審判役/ダイス

GMのダイス判定時の調整


 

GMのダイス


 GMが操るキャラクターも、ゲーム世界ではルールに従って活動しなければなりません。判定の必要があれば、GMがダイスを振って行動の結果を決めることになります。


○クローズドダイス

 マスタースクリーンなどによって、GMのダイス目を見せないようにすることをクローズドダイス(もしくはシーレクットダイス)といいます。


▼利点
 プレイヤーにダイス目を知られないことで、キャラクターが知り得ない状況を隠すことができます。たとえば、NPCの行動の成否を判別できなくしたり、ランダムに決定する要素(変異表など)の結果を隠しておいて、後で驚かせるといった目的が考えられます。特にこのゲームでは、振るダイスの数で相手の力量がわかる場合もあるので、この手法は非常に有効となります。


▼問題
 プレイヤーの目から見えないのをいいことに、GMがダイスの目を誤魔化すこともあります。これは主に、GMがストーリーを破綻させないために行うことが多いようで、都合の悪い状況を取り消す目的と、都合の良い状況を生み出す目的の、大きく2つのパターンに分けられます。
 都合の悪い状況というのは、GMの作り上げたストーリー展開が破綻することだけではなく、PCの死など物語の進行に支障を来す可能性のある事態の発生、といったことも含まれます。たとえばセッションの序盤において、ダイス目やGMの設定ミス(敵NPCのデータバランスの欠如など)によって、PCや重要なNPCが死亡してしまうなどのミスが考えられます。都合のいい状況への改変というのは、ランダムに決定する要素がある場合に、ダイス目とは関係なく最初から決めておいた結果を選ぶような類の行動です。
 しかし、都合の悪い状況が発生するのは、ゲームとしてあって当然のことなのです。それがどうしても起こって欲しくないのであれば、シナリオを作成する際に何らかの対策を考えておくべきでしょう。ダイスを振って結果を求めるゲームである以上、起こりえる事象はそのまま受け止め、その状況をも利用してセッションを面白くするよう努力するのが、GMとして最もよい選択と思われます。


○オープンダイス

 オープンダイスはクローズドダイスの逆で、プレイヤーから出目を隠さないでダイスを振ることをいいます。


▼利点
 ダイス目を隠さないことで、GMが公正な判定を行っているということを示すことが出来ます。また、GMのダイスから相手の実力や起こりうる状況を推測し、それに対して適切な判断を下すというのも、プレイヤーとしての楽しみの1つでしょう。
 何といっても、オープンダイスによる判定は緊迫感を増してくれます。もちろん、誤魔化しがなければ結果は一緒なのですが、どんな不測の事態が起こってもダイス目通りの結果がもたらされることは明かですから、クローズドダイスの時よりも不安と緊張感が増大するのは間違いありません。


▼問題
 どんな判定でもオープンダイスにしなければならないわけではないので、これによって起こる問題というのは本来は存在しません。プレイヤーに結果を知らせたくない判定はクローズドダイスで、そうでないものはオープンダイスで判定を行えばよいわけです。
 それでも敢えて問題が起こる可能性があるとすれば、それはGMが初心者だった場合です。最初のうちはアドリブにも慣れていないため、オープンダイスによる結果で全く予期しない事態が起こった時に、シナリオの崩壊を招く可能性があります。また、PCが不慮の死を遂げた場合でも、キャラクターを作り直す時間がなかったり、代わりに扱って貰うNPCが存在しないと、そのプレイヤーを退屈させることになりかねません。
 こういった場合は、割り切ってセッションを失敗として終わらせる選択もありますが、周りが熟練したプレイヤーであるならば助けを求めたり、続きを行う可能性があるのであれば、その時点でセッションの進行を止めて、次回までに対策を考えるという手段も考えられるでしょう。他にも、シナリオを練り直して再挑戦するという方法を選択することも出来ます。


○ダイスの空振り

 GMは実際には何も起こっていないのですが、ダイスを振る場合があります。これはプレイヤーの注意をGMの方に引きつけたり、ダイス目から何かを推測しようとするプレイヤーを迷わせるためであったり、判定回数からNPCの人数を推測させないなどの目的で行うものです。


○判定以外の決定事項

 時間の経過や物資の量など、NPCの判定以外にもダイスを用いてランダムに結果を決める事柄もあります。しかし、どうでもよい部分であればダイスで決定しても問題ありませんが、重要な要素を適当にダイスで決めてしまうのは問題であり、当然のことながらプレイヤーも不満に思うことでしょう。また、それによってプレイヤーの準備や推測が無駄になったり、状況が一変するよう事態が生じるのは、ゲームバランスをきちんと取っていないことになります。ですから、GMはシナリオを作る時点から変化の幅について予測を立てておき、ダイスで決定する要素はシナリオで想定した範囲内の結果に収まるよう、きちんと設定をしておく必要があります。


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判定時の調整


○確率の調整

 判定の成功率を調整するためには、難易度や修正値を変化させるのが基本となります。しかし、判定を行わせる人数や回数によっても確率の調整が可能となりますので、障害が簡単すぎたり難しすぎると考えた場合は、以下の手段を利用してみるとよいでしょう。


▼判定回数の増減
 1つの事柄を達成するための作業を、1回の判定で済ませる必要はありません。GMは判定回数を増加させることで、成功率を調整することが可能となります。
 たとえば、判定に3回成功しなければ物事が達成できないとすれば、1回だけの時よりも成功確率は低くなります。逆に、何度か振ったうちの1度でも成功すればよいのであれば、成功確率は上昇することになります。判定を行う人数を増減させることによっても、回数を増減させるのと同様の効果を得られます。


▼人数の指定
 特定の1人を指定して判定を行わせることで、判定の確率を変化させることが可能となります。
 たとえば、誰か1人だけでも成功すればよい時に、判定値が最も高い人を指定して振らせれば、何人もで判定を行う場合よりは成功率が低くなります。このような判定を行わせた場合は、最も有利な条件の人が振っていることから、プレイヤーの不満は低くおさえられることが多いようです。
 また、1人を指定して判定させることで、全体が失敗する確率を低く抑えることも可能となります。これは1人の失敗=全体の失敗となる時に利用できる手段で、普通は最も判定値が低い人を指定して行わせることになるでしょう。たとえば、複数人で潜入調査を行っている場合、全員に忍び歩きの判定を行わせると、1人の時よりも失敗する確率が上昇してしまいます。しかし、判定値の最も低い人を指定したとしても、全員が判定を行うよりも失敗の確率は低くなりますから、プレイヤーもこれを受け入れるはずです。この振り方の利点は、全員で行うよりも危険が少ないにもかかわらず、緊張感が増すことでしょう。しかし、判定を行った1人に責任が集中しないよう、あとのフォローをきちんとしておく必要があります。


○事故の防止

 サイコロを使ってランダムで結果を判定する要素がある以上、突発的な事故は避けることは出来ません。基本的には、素直に諦めてダイス目が示した結果に従うのが、ゲームとしての正しいあり方です。これを無理に修正するのであれば、別のランダム性の少ないゲームを行うべきでしょう。
 しかし、GMの予測ミスやバランス調整のミスによって、起こって欲しくない事態が生じる場合もあります。こういったことを避けるためには、以下のような対策を取るとよいでしょう。ただし、これによって緊張感が薄れるようであれば、あまり多用するべきではありません。


▼固定的な結果
 PCが受ける影響やGM側の数値を固定のものにしておくことで、予想外の被害を防ぐことが出来ます。これを繰り返すのは問題ですが、頻繁に行うのでなければ緊迫感を削ぐことなく、セッションを楽にコントロールすることが可能となります。
 たとえば、ダメージを与える罠を仕掛ける場合などは、その難易度は効果値として設定されますから、ダメージのコントロールが自由に行えるわけです。同様に、判定は被害が及ぶかどうかの結果を求める要素に限定しておき、失敗した場合だけGMが決めた影響を受けるようにしておけば、状況に応じて被害をコントロールすることが出来ます。このやり方であれば、被害の内容を告げられるまでは緊張感が持続しますので、固定ダメージを与えるよりセッションが盛り上がるでしょう。ダイスによってランダムで影響を選択するように見せかけておき、ダイスの空振りを行うというのも効果的です。


▼複数の判定
 たとえば、木に登っていて落下してしまうような場面があったとしても、1回の判定で立て直せるかどうかを決めず、何度か判定を行わせることで回復の確率を高めてやることが出来ます。落下に際しては受け身を取ることでダメージを減少させることが出来ますが、その前に枝を掴んで落ちないように出来るかを判定させたり、他の人が助けられるかといった判定を追加することで、被害が及ぶ確率を減らすことが出来ます。他にも、潜入時の忍び足に失敗してしまった場合でも、「何かを蹴飛ばしてしまったようだけど、すぐに掴めば倒れるのを防ぐことが出来るかもしれない」などといって、回復のための判定を行わせることが可能です。
 逆に、偶然の成功によって達成されて欲しくない場合にも、この手法を用いることが出来ます。1つの行為を成功させるために、2つ以上の技能を指定して判定を行わせ、そのいずれもが成功していなければ、行為全体を達成できないことにしてしまうのです。


▼修正値の適用
 その失敗が致命的なものであり、あまりに理不尽であった場合には、GMの判断で何らかの救済策を取る必要があるでしょう。
 こういった時は、判定を行った後でも、何か適当な修正値を与える条件がないか探してみて下さい。それが適用できるようであれば、GMがそのことを忘れていたということにして、判定をやり直してもらうことが出来ます。もし、修正値を加えた時に判定が成功していたとしたら、そのまま成功ということにしてもよいでしょう。GMがルールを忘れていたわけですから、これはルールをねじ曲げたことにはなりません。


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