霊子理論

霊子の形態霊子荷活性状態霊子物質その他


 

霊子の形態


 霊子は以下のような基本性質を持ちます。


○基本形態

 霊子は内部空間では概念上の粒子であり、幽子に情報を伝える媒体となりますが、物理空間では霊的エネルギーを持つ微細粒子となります。霊子が粒子であることは間違いありませんが、物理空間においては実体としての要素を半分しか持たず、半物質あるいは半存在とも呼ばれる非常に不思議な物質となります。


▼構造
 霊子は核となる微細粒子(霊子核)の周囲をエネルギーが取り巻いているような構造しています。霊子の状態の違いというのは、霊子核の周囲を取り巻くエネルギーの状態で区別されます。


▼エルネギーの放出
 霊子が実空間と内部空間を自由に行き来できるのは、先に述べた通りです。この移動の際に、霊子はそれぞれの空間で存在するための形態に属性を変えてしまいます。これにより、実空間でエネルギーを保持していた霊子は、内部空間に入る時にエネルギーをすべて放出することになります。これが霊子エネルギーと呼ばれるもので、放出するエネルギーがほぼ100%となるので、霊子機関は通常の動力機関に比べて高効率となるのです。


▼外見
 霊子はそのエネルギー状態に応じて見た目が異なります。通常の浮遊霊子の場合は、霊子核とエネルギーが結合した安定状態にあり、不可視の存在となります。しかし、エネルギーの活性状態が高まると、それに応じて青白い光を放つようになります。これは霊子エネルギーが可視状態となるためで、霊子核が目に見えるわけではありません。


○変化と状態

 霊子の状態を決定する要素には以下のようなものがあります。


▼結合状態
 密度やエネルギーの高さに応じて、霊子同士の結合状態が変化します。結合状態が強くなるほど、より物質に近い性質を示すようになります。

▼霊子荷
 霊子核の周囲を取り巻くエネルギーには、正と負と中立の3つのタイプがあります。このタイプを『霊子荷』(霊荷)といい、どの霊子エネルギーが核を取り巻いているかで、全体の霊子としての性質が決まります。

▼活性状態
 霊子は活性状態に応じてエネルギーの大きさが変化します。これには異常活性化、活性化、結合化、死化という4つがあります。霊子エネルギーを活性化させることを「励起させる」といい、活性状態のことを励起状態ともいいます。


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結合状態


○基本

 霊子はエネルギーを仲立ちとして結合を行うもので、結合状態は密度やエネルギーの高さに応じて変化します。


▼要素と変化
 霊子の密度が高いほど結合しやすく、霊子同士の距離が離れるほど緩い結合へと変化してゆきます。この逆に、エネルギー状態が高いほどバラバラになりやすく、低いほど結合しやすい性質を持っています。


▼霊子物質
 半結合状態より強い結合状態にある霊子は、物質としての特性を備えるようになるため、『霊子物質』(エーテル・マター)と呼ばれています。このような霊子は手に触れて動かしたりすることができますが、物理的な力を加えても結合状態が部分的に解かれるだけで、物質として霊子が破損するわけではありません。


○種類

 結合状態は4種類に分類され、それぞれ「浮遊状態」「自由結合状態」「結合状態」「全結合状態」といいます。後者ほど高い結合状態となり、物質としての性質をより強く示します。
 通常、自然界にある霊子の結合は、自由結合の状態までしか起こりません。それより強い結合が起こるのは、科学魔道技術や変異現象などの影響によるものです。つまり、霊子物質というのは、何らかの霊的効果によって生じる特殊な物質ということになります。


▼浮遊状態(遊離状態)
 浮遊状態にある半霊物質は、遊離の状態で自由に動くことが出来ます。これが霊子の基本的な存在形態であり、通常はこのように密度的に非常に希薄な状態で漂っています。このような状態にある霊子のことを『浮遊霊子』もしくは『遊離霊子』(フリー・エーテル)と呼びます。
 星界では霊子が通常より高い密度で存在しておりますが、実空間と同じく浮遊状態にあることは変わりありません。この状態では不可視の存在となり、活性化しなければ見分けることは出来ません。


▼自由結合状態(霊気状態)
 霊子エネルギーが霊子核同士の仲立ちとなり、浮遊霊子を結合している状態となります。しかし、この結合状態は非常に緩いもので、霊子エネルギーは霊子核の間を自由に移動することが可能です。このような状態にある霊子のことを『気体霊子』(エーテル・ガス)と呼びます。
 この時の霊子は物質的な要素を半分だけ備えるもので、空気のようにわずかな抵抗を感じます。しかし、この結合は簡単に断ち切れるもので、霊的エネルギーの影響を受けた時は、すぐに遊離の状態に戻ってしまいます。また、強風など外部から強い物理的影響を受けた場合も、霧や煙のように拡散してしまいます。なお、霊子の密度が高く、かつエネルギー活性の低い状態にある時は、自動的に再結合が生じることもあるようです。
 緩い結合状態といっても、もともと霊子は微細な粒子であるため、広範囲で結合が起こらなければ触れても気付くことはありません。また、密度がある程度より高ければ、雲のように霞んで見える場合もありますが、通常は視覚によって認識することは不可能といってよいでしょう。


▼半結合状態(液化状態)
 半結合状態にある霊子は、物理世界の物質と同じ性質を備え、液相状態やゼリー状の流体に形を変えます。これは互いの位置を束縛するほど強い結合ではありませんが、簡単にバラバラになるほど弱い結合状態でもなく、粒子同士の位置がよほど離れることがなければ、この状態を維持し続けます。
 半結合状態にある霊子は手で触れることもできますし、ごく普通に視覚で認識することが可能です。なお、霊子は結合状態が強まると活性化する性質を持つため、この状態にある時はごくわずかに輝き、青く透き通った液体もしくはジェル状物質(ゼリー状)として認識されます。なお、科学魔道時代には液体状の霊子を『液体霊子』(エーテル・リキッド)、ジェル状の霊子を『柔質霊子/膠質霊子』(エーテル・ジェル)と呼んでいました。


▼全結合状態(結晶化状態)
 霊子同士が完全結合した状態になると、結晶状の物質へと変化します。このような状態にある霊子のことを『結晶霊子』(エーテル・クリスタル)と呼びます。
 これは青く透き通った鉱石のようなもので、物理的に強い力を加えられなければ結合状態を保ち続けます。霊子の存在形態としては非常に特殊な状態であり、自然状態で完全結合が起こることは滅多にないようです。


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霊子荷


 霊子にはいくつかの状態があります。まず、大きく分けられるのが実空間での霊子と、内部空間での霊子です。内部空間というのは不可視の存在であり、これを観察することはできません。そのため内部空間の霊子の形態はまったく知られておりませんが、実空間の霊子については科学魔道時代に詳しく研究されておりますので、それを簡単に説明します。


○タイプ

 霊子は核となる粒子(霊子核)の周囲をエネルギーが取り巻いているような構造しています。霊子の状態の違いというのは、周囲を取り巻くエネルギーの状態で区別されます。
 霊子核を取り巻くエネルギーを霊子エネルギーと呼ぶわけですが、これは電子のようなもので、正と負と中立の3つのタイプがあります。このタイプを『霊子荷』(霊荷)といい、どの霊子エネルギーが核を取り巻いているかで、全体の霊子としての性質が決まります。
 正の霊子を正霊荷型、負の霊子は負霊荷型、中立のものを中立型と呼びます。霊子エネルギーは正のみ、正と中立、中立のみ、負と中立、負のみの5つの組み合わせで霊子核を取り巻いています。正と負のエネルギーは互いに打ち消し合うため、正と負の霊子が同時に霊子核を取り巻くことはありません。これに対して、中立型はどちらの影響も受けません。


○属性

 霊子が全体として正の属性を帯びていれば正霊荷型霊子(正霊子、陽霊子)といい、中立型であれば中立型霊子(中立霊子)、負であれば負霊荷型霊子(負霊子、陰霊子)と呼びます。正霊荷や負霊荷にはそれぞれ2つのタイプがあり、霊子核の周囲に正の霊子エネルギーしかない場合はプラス&プラス(++)、正と中立があればプラス&ゼロ(+0)というように区別します。同じく負のみであればマイナス&マイナス(−−)、負と中立であればマイナス&ゼロ(−0)です。中立のみの場合はゼロ&ゼロ(00)となります。
 これに関連するのが、『瘴気』や『聖気』というものです。瘴気属性となるのは、肉体や精神を構成する霊子が負霊荷型(−−)のものです。魔族や不死者と呼ばれるものも負霊荷型(−−)に属しており、魔人の場合は(−0)となります。これに対して人間(+0)や天使(++)と呼ばれるものは正霊荷型に属しています。ですから、人間は天使の聖気で傷つけられることはなく、逆に不死者や魔族には浸食されてしまうのです。なお、精霊と呼ばれる存在は中立(00)ですので、聖気や瘴気によって傷つけられることはありません。


○霊子物質

 霊子物質の属性はすべて中立(00)となります。+や−の霊子荷を持つのは、生命体もしくは精神体(霊体など)として活動するものに限られています。


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活性状態


 霊子荷の他にも、霊子にはいくつかの状態があります。それが霊子エネルギーの活性状態です。


○エネルギー状態

 霊子のエネルギー状態には、異常活性化、活性化、半活性化、結合化、死化という5つがあります。通常、霊子が物質空間にある時は、霊子核と結合した状態を保っています(結合化)。これが活性化すると霊子エネルギーは核から遊離します。こうなって初めてエネルギーとしてこれを利用できることになります。霊子エネルギーを活性化させることを「励起させる」といい、活性状態のことを励起状態ともいいます。


▼密度
 霊子エネルギーは、霊子の密度が高い状態にあるほど活性化しやすくなります。自由結合の状態にある場合は、半分活性化している不安定な段階にあり、エネルギーとしては利用しやすい形態といえます。


▼気体霊子
 自由結合状態にある気体霊子(エーテル・ガス)は、霊子エネルギーが霊子核同士の仲立ちとなり、浮遊霊子を結合している状態となります。しかし、この結合状態は非常に緩いもので、霊子エネルギーは霊子核の間を自由に移動することが可能です。これは活性化と結合化の中間の状態にあるため、半活性化状態と呼ばれています。


▼死化と転移
 活性化した霊子エネルギーが遊離してしまった後の核だけの状態を死化といいます。逆にいえば、この段階ではじめて霊子は内部空間に移動できることになります。つまり死化状態にならなければ、情報を媒介することはできません。


▼霊子核
 霊子核は最小単位ではなく、それ以下の微粒子の結合によって形成されていると考えられています。しかし、その構造解析は科学魔道時代にも成功しておらず、現在も不明のままです。ただ、高いエネルギーを与えることで霊子核が崩壊し、周囲に高エネルギーを放出することだけが知られています。これを利用した技術が霊子核融合砲です。


○異常活性化

 今まで説明した3つの状態は、ごく普通の自然状態で存在するものです。しかし、異常活性化というのはこれらとは大きく異なります。
 異常活性状態は、霊子核が崩壊した時に霊子エネルギーと核とのエネルギーバランスが崩れることで起こります。霊子核が崩壊すると、霊子は通常よりも高いエネルギー状態に移行します。この状態になると、霊子エネルギー自体が霊子核を崩壊させるほどのエネルギー量になります。この時、崩壊した霊子核が内部空間に移行すると、異常活性化した霊子エネルギーはフリーとなり、他の霊子核を攻撃します。そして核が崩壊した霊子は再び異常活性化し……という具合に、サイクルが出来上がってしまうのです。
 大変異現象はこうして発生することになりました。この現象が術法よりも超常的な現象となったのは、崩壊した霊子核が情報の伝達ミスをおかすためです。ただ救いがあったのは、異常活性化した霊子エネルギーも正負の属性を失わず、正と負のものが出会った場合は互いに消滅してしまったということと、高エネルギー状態がやがて減衰していったことでした。
 このため、大変異現象と呼ばれる霊子核の完全崩壊をもたらすほどのエネルギー状態は収まったのですが、その後も活性化レベルのエネルギー状態が続き、霊子核の部分崩壊を引き起こしています。これが現在起こっている変異現象の原因であり、術法のような小さな変化が現在でも続いているのです。


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霊子物質


 霊子からエネルギーを取り出すためには、『霊子機関』(エーテル・リアクター)というものが必要です。しかし、これを用いるためには『霊子物質』(エーテル・マター)をエネルギー源としなければなりません。


○結合化

 霊子という存在は、実空間に普通に存在するとはいっても、かなり希薄なものです。ですから、これをまとまった形で集めなければ霊子機関の燃料として使用することはできません。そのため、科学魔道時代には、空間に浮遊している素粒子レベルの希薄な霊子(浮遊霊子)を、霊子物質に転換する技術がありました。この技術を用いて星界の濃密な霊子を霊子物質にし、それをエネルギー源としていたのです。


▼活性状態
 結合化技術はエネルギー量の問題だけではなく、活性状態の制御を行なう目的もあって開発されたものです。霊子は密度が高くなるほど活性化しやすい傾向にあります。自由結合の状態にある場合は、半分活性化している不安定な段階にあり、エネルギーとしては利用しやすい形態といえるでしょう。しかし、不安定であるということはエネルギーが逃げやすく、安定利用・保存がしにくい状態であることも間違いありません。
 液化あるいは結晶化というのは、それを安定して保持しやすい形に変えるための人工的な手段であり、物質としての形質を与えることで状態を安定させながら、内部の活性状態はそのまま維持されています。そのため、安定保持とエネルギー利用のしやすさを同時に解決した、非常に優れた技術ということが出来ます。この性質は科学魔道技術によって生まれた霊子物質だけでなく、変異現象によって生じたものにも備わっています。


○種類

▼科学魔道
 科学魔道時代には浮遊霊子を結合化し、『液体霊子』(エーテル・リキッド)もしくは『結晶霊子』(エーテル・クリスタル)の形で利用していました。
 
◇輸送
 星界からの輸送時には浮遊霊子を気体霊子(エーテル・ガス)にし、物理的なパイプラインを組むのではなく、空間に霊子の流れる方向を設定することで搬送を行ってました。これの名残りが『霊風』(エーテル・ウィンド)と呼ばれるものであり、現在でも星界へ繋がる空間のほころびからトリダリスへと流れ出しています。なお、霊風は自由結合状態の霊子であり、通常は目に見えることはありません。


▼霊石と霊水
 聖歴789年現在のエルモア地方には結晶化などの技術はなく、『霊石』(エーテル・ストーン)や『霊水』(エーテル・ウォーター)と呼ばれる霊子物質を使用しています。この霊石と霊水というものは科学魔道時代につくられたものではなく、大変異現象によってできたものです。
 実は異常活性化した霊子が固まってできたのがこれらの霊子物質であり、低いエネルギー段階の異常活性状態(変異の原因となる霊子の活性状態)にあります。このため、霊水や霊石を使用した場合、『霊子蒸気』(エーテル・スチーム)という変異の原因になる煙が発生します。エルモア地方の人々はこのことに気づかないまま、霊子機関を使用し続けているのです。


▼霊砂
 これに対して、霊子蒸気を出さない霊子物質も現存します。これは『霊砂』(エーテル・ダスト)と呼ばれるもので、科学魔道時代に転換されていたものと同じ霊子物質です。エルモア地方では『粉末霊石』とも呼ばれているのですが、あまり掘り出されない上に霊水や霊石をに比べてエネルギー効率が悪いことから、霊石のかけらとしか思われていません。これは、霊水や霊石が異常活性化したエネルギー状態の高い霊子であることと、学問院が発掘した霊子機関が科学魔道時代の初期のもので非常に効率が悪いため、このような誤解を受けているのです。
 霊砂を用いていた科学魔道時代の霊子機関は、現在のエルモア地方で使用されているものより、遥かに高い出力を誇ります。ですから、科学魔道時代の標準的な霊子機関で霊水や霊石を用いれば、かつて以上のパワーを出すことができるでしょう。しかし、それに機械が耐えられるかどうかはわかりませんし、何か不可思議な現象が起こらないとは限りません。
 なお、エルモア地方に霊砂がほとんど存在しないのは、霊石や霊水に転換されてしまったためで、ペルソニア大陸にはまだたくさん残っています。もし、効率のいい霊子機関が発掘されたり、あるいは霊子蒸気による変異が人々に知られることとなった場合、この霊砂の取り合いとなるのは必定といえるでしょう。


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その他


○変異現象

 変異現象もまた、霊子や幽子に関わる物理法則の1つでしかありません。科学魔道の技術や術法と異なるのは、これが全くの無作為に起こるという点と、人類はこれを防ぐ手段を明確な形で持っていないということです。
 時代が進んだ今では、変異現象の進行を遅らせる技術が開発され、中央地方の結界として実際に使用されています。しかし、これは根元的な対策ではないため、鎮静化は時間に任せるしかありません。また、結界はあくまでも一時逃れでしかなく、それ自身でさえ徐々に変異の影響に侵されつつあることから、場合によってはいきなり停止してしまう可能性さえあるのです。もう1つ、変異を解消する手段として期待されているのが虚粒子ですが、これはまだ研究途上のものでしかありません。


○緩衝帯

 緩衝帯の発見は、科学世界の発展期まで遡ります。霊子機関の開発により、宇宙への進出が期待された頃の話ですが、探査衛星による調査の結果、宇宙に立ち塞がる不可視の壁が発見されました。これは『緩衝帯』(ユーカリヲン・カーテン)と呼ばれる霊子の異常地帯であり、トリダリス星から半径100万kmの空間を完全に覆っています。しかも、これはトリダリス星の周囲だけでなく、平行空間である星界をも取り巻いているものです。
 『緩衝帯』からは『緩衝流』という異常霊子の風のようなもの吹いて来るため、霊子機器の働きが狂ってしまいます。また、緩衝帯まで到達した時点で、霊子機器は完全に停止してしまうことになります。この影響のため、科学魔道の技術をもってしても、緩衝帯を超えることは遂に出来ませんでした。
 なお、緩衝流が作用するのは物質霊子だけで、霊魂の持つ魂霊子には影響を与えないことがわかっています。そのために、人工霊魂の作製や生物兵器の開発が行なわれ、我々の世界には存在しない奇妙な存在が誕生することになりました。


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霊子の形態霊子荷活性状態霊子物質その他