迷子のヒナ鳥

雨上がりの朝です。
みんなが登園する前の、まだ濡れている園庭に、何やら動くものが・・・
ウグイス色の小さな卵ぐらいの大きさの・・・

あれ!?
小鳥のヒナだ!
しかも、ビショ濡れ。
どこから来たのかしら?
ここは園庭の真ん中です。

パタパタパタと弱々しく、地上2〜30cmの高さを小刻みに移動して、園舎の廊下までやってきました。
これは、巣立ったばかりの、メジロのヒナです。
親とはぐれた上に、夕べからの雨に濡れて、すっかり弱っています。
さあ大変!
タオルと干し草でつくったベッドで、暖めてあげましょう。
園長先生が、何か持ってきたよ。
これは、園長先生手作りのヒナのすり餌です。
米ぬかと、削り節を練り合わせて作ったんだって!

大丈夫かな?
早く元気になあれ!
「ピヨピヨ・・・」
弱々しい声で鳴いています。

園長先生が子どもの頃、お父さんがよく、このすり餌を作って、迷子のヒナ鳥を助けていたそうです。
削った割り箸の先で、少しずつ食べさせます。
その時です!
ピピピピピ〜!
親鳥とおぼしき、つがいのメジロが、園庭を見下ろす木の上にやってきました。

お父さん、お母さんが迎えに来たんだね。
怖がって、近寄れないから、みんなは少し離れててね。

子ども達は、園庭の隅に移動です。

先生が、箱からヒナを出しました。

濡れていた羽が乾いて、さっきより元気になったよ。

みんなが、園庭の隅で、そっと見守ります。
朝礼台の上にいるヒナの上空を、2匹のメジロが元気づけるように、ピーピー鳴きながら飛び回ります。
その声に励まされて、鉄棒のところまで、自力で移動したヒナ鳥のところに、お母さん鳥が近づいてきました。
今度は、石垣のところまで登ったよ。
「しっかり、がんばって!」
お母さん鳥が必死に励ましている声が聞こえてくるようです。

後から調べたら、自然界では、巣立ち後に親鳥と過ごす僅かな期間(1週間〜1ヶ月)が、「何が危険か?何が食物か?その食物をどうやって捕るのか?」などを学習して、独り立ちする、最も大切な期間なのだそうです。
だから、その時期にはぐれてしまったヒナを、親鳥は必死になって探すのだそうです。
なんだか、人間とよく似ていますね。
仲良く、山に帰っていく親子の様子は、子ども達の心にも、強く残ったことでしょう。