(C)西部/地域 


 


○地勢・気候

 ペルソニア西部は熱帯地方に属しており、非常に暑さが厳しい地域となります。


▼沿岸部
 沿岸の一帯は高温多湿の熱帯雨林気候で、年間の平均気温は25度を超えます。

▼内陸部
 内陸の殆どは熱帯性サバンナ気候で、地域によっても異なりますが、だいたい5月〜10月は雨期、11月〜2月は乾期となります。雨期の平均気温は25度ほどになりますが、乾期の頃は30度を超える暑さとなります。山地に囲まれた土地は特に乾燥が激しく、砂漠が広がっている土地もあります。


○地図

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○要所

▼ハーバル・ルオル川(C-2/C-4)
 南部奥地のマヤメヤ山脈を水源とするハーバル川およびルオル川は、森林地帯を抜けてモドラ・サバンナに入る辺りで合流して、ハーバル・ルオル川と呼ばれる大河川となります。この河川水はディズメル湖に注いだ後、東のパグバッティ川と西のフラート川に分かれ、イズマ平野を潤して紺碧海へと抜けてゆきます。
 
◇大湿地帯
 ハーバル・ルオル川から大量の水が注ぐディズメル湖の下流域は、雨期になると各所が水浸しとなり、大湿地帯へと姿を変えます。溢れ出た水によって大地は殆どが水没し、各地に点在する小川や池の水面は、鏡のように銀色に輝きます。氾濫によって河川水に含まれていた有機物は、周辺の土壌に与えられます。そのため、かつては動植物を育む楽園であったこの湿地帯は、後にメイオール王国によって開墾され、現在は植民地政府の農地として耕されています。しかし、雨期だけは魚や鳥たちが集い、豊かな生物の楽園へと戻るのです。


▼イズマ平野(C-2)
 ハーバル・ルオル川の下流域に広がる平野で、この肥沃な大地で栽培される様々な熱帯の作物が、多くの人々の生活を支えています。


▼ヒナ山地(C-3/C-5/C-10)
 標高1500mほどの山々が連なる山岳地帯で、奥地には最高峰となるヒナ山がそびえています。この山は古の王国に仕えていた巫女が逃れてきた場所で、ヒナというのはその巫女の名だと伝えられています。
 昔から金や宝石が発見されていたのですが、これは神からの賜わり物と考えられていたため、あまり積極的な採掘は行なわれておりませんでした。特にヒナ山は特別な場所とされ、ドーン・ミーヴァ王族のみが立ち入ることが出来る不可侵の聖地として、長く禁足地のまま崇められてきたのです。しかし、聖歴330年代にロンデニアの植民地になると、周辺地域の開発が一気に進められ、近年では麓での鉱脈探しが行なわれるようになっています。それに対して被支配層の黒人たちは強く反発しておりますし、支配をまぬがれている奥地の原住民たちの中には、調査隊に直接的な攻撃を加える者も現われています。
 
◇獣王の聖跡(巨人の足跡/陥没島)
 ヒナ山の麓に見られる独特の地形で、大地が突如陥没している場所が10ケ所以上も存在します。白人たちは巨人の足跡や陥没島などと呼んでいますが、周辺に住む原住民たちの間では、神の使いである獣王の聖なる足跡として古くから崇めてられています。
 この大穴は平均の深さが100m以上にも達するもので、中には直径・深さともに300mを超すものも見つかっています。幾つかの穴は峡谷で繋がっており、密林の動植物たちとともに奥地への通行を阻んでいます。また、風や鳥たちの運んだ種が芽を出したのか、穴の中にもたくさんの草木が生い茂っており、隔絶された世界で独自の生態系を築いています。不思議なことに、鳥や昆虫以外にも動物たちが住み着いているため、どこかに抜け道があるのではないかと考えられています。
 
◇聖爪痕(地割れ谷/裂け目)
 ヒナ山の周辺に見られる地面の断層のことで、様々な深さの亀裂が各所にあります。これは獣が残した爪痕のようにも見えるため、現地の民の間では聖爪痕(聖獣の爪痕)だと伝えられていますが、一般的には単に地割れ谷や裂け目と呼ばれています。小さなものは幅・深さともに数十cm程度となりますが、通行を阻むほどの幅があるものも珍しくはありません。陥没島を繋ぐ亀裂は深さ100mを超える谷となっており、大亀裂や陥没谷という呼ばれ方をしています。


▼泥の籠塔(C-3)
 ヒナ山の麓には泥でつくられた簡素なつくりの塔が幾つも並んで建てられています。これは鳥を捕らえるために用いられる籠塔と呼ぶもので、外壁に窓となる穴が開いている以外には何もなく、内部も完全に空洞になっています。この周辺には食用にされるマルハシドリという鳥が生息していたのですが、彼らはせり出した岩壁などの下に住みつく習性があり、籠塔の中にも巣をつくるそうです。籠塔をしばらく放置しておけば、マルハシドリが勝手に中に入ってくれるので、あとは穴を塞ぐだけで食料を得ることが出来ます。しかし、エルモア地方の移民が来てからは乱獲がたたって、現在では殆どこの鳥を見かけることがなくなり、籠塔も放置されたままとなっています。外壁を加工していない単なる泥の建物なので、補修しなければやがてこれらは雨で溶けてなくなってしまうでしょう。実際、一部の塔は天井に穴があいており、窓もだいぶ大きく広がってしまっています。


▼エスファ川(C-4/C-9)
 メナナ高地からモドラ・サバンナを通って流れる長河川です。この一帯は降水が不安定で、これまで幾度も旱魃が発生した地域であることから、非常に重要な水の供給源となっています。


▼クリオ湖(C-4)
 エスファ川流域に存在する大きな湖で、北側は人間の生活圏にあり、南側は野生動物が暮らす湿地帯となっています。この湖は人々の渇きを癒すだけではなく、良い漁場としても利用されてきました。しかし、魚を食料とする大型の動物は人間ばかりではありませんし、水場を求める動物たちを獲物とするワニなども生息しているため、特に南の方では注意を払う必要があります。
 
◇浮島
 岸から離れた湖面には浮島が幾つも出来ています。これは浮草や流れされた植物が積み重なった出来たもので、現地民たちはその影に集まってきた魚を捕らえたり、魚を狙う動物を仕留めて生活の糧としています。また、草イカダと呼ばれる浮草を束ねた舟を用いたり、生け簀をつくって養殖を行なうために水草が使われることもあります。


▼シルバー・コースト(C-6)
 ラダーム川やレムルカ川の河口に広がる海岸は、採掘された銀をロンデニアに運ぶための貿易港が古くから栄えており、この一帯はシルバー・コーストと呼ばれるようになりました。現在は銀のみならず、それ以外の鉱産物の輸送や、象牙をはじめとした野生動物の加工品などの取り引きも行なわれてます。


▼ザムジー川(C-7)
 C-7地域を流れる川で、季節によって水位が大きく変化するため、それに応じて周辺の景色は一変します。雨期には中洲が沈むほど大量の水が流れ込み、河岸近くで枯れていた草が生きを吹き返して、一面が緑色に覆われます。逆に、乾期には殆ど水が枯れてしまい、川底を歩くことが出来るほどです。


▼大蓮湖(C-7)
 ザムジー川の中流域にある、大きな蓮の生えている広い湿地帯のことです。遠目には草に隠れていてわかりませんが、わずかながら伏流水が涌き出ているため、足首ほどの深さまで水がたたえられています。1年を通じて水場として利用できるため、乾期には周辺の動物たちが集まり、身を寄せあって渇きを癒しています。この区域は自然保護区となっていますが、密猟目当てのハンターが頻繁に出没し、植民地政府の頭を悩ませています。


▼プライア保護区(C-7)
 内陸のサバンナ地帯では野生動物が生息しており、カバやキリンなどの大型の獣も数多く見られます。しかし、エルモア地方では象牙やサイの角などが珍重されることから、ロンデニア植民地ではこれまで多くの動物が犠牲となっており、一部の動物は奥地へ行かなければ見られない状態に陥っています。そのため、サバンナの奥地にある大蓮湖の付近は保護区になっており、現在では狩猟が禁止されています。しかし、密猟者は後を断たず、周辺の地理に詳しい原住民を雇って監視させるなど、幾つかの対策を取っています。


▼テティア山脈(C-6/C-11)
 1000〜1500mほどの低山が連なる場所ですが、ところどころに2000mを超えるの尖峰が急に顔を覗かせます。南部には大規模な銀鉱脈があるため、古くから争いが絶えなかった地域で、各地に古戦場として知られる場所があります。そういった地域には崩れかけた要塞が残っていたり、原住民の集団埋葬地が発見されたりしています。
 現在はロンデニアの鉱山として開発されており、麓には幾つもの鉱山町が形成されています。また、北部ではスズの採掘も開始されることになり、その周辺は新たな賑わいを見せています。
 
◇輝く迷宮
 既に掘り尽くされたテティア山脈の銀山坑跡のことで、安全のために現在は入り口を封鎖されています。しかし、この場所から何者かの声が聞こえてくるといい、逃げ込んだ原住民が密かに住み着いているという噂や、どこかの洞窟と繋がっているという話が出回っています。


▼モドラ・サバンナ(C-9)
 乾燥に強い雑草が生い茂る中に、バオバブなどの落葉高木や灌木がまばらに生えるサバンナ地帯で、乾期には赤茶けた大地が広がります。


▼ウルリ砂漠/雷鳴砂漠(C-9/C-10)
 メナナ高地に囲まれた盆地に出来た砂漠で、別名を雷鳴砂漠といいます。これは一帯で起こる変異現象からとられた呼び名で、その名の通りに頻繁に雷が落ちて来るのです。この雷は天候に関係なく発生するもので、雲1つない晴天でも雷光が放たれる場合があります。もともと、一帯は草原だったという伝承が残っており、その証拠に砂漠の各地で草食動物の化石が発見されています。
 この場所が砂漠に変わったのは落雷による火災が原因で、繰り返し起こることで植生の回復が不可能になったのではないかと推測されています。砂漠化を促進させた要因の1つとされるのが、各所で散発的に吹き荒れる大風で、これによって火が広範囲に拡散したのでしょう。この風は神の怒りの息吹だと信じられており、吹き荒れる少し前になると上空の方から、鳶の鳴き声のような神秘的な高い音が響き渡ります。周辺に住む人々は、この音を「神鳥の歌」あるいは「歌う風」と呼んでいます。
 大風は砂嵐を発生させ、周辺の地形を全く新しいものに変えてしまいます。規模の大きいものは空高くまで砂を巻き上げ、砂漠の外にも砂塵を飛散させます。ひどい時は周辺地域に厚い砂の層を堆積させ、一面が黄色い大地へと変わってしまいます。本当かどうかはわかりませんが、1つの集落を飲み込む大嵐が発生し、住民や家畜たちを山の上まで運んでしまったという伝承も残っているほどです。いくぶん誇張されて伝わっているかもしれませんが、遠く離れた場所から砂漠に立つ砂の柱が目撃されることもあるため、実際に大規模な被害をもたらした嵐が発生したのでしょう。
 
◇象牙谷
 いわゆる象の墓場と呼ばれる場所で、ウルリ砂漠の探索に出向いた探険家グエン=オーリィが、ヒナ山麓の奇岩地帯で偶然に発見したものです。実際に象の骨が大量に見つかった非常に稀な例の1つで、100体以上の死体が見つかっています。
 グエンはそこで手に入れた象牙で一財産を築くと、その半分を次の探険の準備のために費やし、さらなる奥地を目指して旅立ちました。しかし、その探索行から彼が戻って来ることはなかったといいます。残された半分の財産はグエンの妻子が受け継いだのですが、彼らはそれをペルソニアの冒険者組合の設立のために使い、現在も彼の孫であるパヴェル=オーリィが組合長を務めています。


▼メナナ高地(C-9/C-11)
 緩やかな起伏が続く標高800〜1500mほどの高地です。北側の斜面はむき出しの岩山となっており、その上にわずかに植物が生えているの見えます。これらは乾燥に強い種類のもので、あまり高さのない潅木や雑草が主となります。
 エスファ川の源流となる辺りには幾つかの水場があり、麓からは見えませんが植物が豊富に生えています。これを食料とするヤギなどの動物も生息しておりますし、幾つかの部族が放牧や農業を行なって生活しています。


▼グラン峡谷(C-10/C-11)
 ディンゴル川の急流と険しい崖、そして竜の亜種などの怪物に守られた自然の要害です。冒険家たちはこの難所を乗り越えることを夢見ておりますが、特に谷底に住む変異体の存在は脅威で、いまだ奥地まで辿り着いた者は存在しません。


▼岩壁街(C-10)
 原住民たちがグラン峡谷の岩壁を掘ってつくった家々のことで、狭い岩棚にへばりつくようにして、たくさんの住居跡が並んでいます。いつの時代の建築かは明らかになってはおりませんが、現在は廃虚となってしまっているようです。しかし、これはウルリ砂漠側の谷にあるため、誰もそこまで赴いて確認した者はおらず、実際に無人となっているかどうかはわかりません。
 
◇屍谷
 峡谷の入り口付近のことで、聖歴692年に起こった局地地震で崩落したといわれる、岩壁街の残骸が散らばっています。この地域の調査は終了していますが、瓦礫を見たところ高度な技術で造られた建築物らしく、平らに磨かれた壁材に精巧な彫刻が施してあったり、防腐用の塗料を塗った給水設備らしき木管も発見されています。幾つか発見されている宝飾品などからも、周辺部族よりも高い知識・技術を持った人々が住んでいたことは間違いないようです。しかし、装飾模様や文字らしき刻印を比較しても、近隣に住む部族の文化とはあまり関連性が見られず、かつてペルソニア奥地に存在したといわれる、巨石文明の末裔ではないかと考えられています。


▼キラーラ高地(C-7/C-12)
 ヤルク平原に突き出している低地は殆ど何もない岩山ですが、その背後にある起伏に富んだ山地からは鉄が発見されています。採掘は聖歴700年代の初頭に開始されていますが、さらに730年代になると奥地で豊富な石炭が発見されたことで、この地は資源の供給地として大いに賑わうことになります。現在では10を超える大小の炭田があり、露天掘と坑内掘が半々くらいで採掘されています。
 
◇奥地
 鉱山のさらに奥地の方は、独特の景観を示す無人の地となっています。一帯は標高1000mを超える円筒のような岩が突き出した、100を超えるテーブルマウンテンが点在しています。麓の鉱山地帯の当たりまでは緩斜面なのですが、途中から急に垂直に近い角度で岩壁が突き出しており、オーバーハングとなっている場所も多いため、頂上まで辿り着いた者はおりません。しかし、滝から流れ落ちて来る美しい飛沫や、壁面にへばりつくように生えている草木、そして時おり鳥の大群が上空を覆い、猿などの獣の声も聞こえてくることから、独自の生態系が形成されているものと考えられます。原住民たちはその上に聖獣の王国があると信じており、現在も聖地として崇められています。


▼マハ砂漠/赤の砂漠(C-7/C-12)
 マハ砂漠は鉄分を含む赤い砂で覆われているため、赤の砂漠と呼ばれることもあります。周辺の山地も赤茶けた岩肌を見せており、辺りが夕日に包まれる頃には景色は赤一色に染まります。
 この砂漠は岩盤の上に出来たものらしく、積もった砂礫の中から幾つもの岩山が突き出ています。砂地に比べると岩影は水が蒸発しにくいため、周辺には植物が根付いています。また、それを食料とする生物が集まってきたり、厳しい日射しをしのぐために岩の隙間に住み着いている動物もおります。このように動植物にとってオアシスのような存在であるため、現地の人々はこの岩石のことを『泉岩』あるいは『森岩』などと呼んでいます。
 
◇宝石の谷
 キラーラ高地の麓の砂漠で、聖歴690年代に宝物が発見されたことがあります。ルビーやエメラルドを豪華にあしらった宝飾品や、見事な細工の銀製品などが埋まっていたため、地下に何らかの遺跡が存在するのではないかと期待されたのですが、かなり深くまで掘り進めても何も出て来ることはありませんでした。しかし、この発見によってキラーラ高地の調査が本格的に行なわれ、ロンデニアは新たな鉄や石炭の供給地を手に入れることになります。
 なお、この場所は正確には砂漠ではなく、砂が吹き溜まった峡谷だったようで、他にもこのような大きな亀裂が幾つも地下に存在することが確認されています。これらをロンデニアの人々は『砂谷』と呼んでいますが、新たな発見を夢見て砂を掘る人々の姿を、今でもこの付近で時々見ることができます。


▼スクガ川(C-12)
 キラーラ高地の西を流れる川ですが、普段は殆ど水量のない枯れた川ですが、雨期になると大量の水が流れる急流となります。流域は乾燥した半砂漠地帯なのですが、この時期だけは一帯が水浸しとなり、大湿地へと変わってしまいます。


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