展開と結末

進行分岐点選択肢結末


 

進行


 シナリオの進行条件には幾つかのパターンがあります。これは、誰の動きを主体として見るかによって変わります。この他にも考えられるシナリオ進行のタイプはあるでしょうが、よほど変わったスタイルのシナリオを組む意図がなければ、以下のバリエーションで殆どカバーできるはずです。


○イベント主導型

 特定のイベントが発生することを前提としたシナリオや、予め用意されたイベントをセッションの展開に合わせて発生させてゆくやり方です。特定の発言や行動、特定地点への到達など、何らかの条件が揃った時にイベントが起こるパターンが多く、前段階の結果に応じて展開が変化します。ごく一般的なシナリオの形式といっていいでしょう。


○時間主導型

 時間によって何らかのイベントが発生したり、展開が変化するタイプのシナリオです。規定された時間までに達成条件をクリアできなければ何らかのイベントが発生するような、時限爆弾型の展開もこれに含まれます。このタイプのシナリオでは、ある時間に危機的なイベントが発生するという予告をすることで、緊迫感を盛り上げることが出来ます。


○状況/NPC主導型

 PC以外の存在がそれぞれ自分の思惑通りに動き、その行動結果に応じてシーンが移行するタイプのシナリオです。この場合、シーンや状況にとってPCは外来者であり、PCがいなければGMが想定した結末をそのまま迎えることになります。逆に言えば、PCが関与するからこそ未来が変化し、事件が解決される余地があるわけです。
 このタイプのシナリオでは、PC以外の周辺状況や事実をきちんと設定しておかなければなりません。舞台を広げたりNPCの人数を増やすと準備が困難になりますが、NPCもPCと同じように自身の意図、認識、利用できる資源(資金、時間、労働力など)に応じて状況に対応するだけなので、想定していたシナリオの流れから逸脱した時でも比較的容易に対処できるのが特徴です。


○PC主導型

 PCの行動が全体の展開を支配します。周囲はPCの行動に応じて動き、発生した事態に対処してゆくことになります。TRPGとしてはまれなタイプといえるでしょう。この方法はPCが積極的に動いてくれないと破綻する可能性が高いもので、状況を判断できるだけの情報を十分に得られなかったり、圧倒的不利な状況に置かれたりした場合のフォローには、特に気を使わなければなりません。


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分岐点


 TRPGのシナリオは一本道ではなく、展開によってどこかで分岐する可能性のあるポイントが存在します。分岐が起こる理由にはNPCの思惑や時間の推移など様々なものがありますが、その殆どはPCの行動選択によって起こると考えてよいでしょう。
 GMはストーリーが分岐する可能性の高いシーン(ターニングポイント)を予めチェックしておき、分岐した場合の展開を考えておく必要があります。


○シナリオの空白

 シナリオにはどうしても空白になってしまう部分があります。それは、プレイヤーが実際にどのように行動するか、という部分がシナリオには書かれていないからです。こうした部分は、GMはプレイヤーがどのような行動をするか予測して、幾つかの分岐パターンを考えておかなければなりません。
 もっとも、自分以外の人間の行動を完璧に予測することは不可能ですし、突飛な行動を取られて困惑してしまうこともあるでしょう。しかし、別に慌てる必要はありません。こういった時は、PCの目的が何であるか、そのための障害は何なのか、どうすれば障害を乗り越えられるのか、そのために利用できる資源は何なのか、という点をもう1度整理してみましょう。そして、次にPCが何をしようとしているのかを明らかにし、それに応じて最も自然な展開、あるいは最も面白いと思われる展開を組み立て直せばよいのです。休憩ができるようであれば、少し時間をおいてみるのもよいでしょう。
 この際に注意しなければならないのは、自分が用意したシナリオに固執する必要はないということです。それらは材料の1つとしてストックしておき、再びそれが利用できそうな場面が訪れた時に、改めてシナリオに組み込むようにすればよいのです。


○ランダムな結果

 運の要素が強いものに関しては、ダイスでランダムに決定しても構いません。しかし、重要な要素を適当にダイスで決めてしまうようなGMは、プレイヤーに信用されなくて当然です。
 もし、重要な場面でこのような手段を用いる場合は、各結果の危険の度合いを同等にしたり、それまでPCの努力(成果)に応じて確率を調整するなど、プレイヤーが納得できる要素を組み込んでおくべきです。また、PCにダイスを振らせることで、結果に対する不満を抱かせない、もしくは和らげるという手段もあります。


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選択肢


 TRPGでは、PCが様々な情報を手がかりにして、次に取る手段・行動を選択することでシナリオが進んでゆきます。ゲームとしてのTRPGは、ほぼ全てが選択枝によって成り立っているといってもよいでしょう。
 選択肢がないシナリオは、いわゆる一本道シナリオといわれ、多くのプレイヤーに敬遠されるものです。なぜならば、プレイヤーはGMの1人芝居を聞くためにゲームに参加しているのではないからです。判定であれ行動方針の決定であれ、異なる選択に対しては異なる結果が与えられなければなりません。そうでなければ、表向きは何かをしているように見えても、何もしていないのと全く同じになってしまいますし、GMがそれを行わせてもいけないのです。


○選択の結果

 当然のことですが、選択肢を用意した場合は、プレイヤーの判断によって結果がどう変わるのかを予め考えておかなければなりません。
 局面においてどのような手段を取るかも選択枝の1つですが、殆どのシナリオでは全体を左右する重要な選択枝についてのみ予測しておけばよいでしょう。これは基本的にシーン単位で考えておけばよく、よほど重要なものでなければ、1つ1つの判定に細かい基準を設定しておく必要はありません。常にシナリオの目的が何であり、行動の結果が課題の達成に対してどのように影響するのかを念頭に置いて考えれば、迷う場面はさほど現れないでしょう。


○選択肢の与え方

▼有利な選択肢
 選択肢を用意する場合に重要になるのは、絶対的に有利な選択肢を与えないことです。罠を仕掛ける場合は有効かもしれませんが、何の意図もない状態で特別に有利な条件を置いた場合は、実際には選択肢がないのと同じ状態になってしまいます。これはセッションからゲーム性を失わせ、ゲームとしての面白みを消してしまう行為ですので、特に注意しなければなりません。


▼メリットとデメリット
 選択をより面白いものにしたい場合は、危険だが速く到達できる道と安全だが時間のかかる道のように、それぞれにメリットとデメリットを用意して下さい。通常、提示されるメリットの大きさは、デメリット(代償、リスク、交換条件など)の大きさに比例するように設定します。


▼デメリットの把握
 デメリットが存在するか、あるいはそれがどの程度までPCに知らされるかということについては、情報収集の成果や常識の範疇でわかるかもしれませんし、伏線に気づかなければわからない場合もあります。ただ、PCにその存在がわかるはずのない状況で、大きなデメリットを隠したまま選択を行わせるのはアンフェアであり、ほぼ確実にプレイヤーが不満を抱きます。情報収集で致命的な失敗を犯したり、明らかに常識の範疇にあることに気づかなかった、といった状況でもなければ、最低限それを匂わせるぐらいの情報は与えておくべきです。逆に、怪しんで当然というぐらい旨味のある話を持ちかけることで、デメリット(障害など)の存在を気づかせるといった手段もあります。


▼二律背反
 これは相互に反する命題が同時に提示される状態のことですが、このような選択肢を多用することは避けた方がよいでしょう。問題が簡単であれば好みで選択することもできるでしょうが、どちらを選んでも取り返しのつかない状況が発生するような選択肢は、セッションをクリアした後の達成感を薄れさせたり、シナリオに対して不満・嫌悪感を抱かせる可能性が高いからです。
 ゲームは楽しむために行うものですから、あまりプレイヤーにストレスをかけるようなシナリオは推奨されません。特に、悲劇的な結末が予想されるセッションにおいては、ゲームを始める前に参加者にシナリオの傾向を明示し、好みのすりあわせ(参加するかどうか訊ねたり、悲劇の程度を押さえるなど)を行うべきでしょう。


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結末


○結末の予測

 シナリオにおける結末というのは、途中の展開と同様に予め決定しておくことは出来ません。プレイヤーの選択と行動の結果から、もっとも妥当な展開を選択し、それを演出するしかないのです。しかし、ある程度の予測は可能ですし、それに対して何らかの準備はしておく必要があります。


▼解決の度合いと展開
 シナリオの結末は、課題をどの程度まで解決できたのかによって変化します。ですから、GMはシナリオを作成する際に、解決の度合いに応じた結末を幾つか用意しておく必要があります。

▼注意点
 結末を考える上で忘れてはならないのは、シナリオの課題が誰にとっての問題であったのか、という点についてです。当事者が解決したと思っていなければ、いくらプレイヤーがシナリオをクリアしたと思っていても、問題は残されたままとなっているのです。このゲームでは他者の感情の動きも評価対象となりますので、これについては特に注意して下さい。


○課題評価

 結末では、セッションの課題について決着しなければなりません。もちろん、課題が解決されるとは限らず、失敗することも当然考えられますが、いずれかの結果が明らかになります。


▼経験点の基準
 PCの行動の結果は経験点という基準で評価されます。ベースとなるポイントは課題の難しさに応じて定められており、これはルールに基準ポイントとして示されている通りとなります。数値の微調整はGMの判断に任されますが、よほど大規模な事件でも起こさない限りは、さほど悩むことはないでしょう。

▼評価の幅
 課題を解決できたかどうかの評価基準を設定する場合は、まず最良と最悪の幅を設定して下さい。最良の結果とはもちろん課題が完全に解決することで、最悪の結末は課題が全く解決されずに終わることでしょう。場合によっては、PCが介入したことで状況がさらに悪くなることもあり得ます。

▼達成条件のチェック
 次に考えておくべきは、達成しなければならない条件と、その達成度に応じた評価基準です。これによって、事件がどの程度解決できたのかが決まります。
 この時に注意しなければならないのは、絶対にクリアしなければならない条件についてです。これが達成されていなければ、その他の細かい条件を充たしていても、達成の度合いは低いものと見なします。必ずしもクリアする必要のない小課題について、シナリオを無事に解決できた時のボーナス程度に考えておいて下さい。


○感情評価

 アンバランスド・ワールドのシステムでは、シナリオに関わった者がどのような感情を抱いたかという面からも、PCの行動(=プレイヤーの判断)が評価されます。このゲームで高い評価を得るということは、PCの行動によって誰かに幸せがもたらされることも含まれます。


▼評価対象
 評価の対象となる存在というのは、GMが予め設定していた相手となります。対象は必ずしも人間に限られるものではなく、霊魂などの意志を持つ存在を含めても構いません。どこまでを範囲とするかは、GMの判断にお任せします。

▼評価基準
 感情評価の基準はルールに記されている通りです。これは必ずしも課題の難度や達成度に比例するわけではありません。


○周辺状況の変化

 PCの行動によって周囲の状況が変化すれば、当事者だけでなくPCにとっても何らかの変化が訪れることでしょう。こういった状況を描写することもGMの仕事の1つとなります。


▼関係対象のその後
 GMはエピローグ時において、事件に関係した人物や周辺状況の変化について描写しなければなりません。これが行われることで、初めて物語が完結したことになります。


▼周囲の反応
 他者の感情の動きは、PCが関与したかどうかにかかわらず決定されます。しかし、PCに直接助けてもらったり、英雄的行為が世間に知れ渡るなどすれば、人々のその後の態度は自ずと違ってくるものです。
 セッションの間に関わった人々は、後々PCの人脈として利用できる可能性もあります。また、誰かに被害を及ぼした場合は、相手がPCを怨んで敵対者となったり、その地域から追い出されるなどの変化も起こるでしょう。同じPCを用いてゲームを続ける場合、こういった積み重ねが物語に厚みを持たせ、PCの個性をより明確にしてくれます。


▼報酬
 課題の解決によって依頼や社会的貢献を果たした場合は、金銭的報酬や名声など、何らかの報酬が得られる可能性があります。逆に大きな失敗によって地位を奪われたり、周囲に被害を及ぼしたことで賠償を求められることもあるでしょう。
 GMは結末やPCの貢献度に応じた報酬を与えなければなりません。報酬そのものはゲームの目的ではありませんし、必ずしも与えなければならないわけではありません。しかし、同じPCを継続して用いる場合、金銭や物資は次のシナリオで利用できる資源となりますし、報酬があるかないかではプレイヤーの満足度もずいぶんと違うものです。
 報酬を与えすぎても、次に参加する際に報酬を動機に選べなくなるなど、様々な不具合が生じる可能性がありますが、事件に関わる度に損をするようだと不満がつのるものです。PCが課題をクリアできなかったり、報酬を得るのがおかしい状況である場合(脱出や任務達成が目的のシナリオ)は別ですが、通常はわずかでも報酬を用意しておいた方がよいでしょう。


○プレイヤーへの印象

▼プレイヤーの満足度
 ゲームの結末を考える上では、何よりプレイヤーの満足度というものを重要視して下さい。シナリオの傾向など好みの問題もありますので、必ずしも全てのプレイヤーが満足するとは限りませんが、課題の解決に成功している場合に、最低でもプレイヤーが不満を抱かないような結末は必要です。問題をクリアしても不満しか与えられないのでは、いずれゲームに参加しようとする人がいなくなってしまうでしょう。


▼失敗に対する納得
 与えられた課題がクリアできなかった場合、プレイヤーは少なからず失望の意を示すでしょう。特に悲劇的な結末に至った場合はなおさらです。しかし、TRPGはゲームですから失敗は付き物です。参加者を満足させるために、無理に展開や結末を変える必要はありません。ハッピーエンドは、プレイヤーの努力の結果として迎えられるべきものなのです。
 ただし、なぜ失敗したのかを尋ねられた時に、プレイヤーが納得できないような説明しかできないのは困ります。失敗を真摯に受け止めて、その結果を次に活かすためには、障害が想像力や努力によって回避・克服できるものであり、なおかつプレイヤーたちが納得できなければならないのです。さもなければ、プレイヤーは自身の失敗の原因が、シナリオの不備によるものと思うでしょう。


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進行分岐点選択肢結末