○地勢・気候
ペルソニア北中部域は、これより東の気候と同じく亜熱帯から熱帯に属しており、海から吹く風によって湿潤な気候となります。年間の平均気温は、北端付近では25度まで達することはありませんが、南では25度以上になる場所が殆どです。
この地域は南西の方向へ進むにつれて熱帯林が多く見られるようになり、海岸沿いにはカカオやコーヒーといった作物の農園が広がっています。しかし、内陸部に入ると広大なサバンナ地帯(B-8)が見られたり、熱帯樹の大密林が残されている地域もあります。また、アポルト山付近(B-10)まで進むと砂漠があらわれるなど、非常に多様な地形を観察することが出来ます。
○地図
○要所
▼ワーズ山脈(B-1/B-2)
標高2000〜3000mほどの山々が連なる山脈で、峻険な峰によって南北の交通は分断されています。過去に大噴火を記録したこともあり、西部のソファイア領地には活動中の火山も存在します。鉄、石炭のほか、わずかにダイヤモンドの産出もあり、新たな鉱脈を求めるソファイア、エリスファリア、ライヒスデールといった国々が、変異体や猛獣が多く出没する南峰にも調査隊を派遣しています。
◇星屑石(イステアの涙)
ライヒスデールとエリスファリアの植民地境界線の辺りで産出する大理石で、中に七色の光を放つ石が多く混じっています。まるで星空のように見えることから、壁や天井などに用いる建築材として人気が高く、エルモア地方では特に高値で取り引きされています。イステアの涙というのは現地民の呼び方であり、ラガン帝国に抵抗して焼身自殺を図った古の王女の涙が、石になったものと信じられています。
▼アマラ川(B-1/B-2)
ワーズ山脈から流れる急河川で、ライヒスデールとソファイアの植民地の境界線となります。オルリク平野を通ってフルネル海岸へと抜けてゆき、流域の耕作地を潤しています。低地を蛇行する部分は洪水が多いため、この土地に住む人々は古くから堤防を築いており、ラガン時代には運河と調整ダムも建設されていました。
▼金剛鉱穴(B-1)
ワーズ山脈にあるダイヤモンド鉱で、露天掘りによる採掘が行なわれています。階段状に深く掘られた穴から、掘り出された火成岩が次から次へと上に運ばれています。
▼廃都ラーソーン(B-1)
ワーズ山脈北東の高台にある遺跡で、石積みの城壁で守られた小都市です。これはシュパイト=ダハグ氏族同盟に加盟していたヒスニム族が建設したもので、崩れたままの石造りの家が並んでいます。
ラガン帝国との戦いで追い詰められたヒスニム族は、ここに篭城して抵抗を試みたのですが、大軍に破られ多くの現地民が虐殺されました。その後、ラガンはこれを改装して砦として利用するつもりでしたが、建設途中に大地震に見舞われ、岩壁が崩落して大きな被害を出すことになります。
この地震の直前に、山頂に無数の火が灯るという怪現象が発生しており、兵たちの間では原住民の呪いだという噂が広まりました。というのは、この前の戦いでウルザ氏族を征服した際に、イステアという王女がラガンへの抵抗の意思を示すために、焼身自殺を図っていたからです。兵の動揺から軍の規律が乱れることを恐れた帝国は、この場所を放棄することを決定し、現在も町は無人のまま放置されています。
▼ティフィナ遺跡(B-2)
ワーズ山脈の北西にある台地につくられた古代の街で、空白期の時代にこの地域に移住してきた民族の住居と考えられています。高度な技術でつくられた石組みの建物が並んでおり、きちんとした石畳も整備されておりました。
その後、南からレグラム人系の黒人部族があらわれ、麓の平地を開墾して農耕生活を送るようになります。この移住者たちは後にシュパイト=ダハグ氏族同盟の一員となるダーダル氏族なのですが、彼らが山地の方まで生息域を広げる頃には既に先住民の姿はなく、その行方は現在も明らかになっておりません。
◇破壊
聖歴125年のラガン帝国の侵攻時、ティファナ遺跡はダーダル族の最後の逃げ場となりました。しかし、結局は圧倒的な軍力の前に屈し、建物に使われていた石材の多くは、麓につくられた植民都市(現イルマ・ノーザ)の建材として用いられます。戦いで破損した建物や割れた石畳は、現在もそのまま放置されておりますが、長く風雨にさらされたことによって風化したり、土砂や植物に覆われて見えなくなっている場所もあります。
◇限定情報:大壁画
ティフィナ遺跡はダーダル氏族が聖地としていた場所で、彼らの埋葬地としても使われておりました。その理由は遺跡のさらに奥地にある石組みの祭壇に隠されています。この建築物は多角形の石が隙間なく積み上げられたもので、当時の技術では考えられないほど精緻な造りとなっています。しかし、さらに驚くのは巧みに隠された祭壇内部の空間で、複雑なからくりによって隠し扉が開くようになっています。
隠し扉からは緩やかに下る長い通路が伸びており、奥へ進むとやがて一辺が10m程度の五角形の部屋へと辿り着きます。この部屋の入り口を除く壁には、聖獣信仰者たちが崇める4体の神獣(始祖神)と、彼らが起したとされる奇蹟の数々が描かれています。そして、天井にはこの4柱の神と、複数の頭と足を持つ異形の怪物との戦いを描いた絵があり、聖獣信仰者たちが神話を伝えるために残したものと考えられています。
それから、この部屋の中央には立派な体格をした男の彫像が置かれており、右手には精緻な装飾が施された銀の錫杖が握られ、顔には黄金のマスクがつけられています。錫杖とマスクは彫刻ではなく本物で、それぞれ取り外すことも出来ますが、なぜこのような仕組みになっているのかはダーダル族も分かっておりませんでした。
この部屋へ続く隠し扉はラガン帝国の侵攻時にも発見されることはなく、祭壇も異教の信仰ということで彫像が破壊された以外は、殆どの部分が当時の姿のまま残っています。そのため、壁画の部屋は数百年のあいだ1度も開かれることなく、今もひっそりと眠りについています。
▼キノコ傘/日傘島(B-3)
ワーズ山脈とパゴット平野の間で見られる独特の地形で、高さ20〜50mほどの円錐形の丘が200以上も点在しています。上空から見ると美しい円を描いており、人工物ではないかと考える者もいますが、この周辺はもともと熱帯雨林だった場所であり、地面を掘ってみても単なる土の山でしかありません。多くの丘陵の上には熱帯雨林や草が生えており、開拓されてしまった平野の中に取り残された姿は、まるで陸に浮かぶ島のように見えます。昔は精霊を信仰する部族が暮らしていたようで、この丘を祭祀場や墓地として利用していた痕跡があり、出土品や人骨が出て来る場合があります。
▼ハロル川(B-3)
ワーズ山脈の西端からパゴット平野に注ぐ小河川で、下流域にはメグリカ小州(ソファイア植民地)の州都であるシャイル=ロー市があります。
▼ゴールド・リバー(B-3)
ワーズ山脈の西を流れる小河川のことで、聖歴750年頃に砂金が見つかったことから、このように呼ばれています。現在でもわずかに砂金が取れるため、懸命に金を探す者たちの姿を見かけることもあります。
▼ベルソナヴァル遺跡/仮面遺跡(B-3)
ワーズ山脈の南西の麓で発見された、おそらくシュパイト=ダハグ氏族同盟によってつくられた石室です。ここは仮面遺跡とも呼ばれているように、3000枚以上の仮面が発見された非常に珍しい場所です。材質や細工は非常に多様で、現在では民芸品として売られているような木製の仮面や、全体に文字が彫り込まれた石仮面もあれば、呪装仮面と思われるものも大量に飾られておりました。また、金属製の品も多数出土しており、青銅、鉄、銀、黄金などの精緻な彫刻が施された仮面なども存在したようです。
しかし、探索を行なったのがラガン帝国の植民地軍であったため、このうちの一部は本国に送られてしまい、残りの殆どはエルモア地方の国家による侵略の際に行方不明となっています。また、わずかに残った品のうち、半数はソファイア王に献上されているため、現在この植民地に存在するのはわずか十数枚しかありません。
▼ブレストン環島群(B-3)
シェルヴァ海岸の沖合いにある12の群島で、環礁のような独特の形状をしていることで有名です。これらの島々は天使の輪とも呼ばれており、幅10〜50mほどの緩やかに彎曲した地面が綺麗な円を描いています。中央には青く澄んだ海の水がたたえられており、引き潮の時には取り残された魚が中を泳ぎ回ります。
この周辺は海底までが浅く、大きな船で島に渡ることは出来ません。そのため、もともとは原住民が小さな集落をつくり、小舟で漁に出る生活を送っておりました。しかし、聖歴520年代にラガンの侵攻が行なわれた際に、原住民の殆どは植民都市に連れてゆかれ、どうにか逃げのびた人々も別の土地に移り住むことになりました。現在もこの地に住み着いている者はおりませんが、植民地総督や貴族たちの別荘が幾つか置かれており、リゾートのために一時的に利用されています。
▼アギュール川(B-4)
パゴット平野の中央を流れる大河川で、この地域の農業生産を支える命の川です。クスクフ高地から流れるクス川と、オゴロ密林の奥地から澄んだ水を運ぶムマ川、そしてピルム丘陵の峡谷を通るコンデル川の3つが集まった支流で、豊富な水量で知られています。
▼フラド川(B-4)
ピルム丘陵から始まりキノ山の北東を通って海に注ぐ河川で、川沿いにはセレーヌ小州(ソファイア植民地)の州都が置かれています。この河川は農耕のみならず、ピルム丘陵から切り出される花崗岩を運ぶためにも利用されています。
▼キノ山(B-4/B-6)
パゴット平野とリンストン平野を分ける標高1200mほどの山地で、平野部に急に突き出た岩山です。ここはソファイア領とカルネア領の境界となりますが、殆ど人が立ち入らないまま放置されています。特に鉱物資源も採掘されず、地形も険しいため利用方法が殆どないというのが主な理由ですが、古くから数々の不吉な伝承が語り継がれている場所でもあるため、古くからこの山に住んでいた山岳民族を除いて、現地の人間にとっては不可侵の山として恐れられています。また、最近では小さな振動や地鳴りが聞こえるという噂もあって、なおさら人の近づかない場所となっています。
▼ピルム丘陵(B-4)
高さ300〜500mほどの岩山からなる丘陵地帯で、石灰岩が堆積して出来たもののようです。コンデル川が流れるレッセル峡谷や奇岩地帯、あるいは雨水に浸食されて生まれた鍾乳洞など、非常に複雑な地形で成り立っています。この中には幾つかの現地部族が住んでおり、特有の自然に合わせた狩猟採取の生活を送っています。
◇レッセル峡谷
コンデル川が流れる狭く曲がりくねった峡谷です。場所によって大きく川幅が異なっており、それに合わせて水流の激しさも極端に変化します。急流に削られてすり鉢状になったエネラ瀑布や、低い窪みに水が溜まって出来たヴィアナ塩湖など、周辺の地形も様々な変化に富んでおり、それに合わせて独特の生態系が形成されています。
◇棚湖
コンデル川の水は石灰岩に浸透し、丘陵内に幾つもの分流をつくっています。このような小河川は非常に緩やかであるため、水に含まれている石灰分が流れの途中で固まって、非常に独特の風景を形作っています。お盆のような水たまりが階段状に連なる、棚湖と呼ばれるものもその1つで、数十以上の小さな滝と湖で形成された階段湖も存在します。こういった場所の周辺には林が形成されており、緑と白のコントラストが絶景を生み出しています。
◇青の湖(ボアダ湖)
コンデル川の伏流水の一部が流れ込む湖で、湖底には白い砂が敷き詰められています。神秘的な深い青をたたえた澄んだ湖水から、現地民からは青の湖と呼ばれています。水の透明度は驚異的に高く、浅い場所であれば岸から水底の様子をつぶさに観察することが出来ます。この湖水は砂を通してさらに浄化され、岩の隙間などを通って周辺地域へ小河川として流れてゆきます。
◇緑地帯
丘陵地帯の中には岩山だけでなく緑地帯も存在しています。多くの場合、その面積はあまり広くはありませんが、コンデル川やボアダ湖の近くは森林が形成されておりますし、乾燥地には潅木地帯やサボテン地帯が見られる場所もあります。大きな蟻塚が幾つも立っている平原もあり、これを餌場とする動物も生息しています。
◇温泉
丘陵内部には温泉が涌く場所が数十ケ所も存在します。入浴に使える適温の場所もありますが、冷泉や高温の熱水が沸く場所、あるいは間欠泉が吹き出す地点など、様々な種類のものが知られています。現地民が療養に用いている温泉の中には、聖地の1つとして崇められているものもあります。
◇奇岩地帯
ピルム丘陵の各地では、キノコ岩や石灰岩棚といった独特の形をした岩が見られます。大鼻岩や黒猿岩など、現地民はその特徴に合わせた名をつけており、迷わないための目印としても使われています。
◇壁山
急流に削り取られた無数の岩石が、迷路の壁のように立っている奇岩地帯のことです。これは地形の呼び名であり、丘陵全体では10ケ所以上が存在しています。
◇砂だまり
水流に削り取られたと思われる岩の隙間に砂が溜まっている場所で、その形状によって砂河や砂池など様々な呼ばれ方をします。この砂の中を住処とする生物もいるようで、巨大アリジゴクのような怪物が出没する砂だまりも存在します。
▼彫刻洞窟/嘆きの洞穴(B-7)
ストラ山脈の北西部には、かつて逃亡した黒人奴隷たちが隠れ住んでいたといわれる洞窟が存在します。内部の壁には本物の人間と見紛うほどの精緻な彫刻が刻み込まれており、彼らの怒り、嘆き、悲しみといった感情が余すところなく表現されています。この洞窟からは今でも奴隷たちの叫びが聞こえて来るのだといいます。実際には風が生み出す音なのかもしれませんが、周辺には怨嗟の怒号や啜り泣く声が響き渡るそうです。
▼トトム平原(B-8)
ワーズ山脈の南には、未開発のトトム平原が広がっています。この青々とした広大な草原には、ペルソニア特有の動物たちが生息しており、独自の生態系をつくりあげています。こういった生物たちは灼熱の太陽から身を守るために夜間に活動することが多く、日中は日陰で過ごしています。
この周辺では蚊やイナゴといった虫が大発生することがあります。ユスリカやイナゴは食料にすることができますが、数年周期で大量に発生する時は手におえず、野放し状態になっています。まれにイナゴやバッタによって作物が食い尽くされるという、非常に困った事態が引き起こされることがあります。
▼オゴロ密林(B-9)
クスクフ高地の麓に広がる熱帯雨林で、奥地には大きな4つの湖(リアム湖、マティマー湖、トゥカレム湖、サルーカ湖)を中心とするフラガ湖沼群が存在します。エルモア地方の人々はあまり足を踏み入れていない地域で、詳しい情報は得られておりません。
◇水竜
この地域には水竜が生息しており、河川を通じて湖沼を移動しながら生活しているようです。巨大竜にまつわる伝承は昔から存在しており、周辺の人々からは竜神として崇められています。
◇紅色湖
奥地にある小さな湖の1つで、湖水が夕焼けのように赤く見えるため、現地の人々には神秘の湖として信仰の対象となっています。これは湖に堆積している藻類の色なのですが、波が荒く泥などと一緒に藻が浮き上がった時や、水底に光が反射しない条件では普通の湖にしか見えず、そのことが神秘性をより高めているようです。なお、この湖に固有の淡水クラゲが生息していますが、彼らの体も透き通った紅茶色に染まっています。
◇壁山
密林の東側にあるティトナ砂漠とは、ズマ山地とそれから南に続く岩山で阻まれています。この岩山は壁のようにそびえ立つ急斜面で、東西の交通のみならず砂や水蒸気の移動を阻んでいます。
▼アポルト山(B-10)
東西に連なるウェイクル、ロギン、バラバスの3つの高峰と、北のレ・ドゥーア峰の4山からなる山群です。ペルソニアには珍しい降雪地域で、山頂付近には巨大な氷河が存在します。
アポルトというのは、この周辺で暮らす人々に共通して伝わっている巨神の名で、その神霊が宿る山として崇められています。標高5500mを超えるロギン峰の山頂は、時に傘のように広がる濃密な雲塊で完全に覆われてしまいますが、これはアポルト神が降臨している際に起こる現象だと考えられています。
◇足掛け岩
レ・ドゥーア峰の中腹辺りに複数見られる巨大な岩棚のことで、アポルト神が天に登る時に足場とした場所だと伝えられています。
◇廃都ナポト
レ・ドゥーア峰にある足掛け岩のうち、特に大きくせり出した1枚の岩盤の上に、ナポトという名の都市が建設されたことがあります。現在は廃都となっておりますが、カルネアの調査隊の記録によれば、当時の人々の生活の痕跡がそのまま残されており、突如として人が消えたかのような状態だったそうです。周辺部族の言い伝えでは、天に近づこうとした人間に神が罰を与え、都市の住民は1人残らず消されてしまったと言われていますが、実際のところは謎のままです。どこかに移住したにせよ行き先もはっきりとしておりませんし、この都市の文化様式は周辺部族のものとは大きな違いが見られ、そもそもどの系統の人種・民族が建設した都市なのかも判明していないようです。
◇コウモリ洞窟
レ・ドゥーア峰の麓には、コウモリの大群が住み着いている洞窟が幾つもあります。その出口は密林に覆われていますが、夕方になると一斉に飛び立ってゆくため、すぐに生息場所を見つけることが出来ます。大きな群れの場合は100万あるいは150万匹以上で構成されているともいわれ、住処としている洞窟の入り口は50mを超えるものもあります。このような群れが飛ぶ様はまるで天を舞う竜のようで、地元の住民は黒い竜巻きと呼んでいます。
コウモリにも様々な種類があり、フルーツを主食とするものもあれば、小さな虫を食料としているものもいます。フルーツバットは人々の食料として一般に普及しておりますし、病害をもたらす虫を食べてくれるという点でも人々の役に立っています。一方で果樹園の害獣となる場合もありますが、植物の中にはコウモリを媒介として受粉するものもおり、害益のどちらが勝っているかは人によって異なります。
コウモリの糞は肥料としても利用できますが、火薬の原料などに用いられる硝石を抽出するためにも利用されています。エルモア地方では硝石が不足しているため、洞窟まで出向いて糞を回収する業者も存在しますが、呼吸器系の病気が引き起こされる可能性もあります。そのため、こういった場所で働くのは原住民の役目となりますが、所有物である奴隷が病気になるのも困るため、下層階級の者を安値で雇って過酷な作業を押し付ける場合が多いようです。
▼サボテンの森(B-7/B-11)
パーム平原とネナン砂漠の間にあるサボテンだらけの土地で、千種以上のサボテンがあるといわれています。サボテンに擬態する怪物が中に紛れているので、近くを通る時は注意しなければなりません。なお、サボテンから精神安定剤や麻薬が抽出されるため、これを採取するために訪れる業者も存在します。
▼ネナン砂漠(B-7/B-11)
南方をアポルト山とストラ山脈に塞がれた乾燥地帯で、様々な伝説が残る地として知られています。実際、ここでは古来より奇妙な現象が多発しており、夜に砂漠が青白く光ったり、砂そのものが生き物のように動くといった話が語り継がれてきました。また、砂漠の中にはデザート・ローズという鉱物によく似た、クリスタル・ローズあるいはデザート・ブルーと呼ばれる、花弁のような層状構造を持つ青白い結晶石がよく落ちています。こういったことから、ここは天地信仰者の聖地の1つとしても有名で、巡礼のためにこの砂漠を目指して旅をする者もいます。
◇灰色砂丘
岩石砂漠と砂砂漠が混じっているような地域には、砂の上にぽつんと佇むように岩が出現している場合があります。中でも南にある灰色砂丘と呼ばれる場所では、非常に特異的な環境が形成されています。
この地の岩には細かい孔が開いているらしく、見た目の割に軽いのが特徴です。そのため、風によって岩石が転がされて大きく移動し、砂上に引きずったような跡が長く残されることがあります。また、孔が適度に湿度を保つためか、重く転がりにくい岩塊の上に植物が生えている場合があり、木々が突き出ていたり丸サボテンに囲まれているなど、個々の岩ごとに異なる生態系が見られます。砂漠の人々は、このような岩石を『緑岩』と呼んでおり、植物を目当てに集まる動物の狩り場としている部族も存在します。
◇失われた王国
原住民の伝承ではここはもともと砂漠ではなく、熱帯雨林の生い茂る湿った大地だったといいます。しかし、奥地にあった古代の王国が施した秘術が失敗し、一夜にして砂漠に変わってしまったのだそうです。その時、王国の民は都市ごと砂に飲み込まれ、今も砂漠の下で眠りについていると伝えられています。なお、砂漠には蜃気楼が時々あらわれることがありますが、この土地では失われた王国が幻像として姿を現わすと言われており、実際に古の都を見たという目撃談は少なくありません。
▼埋葬峡谷(B-11)
ライヒスデールの探険家がつい最近になって発見した現地民の墓所で、ストラ山脈の南西にあります。この周辺の部族には岩の隙間を墓所とし、そこに棺桶を下ろして埋葬する習慣があるようです。周囲は断崖になっており、迷路のように入り組んだ峡谷を歩いてゆかなければ、その場所に辿り着くことは出来ません。これは死者が蘇るのを恐れて行なうようになった風習ではないかと考えられていますが、現在でもこれを続けている部族は少ないようで、どういった起源があるのかはよく分かっておりません。なお、木棺の蓋には故人と生前関係が深かったものが彫られており、弓矢や樹木、あるいは魚などが彫刻されています。
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