服装


 


○服装と職業

 エルモア地方では服装によって各々の身分や職業を大雑把に見分けることができます。


▼知的労働者
 知識人階級や知的労働者と呼ばれる人々はスーツに身をつつむことが多いようです。紳士と呼ばれる人たちや上流階級の人間は、それに加えてステッキを手に持って歩きます。まだまだ物騒な時代ですから、この中に剣や改造拳銃を隠したりする場合もあります。


▼肉体労働者
 肉体労働者は実用的な服装を好み、汚れてもよいようなシャツやズボンを身につけています。外出する時もちょっとしたジャケットを羽織るのがせいぜいで、きちんとしたスーツなどは持っていない人も多いようです。
 肉体労働者は服装ではっきりと職業がわかるように、それぞれの職業団体のマークやバッジを服の胸ポケットや袖につけている場合がほとんどです。服装というわけではないのですが、水夫や鉱夫といった者たちは死んだ時でも身元がわかりやすいように、刺青をしている者が多いようです。こういった習慣は実用的な意味あいから、痛みに耐える忍耐力(=強さ)を誇示するために変わりつつあります。


▼貴人
 上等なスーツと清潔な絹のシャツで身を包み、金時計や手袋などの小物にも気を配ります。都会ではフロックコートや山高帽を着用するのが一般的のようです。


▼貴婦人
 若い貴婦人はわりと胸元の開いたドレスを好み、逆に年輩の婦人は肌の露出を少なくする傾向にあります。彼女たちは外出時にはボンネットをかぶり、日傘などを携えることが多いようです。また、派手なアクセサリーや鳥の羽根のついた帽子などを好んで身につけるので、遠くからでも簡単に見分けることが出来ます。


○男女

▼男性
 男性の着衣は主にズボンとシャツといった簡単なもので、都市であればこれにスーツやジャケット、それにネクタイがつきます。最近では都市の若者を中心に、麻のジャケットにニットタイというファッションが流行りつつありますが、こういったスタイルはまだまだ軽薄に見られがちです。髪は特に決まった型はありませんが、あまり長くしているとだらしなく見られます(特に農村)。最近、髪を短く刈り込む若者を見かけるようになりましたが、これは流行りではなく軍でそのように規定していることが多いためです。


▼女性
 市民の場合はホームドレスと呼ばれる日常的に着るドレスで身を包みます。これは引っかかりのない地味な服で、控えめな女性は茶色や紺色のものを好んで着用します。
 一般には肌を隠すような服装が多くなり、夏でも上は半袖になるのですが、下はロングスカートというのが普通でした。しかし最近の風潮として、若い娘の中には肌の露出する服装を選ぶ者も現われつつあります。
 髪の毛も肉体労働者以外は長くのばして結いあげているのが普通でしたが、近年では短く切ったりおろしたりする人が増えてきました。また、昔はペチコートというスカートをふくらませる下着が用いられていましたが、これも動きにくいという理由によって、近年では貴族だけの習慣になってしまいました。


○流行

▼舞台の影響
 流行の最先端をゆくのは一流の役者や歌手たちで、特に若い女性はそういった人々の真似をすることで虚栄心を満足させています。これは印刷技術の普及によって、役者たちの衣装が広く人々の目に触れるようになったことが大きな原因です。特にエルモア中を渡り歩くような人々は、各地にファッションを広める役割となるため、広告塔としてデザイナーと個人的に契約を結んでいることもあります。


▼ルーズファッション
 何でも屋や冒険者と呼ばれる流れ者たちの影響により、近年の女性たちのファッションは少しずつ変化を見せはじめています。こういった流れ者たちの間では、最近はゆったりとした格好が流行しており、人々はこれを『ルーズファッション』と呼んでいます。こういった服装は、そのだらしなさと飾りがやたらと多いことから、『バタフライ・ファッション』とも呼ばれています。年輩の人たちはこういった服装を非難がましい目で見ますが、新しいもの好きの若者は積極的にこれを真似しています。


▼キュロット・スカート
 女性の社会進出やレジャースポーツの普及により、膝丈のキュロット・スカートが人気を集めています。


▼香り
 貴婦人たちのものだった香水が、工業技術の発達によって安価に製造できるようになったことで、市民たちにも少しずつ広まりはじめています。香水を使うような年齢ではなくても、少女たちはポプリの入った匂い袋などを持ち歩いたりします。なお、田舎では虫除けのために匂い袋が使用されており、都市とは明らかに違っています。


▼古代模様
 古代文明やペルソニア旧王朝の遺跡が出土し、中から装飾品などが発見された場合は、一時的にその模様を模したアクセサリーが流行することがあります。


▼少女人形
 古くから人形は、服のデザインを広めるために利用されてきました。現在でも都市ではドールハウスがよく見かけられ、新しいファッションに身を包んだ少女人形が売られています。


○その他

▼クラレンスカール
 悲劇の主人公クラレンスの芝居が流行したことがきっかけで、最近見られるようになった女性の髪型です。ウェーブぎみのゆるい縦ロールをリボンでまとめあげるもので、何種類かのバリエーションがあります。


▼エプロンドレス
 小さな女の子が着る服で、初等学校を出た頃からあまり着ないようになります。逆に、エプロンドレスを着ているということは子供の証明であり、大人びた少女たちはこれを嫌がる傾向にあります。


▼ベレー帽
 山高帽などが主流でしたが、近頃はベレー帽をかぶる人たちをよく見かけるようになりました。これは男女兼用で、女性が更に社会に進出して男女の差がなくなってきた証明でもあります。


▼バタフライドレス
 袖の内側に飾り布を縫いつけたドレスを総称していいます。最近の流行で、袖口をしぼって上をふくらませている普段着などもあります。特にライラックカラーのものが人気のようです。


▼つけボクロ
 肌荒れや傷はつけボクロでごまかすのが普通です。また、ホクロそのものを隠すために、星型やハート型のつけボクロを上から張り付けるファッションも、フレイディオンなどを中心に流行しはじめています。


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