ジグラット王国/全体情報

概要基本情報国土変異現象文化・生活人物・集団竜の一族


 

概要


 旧い政治制度をとる前近代的な国家で、民衆は現在も貴族たちの支配下にあります。ログリア内海に接しており、国土の約60%が山地、丘陵、台地に占められています。特に国土の南北を険しい山地で囲まれているため、天然の要害のような地形となっています。
 対外的には不安の少ない国であり、内部は円熟した文化とあいまって、民衆にとっては平和という印象が強い時代です。しかし、内部では貴族同士の陰謀劇が習慣のように繰り広げられており、権謀術数をめぐらすことが貴族のステータスであるかのようです。これに絡んで、国王サレナスは存命中ですが、68歳という高齢であるために継承問題が浮かび上がっており、第一王子ブルーノを擁する寵妃サティアと、懐妊中の正妃フリエラの間で激しい宮廷闘争が繰り広げられています。国王はこの状況を把握していますが、優柔不断な彼はいまだ後継者を決めかねているようで、フリエラの出産まで結論を先送りしています。


 政治:全体/貴族議会/民意は反映されにくい
   :地方/領邦国家/領主貴族の支配
 代表:国王
 貴族
:支配階級/領主貴族/諸特権を持つ
 騎士
:存在/軍人
 軍隊
:全体/王国軍/地方軍を統括
   :地方/領主貴族が統括
 警察
:領主貴族が統括する独立組織/治安判事
 司法
:領主貴族が統括する独立組織
 宗教
:聖母教会/中〜高
 教育
:低
 科学
:低〜中
 術法
:中〜高


先頭へ

 

基本情報


 ログリア内海に接する国で、国土の約60%が山地、丘陵、台地に占められています。特に国土の南北を険しい山地で囲まれているため、天然の要害のような地形となっています。旧い政治制度を採っている国家であり、民衆は現在も貴族たちの支配下にあります。


▼国号
 正式名称はジグラット王国となり、国王が国家の頂点に立つ存在となります。

▼国旗
 白と緑で交互に長方形で4分割された地に、中央に王家の紋章である楯と白い一角馬の紋様が描かれています。

▼統治
 国王サレナス(男/68歳)が国家君主となります。

▼貴族
 支配階級であり、強い権限を持っています。領主貴族は1つの自治体を統括する存在であり、地方軍の将としても活動します。無領地貴族には官僚として働くものと、騎士として領主貴族に仕えるものがいます。

▼首都
 ラ・ジグラット地方にあるサレイア市で、中央教会である雨の聖ルシータ教会があります。文化の中心地であり、交易の中心としても機能しています。


○現況

 天然の要塞のような地形によって、対外的には不安の少ない国であり、内部は円熟した文化とあいまって、民衆にとっては平和という印象が強い時代です。しかし、内部では貴族同士の陰謀劇が習慣のように繰り広げられており、権謀術数をめぐらすことが貴族のステータスであるかのようです。これに絡んで、国王サレナスは存命中ですが、68歳という高齢であるために継承問題が浮かび上がっており、第一王子ブルーノを擁する寵妃サティアと、懐妊中の正妃フリエラの間で激しい宮廷闘争が繰り広げられています。国王はこの状況を把握していますが、優柔不断な彼はいまだ後継者を決めかねているようで、フリエラの出産まで結論を先送りしています。


○民族

▼カイン人(白人)
 小麦色の肌に金髪で、瞳は濃い青かあるいは深い緑色をしています。ジグラットの主要民族であり、全人口のうちの60%以上を占めています。

▼マイリール人(白人)
 旧エクセリール王朝由来の民族で、金髪で碧眼の白人です。全人口の25%ほどを占めます。

▼カリスト人(白人)
 赤い巻毛に鳶色の瞳の白人です。幼い頃はそばかすが多いのも、この人種の特徴です。ルワール大公国由来の民族であり、全人口の10%ほどを占めます。

▼その他
 南部には竜の一族と呼ばれる少数民族がおりますし、黄人であるドゥーガル人民族も辺境で暮らしているようです。しかし、これらの民族は全て合わせても、人口の数%を占める程度にしかなりません。


○宗教

 聖母教会を信仰しています。中央教会である『雨の聖ルシータ』教会が首都サレイアにあります。主教ランシュタルは王室顧問の地位にあり、宮廷に出向くこともたびたびですが、これは寵妃サティアとの間でよからぬ企みを計画しているためだと噂されています。


○科学・教育

 国家制度自体が古く、教育分野においても他国に大きく遅れを取っているのが現状です。識字率も低く、学校教育が普及しているとはいえない状況です。初等学校も授業料を支払う必要があるため、子供を学校に行かせない親もたくさんいます。
 近年ではエリスファリアへの対抗心と新大陸への興味から、霊子機関の導入などを積極的に試みていますが、技術者の育成がうまくいっていないようです。これには聖母教会の反対も関係しています。


○産物

▼農産物
 サラ豆、トウモロコシ、柑橘類、タバコ、ブドウ、オリーブ、アーモンド

▼鉱産物
 石炭、銅、マグネシウム、大理石、宝石(ガーネット、サファイアなど)、顔料

▼その他
 鶏、羊毛、一角牛、豚、バター、オリーブ油、陶器


○交易

 海洋貿易を主体としており、大理石や銅の輸出などを頻繁に行っています。しかし、内陸国家との交易はあまり行われていないため、中継貿易は行わず輸出先との1対1の交易となっています。


○交通

 陸上での主な交通手段は馬車であり、鉄道は貨物運搬用として山間部で用いられているだけです。そのほかの交通手段としては船があり、海洋はもちろん河川でも重要な交通手段として利用されています。沿岸部の都市では、運搬路として運河を設けている場所もあります。


○亜人

 北西部にある亜人地帯と呼ばれる地域周辺では、まれに亜人の姿が目撃されることがあります。しかし、殆ど人が近づくことはないため、どのような種類の亜人が存在するのかは詳しく確認されていないようです。


先頭へ

 

国土


○概要

 東側をログリア内海に接する国で、国土の約60%が山地、丘陵、低地、台地に占められています。北部にはサイルハッド山脈が、南部にはラスアルネフ山脈が東西に走り、西部はルワール大公国との間にベルゼフ山地が存在します。西のベルゼフ山地は2500m以下の山々が多く、頂上は比較的なだらかですが、北のサイルハッド山脈は峻険な峰が軒を連ねており、3000m級の山々が立ち並んでいます。また、南部のラスアルネフ山脈は複雑な地形が多く、火山も多いことから溶岩ドームや火山灰の堆積した奇岩地帯が存在します。
 山地の地形は変化に富んでおり、見る者に美しい景観をもたらしてくれます。また、このような条件にあることから、水資源は非常に豊富となります。町中の至る所に石造りの泉があり、文化レベルに比較すると水道設備も行き届いています。ただし、地域によっては石灰分が多いので、1度沸かしてから飲む習慣があるようです。
 中央部は平野で、農業地帯を形成しています。平野部を囲んで南北では牧場がひらかれており、角細工で有名な一角牛などが放牧されています。東部は海に面しており、港には様々な国の特産品が並びます。


▼北部
 北部は大陸性気候で、冬は寒さが厳しく夏は暑いという傾向がありますが、これは山間部に限られるもので、平野部では冬でも風のないおだやかな日が続きます。また、積雪も殆どありません。全体に湿度は高めとなりますが、まとまった雨が降るということが滅多にないため、土砂災害などは比較的少な目です。


▼南部
 南部は夏期は高温乾燥、冬期は温暖湿潤というログリア内海型気候で、盆地では季節による気温変化が激しくなります。全体に気温は暖かく、過ごしやすい気候となります。


○地図


 


○要所

▼サイルハッド山脈
 北部にある山岳地帯で、3000m級の山が軒を連ねています。山々の間には網の目のような水脈が形成されています。一般にエリスファリア側にある山を北サイルハッド、ジグラット側に含まれる場所を南サイルハッドと呼んでいます。


▼ラスアルネフ山脈
 南部の国境になっている山脈で、切り立った崖の多い難所です。別名を灰色山脈といい、灰色の石が多く切り出されます。周辺にはかつての溶岩ドームや火山灰の堆積した奇岩地帯が存在します。


▼バラの谷
 フェブロック市の周辺にある石切場のことで、良質の大理石が産出されます。ここで取れる石はバラのような模様が入っているため、このように呼ばれるようになりました。


先頭へ

 

変異現象


○幻影現象

 幻影現象がよく知られている変異です。突然、宙に映像が現われるというもので、これは単なる幻像に過ぎず実害はないのですが、かつてこの現象を利用した幻術士によって、狩猟途中の王子が暗殺されるという事件が起こりました。この事件は継承問題による第三王子の陰謀とわかりましたが、これ以来、王家や貴族たちが、競って優秀な術法師たちを召しかかえるという時代が続きました。


▼種類
 
幻影現象には幾つかの種類があり、中には人間に害を及ぼす可能性のあるものも存在します。
 
◇幻影降下
 亜人地域の近くで起こる幻影現象の一種で、この地域では空中に白いふわふわとした塊が浮かんでいることがあります。この1つずつが幻影を宿しており、触れた者の頭の中だけに映像や音が浮かんできます。その多くが童話や昔話に出てくるような景色や、メルヘンチックな異世界の風景であるため、フェアリーダストと呼ばれることもあります。

◇幻の季節
 モードラック地方の森の奥で起こる幻影現象で、突然周囲に幻の季節が訪れます。この幻影は見た者の精神に影響を及ぼし、実際には冬でも幻夏に惑わされると暑さを感じるようになり、暑くて服を脱いだために凍死するといったことが起こります。

◇自由世界
 自身の望む世界を再現する幻影現象が発生することがあります。この幻影世界は自分の望むものが全て具現化するもので、存在しない食事を食べて満足したり、支配者になって世界に君臨するといったことが実現してしまいます。心の弱い者がこれに取り込まれると、精神に異常をきたしてしまう場合があります。


○その他

▼水晶峡
 ラスアルネフ山脈の中部にある峡谷で、一帯が水晶で覆われていることからこう呼ばれるようになりました。この水晶は一般に知られているものとは異なり、角度によって色が違って見えたり、内部に炎の揺らめきのようなものが見えたりします。また、何かにぶつけると特有の振動音を発し、しばらくは音が鳴りやみません。そのため、この場所から産出する水晶は、一般に響水晶と呼ばれて区別されています。
 なお、ジグラットの南にある都市国家半島では、水晶化現象と呼ばれる変異現象が起こります。これは春の初めに海上に無数の真紅の炎が漂い、それに触れた者は水晶の像となってしまうという現象で、水晶峡もこれによって生み出されたものではないかと推測する者もいるようです。そのような人々は、響水晶が発する音は死者の魂の叫びと考えており、これを怖れたり逆に神聖視したりします。特に都市国家半島の住民にこの傾向が強く、不浄の存在として忌み嫌う場合もあれば、地域によってはお守りとして持ち歩く文化もあるようです。


先頭へ

 

文化・生活


 ジグラットの人々は伝統を大事にする傾向があります。それが良い方向で役立つ場合もありますが、変化に対して抵抗する気持ちが強く、発展から取り残される原因ともなっています。
 また、全体にのんびりしており、何事に対しても対応が遅く、仕事も雑なことが多いようです。何かを注文しても待たされるのが普通ですが、人々がそれで怒り出すことはありません。


○工芸

▼アラム焼き
 フェブロック周辺をアラム地方といいますが、ここはアラム焼きという陶器の生産で有名です。この地方独特の土を使って高熱で一気に焼き上げるアラム焼きは、薄くて非常に固いもので、刃物としても使用できるほどです。錆びることなく切れ味は鉄を上回るということで、このアラム焼きでつくられた刀剣などもたくさん存在します。これは焼き物であるため様々な模様を塗ることができ、貴族たちはこれを芸術品として買い求めます。
 また、アラム焼きの壺に入れたものは保存性が高く、調味料や酒なども味がまろやかになることが知られています。また、花瓶などにすると花の寿命を長くしたり、汲み置き水の味を柔らかくするといった不思議な現象が起こります。


▼大理石
 グリーフガース地方は大理石の産地として有名です。ここでは古くから大理石彫刻や大理石モザイク等の工芸が行われており、国外にも輸出されています。


○結婚

 この国では少し面白い風習があります。それはカイン人に伝わる民族的な伝統で、一般に純白婚と呼ばれています。これは実際の結婚ではなく、家同士の絆を深めるための結婚であり、もとより年老いた人々や身寄りがないものを救うための措置でした。つまり、身寄りのない者でも死んだ身内を結婚させることにより、親族として迎え入れるという儀式なのです。部族内での孤立を防ぐ目的で考えられた制度であり、複数婚や死人婚(死者と生者、あるいは死者同士でも可能)も許されています。こうして部族の結束をはかり、弱者の救済をしようという制度だったのですが、現在では貴族が勢力を広げるための道具として利用するようになっています。


○食べ物

 調理にはオリーブ油を欠かすことがなく、炒め物やマリネなど様々な料理に用いられています。また、ハーブを組み合わせて利用することも多いようです。


▼豆
 豆類がよく食べられています。特にサラ豆というデンプン質を多く含む豆は、様々な料理に利用されます。主食として食べられているのは、豆の粉をひいて油を混ぜ、それを薄く伸ばして焼くコルソーという名のクラッカーです。


▼鶏肉
 鳥肉も頻繁に食卓に並ぶ食材で、鳥肉とタマネギを薄くスライスして揚げたものを卵と混ぜ、器を温めてゆで卵風にする(上にチーズを乗せると風味が増す)ものや、皮をカリカリに焼いた鳥皮チップスといったものがあります。


○闘牛

 ジグラットでは古来より闘牛が盛んで、牛同士を戦わせるウシ突きと呼ばれる競技や、人間と牛が闘うものが存在します。地方によっては、人間が馬に乗って牛と闘う場合もあります。闘牛に使われる牛は決まって一角牛であり、2本の角を持つ牛を闘わせることはあまりありません。また、観衆の前で牛を殺すことはなく、戦意を喪失させることが勝利条件とされます。
 闘牛士は後ろ髪を少し長くしており、これを三つに分けて束ねています。彼らは現役を引退する時に後ろ髪を切り落としますが、1本を国王もしくは領主貴族に捧げ、1本を感謝の気持ちとともに闘牛場に埋め、最後の一本は闘牛士だった証として墓に一緒に埋めてもらいます。


先頭へ

 

人物・集団


○組織・集団

▼ログリア薫風団
 美男美女が集まった詐欺団で、主に貴族を相手に詐欺を仕掛けます。

▼角笛族
 一角牛の角細工で有名な遊牧民族で、国の南部を移動しながら生活しています。

▼哲学協会
 表向きは哲学の探求を目標に置いていますが、その実は政治的な問題を主題にしている組織です。現在の貴族主体の政策をよく思っておらず、中には他国の人権革命の影響を受けて、武力革命を考える過激な人々もいます。

▼「暁の宣言」教会
 南部に存在する聖母教会の異端派で、今は使われていない高山修道院の幾つかで、質素倹約を旨とした清貧生活を送っています。彼らは竜の一族と交流があると言われているため、政府はこの撲滅に取り掛かろうとしています。


○人物

▼ヘルマン=フォーシュワール(男/49歳)
 現在の宰相職にある男で、カドル地方に領地を持っています。野心の強い男で、慇懃無礼な態度が鼻につくこともしばしばですが、味方にすれば非常に頼りになる人物でもあります。

▼エレーヌ=マウラディ(女/23歳)
 国王の傍仕えの女中で、年老いた王の身辺の世話をかいがいしく行っています。しかし、実は彼女は宰相の愛人であり、密偵としての役割もこなしています。

▼プレストン=ニリス(男/39歳)
 霊子機関の導入を推進している工場経営者で、経営者連をまとめて聖母教会に対する抗議運動を行っています。

▼ビオトール=オザーン(男/35歳)
 ブラール地方のハリアーシュ侯爵領の財政を担当しておりますが、もともとは材木商人として働いていた男です。この領地は先代侯爵の浪費で財政が傾きかけていたのですが、彼の重商主義政策のおかげで現在は立ち直り、領内は交易で栄えています。

▼スエスティ=マイローズ(女/16歳)
 幻影現象によって自由世界に引きずり込まれた少女です。もともとは火事によって焼け出された家の娘で、貴族の屋敷に奉公にあがって働いていたのですが、その家の娘に辛くあたられて顔に大きな傷をつくっております。幻影現象によって現実世界に戻れなくなった後は、娼館に拾われて働かされていたのですが、たびたび騒ぎを起こしたために捨てられ、今では路上生活を送っています。

▼アドレアン=バレッジ(男/49歳)
 哲学協会の長ですが、彼は穏健派の一派であり、過激な派閥の人々を抑えて組織をまとめています。しかし、内情を知らない貴族は彼を何かと目の敵にしており、陰謀を企てて彼を犯罪者に仕立てようとしている者もいます。

▼ブレイデン=タルヴァート(男/27歳)
 国内で最も有名な闘牛士で、若い女性たちの間で絶大な人気を誇っております。妻子持ちですが女癖が悪く、常にスキャンダルの絶えない人物でもあります。


先頭へ

 

竜の一族


 ロークシェル地方に住む集団で、竜系術法を用いて竜を操る能力を持ちます。竜使い、もしくは空賊と呼ばれることもあります。一族の者は彫りの深い顔立ちで、浅黒い肌をした民族です。髪の色は日に透かすと藍色に見える黒で、瞳は濃い藍色をしています。
 古くはその能力を活かして、空の魔獣であるフレイムバード狩りをしていました。しかし、ジグラット王国の祖先たちによってフレイムバードは乱獲され、もともと数が少なかったため絶滅の危機に瀕してしまいました。それ以来、竜の一族は略奪という方法で生活の糧を得る集団に変わり、竜の一族は空賊と呼ばれるようになるのです。


▼竜神信仰
 竜の一族は独自の神として竜神を崇めています。これは竜の王とも呼ばれており、あらゆる面ですべての生物の上に立つ最強の存在として伝説に残っています。真竜は竜王の眷属であり、聖地だけでなく世界の各地に眠っていると考えられています。


▼小竜(レッサードラゴン)
 竜の一族が操る頭胴長4〜6mくらいの小型の竜で、長さ3mほどの尾を持ちます。全身が硬い鱗に覆われており、体色は緑、茶、褐色、赤など様々のものがいます。頭部の形状や体型はトカゲによく似ており、胴や四肢はがっちりしています。背中にはコウモリによく似た形状の翼が生えており、翼開長は6〜8mほどにもなります。頭部から肩、それから尾の尖端部には一列にならんだ鋭い棘が生えています。


○九竜戦記(聖歴645年〜650年)

 かつて王国の内乱にルワール大公国が干渉しようとした際に、ロカリーニ派と呼ばれる貴族の一派閥は竜の一族を利用してこれを退けました。しかし、その時に交わした契約をジグラット側が守らず、竜の狩猟場として認めた地域にマイルズ砦を建て、竜の一族を南方の山岳地帯へと追いやろうと試みたのです。これに怒った一族は、聖歴645年にジグラット王国に宣戦布告し、長い間眠りについていた真竜と呼ばれる最強の竜を呼び出して戦いを挑みました。
 ファティスファーンという名の光竜と、その他八匹の異形の竜族を従えた彼らは、持てる最大の力を結集して戦いました、しかし、それも長くは続かず、ファティスファーンを失った後は戦局を一気に逆転され、再び山脈の深部へと押し込められてしまいます。彼らの住処である竜の柱には、徒歩など通常の手段で到達することが不可能であるため、一族の全てが滅ぼされるまでには至りませんでしたが、この敗北によってその力を殆ど失うことになりました。この戦いは終結を迎えるまでに5年の月日を費やしましたが、彼らが絶対的少数派であったことを考えれば、異常な年数といえるでしょう。
 以来、竜の一族は狩りをしながら少しずつ力を蓄えてきたのですが、近年では竜が滅少したことや強力な銃器の誕生によって、もはやジグラットと戦うことは不可能事ではないかと思われています。ジグラット側ではマイルズ砦の守備も既に放棄しており、現在では無人の廃墟となっています。


○人物

▼クーネル=アイロウ(男/36歳)
 竜の一族の若き族長です。現況をよく思っておらず、一族の秘宝と呼ばれる力の謎を解いて、再び勢力を拡大しようと考えています。

▼サーバル=アイロウ(男/55歳)
 竜の一族の先代の族長で、病を患ったために族長の座を息子に譲り、現在は隠居生活を送っています。彼は族長になったばかりのクーネルが、一族の者に長としての指導力を認めさせるために、強い力を欲していることを危惧しています。しかし、クーネルは父の言うことを全く聞き入れようとはしないため、側近のドゥニーズや祭司長のルベールに息子のことを託しています。

▼ルベール=カルデン(男/62歳)
 竜神の祭司長を務める人物で、一族に対して強い発言権を持っています。一族の儀式を行うためには、彼と祭司たちの許可を得なければなりません。非常に厳格な人物で、聖地の謎に迫ろうとするクーネルに対して、毅然とした態度をとり続けています。

▼ドゥニーズ=ザウハー(男/44歳)
 先代族長の補佐を行っていた男で、クーネルの後見人でもあります。しかし、クーネルは口うるさい彼のことを疎ましく思っており、近いうちにその職から遠ざけようと画策しています。

▼トッド=プラット(男/33歳)
 クーネルの腹心の部下で、常にその傍に控えています。言葉を話せないことで仲間たちから冷遇されてきましたが、クーネルは常に彼をかばい、弟のように接してきました。そのため、彼のためならば何でもする覚悟でいます。

▼ローニス=バンダミラ(女/22歳)
 クーネルの子飼いの部下の1人で、長に対して憧れ以上の感情を抱いています。勝ち気な性格で、男勝りの行動力を持ち合わせています。一族の偵察・連絡役を務めていますが、族長の私的な密偵としても働いています。


○要所

▼竜の柱
 ラスアルネフ山脈の奥地にある石柱群で、千本以上が存在するといわれています。この柱の間を竜が飛び回っており、下には変異獣も多く住んでいるため、人間が自力でここにたどり着くことは至難の技です。高さ100m以上にも及ぶ石柱には、無数の穴が縦横に走っています。洞穴の大きさは数十cmから数十mに及ぶものまであり、竜の一族はこれを住処として生活しています。

▼マイルズ砦
 コロールシルバ地方にある、竜の一族への防備のためにつくられた砦ですが、現在は全く機能しておりません。

▼直列円石
 竜の一族の祭壇で、一族の中でも地位の高いものしかその場所を知りません。

▼竜の墓場
 竜が死ぬ直前に赴くといわれている場所で、竜の一族の聖地の1つです。無数の骨が転がっており、確かに竜の骨や鱗がたくさん見つかるようです。

▼竜の地上絵
 竜の地上絵が描かれている場所には、竜王の眷属が眠っていると伝承で伝えられており、一族の聖地の1つとされています。実際に真竜ファティスファーンは、山脈奥地にある地上絵の下に眠っていました。


○その他

▼通過儀礼
 竜の墓場の下にある大型の洞窟から、竜の卵といわれる化石のような外見の卵形の石を持ち帰ることが、一人前の竜使いとしての資格を得るための通過儀礼となります。洞窟には自分が育てた小竜とともに入らなければならず、竜を操って複雑な地形を飛行して通り抜けなければなりません。また、途中で怪物も出没する場合があり、非常に危険な探索行となります。


先頭へ

 


概要基本情報国土変異現象文化・生活人物・集団竜の一族