ライヒスデール植民地
(C)ワーデンオール小州 

基本情報自然・要所人物・集団


 

基本情報


○全体

 C-1、C-2地域がワーデンオール小州として扱われています。


▼辺境伯(植民地総督)
 アウグスト=プランシュヴァール辺境伯が植民地総督を務めています。

▼州都
 ラグナ川の下流域にあるヴィシュワルト市に総督府が置かれています。


○人種・民族

 現地の住民の殆どはアデン人系の黒人で、次にライヒスデール系や旧支配者であるルワール系の白人などが多くなります。また、古くに現地に同化した貿易商人の子孫などの白人や、白人と黒人との混血であるフォリア人も、現在では相当数にのぼります。
 なお、この付近はラガン帝国の影響を殆ど受けておりませんので、黄人はあまり多くは住んでおりません。また、赤人も奥地の一部で見られるだけで、殆どいないと言ってもよいでしょう。


○歴史

▼C-1
 この一帯は古くからサン・ゴート王国が支配してきた場所で、王国は隣国のメイオール王国と反ラガン同盟を結びながら、長く独立を守り続けてきました。
 この地域がエルモア地方と交流を持ったのは聖歴220年代のことで、ラガンおよびソファイアとの衝突を避けた、カーカバート、ロンデニア、東メルレイン連邦国(現ルワール)、アルア=ルピッツ連盟(現ルクレイド)などと交易を行ってきました。その後も、カーカバート、エリスファリア、ロンデニアらと交易を行いながら、国外からの技術を取り入れて、鉱山開発や武器の製造などにも力を入れてきました。また、侵略された国家などから逃げ出して来た人々も、人種を問わず移民として受け入れ、国力の増強をはかってきたのです。
 こうした努力により、聖歴520年代にルワールによって隣国メイオールが占領された際にも、その侵攻を単独で食い止めることに成功しています。しかし、聖歴780年から始まるライヒスデールの侵攻に対しては、その技術力の格差からこれを食い止めることが出来ず、ついに聖歴783年には独立国家としての地位を失うことになります。現在もこの土地はライヒスデールの植民地として存在しています。


▼C-2
 この一帯は古くからメイオール王国が支配してきた土地です。この地域がエルモア地方と交流を持ったのは聖歴220年代のことで、ラガンおよびソファイアとの衝突を避けた、カーカバート、ロンデニア、東メルレイン連邦国(現ルワール)、アルア=ルピッツ連盟(現ルクレイド)などと交易を行ってきました。
 その後、東メルレイン連邦国がラガン帝国と手を結ぶと、メイオール王国はそれを避けて、ロンデニアやソファイアを中心に交易を行うようになります。また、聖歴450年代に入ると、ソファイアがペルソニアでの力を落としたため、王国は次に台頭してきたエリスファリアとも手を結び、ラガン帝国などの侵略国家に対抗する力を維持しようとします。しかし、聖歴520年代になると、ロンデニアおよびエリスファリアは国内問題からペルソニアでの力を落とし、後ろ楯となる国家を失ってしまいます。そのため、聖歴570年代に侵攻を開始したルワールを退けることが出来ず、ついにメイオール王国はルワールの植民地となるのです。
 それから聖歴780年代に入るまで、この地は長くルワールの支配下に置かれるのですが、聖歴784年にライヒスデールの侵略を受けることになります。この時、本国では黄人による独立運動が起こり、ついに聖歴786年、ルワールはこの地を手放す羽目に陥ります。そして現在も、ライヒスデールの植民地として維持されています。


○現況

 いずれの領土も征服して数年という不安定な状況であり、まだライヒスデールに対して反発する意識も強いことから、植民地政府は性急な恭順を強いることなく、慎重に同化政策を進めてゆく方針です。というのは、聖歴787年に開かれたペルソニア調停会議において、植民地境界線が正式に確定されましたが、領内統治が不安定であれば他国の侵攻を受ける可能性があるため、なるべく現地民の暴動や反乱を避けねばならないからです。
 こういった理由から、植民地政府は現地の幾つかの有力部族から官僚を登用したり、植民地議会に現地代表の特別議員枠を設けています。また、植民地内に幾つかの自治区を置いたり、サン・ゴート王国の王族を処断せず、彼らに自治区の統治を任せるといったやり方で、被支配民の不満を和らげようとしています。
 このような懐柔策を前面に打ち出したやり方は、強硬な方針を打ち出すライヒスデール本国の支配政策とはそぐわないものです。その意味では、本国と連絡が途絶えがちである現状は、植民地政府にとって好都合ともいえるでしょう。しかし、一方で軍事および物資の面では本国の支援を期待することは出来ず、有事の際にはもう1つの植民地であるクレンシュタイン小州を頼るしかない状態にあります。
 現地民にこの状況を知られるのは非常に不都合なことで、植民地政府の足下を見られることになりかねませんし、反乱を企てる者が出ないとも限りません。また、度が過ぎる懐柔策も逆効果となることも心得ているため、政府は規則・法律の遵守を徹底するとともに、植民地や自治区への出入りを厳しく監視しています。特に、有力氏族が他国と接触しないよう、自治区では検問が敷かれており、王族は軟禁状態に置かれている状況です。
 こうしてバランスを取りながら、慎重に支配政策を進めてきた植民地政府ですが、最近になって本国で制定された密告制度によって、植民地内では新たな混乱が生じています。本国に従って施行せざるを得なかった法令ですが、報奨金目当ての偽の通報はもとより、それを利用して私腹を肥やそうとする政府の役人や、植民地内を混乱させる目的で不穏な噂を流す者があらわれたり、部族同士の対立といった内紛まで起こるようになっています。この機に乗じて他国の密偵が潜入し、植民地内部の撹乱を目論んでいる可能性も強く、監視体制を強化さざるを得ない状況ですが、これに対する市民の不満も高まっています。


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自然・要所


○地勢・気候

 海岸部は熱帯性気候で高温多湿となり、年間の平均気温は25度を超えます。この一帯ではカカオ、バナナ、アブラヤシといった熱帯の作物が栽培されています。


○都市

▼ヴィシュワルト市/州都(C-1)
 ラグナ川の下流域に置かれた州都で、軍港としての機能を持った城塞都市です。サン・ゴート王国の首都でもあった場所で、聖歴786年まで独立国家だったことから、エルモア色が非常に薄い町並みとなっています。また、サン・ゴートは様々な部族を取り入れて発展した国家でもあり、地域によって多種多様な文化が混合した、非常に雑然とした雰囲気の都市でもあります。


▼ナナス・ファイナ(C-1)
 ラテット草原に近い場所に置かれた自治区の1つで、サンゴートの王国のかつての王子が統治を任されています。ここは王国時代に王家の別荘が置かれていた地域で、その建物が現在の自治区政府の施設として使われています。なお、王子が自治区の代表を務めるといっても、父王や母らが州都に軟禁されている状態にありますし、彼の部下たちは全て植民地政府から派遣されてきた者です。そのため実際のところはお飾りでしかなく、現地民の不満をやわらげるための存在でしかありません。


▼ガイリーベルク/旧ナバス地区(C-2)
 エスファ川がソム川とパゴ・ボビア川の2つに分岐する地点にある町で、もともとはルワール植民地にあったフェノバス=ナバスという交易都市の一部でした。しかし、聖歴786年のルワール領侵攻によってこの地を制圧した際に、河川東部のナバス地区はライヒスデールの支配下に置かれることになります。対岸のフェノバス地区にはルワール軍が駐留しており、現在は軍が駐留する最前線となっています。拠点基地として防備が進められており、川沿いには防塁と大砲が設置されています。


○要所

▼ハーバル・ルオル川(C-2/C-4)
 南部奥地のマヤメヤ山脈を水源とするハーバル川およびルオル川は、森林地帯を抜けてモドラ・サバンナに入る辺りで合流して、ハーバル・ルオル川と呼ばれる大河川となります。この河川水はディズメル湖に注いだ後、東のパグバッティ川と西のフラート川に分かれ、イズマ平野を潤して紺碧海へと抜けてゆきます。
 
◇大湿地帯
 ハーバル・ルオル川から大量の水が注ぐディズメル湖の下流域は、雨期になると各所が水浸しとなり、大湿地帯へと姿を変えます。溢れ出た水によって大地は殆どが水没し、各地に点在する小川や池の水面は、鏡のように銀色に輝きます。氾濫によって河川水に含まれていた有機物は、周辺の土壌に与えられます。そのため、かつては動植物を育む楽園であったこの湿地帯は、後にメイオール王国によって開墾され、現在は植民地政府の農地として耕されています。しかし、雨期だけは魚や鳥たちが集い、豊かな生物の楽園へと戻るのです。


▼イズマ平野(C-2)
 ハーバル・ルオル川の下流域に広がる平野で、この肥沃な大地で栽培される様々な熱帯の作物が、多くの人々の生活を支えています。


▼監獄島(C-2)
 海辺から見える小さな島で、周囲は険しい岸壁に囲まれています。もともとは軍の施設として用いられていたもので、現在は政治犯や重罪犯を収容する建物が置かれています。


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人物・集団


○集団

▼独眼蜂
 漆黒の頭巾を被った反政府組織の一団で、顔の中心部分に白い染料を用いて、目を意匠化した大きな紋様を描いています。彼らは闇夜に紛れて植民地を襲う暗殺団であり、針のように細い武器を好んで使い、特殊な毒を用いると言われております。
 このような戦い方をする集団が、今はなきサンゴート王国にも存在しました。それはサンゴート軍の密偵部隊で、敵地へ潜入して破壊工作や暗殺活動などを遂行しておりました。独眼蜂はその残党が結成した集団と見られており、ライヒスデールは民衆に与える影響を考え、早急に事態を収束したいと考えています。


▼長髪族
 この部族の女性は生涯髪を切ることはなく、ずっと伸ばし続けるという風習を持っています。髪は編み込んだ上で幾つかに束ねていますが、未婚か既婚かでまとめ方が違います。髪を切られるのは刑罰を受ける時に限られ、この上ない恥だと考えられています。


○人物

▼アウグスト=プランシュヴァール辺境伯(白人/男/52歳)
 非常に誠実でバランス感覚に優れた統治者ですが、やや潔癖で身内に厳し過ぎる傾向もあり、部下の反感を買いやすいという一面もあります。しかし、もともと子爵家の次男であった彼を抜擢したのは皇帝であり、誰もその意向に逆らうことは出来ないため、表立って彼に反抗する者はおりません。
 本国との連絡が途絶えがちになっている現在は、彼の目を盗んで私腹を肥やそうとする政府高官や、反皇帝派の息がかかっていると思われる特別監督官の存在など、植民地の統治以外にも目を向けなければならない案件が増えています。また、本国に合わせて導入された密告令によって、統治状況が不安定化していることで頭を痛めています。


▼エリザベート=ユーイベール(白人/女/30歳)
 内務省の連邦監査局から派遣されてきた特別監督官で、植民地の内政を監査するのみならず、植民地政府に対して独自の判断で進言する権限を持ちます。しかし、彼女は反皇帝派の手先であり、ブランシュヴァール伯爵の失脚を狙って、無理難題を押し付けているという噂もある人物です。事実、彼女の要請に従った結果、領内が混乱に陥るケースが多々あり、伯爵の側近たちはあからさまに敵視するほどです。とはいえ、皇帝の判断、帝国の方針と言われてしまえば、彼女の発言を無視するわけにもゆかず、なるべくその意向に沿った形で事を進めなければなりません。
 伯爵に懐柔策を進言する者もおりますが、多くの側近は黙って首を横に振ります。というのは、彼女は傍から見れば美しい容貌をした華奢な女性ですが、職務に臨む際の目つきはまるで猛禽のごとく鋭く、氷の薔薇とまで呼ばれる油断ならない相手であることは、誰が見ても明らかだからです。


▼グレイル=ラインバッハ(白人/男/36歳)
 地主の家系に生まれた軍人ですが、ペルソニア侵攻の際にその才を発揮し、現在は中佐として1つの大隊を任されています。功績を挙げるために植民地の拡大を目論む野心家で、植民地軍の若い士官たちを集めて主戦派に取り込もうとしたり、植民地議会の議員や新聞記者の友人を動かして、積極的な出兵論を流布しようと活動しています。特にルワールが鉱山開発を進めているC-9地域について、領土が正式に確定する前に制圧する必要性を周囲に説いており、その正当性を立証するために冒険者や山師を雇い、密かに新鉱脈の探索を進めさせています。


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基本情報自然・要所人物・集団