2005年2月20日(日)  曇り

京都宿坊、世界遺産めぐり

先週末、3連休だったので京都のお寺に泊まってきた。宿坊という言葉を聞くと、修行のお坊さんと寝起きを共にするみたいな妙に宗教っぽい感じがするが、実際はそうではない。atheistな私だが、別に毛嫌いしているわけでもなく、ここのところお寺にもお世話になることが多く、お経の調べや鐘の音、お線香の香りなどある意味心落ち着く感じがして、アロマセラピーやエステチックな気分でいる。

今回は世界遺産を巡るのが目的でもあったので、それにぴったりな仁和寺にお世話になった。ここには「御室会館」が併設されていて、普通の旅館と何ら変わりない設備が整っていた。もちろん、本当は檀家さんなどが泊まるために作られたものなのだろうけど、他の宿坊もそのようだがまったく関係ない人でも予約して泊まることができる。しかも、宿坊はどこも安い。京都のいい旅館に宿泊するならまだしも、そこそこのホテルに泊まるくらいならばよっぽどまともでゆったりとした時間が過ごせる。

泊まった部屋(「研修室」という位置付けらしい)は20畳もあろうかというスペース。布団2枚敷いてテーブルが置いてあってもまだスペースが有り余ってるくらい。そんなところに2人。これで一泊一人5000円ちょっと。いままでこういうところがあるのを知らなかったのが残念でならない。普通ホテルに泊まれば1万円はくだらないだろう。それが5000円。普通の差し障りない建物の狭いホテルの部屋に泊まるのがバカらしくなってくる。しかも、お寺の境内の中で、静かだし何しろ世界遺産の中で眠るわけだ。それだけで意味がある。

宿坊といってもお茶は出てるし、布団も敷いてくれるし、朝ご飯がついている。そしてこの朝ご飯がまた格別においしかった。最近のホテルの何が嫌かというと、朝ご飯。よっぽど高級なホテルか旅館に泊まらなければ、大抵はビュッフェスタイルの干からびたハムと冷めた玉子とべちゃべちゃなご飯。それか、これでもかこれでもかとテーブルいっぱいに並べられる食べ物に圧倒され胸焼けするまで食べさせられるか。でもここは違う。精進料理こそ出なかったが、ちょうどいい量で、バランスの取れたおかず。そして何よりお米の炊き具合が完璧だった。おひつを平らげるほどおいしくお米を食べさせてもらったのは今までで初めてだった。

朝ご飯を終え、用意をして外へ一歩出ればそこはすでに仁和寺の境内。便利。仁王門のすぐ横にある宸殿の庭は今回見て回った中で一番落ち着いた場所だと思った。映画でも撮影に使われたところらしく、回廊などはこざっぱりすっきりしていて、お庭もきれいにしている。何よりもさほど人がいないので、龍安寺のようにせせこましいことなく、ボーっと座っていられる。とはいえ、さすがに日が照っていても凍えるように寒かったので、長居できなかったのが残念で仕方ない。春頃になれば何十分かボーっとしてみるのもよさそうだ。

仁和寺の門限は23時で、十分遅い。とはいえ、なるべく早く寝て次の日の京都観光に臨んだ。仁和寺でも朝からお坊さんたちがお勤めをしている。強制ではないが出たい宿泊客はそれに参加できる。3日目の朝出ることにした。

朝はそんなに早くなく6時半からだった。まだ暗がりの中、会館を出て、境内の道を歩いて本堂へ向かった。ひっそりとした京都のお寺の朝は、それはそれでおつなものだ。本堂につくと、3人のお坊さんが既にお勤めを始めていた。板の間の外にある絨毯の上で正座して、30分ほどのお経の音を堪能する。この本堂にある阿弥陀如来は普段は公開していなく、こうしてお勤めに出たものしか見られない。暗がりの中で金色に浮き上がる如来さんを見ながら、しばらくボーっとしていると、背中の方から朝日が指してきた。時折鳴らす鐘の音と、煙と共に漂ってくる線香の香り。心癒される時を感じた。

この週末はがそろそろかなあと思ってちょっと期待していた。ここ2年ほど神代植物公園の梅を見に行っている。それまで梅なんてどんな花だったっけ?と思うほど縁遠い花だった。寒い白い冬のイメージが解け始めてぽっとピンクの色づく春を匂わせる。その綺麗さは桜とまたちょっと違い、冬の厳しさをそのきゅっと締まった樹木で表現している。桜ほどの華やかさは無いけれども、季節の流れを告げる木として紅葉とともに自宅に欲しいものの一つだ。

この3日間、南禅寺無鄰庵青蓮院仁和寺、2日目に妙心寺龍安寺北野天満宮祗園、そして最終日は上賀茂神社下鴨神社とかなり歩き回った。おかげで途中から左ひざのお皿あたりが痛くなってまともに歩けなくなった。情けない。運動不足に違いない。とはいえ、なかなか充実した3連休だった。


おまけ。京都といえばやっぱりあんこ。あんこ王国を満喫した週末でもあった。

  • 上賀茂神社の神馬堂のやきもち
    これが最高だった。いわゆるあんころ餅の逆さバージョンを鉄板で焼いたもの。大福とはちょっと違う餅らしい皮が外は焼き色うっすらで中はやわらかーい。思わず、一人で1日に6個ぐらい食べてしまった。これはオススメ。
  • 北野天満宮の長五郎餅
    やわらかい餅に包まれたあんこ大福。これも上品でなかなか。