概要
『星界蟲』(スター・バンディット)は、霊子を食べる性質を持つ無機生物です。その名の通り星界に生息するものですが、現在ではトリダリス星に降りてきているものも存在します。
○人類との関係
▼軋轢
星界は人類を飛躍的に発展させる土壌となりうるものでした。というのは、この空間は霊子が高密度で存在しており、エーテル宇宙とも言うことができる空間だったからです。宇宙への道をいまだ拓くことができずにいた人類は、星界への希望を膨らませます。
しかし、開拓を阻む存在として人類の前に立ち塞がったのが星界蟲です。彼らは霊子エネルギーを利用する生物で、活性状態の高い霊子がある方に寄ってくる性質があります。霊子を利用して動く霊子機関や科学魔道機器は、彼らにとって格好の標的であり、探査船や工作機械など多くの機器が破壊されてしまいました。
人類は星界蟲と戦うために、緩衝流の影響を受けない生物兵器や霊体兵器を誕生させます。さらに、ドラグーンウェポンや魔道機と呼ばれる圧倒的な戦闘能力を持つ兵器を開発し、星界蟲を星界の辺境に追いやることに成功しました。そして、最終的に星界蟲の逃げ込んだ岩塊に向けて霊子核融合砲を撃ち込み、この大半を滅ぼすことに成功したのです。
▼研究
これらの戦いの最中、星界蟲に関する様々な生態調査が行われました。そして、得られた情報をもとに研究が進められ、カーバンクルと呼ばれる生物の制御機器や、旧コロニー勢力が生み出した霊刻魔儀など、彼らの能力を利用した有用な技術が開発されています。
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構造
○形態
▼基本構造
『エーテル・ブレイン』と呼ばれる核を中心に構成される無機生物です。エーテル・ブレインは脳の役目を果たしており、これに真砂(ケイ素の導霊物質)で出来た内骨格が繋がっています。内骨格は神経のような役割も果たしているようで、体内の情報伝達を行なう霊的回路を形成しています。
これら中枢構造の外部は、基本形層と呼ばれるケイ素を主体とした化合物に覆われており、蜘蛛のような外観を持つ本体を形成しています。そして、さらにその上層には様々な無機物で出来た外殻が被さり、全体的にはカブトガニのような形状を取っています。外部装甲と呼ばれる一番外側の甲殻は、群れによって異なる形態を示すもので、その材質も金属や石英など様々な素材が使われています。
▼大きさ
平均的な大きさは3〜5m程度となります。しかし、年月に応じて体が成長してゆくため、数十cm程度の幼生体もいれば、10m以上の個体が見つかることも珍しくありません。
○器官
▼無機細胞
星界蟲は無機生物ですが、肉体の構造は通常の生物に似ています。内骨格や基本形層はケイ素や真砂を主要構成物質とする、細胞様の微小な活動体が組み合わさって出来ています。その働きも細胞によく似ており、自己再生などの基本機能を有し、筋肉のようにエネルギーを用いて動きます。
▼エーテル・ブレイン
球状構造を持つ透き通った青白い結晶体で、人間でいう脳に相当するものです。これを核として個体の精神場が維持されており、破損すれば活動性を失います。
この球状結晶は、中心核となる透明結晶の外層を結晶霊子が取り巻く2層構造となっています。中心核のことを内核結晶といい、この主要な構成物質はケイ素となりますが、内部には真砂(導霊ケイ素)の結合結晶が神経のようにはり巡らされています。これは立体状の霊的回路で、肉体の制御や生命の維持、あるいは固有の特殊能力を発動させるために用いられます。
▼口器
頭部前方に口に相当する器官があり、そこから霊子物質や構成物質となるものを吸収します。口器は硬く頑丈で、岩塊や金属を噛み砕くことも出来ます。
▼感覚器官
外殻には一定の間隔で水晶玉のような球形結晶が埋め込まれており、感覚器官として機能しています。この結晶体は真砂と結晶霊子の結合体で、これを通じて霊的感覚による情報収集を行なっているようです。
▼フェイスマスク
星界蟲に特徴的な器官で、口器のすぐ上に無貌の仮面のような、緩やかに彎曲する白板がそなわっています。成長しても大きさは変化せず、生涯同じ形状を維持します。
外装はケイ素化合物で構成されていますが、内部はエーテル・ブレインの核と同じ素材の結晶体です。結晶の内部には霊的回路が組み込まれており、これを通じて群れと意識を同調させたり、仲間同士の情報交換を行なっているようです。
外装で特徴的なのは、人間でいえば額に相当する部分に刻印が施されていることです。溝は内部の結晶体にまで到達しており、霊的回路として機能します。刻印パターンは群れごとに異なっており、同じ集団を形成する仲間としかマスクを通じた連絡は行えないようです。なお、この刻印パターンは『コロニー・エンブレム』と呼ばれており、群れの識別のために利用されています。
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活動
○群れ
星界蟲は集団で行動する生命体で、女王と呼ばれる個体を中心に群れを構成しています。
▼共有意識
星界蟲の個体はそれぞれ個別の精神場を持ちますが、フェイスマスクを媒介してこれを連結しているため、全体で1つの精神場として働きます。そのため、群れに属する全ての個体は共有意識を持ち、完全に統一された行動を取ります。
▼役割
星界蟲は社会性昆虫によく似ており、役割分担を行なって群れを維持しています。
◇女王
群れの中核となる女王は特に体が大きく、全長が数百mにも及ぶ個体が発見された記録もあります。なぜ、そのように巨大な体を持つかというと、女王自体が巣の役目を果たしており、内部に通路状の空洞を持つ小惑星のような体を持つためです。
女王は自身の体を巣として維持することと、群れ全体の精神場を連結する中継機構としての役割を担っています。単為生殖による増殖も行ないますが、この機能はその他の個体も有しており、女王特有の機能ではありません。◇端末個体
働きアリに相当する個体で、状況に応じて様々な役割を果たします。平時はエネルギー源となる霊子と体を構成する材料を集める役目を負いますが、外敵が近づいた際には兵隊として戦いますし、生息圏を広げたり群れ全体で移動を行なう前には、分散して調査行動を試みたりします。
○移動
星海での移動時は霊子エネルギーを利用して、飛行するように自由に宙を動き回ります。水中や空中でも同じように移動を行ないますし、地面があれば多数の脚を用いて歩いて動くこと出来ます。
なお、これは端末個体の話であり、女王は移動のための器官を備えておらず、端末個体に運んでもらわなければその場から動けないようです。
○摂食行動
▼感知
生物と同じように周囲の情報を感覚器官で受け取り、餌となる物質を探し出します。なお、霊子エネルギーの場合は活性状態が高い方に寄ってゆくこともわかっています。▼霊子
口器から吸収した霊子物質を、無機細胞の機能で霊子エネルギーに変換したり、霊子回路の発動に利用します。吸収できる霊子の形態は問いませんが、魂霊子の吸収が可能かどうかはよくわかっておりません。
彼らは吸収した霊子を自らの魂霊子に変換する機能も持っています。これにより、科学魔道の機械とは違って、緩衝流の影響を受けずに自由に活動することが出来るわけです。▼構成物質
外部の無機物を口器から取り込み、無機細胞の活動によって肉体を構築します。▼運搬
女王は基本的に、端末個体に運んでもらった霊子や物質を用いて、生命活動を維持しています。本体にも摂食のための機能はあるようで、外殻の至るところに口器が存在しています。しかし、浮遊する物質を捕獲することしか出来ないため、端末個体なしでは生存不可能となります。▼休眠
その他の無機生物もそうですが、エネルギー源となる霊子がなくなれば、最低限の生命維持しか行なわない休眠状態に陥ります。なお、女王に限っていえば、平時は情報伝達の機構だけを維持して、あとの機能は眠らせていることも多いようです。
○死亡
星界蟲には寿命はないようですが、通常の生物と同じように【生命値】を失えば損壊状態に陥ります。また、エーテル・ブレインや内骨格が破損したり、その機能に異常をきたすことで機能停止を起す場合もあります。なお、女王が生命の危機に陥った場合など、ごくまれにしか見られない行動になりますが、端末個体が自ら女王の餌となって修復を行なうことがあるようです。
▼女王の死
女王が死んだ場合は群れの共有意識は失われ、それぞれの個体がバラバラに活動するようになります。しかし、群れからはぐれた後の星界蟲の行動については、科学魔道時代にも殆ど観察が行なわれておらず、どのような生活を行なうのかは現在もわかっておりません。
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増殖
○エーテル・シード
星界蟲の増殖は非常に独特な手段を取ります。それは『エーテル・シード』(結晶種子)という結晶体を用いて行なうもので、単為生殖によって個体を増やしてゆきます。
▼構造
エーテル・シードはエーテル・ブレインによく似た、多層構造を持つ球状の結晶体です。材質も殆ど一緒で、中心核を結晶霊子が取り巻く構造となっていますが、内核結晶の中に無機細胞を含むことと、外層の結晶霊子の中に真砂の霊的回路が構成されている点が異なっています。▼生産
この種子は女王に限らず全ての個体が生み出せるもので、生涯を通じて繰り返し生産されます。繁殖期のようなものは存在しませんが、個体数が激減した時には一斉増殖が起こるようです。▼射出
通常、エーテル・シードは女王の体内に産みつけられ、霊子と構成物質を与えられて星界蟲に育ちます。種子は口器から放出されますが、まれに環境中に射出されることがあり、星海を漂っている状態で発見される場合があります。
○可変構造
エーテル・シードは非常に面白い性質を持つ霊子結晶であり、古くから研究者たちに注目されてきました。というのは、これは周囲の霊子の密度や活性状態に応じて形を変え、外層の結晶霊子がまるで花弁のように開閉するのです。
▼霊子状態
エーテル・シードは、周囲の霊子密度が高くなったり活性状態が高まると球状構造を取り、希薄になると花弁を広げます。そして、この構造変化によって魔道回路を変化させ、1つの物質でありながら多様な霊的効果を生み出すのです。なお、非常にコンパクトな形で複数の回路を形成できることから、これを応用する研究が多方面で進められました。▼エーテル・ローズ
花弁を開いた状態の種子を『エーテル・ローズ』と呼びます。その名の通りバラの花弁が重なっているような形をしており、周囲の霊子が希薄な状態になった時に形成されます。
エーテル・ローズは非常に変わった性質を持ち、周囲の霊子状態を感知して自ら移動を行ないます。そして、霊子密度の高い場所に到達すると、球状構造を取って移動を停止します。この現象は内部の霊的回路によって生じるものですが、そのエネルギーには構成物質である霊子結晶が使われているらしく、霊子が希薄な状態が続くといずれ構造が崩れ、花がしおれるように徐々に形を失って、やがて中心核だけが残ります。
○精神場の形成
霊子密度の高い場所に置かれたエーテル・シードは球状構造を取ると同時に、周辺の霊子を取り込んで圧縮する霊的回路を発動させます。そして、これによってエーテル・クラスターを生み出し、さらに外層に新たな霊的回路を形成して、精神場を自ら生み出すのです。
精神場を持つことで意識存在となった種子は、周囲の霊子と物質を取り込んで肉体を形成し、星界蟲の幼生体へと姿を変えます。この過程でフェイスマスクも形成されるため、群れの一員として共有意識に取り込まれることになります。
▼群体結晶化
エーテル・クラスターを形成する前の段階で、星界蟲の無機細胞は増殖を繰り返しながら結合し、種子の中心部で結晶化を果たしていることがわかっています。結合後の球状結晶は霊子回路を形成しており、結晶化を行なっていない種子には霊子場が生じないことから、この回路が霊子圧縮を行なうものと考えられています。また、エーテル・ブレインの中心核にある網状に繋がる真砂結晶は、この時に結晶化した無機細胞の回路であろうと推測されています。
○情報伝達
エーテル・シードはその外層に、フェイスマスクに刻まれている『コロニー・エンブレム』と同じパターンの霊的回路を持ちます。この回路を用いた情報伝達は、種子と群れとの間でも行なわれているようです。そのため、エーテル・シードを巣の外へ射出する目的は、霊子の分布状態を調査するためだと考えられています。
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