全体
『聖母教会』、『法教会』、『マイエル教』と呼ばれる宗教が、エルモア地方の3大宗教といわれています。このうち、人民の70%以上が聖母教会を信仰しており、圧倒的な勢力を誇っています。法教会の信者は、人口比で言えば20%ほどであり、マイエル教はせいぜい5%ほどになります。この他にも、エリスファリアという国家が独自に設立した『エリスファリア国教会』など、小さな勢力も数多く存在します。各宗教機関の間の溝は深く、たいていの場合は他宗教を異端として扱うことが多いようです。
▼異端
信仰する神の違いによるものではなく、どの宗教からも敵と認定されているのが、大変異現象を起こした魔神やその手下の悪魔たちです。悪魔は現在でも多数出現し、人々をたぶらかして堕落させることに力を注いでいます。人間の中にも悪魔の力を借りる者がおり、『悪魔使い』と呼ばれる彼らは、他の宗教組織にとっては明らかな敵となります。また、変異の影響を受けた者も、悪魔に魅入られた者として人々に忌避され、場合によっては教会から破門されたり、土地柄によっては魔女狩りにあって私刑を受けることとなります。
▼宗教機関の力
宗教機関は独自に土地を所有し、その土地について徴税権をもっています。ここで徴収される税については、国家に上納する必要はなく、完全に独自の財源とすることができます。また、宗教機関は独自の軍をもっているのが普通であり、大きな教会にはそのための訓練所や、騎乗する馬を飼う厩舎が設置されています。武術に長けた者は神官戦士(聖母教会)や聖堂騎士(法教会)という役目についています。
このように、教会組織は1つの国家としての機能を備えています。これが多数の国にまたがっているわけですから、宗教機関の権力の強さがうかがえるかと思います。
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聖母教会
唯一神と、『聖母アリア』およびその12人の娘を神の子(使徒)として崇める宗教機関です。創始者はアリアの最後の娘ユナスであり、正確には『聖母アリアと十二人の使徒教会』あるいは『十三人教会』といいます。その分教会はエルモア中に広がっており、これを国教としている国も数多く存在します。十字架の上に円を配した『円十字』(♀)と呼ばれる形を聖印としています。
▼使徒と教会
聖母教会はエルモア地方最大の宗教組織で、その総本山である『聖母アリア教会』はユナスフィール教国に存在します。これは人口5万人ほどの都市国家で、聖母教会の最高指導者である大主教が国王を兼任しています。『使徒教会』と呼ばれる12の教会は他の国々に分散しています。これら13の大教会を『中央教会』と呼び、その国の布教活動の中心となっています。中央教会にはそれぞれ聖母アリアと12人の娘の名がつけられており、神と一体である神の子(使徒)として崇められています。
彼女たちは神の啓示を受け、奇跡の体現者として尊敬を集めるに到ったと伝えられています。その記録が残されているのは『神書』と『聖書』と呼ばれる2種類の書物で、『神書』には神の奇跡が、『聖書』には聖母と使徒たちの奇跡が記載されています。
▼術法
こういった奇跡の記録、聖職者たちの高潔な人格、また愛の教えといったものも信者の心をとらえる原因ですが、聖母教会が信奉されているなによりの理由は、実際に奇跡を実行するその魔術(術法)の力です。聖職者たちは人々の病を癒したり、あるいはいまだ数多く存在する怪物たちを掃討するために、その力を惜しみなく用いるのです。
▼神官戦士
神官たちのなかでも武力を用いる者は、『神官戦士』と呼ばれます。これは変異体などから人民を守るための兵士で、彼らの誠実さと、そして何よりその頼もしい武力に対して人々は敬意を払っています。
▼付属施設
聖母教会の中央教会や大教会には『神大学』が付属しています。これは法教会の『学問院』と並んで、非常に高度な知識を身に付けることができる場所です。
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法教会
唯一神と『聖人ルーン』を祀る宗教であり、聖母教会の異端派が土着の宗教と結びついて成立したものです。異端とされて野に下った聖母教会の主教『セルトラーン』が、神託を受けてルーンを神の子と認定しました。法教会ではルーンこそが真実の神の子(使徒)であり、唯一の使徒であるとしています。
▼信奉国家
カスティルーン、ユークレイ、ペトラーシャで国教として信奉されており、エルモア地方では聖母教会に次ぐ勢力をもつ宗教機関です。これら3国では、国政にも重大な発言力をもっております。
▼信仰
法教会の教義は秩序、法、正義、公正の4つを守ることです。これは人々が幸せに暮らすために存在する規範とされており、このことは聖人ルーンの奇跡とともに『聖告書』に伝えられています。聖印は『正十字』(+)で、その四方向はそれぞれ秩序、法、正義、公正を示しています。
▼科学
聖母教会と同じく、法教会もこの地方の文明の復興に寄与してきました。ただし、聖母教会とは異なり、秩序だったものとして認められるものは全て利用し、旧文明(科学魔道文明)の科学技術の発掘にも力を入れてきました。その研究機関として設置されたのが『学問院』です。元来は専門の研究施設として機能しておりましたが、現在では我々の世界でいうところの大学と同様の機関となっています。ここでは一般学問のみならず、先史文明の知識(初歩的なものや限定分野の一部にすぎない)を身に付けることが出来ます。
▼聖堂騎士
他に、彼らの称するところの混沌(変異)に対抗するための戦力として、『聖堂騎士団』も発足されました。3国での呼称は様々で、カスティルーンでは『ルーンナイト』(法騎士)、ユークレイでは『白銀騎士』、ペトラーシャでは『聖騎士』と呼ばれています。特にカスティルーンのルーンナイトは高名で、文武双方に秀でた存在として国民から尊敬を集めています。
▼法の守護
法教会はその名の通り法を守る役目を負っています。そのため、聖職者の一部は裁判官および警察官としても働いています。これは、どの国でも法教会が国家と密接に結びついているからこそ成り立っている制度です。
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国教会
『エリスファリア国教会』は唯一神を至高の存在として祀る宗教であり、聖歴679年に法教会から分裂して出来た宗教機関です。
▼信奉国家
エリスファリア王国でのみ信仰されています。国民はすべて国教会の信者とされ、それ以外の信仰を認めておりません。信者のことは国教徒と呼び、国教徒以外の者は公職につくことが許されません。
▼信仰
国教会では唯一神を至高の存在として崇めています。この他に、神の使いである天使や過去の聖者などが崇拝の対象となります。聖印はいわゆる十字架と呼ばれるものが用いられ、教義や神の言葉は『聖告書』に記載されています。
▼政治権力
国教会は宗教機関というより、国王の統治手段の1つとして存在する組織であり、政治と強く結びついています。教義の大筋の内容は、聖母教会と法教会の中間色といった具合ですが、王権を強化するために内容は大きく歪められ、聖典も貴族を擁護する内容に書き換えられています。代々の国王(教皇)は、政策によって教義を民衆を統制しやすいように解釈し、それに従って教義を変更することもあります。
▼科学
法教会と同じく科学の力を否定することはなく、物理的・化学的作用も神の力によるものとしています。また、霊子機関の研究も積極的に推進していますし、聖職者が銃器を使用しても咎められることはありません。
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マイエル教
主に南方のセルセティアに住む黄人(黄色人種)の間で信仰されているのが、3大宗教の1つである『マイエル教』です。彼らは唯一神を信仰するのではなく、何百という膨大な数の神を祀っています。それぞれの神は場所や何らかの技術、事柄などを司っています。たとえば農業の神、太陽の神、学問の神、川の神というような具合です。その他にも、偉業を成し遂げた過去の人間を聖者として神格化し、神に次ぐ『亜神』として神殿に祀ったりもしています。
▼信仰対象
主な信仰対象は『天神マハト』(父)と『地神アムダ』(母)の夫婦と、その娘である『四季の女神たち』で、女神は四つの方位を守護する役目も負っています。これらは中央である天地とその四方を合わせて、世界そのものを表しているのだといわれています。マイエル教では、この六大神を示すヘキサグラム(六芒星)を聖印としています。
▼宗派
マイエル教にはいくつかの宗派が存在し、宗派ごとの単位で管理されています。セルセティアではセル人による政教一致の政体がつくられ、ラハト派の国政に対する発言力は非常に強力になっています。宗派は総本山となる大神殿と各地方に分散する小神殿で構成されており、小神殿は地域と深く密着しています。
▼神武官
マイエル教独自の兵力としては、『神武官』と呼ばれる存在がおります。心身鍛錬の一環としてマイエル教では武道を奨励しており、その中でも宗派を守る存在として武の道に励む者が神武官と呼ばれる職につきます。彼らは素手での戦いを得意としており、武器を持った相手とも互角に渡り合うことができます。
▼気の力
マイエル教では気というものが信じられており、この気を操ることで病を治したり、遠当てと呼ばれる気を飛ばす技で相手を倒したりといったことができます。この奇跡の力は衆生を救うためのみならず、穢れ(変異)を掃討するためにも役立てられ、これらの技に長けた者は人々の一層の尊敬を受けています。
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