航空交通機関

気球飛行船飛行機


 

気球


○利用状況

 人類は気球によって初めて大空へ到達することができました。初期の頃は熱した空気で飛ぶ熱気球タイプのものしかありませんでしたが、現在ではゴム引きの布を用いた水素気球やヘリウム気球も存在します。これらはほどなく飛行船へと姿を変え、航空機械の新たな可能性を切り開くこととなりました。


▼軍事利用
 気球はペトラーシャなどの一部の国家で、軍事的に利用されています。先進国家では気球隊という空軍が試験的に設立されており、気球によって空から状況を偵察し、そして戦場を指揮することで効果をあげた記録も残っています。


○操縦

 気球の操縦は高度を操作することによって行います。熱気球であれば、最初は30分ほどの時間をかけて空気を熱する必要があります。
 気球士(パイロット)は高度の他に風向きも見なければなりません。風向きや風力というのは、その時の気球の高度によって変わります。自分が進みたい方向に移動するためには、そちらに吹いている風をつかまえる必要があるのです。速度は完全に風任せですし、燃費も風次第ということになります。ですから、気球士は気球の基本的な取り扱いだけではなく、風を読むための知識と的確な判断力を要求されます。
 なお、水素気球やヘリウム気球の場合は、周囲の気温が下がると高度が不足するので、最初は砂嚢(砂バラスト)をゴンドラの周囲につけておいて、それを適時投下することで高度を保ちます。


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飛行船


○利用状況

 飛行船は霊子機関を利用したプロペラ推進装置の開発によって、ようやく実用化が可能となった交通機関です。気球とは推進装置の有無で区別されています。
 気球は民間でもよく使われていますが、飛行船の場合はまだ一部の会社で運用されているだけに過ぎません。また、旅客・輸送用といっても船や鉄道に伍する実用のものではなく、物珍しさから人気を集めているといった程度です。現在はユークレイ、ペトラーシャ、カスティルーン、ライヒスデール、フレイディオンの5国のみに存在しますが、その他の国家でも開発が進められています。


▼軍事利用
 飛行船はそもそも軍で開発されたものであり、軍事利用が当初の目的でした。先進国家では気球と同様に空軍で運用されており、パラシュートをつけた落下訓練なども行われています。なお、砲門を搭載した飛行船はまだ登場しておらず、あくまでも局地強襲や移送手段としての利用が考えられている段階です。


○飛行船の構造

▼基本骨格
 気嚢部分の基本的な構造は、硬式構造と呼ばれる軽い骨組みを用いて形状を保つものです。気嚢部分はまず全体を覆う外皮に包まれており、その中にガスを詰めた球状の袋を幾つも並べて搭載しています。皮部分はガスを逃がさないようにゴムを塗布したものや、動物の胃袋を縫い合わせた布を利用しています。充填されるガスは水素、石炭ガス、ヘリウムガスなどの種類があります。
 なお、大型の飛行船を建造する場合、この時代の技術では外皮を内部のガスの圧力で保つ軟式構造と呼ばれる構造を採用することはできません。これを達成するには膜材の性能など、全体の技術が進歩する必要があります。ただし、小型の飛行船では軟式構造のものも存在しますし、中型の飛行船では半硬式構造と呼ばれる折衷型のものが作られる場合があります。


▼係留フック
 硬式飛行船の気嚢の先端には、係留塔につけるためのフックが取り付けられています。このフックと胴体部分を支える台車で地上に固定されます。


▼ゴンドラ
 ゴンドラの構造は設計者によって異なりますが、大型飛行船の場合は箱形の密閉ゴンドラを使用します。軽くする目的で木材を使用することが多く、その上に防水性の塗料やゴムなどを塗るようです。


▼動力
 動力機関として使われるのは霊子機関です。これにプロペラをつけて推進力とし、向きの変更は気流を読んだり、尾翼とプロペラをコントロールすることで行われます。しかし、現在では可動翼で気流をコントロールする方法の研究もされるようになっています。


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飛行機


 飛行船は浮かぶということはできても、鳥のように大空を飛ぶという表現に見合うものではありません。空への夢は果てず、現在も大勢の人間が熱心に航空機の開発を続けています。特に海を持たないカスティルーンやペトラーシャ、そしてロンデニアとの諍いによってポラス海峡の通航が困難であるライヒスデールやフレイディオンで研究が奨励されており、国家から補助金が出されている場合もあります。
 国家としてだけではなく、個人でも大きな翼を背負う滑空機(グライダー)や、霊子機関を用いた羽ばたき飛行機(オーニソプター)を開発している人は存在します。しかし、まだ誰も長い距離を継続して飛行するには到っておりません。


○滑空飛行

 最も古くに考案された飛行方法は、鳥に似せた翼を背負って斜面などから滑空するというものであり、これまでにも数十mほどの飛行距離を記録しています。これと同じような考えで、木の枠に布を貼った翼を背負って、塔や崖などの高い場所から飛び降りる者もおり、彼らは『タワージャンパー』と呼ばれています。
 しかし、その殆どの試みは失敗に終わり、開発者以外の人々から見れば、それは落下に相当するものでしかありませんでした。事実、彼らは実験の度に怪我を負い、タワージャンパーの大半は命を落としています。


○動力飛行

 パラシュート、人力飛行機、滑空機、オーニソプター(羽ばたき飛行機)などの実験はなされていますが、いまだに飛行機に類する動力機械は存在していません。しかし、霊子機関の登場により、飛行機械の実現は夢ではないところまで来ています。
 なぜ動力飛行が実現しないままなのかというと、翼の形状についての研究が進んでいないためです。空気力学の分野は動力分野に比べて遙かに遅れており、研究が進むためには物理学全体の発展を待たなければならないでしょう。
 また、揚力は翼の上下の気圧差によって生じるもので、速度が上がるほど気圧差が大きくなるのですが、そのことに気づいた者は誰1人として存在しません。研究者たちは気流に乗ることだけを考え、斜面から機械を飛び立たそうと考えているのです。翼の形状について検討を重ね、十分な速度で地上を滑走して飛び立つことに気づくまでには、まだまだ20年以上の時間がかかることでしょう。しかし、優れた研究者が集まって開発を続ければ、意外と早く空への道が拓ける可能性はあります。
 なお、羽ばたき飛行機は構造的に無理があるため、たとえ100年開発を続けても実現は不可能となります。これを実用のものとするには、科学魔道時代の発掘品など、まったく異質の科学装置が必要となるでしょう。


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