シーンの設定

概要シーンの詳細


 

概要


 課題の大まかな内容が決定したら、シナリオの流れ(プロローグ→導入→展開→結末→エピローグ)に沿って、シナリオのパーツとなるシーン(場面)と、その場面内で起こるイベントを設定してゆきます。


○シーンとイベント

 個々の場面のことをシーンと呼び、1つのシーンの中には幾つかのイベントが含まれます。
 イベントとはシナリオの中で起こる出来事をさすものです。GMはイベントという形で局面における障害や状況の変化を用意しておき、シナリオの展開や条件(時間の経過、特定地点への到達、作業の達成度合いなど)に応じてそれを発生させます。
 なお、1つのシーンにあまりに多くのイベントを組み込んでしまうと、プレイヤーが次に何を行うべきか混乱してしまったり、GMがシナリオをコントロールできなくなってしまう場合があります。同様に、1つのシナリオに多彩なシーンを組み込むのも、ゲームに慣れるまでは出来るだけ避けた方がよいでしょう。シナリオの課題、シーンの課題はなるべく簡潔に設定しておき、選択肢(PCの行動の結果生じるシナリオの分岐)によってシナリオに幅を持たせるよう心がけて下さい。


○手順

▼流れ
 まずGMは、先に決めた大まかな課題を念頭に置きながら、どのような流れで状況が変化してゆくのかを予測します。そして、この流れに応じてシーンを配置し、その中で起こりうるイベントを詳しく設定してゆくことになります。

▼イベントの構築
 シーンの中でキャラクターが何をするのか、そのシーンがどのような役割を担うのかを設定します。たとえば、情報収集や戦闘、休息、推理といった具合です。そして、これらのイベントがどのような行動によって解決するのか、つまりPCに具体的に何を行わせたいのかをイメージしなければなりません。

▼イベントの推移
 イベントには様々な形式がありますが、これに対してPCがリアクションすることで状況が推移し、シーンが進行してゆきます。起こりうる様々なイベントの結果に対して、シナリオの展開がどのように変化するかを考え、それぞれメモしておいて下さい。

▼シーンの移行
 1つのシーンは、内部に含まれるイベントの結果に応じた結末を迎えます。これを受けて以降のシーンの内容が決定し、シナリオは新たな展開へと推移してゆきます。シナリオの進行とは常にこの繰り返しとなります。GMはそれぞれのシーンごとに、どのようにシナリオが展開(分岐)するのかを予測しておいて下さい。

▼メモ
 全体の流れが決まったら、予測できる範囲でシナリオの展開をフローチャートなどにまとめておいて下さい。この時、シーン毎に課題、情報、達成条件などをまとめておけば、情報を与え忘れたり分岐条件を見逃さずにすみ、セッションを円滑に進めることが出来ます。


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シーンの詳細


 各シーンを詳細に設定するためには、シーン内でのイベントの内容を考えなければなりません。そのためには、以下のような点が重要となります。


○シーンの課題

 シーンの課題を設定する作業は、何を行えばシナリオの課題を解決することに結びつくのか、つまりPCに具体的に何を行わせたいのかをイメージすることから始まります。


▼5W1H
 物語を具体的に構築するためには、5W1Hと呼ばれる6つの要素に気を配る必要があります。
 
・「Who(誰が)」
・「When(いつ)」
・「Where(どこで)」
・「Why(なぜ)」
・「What(何を)」
・「How(どのように)」
 
 このように「誰が、いつ、どこで、何を、どのようにした」かを設定するわけです。各シーンにおいてこれらの要素を設定しておけば、各状況(イベント)が生成される理由が明確となりますし、必要な情報を欠落させることなくシナリオを作成することが出来ます。
 なお、上の6要素のうち「How(どのように)」の部分は、GMが用意する選択肢だけとは限らず、PCの発想によって生み出されることもあります。


▼注意点
 シナリオ作成時には、特に「なぜそうなる(なった)のか?」ということを常に自身に問いかけるとよいでしょう。そうすれば課題とその解法を忘れることなく、また、矛盾が生じないように設定を行うことが出来るようになります。
 人間がイベントに関与している時は、殆どはそれに何らかの感情が必ずつきまといます。この場合、感情(理由)の中に解決の糸口が隠されていたり、その感情を解消することがシナリオの解決であることも少なくはありません。感情を問題の中心に持ってきた場合、課題の複雑さやその解法は物理的な障害より多彩となり、展開のバリエーションを広げることに繋がるでしょう。
 最大の注意点は、「なぜ?」の部分には納得できる理由がなければならない、ということです。この点にプレイヤーが納得しないようだと、シナリオを解決してもプレイヤーの中に不満が残る可能性があります。GMはPCの側に立ってシナリオを吟味するという作業を、常に忘れないよう心がけて下さい。


○イベントの設定

 次に、シーンをクリアするための障害や状況の変化をもたらす役目を果たす、イベントの内容を設定しなければなりません。この際、各PCに対して、なるべく1回はメインで活躍できる場面を用意するべきでしょう。PCを予め作成していない場合は、情報収集、謎解き、会話、活劇(競争や戦闘)といった要素を幅広く取り入れるようにして下さい。


▼問題
 シーンの構築を行う際と同様に、まず最初に解決すべき問題の概要を書き出します。次に、以降の条件を考えながら、イベントの内容を少しずつ膨らませてゆきます。


▼前提条件
 以下の事柄を1つずつ埋めてゆくことで、前提条件が整ってゆきます。
 
・「何が問題になっているのか?」
・「誰が困っているのか?」
・「事件が解決できない理由は何か?」
・「なぜPCがその事件に関わるのか?」
・「なぜその事件がPCに解決できるのか?」


▼状況設定
 ここで言う状況設定とは、舞台となる場所や登場人物のことです。これらはPCの障害となる場合もありますし、PCが利用する資源としての役割を果たすこともあります。問題と前提条件に応じて、規模やPCとの関係などを決定して下さい。


▼達成条件/障害
 次に目的をクリアするための達成条件を設定します。達成条件を設定するということは、問題解決の妨げとなる障害を設定することでもあります。
 達成条件を設定する際には解決手段だけでなく、いつまで解決すればよいのか、解決すべき最低限のライン、許される失敗の程度、といった点も同時に考えておいて下さい。


▼障害の難度
 障害の難度には様々なものがあり、これはシナリオの内容や進行の程度、シーン/イベントの重要度によって変化します。そのため、ここでは明確な基準を示すことは出来ませんが、展開部における繋ぎの場面では失敗の回復がしやすいように、あまり難度の高い達成条件を設けるべきではありません。逆に、シナリオの成否に直接関連するようなクライマックスの場面では、条件を多少きつくしても構わないでしょう。
 なお、障害の大きさと満足度は比例しますが、ハイリスク・ハイリターンという条件だけしか提示されないシナリオは、プレイヤーを過度に疲労させ、セッションを楽しむ余裕を奪い去ってしまう可能性があります。また、至るところに緊迫する場面を設けると、クライマックスとなる場面での緊張感や思考力といったものも削がれてしまいます。こういった理由から、障害の難度はメリハリをつけて設定し、緊張と緩和の状態を適度に織り交ぜたシナリオを作成するよう心がけて下さい。この辺りは、優れた構成の映画やドラマなどが参考になるでしょう。


▼解決方法
 解決手段には、情報収集(聞き込み、記録調査、情報交換、潜入)、対話(交渉、説得、嘘)、戦闘、移動(逃亡、競争)など様々なものが考えられます。
 具体的な解法を準備するためには、解決のために必要な情報、物品、状況、支援の内容や程度などを考えればよいでしょう。この時、コストをどの程度までかけられるのか、条件を満たせなかった場合の代替方法などにも気を配っておけば、状況の推移に慌てず対処することが出来ます。


▼状況の推移
 最後に、イベントの結果によってどのように状況が変化してゆくのかを考えます。これは成功/失敗の程度だけでなく、成功/失敗による周囲への影響、放置していると事態はどのように悪化して行くのか、失敗しても回復する余地が残されているのか、といったことも含んでいます。


○解決手段の幅

 イベントクリアの条件は幾つか考えられるでしょうが、解法は1つとは限りませんし、GMが用意したものばかりが正解ではない、ということを特に忘れないようにして下さい。


▼進行の阻害
 たとえば、GMが解決方法を1つしか設定しなかった場合、それが思いつかなければシナリオが先に進まないという事態に陥ってしまいます。また、GMの常識や思考法がそのままプレイヤーの思考の基盤となるわけではありませんし、特に謎解きのようなイベントにおいては、はじめから背景や人物関係を正しく把握しているGMに比べて、プレイヤーは著しく不利な条件にあるといえます。最良の解決方法を想定するのは構いませんが、それしか手段がないという条件設定はなるべく避けるようにしましょう。

▼想像力
 GMが用意したものしか解法として認められないとしたら、当然のことながらプレイヤーは不満に思うでしょうし、そのうち思考することを放棄してしまう可能性もあります。想定していなかった解決方法をプレイヤーに提示されたからといって、GMはそれを理由もなく無効とするべきではありません。それはコミュニケーションの放棄であり、プレイヤーの存在そのものを否定することにも繋がります。
 TRPGのセッションは、GMとプレイヤーの共同作業によって成立するものです。また、人間の想像力を活かせることが、機械を相手にするゲームと違ったTRPGの利点なのですから、想定外の事態に対して慌てるのではなく、むしろその発想を活かして面白いセッションを生み出すよう努力しましょう。


 以上の理由から、イベントの解法は基本的にわかりやすいものを幾つか設定しておいて、それらを選択する時点で悩ませるような手法を取った方がよいでしょう。その上で、推理や情報収集の結果に応じてより良い解法が見つけられるなど、ある程度の幅を持たせて設定を行うよう心がけて下さい。


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