概略
唯一神と『大母アルメリア=エルファティー』から生まれた『聖母アリア』、そして聖母アリアから生まれた12人の娘を神の子(使徒)として崇める、エルモア地方最大の宗教機関です。この地方に住む約70%の人民は聖母教会の信者です。
創始者はアリアの最後の娘『ユナス』であり、正確には『聖母アリアと十二人の使徒教会』あるいは『十三人教会』といいます。その分教会はエルモア中に広がっており、これを国教としている国も数多く存在します。
○ユナスフィール教国
ユナスの没した地は『ユナスの大地』と呼ばれ、後に『ユナスフィール教国』という都市国家に発展を遂げました。これは人口5万人ほどの都市国家で、聖母教会の最高指導者である大主教が国王を兼任しています。
○政治への影響
前近代的な制度を採る国家には宮廷司祭という存在がおり、君主の相談役を担うことがあります。ただし、国政に対する発言権を有するわけではなく、あくまでも私的な相談相手でしかありません。とはいえ、教会の意向を無視して政治を行うことは難しく、政治家は世俗権力とだけ折り合いをつければよいというものではありません。逆に高位聖職者の方でも、要求を通すためには政治的な駆け引きを行わねばならず、政治方面での能力が必要とされます。なお、近代国家では聖職者は政治とは切り離された存在であり、一般市民と立場は全く同じものとなります。
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施設
○中央教会
聖母教会の総本山である『聖母アリア教会』は、ユナスフィール教国の首都であるアリア=ステアにあります。その他の『使徒教会』と呼ばれる12の教会は、その他の国々に分散しています。これら13の大教会を『中央教会』と呼び、その国の布教活動の中心となっています。
使徒教会は使徒たちが魔を封じた場所に建てられたものとされていますが、聖母アリアの消息だけは未だに知られておりません。なお、聖母アリア教会にはアリアとともに、『第一聖者』の称号を受けたユナスが祀られています。
○教会建築物
聖母教会の建築物は、屋根の上に円十字(♀)の聖印がついているため、一目でそれとわかります。また、教会の正面の屋根が尖っているのが特徴で、中央教会のような大きな教会では、尖塔が天を突くように空に向かって伸びています。これは天(神)に向かう信仰心のあらわれであるといいます。
○神大学
聖母教会の中央教会や大教会には『神大学』が付属しています。これは法教会の『学問院』と並んで、非常に高度な知識を身に付けることができる場所であり、文系教育を行う大学校として機能しています。
基本的な構成は通常の大学と同じで、大学院も付属しています。なお、神学徒以上の聖職者は、望めば無償で教育を受けることができます。ただし、試験を受けて入学しなければならないというのは、一般の学生と変わるところはありません。
▼智者の称号
神大学を優秀な成績で卒業した者に送られる称号です。人々の尊敬を得ることができるばかりでなく、他大学への推薦状を貰えたり、神学徒ではなくても神学徒待遇で教会に様々な便宜を図って貰うことができます。
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教義と信仰
聖母教会の目指すところは無償の愛とその実行であり、寛容と慈悲の心が重要とされます。聖典には周囲の人間を愛すること、自らが持つ者を他人に分け与えること、罪を赦すことなどが書かれており、聖職者はそれを実践する者として人々に尊敬されています。
▼神と使徒
聖母教会では唯一神を崇めており、その教えを絶対としています。聖母アリアと12人の娘は、神と一体である神の子(使徒)として崇められています。彼女たちは神の啓示を受け、奇跡の体現者として尊敬を集めるに到ったと伝えられています。
▼聖者
偉大な信仰者として認められた者は、死後も聖霊となって人々を救うと言われています。聖者には聖名という特別な名前を与えられ、聖名を冠した大きな教会に祀られます。
アリアの最後の娘ユナスは第一聖者という地位にあり、最も位の高い聖者として使徒と同じように崇められています。
▼記録
教義が記載されているのは『神書』と『聖書』と呼ばれる2種類の書物で、神書には神の奇跡が、聖書には聖母と使徒たちの奇跡が記載されています。
▼聖印
十字架の上に円を配した『円十字』(♀)または『円輪十字』と呼ばれる形を聖印としています。
▼祈り方
聖母教会では祈りを捧げる時には胸の前で手を組み、頭を垂れることが決まりとなっています。信者たちは何かよいことがあった時には、「我らが母に感謝を」という言葉をよく口にします。そして手を組んで、神への感謝の祈りを捧げます。その際、聖印を持っていればそれを握りしめます。深い信仰心を持つ者は、朝晩と食事の前後に祈りを捧げますし、何か罪を犯した時や願い事がある時にも強く祈ります。
▼聖数と魔数
聖母教会では13が縁起のいい数とされており、何かとこの数に揃えようとする風習があります。これはアリアの誕生日が13日であること、そして使徒が13人であることの他に、13が素数であり、他の数と交わらない真の数字であるからだという説があります。
逆に縁起の悪い数とされるのが14で、魔数としてして忌避されています。これは魔神と呼ばれる存在が14体いると伝えられることや、まがい者である法教会の聖人ルーンが14番目の使徒を名乗っているからだとも言われます。
○禁忌・制約
▼禁忌
聖母教会では、人を傷つけ悲しませることをはじめとして、怠惰、浪費、姦淫、堕胎、死者の冒涜などを禁じています。なお、堕胎を禁じているために、未婚の母が人知れず子供を産み、その子を孤児院に預けるといった皮肉な事態になっています。もちろん教会が孤児院を経営して、可哀想な子供たちを助けることもあるわけですが、全てを救うことは出来ないのが現状です。
▼科学
聖母教会は文明を否定するものではありませんが、一部の科学技術の利用については反対の意思を示しています。その顕著なものが先史文明の物品であり、もちろん霊子機関の使用も認めてはおりません。
また、聖母教会の聖職者は銃器を利用することはありません。これは銃器が戦争のために開発されたという歴史があってのことであり、たとえば狩人が猟で使用するのを禁じるわけではありません。
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神聖存在
○使徒
聖母アリアと12人の娘は、神と一体である神の子(使徒)として崇められています。彼女たちは神の啓示を受け、奇跡の体現者として尊敬を集めるに到ったと伝えられています。
▼聖母アリア
大変異現象に見舞われて以後の世界は、魔神の呪いによる大きな歪みに苦しみ、人々は死と隣り合わせの生活を強いられてきました。しかし、聖歴元年を遡ること1072年(と推測されています)、救いの御子があらわれます。それが後に聖母アリアと呼ばれる娘で、アルメリア=エルファティーという女性によって産み落とされました。
アリアは奇跡の力の使い手で、伝えられるところによると生まれて数週間で言葉を話し、1か月とたたぬうちに立って歩くことができたそうです。成長した彼女は、その大いなる御業をもって苦しむ人々の救済を続けました。想像を超える危険に身をさらされていた民衆たちは、神の啓示を受けたというアリアの言葉を受け入れ、奇跡の少女、神の娘と讃えて祀ることになります。その後、彼女は近隣の村々をまとめあげ、怪物たちから身を守るための戦士を育成し、聖なる言葉を用いて神の力を借りる魔術(術法)を教えました。こうして人々は変異に対抗できる力を身に付けたのです。
しばらくしてアリアは天から娘を授かりますが、驚いたことにそれは処女懐妊によるものでした。そのことが彼女を『聖母』『永遠の乙女』と呼ぶ理由です。アリアは最終的に13人の女子を産んだのですが、そのいずれもが父親をもつことはありませんでした。なお、長女カルナが誕生したのが前聖歴1049年のことで、それから1年に1人ずつ子を授かり、最後の娘ユナスが生まれたのは前聖歴1036年のことになります。
▼12使徒
聖母アリアの13人の娘のうち、末娘のユナスを除く12人は、アリアと同じく使徒として崇め奉られています。12使徒という呼び方をした時は、アリアを除く12人の娘たちのことを示します。
12使徒たちもまた、神から大いなる奇跡の業を授かりました。彼女らは人々のために惜しみなくその力を尽くし、優れた人格と能力、そして類い稀なる美貌から、聖母アリアとともに多大なる尊敬と敬愛を集めたと伝えられています。
12使徒の起こした大いなる奇跡の数々は、聖書に記されています。一般に使徒たちを呼ぶ時は、それらのエピソードのうちで最も象徴的な出来事を冠して、『月の聖ソナタ』『水の聖ラサ』といった呼び方をします。
▼聖なる旅路(前聖歴1026年)
歴史に聖母アリアが登場してからしばらくの間、民衆は神の使徒たちの指導のもとで、幸福な時を過ごすことになります。しかし、最後の娘『ユナス』が10歳になった時、アリアは上の12人の娘を連れて旅立ちました。それは、まだ世界に広がる変異の影響を退け、地にはびこる魔を封じるためです。これより後、使徒たちはエルモア地方の歴史から姿を消してしまいます。
やがて変異の影響は徐々におさまり、人々が必要以上に怯えて暮らすことはなくなりました。変異現象がなくなったわけではなく、その影響を受けた生物や環境が元に戻ることはなかったのですが、それまでに比べれば天国と地獄ほどの差といえるほど、落ち着いた状態になったと伝えられています。それから人々は結束して生息域を拡大し、少しずつですが発展を遂げてゆくことになります。
◆中央教会(生誕順)
中央教会 国家/存在都市 生誕日 聖母アリア ユナスフィール教国/アリア=ステア 6/13 暁の聖カルナ カルネア連邦共和国/カルネアイス 3/24 月の聖ソナタ メルリィナ王国/エルメアータ 2/17 霧の聖ソフィア ソファイア王国/ソファイア 6/29 雪の聖アーシア アルメア王国/ノルディーン 12/14 雲の聖サラーシャ ルクレイド共和国/ウェスト=ギーナ 4/18 氷の聖アルマ ルワール大公国/アルマーナ 9/5 雨の聖ルシータ ジグラット王国/サレイア 8/22 風の聖カナタ ロンデニア王国/アイリストール 7/9 夜の聖ファナ カイテイン帝国/フィスフォーン 1/11 星の聖カトレーユ フレイディオン共和国/レアニース 10/7 水の聖ラサ ユノス/メイヨ 11/2 火の聖フィーナ エストルーク連邦国家/カンカサス 5/15
○聖者
偉大な信仰者として認められた者は、死後も聖霊となって人々を救うと言われています。聖者には聖名という特別な名前を与えられ、聖名を冠した大きな教会に祀られます。
▼第一聖者ユナス(前聖歴1036〜954年)
聖母アリアの最後の娘『ユナス』は聖母教会を創始した人物で、聖者のうちでも最も位の高い『第一聖者』として、13人の使徒と同じように崇められています。
母や姉たちの知識と信念を受け継いだユナスは、学問、魔術などの多方面において人々を指導し、無償の愛とその実行を掲げて布教活動に尽力しました。そして、当時の聖母教会の最高指導者である『主教』の地位につき、数十年の時をかけて教会組織の礎をつくりあげます。
その後、彼女は82歳になるまで、聖職者としての活動を続けました。ユナスが没した場所はユナスの大地と呼ばれ、『ユナスフィール教国』という都市国家へと発展することになります。
◇ユナスの降臨
ユナスの没後も聖母教会は魔術の行使による人々の救済を続け、確固たる地位を築き上げます。教会はその力を用いて、長い年月をかけてアリアと12人の娘が眠る土地を見つけだし、使徒たちを祀る教会を作り上げました。そして、この頃に成立した多くの国の発展に力を貸し、国教として信仰され、国政にまで発言力をもつようになったのです。しかし、1つの教えが全ての人間に受け入れられるはずもありません。後に聖母教会から分かれた一派によって法教会が創始され、中央地方から逃れてきたセル人によって持ち込まれたマイエル教も、エルモア地方で信仰されるようになりました。
『ユナスの降臨』と呼ばれる奇跡が起こったのは、現在のユノスが支配している土地です。ここは現セルセティアから逃れてきたセティア人たちが辿り着いた場所で、彼らはマイエル教の影響を受けていました。セティア人の移住より約150年後、彼らはベルメック王国やフィアン王国といった大国の侵攻を受けますが、聖母教会の助力もあって、辛くもその支配を免れているといった状況にありました。
そんな戦乱に疲弊したセティア人の前に現れたのが、空一面に浮かぶユナスの姿でした。ユナスは涙を流したまま天に祈りを捧げ、人々に何かを語りかけます。ですが、その声は人々の耳に届かぬまま、やがて静かに消えていきました。この時、ただ1人だけユナスの言葉を聞くことができたものがいたのです。それが『シェアの老女』と呼ばれる女性です。
老女の語るところによれば、ユナスはエルモア地方最強と言われていたイーフォン皇国の皇帝フィエル=ミュン=イーフォンの死を予言し、その後に長き戦乱時代が訪れることを嘆いていたというのです。そして、この戦乱期を早く終わらせるためには、神に心からの祈りを捧げ、愛を忘れずに生きることであると説いて、ユナスは消えていったのだということです。セティア人は自らの前にユナスが現れたことを神意と受け止め、正統信仰者を名乗るようになりました。
同年、ユナスの予言通りにイーフォン皇帝フィエルは死亡し、エルモア地方は長い戦乱期に突入することになります。教会はこの年を新たなる時代の始まりとし、現在の標準暦である『聖歴』が生まれました。ユナスの言葉が実現したことから聖母教会への信頼は強まり、また戦争に明け暮れる時代に巻き込まれる中で、人々がよりいっそう神の恩恵にすがる風潮が生まれました。なお、これより以後の百年あまりの苦しみの時代を、現在では『祈りの時代』と呼んでいます。
▼大母アルメリア=エルファティー
聖母アリアを産んだ女性で、『大母』という特別な称号を持つ聖者として、人々に広く敬愛されています。娘たち同様、聖母アリアも処女懐妊で誕生したとされていますが、それは大母アルメリアが罪を一切背負っていない、完全に清らかな人間であったからこそ、神に選ばれたのだと伝えられています。
娘アリアによく似た面だちだったということ以外、その素性や業績について聖書でも殆ど語られることはありません。というのは、聖母を産み落とした後、彼女は歴史から完全に姿を消してしまうからです。聖母アリアは生まれて数週間で言葉を話し、立って歩くことができたそうです。それは今でこそ神の申し子としての力だと受け止められていますが、大変異現象の余波に苦しむ当時の人々は変異の影響だと考え、彼女たち親娘を集落から追い出してしまいます。2人が消息を絶ってから17年後、アリアは再び人々の前に姿をあらわすのですが、その時すでにアルメリアは亡くなっていたようです。また、アリア自身も母親について話すことは殆どありませんでした。
しかし、ユナスフィール教国の各地には、空白の時間の2人のエピソードが残っておりますし、アルメリアの墓所として伝えられる場所が幾つも存在しています。それらが事実かどうかははっきりせず、教会による正式な認定も行なわれておりませんが、現在も大母が人々に深く慕われていることだけは確かなようです。
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祭祀
▼生誕祭
教会で行われる儀式の中で重要なのは、様々な祭祀です。特に聖母アリアの誕生祭である6月13日は各国で盛大な祭が催されます。
各使徒教会が置かれている国家では、それぞれの使徒の生誕祭が開かれます。その他の国家では大きなイベントは催されませんが、特別礼拝や小規模な祭が執り行なわれたりします。なお、ユナスフィール教国に限っては、規模としては聖母アリアのものほどではありませんが、全ての使徒たちの聖誕祭が催されています。▼ユナス降臨祭
ユナスの降臨祭が開かれる8月1日は、聖母や使徒の生誕祭とは異なり、いわゆるお祭り騒ぎになるようなイベントは行なわれません。この日は教会で特別礼拝が催され、自らの行為を顧みながら平和への祈りを捧げます。
教会での儀式はとても静かで厳かなものとなりますが、夜は少しだけ賑やかなパーティが開かれます。これは大事な人たちと1つの食卓を取り囲んで、それぞれの存在に感謝し合うというもので、民間で慣習的に行なわれている催しです。しかし、本来の意味から大きく外れて、夜の町に繰り出してバカ騒ぎをする者たちも少なからず存在します。
▼聖雪祭/成長祈願祭(12月14日)
雪の聖アーシアの誕生祭である12月14日は、子供の無事な成長を感謝し、これからの人生がうまくゆくように祈願する聖雪祭でもあります。
親は子供に聖印をかけた木彫りの人形を贈り、子供同士は聖印を交換し合う風習があります。基本的には10歳時に祝うものですが、現在ではあまり気にせず、何歳の子供でもお祝いをするようになっています。▼万聖礼拝(毎月30日)
月末の聖節日には聖人を祀るための万聖礼拝が開かれています。▼個別祭
収穫感謝祭や祈願祭など、各地域や教会に独自の祭も数多く存在します。▼地方祭
各国家/自治体の記念行事を、教会主催で執り行う場合もあります。
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