変異現象

基本異端階級変異物


 

基本


 『大変異現象』というものが起こった正確な原因は、科学時代に突入した聖歴789年の現在でも未だに明らかにされていますせん。そのため、今でも魔神の呪いによるものだと信じられています。


○対象

 変異とは万物を歪ませる全てのもの、およびその現象のことをいいます。これはその名が表しているように、系統だったものではありません。変異はその対象となるものを選ばず、無差別に影響を及ぼします。環境、生物、物体、空間、時間、そして夢や人々の心にさえも変異は起こります。まさしく悪魔の呪いという他はありません。
 変異現象は物質を対象とするだけでなく、精神にも大きな影響を与える場合があります。そのため、通常よりも凶暴な生物や、あるいはその逆の生物も誕生することとなりました。また、無生物にさえ精神が宿ることさえあり、それが数々の怪現象を引き起こす原因となっています。こうして生み出された怪物の中には、『不死者』(アンデッド)と呼ばれる存在などがいます。


○規模

 変異は様々なレベルで起こっています。同一の地域では比較的同じ変異が起こりやすいのですが、少々の条件の変化でまるで違うものになることもあります。
 大きな変異としてあげられるのは、自然環境の変異です。大変異現象によって陸地が一瞬にして水に変わってしまった場所もあります。それが現在エトワルト海と呼ばれるエルモア地方最大の湖です。また、西海では海流の流れが不規則に変化し、幾つもの大渦巻きが遠方への航行を不可能とさせてきました。現在の小変異はこれほど大きな影響を及ぼすことはありませんが、それでも空が不気味な七色に光ったり、雲もないのに雨が降るといった不思議な現象がよく起こります。
 小さな変異の中に数えられるのは、生物の変化でしょう。単なる突然変異程度のものから、想像もつかない存在への変化まで、その段階は様々です。こういった変異の影響を受けた生物を『変異体』、あるいは『変異種』と呼びます。大変異現象によって姿を変えた生物のうち、種としてその存在を確立したものは数多く残っており、今でも人々の生活を脅かしています。海も森も山も、変異体が存在しない場所はないといっても過言ではありません。


○認識

 変異現象は魔神の呪いであり、その多くは人々に悪影響を与えるものです。また、その影響を受けた生物もまた、特殊な能力で人間社会に害を及ぼします。そのため、変異現象が憎むべきものであるということは、この世界に住む誰もが認めるところです。
 しかし、必ずしも全てが変異現象として受けとめられているとは限りません。変異によって生まれたものでも、人々がそれを認識しないまま、ごく普通の物理現象として受けとめられている場合もあります。変異体の中にも単なる動物として扱われるものも多くおりますし、厳密に変異体を区別する方法が存在するわけでもありません。精神面での変異は特に見分けることが難しく、専門家でも判断しかねる状況がほとんどです。逆に変異の影響ではないにもかかわらず、科学的に未発達な社会ゆえの誤解や偏見というものも存在します。人種的な特徴さえ変異の影響とみなす者もおりますし、科学的な裏付けからそれらを否定する科学者を、悪魔の手先だと非難することさえあるのです。


 変異現象はこの世界とは切っても切れない存在です。人々から忌避されているとはいえ、もう生活の一部に組み込まれているものですから、うまく変異とつき合いながら生活するように心がけた方がよいでしょう。


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異端階級


○基本

 変異の影響を受けたとみなされた人間は、周囲からあからさまに嫌悪されます。それが一般的な社会生活を送っている人間であれば、悪魔に魅入られた者として社会から隔離されてしまいます。呪われるのはその者の不徳によるものであり、悪であると考えられているのです。
 そうなってしまった場合は『異端階級』という最下層の存在として扱われ、周囲から辛い仕打ちを受けるのが普通です。知られたくない場合は包帯などを巻いて、変異してしまった部分を隠して生活することになるでしょう。一族からそのような者が出るのは何よりの恥ですので、家族もそのことを必死で隠そうとするでしょう。名誉を重んじる家系では地下牢に閉じ込めて、生涯をそこで過ごさせるということもあります。
 しかし、最も多いケースは住んでいる土地からの追放です。もちろん、変異体を嫌うのはどこへ行っても変わりませんので、余所へ逃げたからといって境遇がよくなるわけではありません。そのため多くは乞食などに紛れて、事実を隠したまま生活することになるようです。見つかってしまった場合はまた同じことの繰り返しとなるでしょう。そして、ひどい時には私刑を受けて死亡したりすることもあります。しかし、そんな事件があっても、多くの土地では黙って見過ごすのが普通です。警察でさえそれを犯罪とはみなさず、事故として処理してしまうのです。


▼例外
 なお、これには多少の例外もあります。それは特定地域に頻発する変異現象で、ある程度は仕方のないことだとして認識されています。そういった土地では、変異現象の影響による事件が起こっても、それはある程度日常化されてしまっていることなので、よほど大事でなければ過剰に騒ぎ立てることはしません。また、永久的に変異の影響に侵されているのでもなければ、ちょっとした罪歴と同じように扱われるくらいで済んでしまうものです。自身や家族が口外することはありませんが、もし知られてしまったとしても周囲から煙たがれる程度で、極端に疎外されることは少ないでしょう。


○浄化の儀式

 変異の影響は、種類によっては術法で取り除くことが可能です。そのため聖職者の奇跡の力によって、正常な状態に戻すことも決して不可能ではありません。しかし、宗教機関に届け出た場合、変異の影響を取り除くための浄化の儀式は信者たちの目の前で行われます。ですから、もし浄化されたとしても、変異したという事実は周囲に知られてしまいます。
 なお、この措置は地域の人々の要請によるものであり、宗教機関が自ら儀式の公開を義務づけているわけではありません(エリスファリア国教会を除く)。ですから、地域の人々に一切知られていない犠牲者がいる場合、各教会や聖職者の判断で内密に浄化を行うことが多いようです。


○破門

 儀式で救えなかった場合は、堕落した存在として永久に破門されてしまいます。そうなった時は、各宗教機関が個別に設置した施設に収容され、浄化のための厳しい修行に励むことになります。一般にこのような施設は、人目に触れない山奥などに置かれているといいます。しかし、特別な立場にいる聖職者以外は誰も建物の場所は知りませんし、連れてゆかれた者が戻って来ることも殆どないのだといいます。


○追放

 仮に浄化されたとしても、人々の扱いがよくなるわけではありません。一生、呪われし者という烙印を押されたまま生きることになりますし、周囲はそのような存在が近くにいることを望まないものです。ですから、よほど敬虔な信者がいる地域でもなければ、宗教機関にも報告せずに追放してしまうものです。
 なお、犯罪を起こした者が変異の影響を受けていた場合、通常は警察から宗教機関へと通報されます。もし浄化されれば、そのまま罪人として裁かれることになりますが、そうでない場合は宗教機関を保証人として身元の引渡しが行われます。そして、その後は浄化のための施設へ収容されるという段取りとなります。


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変異物


○基本

 通常、変異現象の影響を受けた自然物や人工の物品は、変異物として忌避されます。人々の持ち物が変異の影響を受けた場合、その多くは浄化して貰うために教会に届けられます。また、魔術的な物品だと考えられる場合は、術法協会に鑑定に出されることもあります。


▼通常利用
 特に害を及ぼさない物品や人々の役に立つものの多くは、そもそも変異物とは認識されておりませんので、ごく当たり前のように利用されています。こういった品は思いのほか身近に存在しており、日常生活や産業に欠かせないような物もあります。


▼誤認
 
稀にですが、奇跡の産物として教会に納められている変異物も存在します。また、妖精の落とし物や科学の産物など、人々の都合や思い込みによって誤解されている物品も少なくありません。


○処理

 通常、変異物として認識されている品を処理するのは宗教機関の役目です。教会や神殿に納められた変異物は、時間をかけて浄化されたり、一般の人々の手の届かない場所に封印されることになります。


▼問題
 もし、変異物品に魅入られてしまったり、何らかの事情で手放せない状態に置かれた場合、最も問題になるのは周囲の目です。それが変異現象による産物だと周囲が認識した場合、それを所持し続けることは社会に背く行為となります。


▼接収
 宗教機関や術法協会が変異物の所持を知った場合は、一刻も早く手放すよう説得に訪れるでしょう。たとえそれを断ったとしても、通常の国家であれば罰則が適用されるわけではありませんし、それらの機関が個人の所有物を強制的に接収することも法的には認められません。しかし、それが非常に危険な物品であると判断される場合は、ごく稀にですが宗教機関から国家に働きかけるなどして、所有権を放棄させることもあるようです。


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基本異端階級変異物