組織集団

一般の組合特殊な組合裏社会その他


 

一般の組合


 エルモア地方でもっとも一般的なものが『同業者組合』や『職業組合』と呼ばれるものです。これは同じ業種に就いて働く者たちで構成されている団体のことで、協会などと呼ばれることもあります。
 人々に身近なものとしては、『商業組合』、『露店商組合』、『貿易組合』、あるいは鍛冶や石工などの『職人組合』があります。同業者組合はメンバー同士の相互扶助のための組織です。商品の流通や価格をコントロールしたり、新人(弟子)の育成なども行ないます。仕事の基礎を教えるために専門学校を営んでいる組合もあります。このような細かな保護の代償として、組合に属しているメンバーは組織に対して服従することを義務づけられています。
 なお、組合のメンバーには所属の証として、組合の印が入ったバッジなどが支給されます。これが身分証明書の代わりになることもあります。


○職人組合

 職人の組合は縦社会であり、親方と弟子というのが基本的な構造です。親方は何人かの弟子を取り、世話をしながら技術を教えていきます。同じ家に住んでいることが多く、弟子は家事などの雑用をこなさなければなりません。弟子の間でも上下関係はあり、1日でも先に弟子入りしたものは先輩として敬われます。
 親方になるためには親方試験というものを受けなければなりません。親方が独り立ちするのに十分だと認めた後に、ようやくこの試験を受けることができ、作品を提出して合格すれば親方の一人となることができます。ですが、近年では工場の進出により職人たちの組合は脅かされており、縄張りの問題で工場経営者と対立することがよくあるようです。


○商業組合

 商人組合は職人とは異なり、流通や価格の調整といったものが主です。大商店では親方と弟子のような関係があり、店主と住み込みの雇用者には絶対の差があります。露店商組合はこれに加えて縄張りの問題が関わってきますし、貿易組合ではさらに輸送時の安全を確保するのも組織の仕事に含まれます。なお、資本主義社会の到来によって自由競争の時代へと移行するにつれ、これら商人のための組合も邪魔なものとされているのが現状です。


○馬車組合

 馬車組合は路線の調整や縄張り問題の調停などを行います。駅馬車や辻馬車の御者や関係者はすべて馬車組合の一員となります。会社が経営している場合は、その会社に勤めた時点で自動的に組合員として登録されます。


○歯車協会

 オルゴール工や時計工、それから人形職人たちが所属する組合です。これらの職人たちは技術交流を行っており、国外に出かけて修行することもあります。ですから、国外での身分保証や住む場所の確保にも役立ちます。


○観光協会

 観光地には必ずある組合で、地元の宿や店、それからガイドたちが所属しています。多くは駅の近くに建物があり、観光客には親切にしてくれます。地図やガイドブックの販売を行うこともあります。


○港湾組合

 船組合ともいい、漁港の使用権に関わる問題を調整するのが主な役目となります。商船が多く出入りする場合は警備の手配や積み荷の流入調整を、旅客船の場合は客員のチェックなどを行う場合もあります。漁港の場合は漁港組合ということもあり、所属している者の多くは地元の漁師たちとなります。


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特殊な組合


 同業者組合の中には、『術法教会』や『乞食組合』、それから冒険者のための『冒険者組合』といった珍しいものが存在し、それぞれ独特の活動をしています。


○術法協会

 術法協会は宗教組織とは別に術法に関する技術を司る組織です。術法を用いて困っている人々を助けたり、あるいは教授してもよいと認可されている術を一般の人々に教えることで、金銭を得て活動しています。同時に術法の研究機関でもあり、術法師を保護する役目もあります。ごく普通の術法師たちは、そのほとんどが協会に所属していると考えてよいでしょう。なお、術法協会は登録制であり、最初の登録には10万エラン、月々の登録更新には1万エランの費用がかかります。
 術法協会は国家の垣根を超えた組織であり、エルモア全土に広がっています。ただし、術法師は社会全体から見れば稀少な存在なので、組織自体の規模はさほど大きいものではありません。本部はルクレイドの首都リルトに存在し、ここでは特に国家からの援助があります。術法協会が開設したルクレイドの魔術学校は、優秀な術法師を輩出することで非常に有名です。


○乞食組合

 乞食組合は乞食の保護が第1の目的です。他にも縄張りの区割りなどをして、場所争いを調停したりもしますが、人々に最も関係する仕事は情報屋としての役割です。街のいたるところにいる乞食ですから、情報の仕入れ先には事欠きません。また、情報伝達のスピードも他の追随を許しません。裏組合の情報も、半ば以上はこの乞食組合からのものです。


○冒険者組合

 冒険者組合は最も特殊な形態の同業者組合といえるでしょう。これは正式な組織ではなく、彼ら自身のネットワークという程度のものですが、数は少ないながらもエルモア地方のほぼ全土に行き渡っています。冒険者組合は、冒険者が旅の途中で立ち寄る宿屋や酒場、および職業紹介所などの協力で成り立っています。彼らはそこで情報を仕入れて、仕事を請け負うのです。


○渡航者組合

 冒険者組合のように比較的緩い形態の組織であり、宿や酒場の協力で成り立っています。各地を回る旅人の身元の保証などを請け負うもので、大道芸人やサーカス芸人、それから巡礼者や傭兵などが登録していることもあります。
 組織は身元の保証のほかに、頼めば斡旋屋への紹介なども行ってくれます。また、交通や地理的な情報のほか、それぞれの職業におけるその町でのしきたりといった情報を得ることもできます。ただし、その宿や酒場を利用することが条件となっています。これは組合が修道院に集中していた巡礼客を獲得するためにつくられたという経緯があるためです。


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裏社会


 裏の社会に生きる犯罪者たちの間にもそれなりのルールが存在します。相互に助け合うこともありますし、犯罪者同士が無用の争いで消耗することになっては不都合だからです。そのための互助組織として裏組合というものが古くからあり、その地域で犯罪を行うには組合の許可を得なければなりません。また、これと非常によく似ておりますが、新興のギャングたちもそれなりの勢力を誇っています。


○裏組合

 裏組合は犯罪者のための組織であり、いわゆる秘密結社といわれるものです。これに加盟するためには規定の料金を払わなければならず、さらに組織の管轄地区での仕事に対しては利益の何割かの仕事料が要求されますが、その代償として様々な便宜をはかってもらうことができます。この組織に加盟していない犯罪者は組合によって厳しく処罰されます。もちろん単純に利益といった事情もありますし、保護料を収めている商人たちに害を与えないようにするためでもあります。彼らは盗賊語という独自の言語を使用しており、組合に加入すればそれも教授してもらえます。というより、この盗賊語を覚えていなければもぐりの盗賊で、仕事の上で何かと不便なことになるでしょう。
 裏組合には様々な仕事があります。情報屋としての腕前も一流で、メンバーに盗みに入る屋敷の情報を提供するのはもちろんのこと、都市のほとんどの裏情報はここで得られるといっても過言ではありません。中には他国の極秘情報を仕入れて、国家に売りつけるものもいます。
 裏組合は逃がし屋としての仕事も請け負っており、メンバーを警察の追跡から逃がしたり、あるいは組合に属さない者でも金額次第では逃走を手伝うこともあります。それから組合は技術の講習も行なっており、鍵開けや忍び込みの技術を指導してもらうことができます。組合は荒事にも精通しており、露店商組合から料金をもらって縄張り争いの調停を行なったり、無届けの露店から場所代を徴収したりもします。


○ギャング

 ギャングは新興の組織的暴力団のことで、革命が起こって政情が不安定になった隙をついたり、経済状況や社会制度の変革に対応する形で台頭してきたものです。裏組合とよく似た組織なのですが、盗みを主体とした犯罪を行うことはあまりなく、麻薬の売買や密輸などの裏取引や暴力行為によって金銭を稼ぎます。だいたいの組織は歓楽街を牛耳っており、表向きは酒場やカジノなどの娯楽施設や普通の会社を経営しています。もちろん、そちらの方で利益を上げることも決して忘れません。古くからある裏組合とは対立しており、徐々にその勢力を伸ばしつつあります。強引な手段で裏組合のメンバーを引き抜いたり、時には血生臭い抗争を繰り広げることもあるようです。
 ギャングの仕事は多彩で、組織ごとに活動形態が異なります。暴力的業務にしても、商売人に用心棒代や場所代を要求したりするだけでなく、企業の依頼で用地買収のために民家の立ち退きを迫ったり、労働争議に介入したりすることもあるようです。彼らは決して頭の悪い人々ではなく、法の抜け穴をよく知っていたり、経済に対する深い洞察力を持っている者もいます。ギャングは変化しつつある世の中を最大限に利用する術を心得ているのです。


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その他


 各国に独自に存在する組織や機関については、各国家の説明に記載されています。ここではそういった国や民族の単位を超えた集団を紹介します。


○学問関係

▼神大学
 聖母教会の機関の1つで、その殆どは中央教会や大教会に併設されています。これは法教会の『学問院』と並んで、非常に高度な知識を身に付けることができる場所であり、文系教育を行う大学校として機能しています。
 基本的な構成は通常の大学と同じで、大学院も付属します。なお、神学徒以上の聖職者は、望めば無償で教育を受けることができます。ただし、試験を受けて入学しなければならないというのは、一般の学生と変わるところはありません。


▼学問院
 法教会の付属機関であり、総合教育を行う大学校として機能しています。エルモア地方でもトップクラスの教育を受けられる場所であり、ここでは一般学問のみならず、先史文明の知識(初歩的なものや限定分野の一部にすぎない)を身に付けることも出来ます。発掘機械の研究も積極的に行われており、霊子機関を発掘・解析したことでも知られています。
 基本的な構成は通常の大学と同じとなり、大学院や専門の研究機関なども付属しています。多くの場合は大教会と隣接した敷地に敷設されており、図書館や博物館などが併設されていることもあります。なお、神学徒以上の聖職者であれば無償で教育を受けられますが、試験を受けて入学しなければならないというのは、一般の学生と変わるところはありません。


▼自然科学調査団
 探検家や獣狩りと同行して、自然科学についての学術調査を行う非営利の民間団体です。フィールドワークを好む自然科学者がメンバーの中心ですが、暇を持て余した好事家が不定期に参加する場合もあります。なお、この団体はカスティルーンが発祥ですが、その勇気ある行動に触発された(血の気の多い)者たちが、ユークレイとペトラーシャで調査団を結成し、支部として活動を行っています。
 彼らの調査結果は定期的に会誌で発表され、学会にもこれまでの学説を覆す幾つもの論文が提出されています。また、活動資金を得るために、探索行を冒険小説風に仕立てた『未知なる無限への挑戦』シリーズを雑誌に掲載し、子供たちの人気を集めています。


○職業団体

▼三国鉄道管理局
 ユークレイ、カスティルーン、ペトラーシャを繋ぐ三国鉄道を監理する組織で、三国の共同出資によってつくられました。


▼東方地質調査団
 石炭や鉱石の採掘調査を生業とする集団で、神聖同盟の三国を中心に活動しています。埋蔵物に関する情報を売ったり、依頼を受けて地質調査を行ったりします。また、発掘作業の指導を請け負う場合もあるようです。


▼イーグルアイズ
 盗みなどの非合法な手段は使わず、優れた調査能力と交渉手腕で勝負するプロの集団です。探し物や人材派遣の依頼を受け、それを調査部門が探し当て、必要ならば交渉を行うという行程で仕事を成し遂げます。その活動は国際的なもので、国家や大企業から仕事を受けることも少なくないといいます。
 彼らは特に専門領域を持っておらず、いかなる物品や人材でも注文通りに調達します。調査部隊はどのような危険な場所へも赴くと言われておりますし、交渉人たちは国家からスカウトを受けるほどの凄腕揃いです。
 しかし、組織の全貌については詳しく知られておらず、どれほどの規模なのかも、どのような経緯で設立されたのかも謎のままです。また、ブラックマーケットにも詳しく、闇の組織や上流社会などにも顔がきくようなのですが、それらのコネクションをどうやって構築したのかも、まったく不明となっています。


▼スパイギルド
 超国家的なスパイ組織であり、特定の国家に所属している集団ではありません。彼らは民間の調査機関として仕事をしており、金額次第ではどのような仕事も請負いますが、依頼主を裏切ることはないので信頼されています。ただし、裏社会の人間でないと繋ぎを取るのは難しいでしょう。
 この組織はもともと、現在の都市国家半島にある都市群の情勢を調査するために、ラガン帝国の支援によって組織されたものでした。なお、国家機関であることをカモフラージュするために、設立当初から調査会社を装っていたようです。しかし、聖歴762年に中央地方が結界で閉ざされてからは、完全に独立した組織として活動するようになりました。そして、現在までに独自に発展を遂げて、エルモア地方でも有数の民間密偵機関へと成長したのです。
 このような経緯から上層部の殆どは黄人で、本部も未だ都市国家半島のどこかに置かれているようです。ただし、実際の窓口となっているのはカーカバートの支部であるため、カーカバートの息のかかった組織ではないかという噂も裏社会では流れています。


▼スレイブマスター
 ペルソニアでの奴隷市場を支配している奴隷売買組織です。特にどの国家に肩入れしているわけではなく、あくまでも公正な取り引きを主体としています。独自の傭兵隊を抱えており、未開地の部族を占領して奴隷を仕入れています。


○戦闘

▼自由騎士組合「ダーステイル」
 「手には剣を、胸には理想を!」という言葉を掲げて、正義のために戦う12人の自由騎士の集団です。昔ながらの騎士道精神を重視しており、一騎討ちなどの名誉ある戦い方を好みます。国際義勇軍として有名であり、ルクレイドの革命政権に手を貸したことで知られています。


▼蛮族傭兵団
 もとはカイテインの放浪騎馬民族だったのですが、後に傭兵として戦う集団になりました。しかし、彼らの目的はあくまでも占領地の略奪であり、非常に悪名高い集団です。


○趣味・道楽

▼彫刻旅団
 各国を旅して歩く彫刻師たちで、岩に巨大な彫刻を彫り上げることで知られています。貴族たちの注文が多く、各国に招かれています。しかし、親切にしてもらったお礼にと、勝手に庭石や壁に彫刻を彫ってゆくことでも知られており、「歩く騒音発生機」「芸術テロ集団」と呼ばれることもあるようです。


▼機巧冒険クラブ
 自ら試作した機械を携えて冒険の旅に出る趣味人の集団です。また、使わなくなった機械を遊具に改造して、資金集めのために遊園地を運営しており、地域の住民に好評を得ています。これに気を良くした彼らは、本来の目的を忘れて巨大遊園地をつくる計画を進めており、現在は寄付金や協力してくれる技師を集めるために奔走しています。


▼国際美食学会
 学会と名乗ってはいますが、実際は美食家を名乗る金持ちを中心とした道楽目的のクラブです。月に1回の割合で、メンバーたちが持ち合ったレシピや食材をもとに料理をつくり、食事会を開いて品評します。獣狩りから辺境の怪物を買って、一流のシェフにゲテモノ料理をつくらせるなど、チャレンジ精神あふれる集団ということも出来るでしょう。
 これはもともとペトラーシャで創設されたものですが、現在はさまざまな国家に支部が存在します。主要なメンバーは上流階級や中層の資産家ですが、食材を提供してくれる探検家、この活動に理解を示してくれる料理人、知識を提供してくれる学者なども、名誉会員として認められています。


○その他

▼昏冥秘術団
 エルモア地方の幾つかの場所で活動を行っている秘密結社です。秘術団は社会への恨みを抱く人物をスカウトして、術法と暗殺術を教え込みます。団員に課される義務は2つで、組織の存在を完全に秘匿することと、復讐を果たした後は組織に生涯を捧げる、ということです。
 新しい団員に組織の本当の目的が知らされるのは、復讐を遂げてからのことになります。その目的というのは術法協会の根絶であり、そのために教わった術法と闘技を用いることになります。組織上層部の真意は明らかではありませんが、何らかの理由で術法協会から脱退した者たちが、復讐のために組織をつくったのではないかと団員たちは噂しています。なお、この組織の存在には術法協会の側も気づいていますが、一般の警察組織などには知らせていないようです。


▼純粋祈願巡礼団
 各地で見られる聖母教会の巡礼団で、夜中に移動を行っている姿を目撃されることがあります。彼らはみな姿を見られるのを恐れるようにフードを目深に被っており、どのような素性の者で構成されているのか見分けることは出来ません。というのは、彼らは病などに苦しむ人々が集まった巡礼集団で、快復祈願のために聖地アリア=ステアを目指して旅をしているのです。
 ……というのは世を欺くための仮の姿で、実は彼らは魔人に率いられた旅団であり、変異が原因で虐げられていた人々をまとめ上げたものです。彼らは病に苦しむ巡礼者を装い、人目を避けるために危険地域を沿うようなルートで移動しています。彼らの第一の目的地はエストルーク南部にある変異地帯で、そこを抜けてユノス国内へと潜り込もうとしています。
 なお、この計画を主導する魔人たちは、ある放浪部族と行動を共にしています。これは1人の霊媒師を長とする集団で、巡礼団の護衛として働いているのですが、その目的については魔人たちにも明らかにされておりません。黄色布を結んだ数台の馬車が一団を取り囲むように同行していますが、中にはいざという時のために派遣された護衛役が待機しています。これは異端の術法師と手練の戦士で構成された戦闘集団なのですが、彼らの素性が明るみに出るのは活動の障害となるため、出撃する時は相手を皆殺しにする場合となります。


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一般の組合特殊な組合裏社会その他