少ない人数を感じさせています。

前年度(2008年度)と比べての変化: 累進課税における最高税率が 28%から 27%に下がった、課税所得額がRM 35, 000を超えない人への戻し税額がRM 350から400に上がった、及びその他 ( Intraasia 注:ただし戻し税額の方が納税額より大きくても、その差額がもらえることにはなりません)

マレーシア人と非マレーシア人を問わず、税法上のマレーシア居住者の場合(下記の Intraasia注を参照)、申告できる主な控除とその控除額の例
本人控除 RM 8千、 両親の医療費 RM 5千まで(制限あり)、 身体不自由者 RM 6千、 重病に対する医療費 RM 5千(制限あり)、新聞雑誌の購入 RM 1千(制限あり)、総合健康診断費用 RM 5百(制限あり)、個人使用のパソコン購入費 RM 3千(制限あり)、スポーツためのスポーツ用品 RM 3百(制限あり)、離婚後の扶養生活費 RM 3千(制限あり)、通常の子供控除 RM 1千、18歳以上未婚の子供で高等教育機関で学んでいる子供 RM 4千、 身体不自由な子供 RM 5千、生命保険とEPF納入金 RM 6千(制限あり)、 など 

Intraasia 注:居住者、非居住者という意味は、マレーシア国民である、ないとは関係ありません、あくまでも税法上の居住者です。

税コンサルタント会社のアドバイスによれば:
(夫婦は別々に申告するか、配偶者を扶養者にした合同申告にするかを選択できます) 夫と妻は別々に申告したほうがいいでしょう。 一般に配偶者が全く所得がないまたは年間所得がRM 3千未満の場合は、 申告する夫または妻が合同申告したほうが得になります。なぜならその配偶者を扶養控除にすれば控除額 RM 3千が認められるからです。
夫婦の場合、所得の多い方が子供控除を申告すべきです。

マレーシアの所得税に関する規定では、外国源泉の所得は、たとえマレーシアに送金されたとしても、課税対象にはならない、となっています。ですから毎年度の所得申告用紙にそれを記入する必要はありません(と、税務署も税務コンサルタンも明言しています)。税コンサルタント会社が例としてあげている申告不要の所得例をあげますと: 国外にある不動産から得た賃貸所得、マレーシア国外で雇用されていることから得る且つマレーシア雇用に付随するものではない被雇用者所得



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