警察概説


 


 住民にとって時には強い味方であり、時には政府の手先として見られるのが警察機構です。いわゆる近代警察としての機構が整っている国であれば、都市に地域の中心となる警察署を設置し、それぞれの地区に詰め所を置いて犯罪に備えています。都市を離れた町村では、保安官として民間の者を雇っている場合もあります。この保安官というものは千差万別で、まともな者もいればチンピラのような不逞の輩も存在します。
 国家に属する場合と各領主に属する場合では、警察官の組織や役割も変わってきます。国家に属する場合には法に殉ずる存在となるわけですが、領主が統括する警察機構は領主の私兵といった性格が強くなっています。とはいえ、通常の国家では国王の調査機関が領主の動向を調べますので、領主の無法が際限なく許されるというわけではありません。


○法教会

 法教会を信奉する3国の警察では、少し特殊な制度が設けられています。これらの国々では、聖堂騎士の一部が警察官として活動することが許されています。このような聖職者のことを、特別に警務法官と呼んでいます。
 通常の業務は警察官とほぼ同様ですが、彼らの立場は警察組織からは独立しています。法教会から警察へと出向する、特殊な捜査官と考えるといいでしょう。警務法官の警察官としての位は高く、部下を率いて捜査を行う役目となります。同時に、彼らは組織内部の監査役としても機能しており、この3国では他国に比べて、警察と為政者が手を結んで不正を行う例が少ないという事実があります。


○治安判事

 貴族支配国家に存在する強い権限を持つ刑事で、1つの地域や街の警察支部を統括します。部下(警吏)を率いて事件捜査をするのは刑事と同じですが、治安判事は軽犯罪に関する裁判権を有しています。大きな犯罪であれば裁判所の管轄となりますが、スリや少ない金額の盗難などに関しては、詰め所で簡易裁判を行って刑罰を即決することができるのです。また、彼らは民事事件にも介入することが許されておりますので、刑事よりもずっと幅広い問題に対処してゆかなければなりません。
 治安判事は独立した存在であり、所轄の警察組織のあらゆる権限を任されます。捜査方法や人事など、業務内容のほとんどに対して治安判事が決定権を持っているのです。彼らを罷免できるのは、基本的にその地域の領主のみです。
 治安判事の給料は固定制と歩合制の折衷型で、裁判費用や罰金の一部は収入の一部となります。そのため事件が起こるほど、争いが起こるほど彼らの懐は潤うことになります。これらの事実から、無実の者を無理やり罪人にしてしまったり、賄賂をもらって刑を軽減する治安判事も少なくありません。


○保安官

 臨時警察官のことを一般に保安官といいます。通常の警察官とは異なり、正式な警察組織の一員ではありません。あくまでも人員不足のために臨時に雇われているだけであり、捜査権や逮捕権を一時的に与えられた一般人なのです。ですからその素性はさまざまで、チンピラのような者もたくさんいます。彼らは当然のことながら警察学校も卒業しておらず、捜査方法も個人によってバラバラですが、逆に普通の警察官ではなかなか聞き出せない情報を得られる可能性もあります。
 保安官がいるのは地方の市町村か、あるいは極端に犯罪が多い大都市になります。なお、探偵や何でも屋と呼ばれる人間を、一次的に保安官に任命して捜査協力をあおぐこともあります。また、暴動に備えて臨時に雇う人間なども、全て保安官として雇われます。もし、彼らがその地区の警察組織と懇意にしている場合は、独自に調査活動を行って犯罪者を逮捕した後で、日付を遡って雇用するといったやり方をする場合もあります。


○秘密警察官

 正式には特命捜査官や公安警察官となりますが、公的機関でありながらあまりに不透明なその活動内容から、市民は秘密警察官と皮肉をこめて言うのです。これは政治犯などを専門に扱う部署で、他の警察組織に対して優先権をもち、同じ階級でも一階級上の扱いになります。こういったことも含めて、人民はもとより同じ警察組織の中でも嫌われています。特にライヒスデールの秘密警察はそのスタイルとあまりの熱心さから、影ではすりきれコートと呼ばれて煙たがれています。


○憲兵

 憲兵は軍隊内部の警察という役割をしますが、軍隊の力が強い国家では、民間に対しても強制力を持つ場合があります。また、協力要請という形で、一般の警察官に対しても命令を下すこともあるようです。このような理由から、憲兵は一般に秘密警察官よりも煙たがられています。


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