情報通信

通信手段情報と印刷一般印刷物新聞図書館


 

通信手段


 この世界では、現在のところ電気による通信は行われておりません。よって、遠隔地からの情報を伝達する手段は、直接的な文書のやり取りか人間を介して行われることになります。


○郵便

 郵便による通信ネットワークは古くから整備されておりました。これは駅馬車とともに成立したもので、現在はこれに鉄道による輸送も加わり、より速く大量の輸送が可能となっています。鉄道が敷設されていない場所でも、郵便馬車が小包や書簡を運送してくれます。郵便馬車は1日に150km以上の距離を走破することができ、国内であれば数日、国外でもよほど遠くでなければ、半月程度で郵便物を届けることが可能です。郵便局は小さな町にも必ず1つは存在しており、自治体の記録に載っている場所であれば、時間はかかりますが局員が必ず配達物を届けてくれます。


○メッセンジャー

 郵便は基本的に町の外との通信であり、町中では主にメッセンジャーに伝言を頼むことになります。ちょっとした用事であれば、そこらにいる子供に小遣い程度のお金を与えて、伝言を頼むことができるでしょう。これを商売にする都市浮浪児も存在します。彼らはよく盗みなどを行うことがありますが、こういった伝令をいい加減に行うことはまずありません。自ら信用を失うことをして、ただでさえ少ない仕事をさらに減らす意味はないからです。
 それから少し割高になりますが、辻馬車の御者にも伝令を頼むことが可能で、急ぎの場合はこちらに頼んだ方が確実です。大きな都市であればこういった伝令を仕事にする会社があってもおかしくはありませんが、乗合馬車もあることですし、よほど忙しいのでもなければ自分で届けるのが普通でしょう。


○その他

▼視覚伝達
 この他の通信手段というと、手旗信号や組木通信機を利用するものがあります。これらは一定区間に建てられた櫓の上に人を置き、次々と情報を伝達してゆくというもので、視界が良好であることが前提条件です。狼煙や花火でも同等の効果が期待できます。夜間でもカンテラなどの光で通信を行うことが可能ですが、雨など天候の変化に弱いのが問題で、現在ではあまり見かけることはありません。しかし、速度的には最速の通信手段であり、戦場では利用頻度が高いようです。


▼術法
 術法による即時通信も可能なのですが、これは術法協会か宗教組織くらいでしか行われておりません。なにより人件費がかかりすぎるので、商売としては成り立たないのです。


▼新型機械
 飛行船は一般にはまだ普及しておらず、情報伝達手段としては利用されていないのが現状です。オートバイは霊子機関を搭載しているので長距離の航続能力に優れており、先進国家ではよく利用されているようですが、まだ軍の伝令用でしか使用されておりません。


▼その他
 伝書鳩による通信というものも行われています。速度はそれなりですが、郵便よりもずっと高くつきます。それから、渡航者組合などを通じて手紙を届けたりすることもありますし、田舎では遊牧民などが郵便配達の代わりを行うこともあるようです。


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情報と印刷


 聖歴789年のエルモア地方では印刷技術が確立されておりますので、書物や雑誌、および新聞といったものが存在しています。印刷機械が開発されてから書物は急速に普及し、貸本屋といったものも現れるようになりました。また、新聞も大量に発行されるようになり、様々な事件や最近の情勢を知ることが可能となります。


○印刷技術の発展

 印刷技術が発明される以前の書物は非常に貴重なものであり、1冊ずつ手書きで書き写したものでした。こういった写本は高価で、それゆえ知識が民衆に広まることがなく、せいぜい聖職者が読んで聴かせる程度にとどまっていました。
 こういった状況が長く続いてきたため、活版印刷技術の登場が社会に与えた影響は非常に大きいものでした。活版印刷の発明からわずか数十年で、不定期の印刷物が発行されるようになり、戦争などのニュースを一般読者に伝えました。出版物の増加は学問の普及に対しても重要な役割を果たし、知識は書物という形で大量に蓄積されてゆきました。また、自らの筆一本で生活できる知識人や文化人が現われ、文学や思想文書が一般の人々の目に触れるようになったのです。
 それから時代が過ぎて、輪転機による高速大量印刷がはじまるようになると、印刷物は人々の生活に完全にとけ込んでしまいます。これには初等学校教育の普及による識字率の向上や、ペルソニア大陸の植民地での紙の大量生産などが関係しており、特にロンデニアやペトラーシャといった近代国家で、新聞や雑誌が多数創刊されるようになりました。そして出版文化が大きく発展し、植字工や活字拾いといった仕事も一般的な職業として知られるようになります。現在では出版業者数が多いことが文化の中心地であることを示しており、大都市には幾つもの出版社や印刷業者が誕生しています。
 このような時代になると、印刷物は人々の思想に大きな影響を与えるようになります。知識の普及のみならず、政治運動でもビラやパンフレットが利用されるようになり、人々は印刷物の重要さを実感することになります。権力者の側で印刷物を利用するようになると、それに反発する出版業者も出現し、現在では風刺漫画や新聞の社会評といったものが人々の人気を集めています。


○伝達速度

 新聞や雑誌は、まだ電信技術が成立されておりませんので、遠隔地の出来事がすぐに伝わるというわけではありません。しかし国内に限っていえば、カイテインのような大国やよほどの僻地でもなければ、大きなニュースは1週間以内ですみやかに流布されます。近年になって頻繁に利用されるようになった鉄道といった新しい交通機関は、これらの情報網を強化し、より速く新鮮な情報を遠方へ伝えることを可能としたのです。なお、昔ながらの馬車でも1日に150km以上は進むことができますし、術法や伝書鳩といった手段で情報をやりとりする場合もあります。


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一般印刷物


○雑誌

 雑誌は書店や雑貨屋で購入することができます。雑誌には学会誌のような専門誌もあれば、週刊で発行されるゴシップ誌や月刊の小説雑誌まで様々な種類があります。庶民に人気があるのはやはりゴシップ記事で、様々な噂話や世相が見て取れます。人々は政治家をこきおろすような記事を読んでは手を叩いて喜び、挿し絵の風刺イラストを見ては鼻をならして冷笑するものです。こういったゴシップ誌は、庶民のうさ晴らしのために大いに役立っているといえるでしょう。
 これらの記事にはいい加減なものもありますが、世情を読みとるには最適の情報媒体と言えるかもしれません。また事件記事などでも、新聞では得られない裏ルートからの情報が載っていることもあるので、あながち馬鹿にしたものでもありません。記事に多少信頼性がなくても構わないといった態度が、逆にこういったスクープを生み出すこともあるのです。


▼古い雑誌
 古い雑誌を調べたい場合は、新聞と同様に出版している会社を訪ねるのが最も確実な方法でしょう。図書館で保管していることもありますが、よほどの大都市でもなければあまり期待はできないでしょう。それほど昔のものでなければ、レストランやティーハウスなどで捨てる前の雑誌を見つけることも不可能ではありません。また、教えてくれるとは限りませんが、書店で定期購入している人の住所を訊いて、直接交渉するといった手段も考えられます。


○書物

▼入手
 書物も雑誌と同じく、書店および雑貨屋といった場所で求めることができます。貧乏な学生が書店で立ち読みをしている姿を見かけることもあるでしょう。
 それから、都市では古書店も存在しますし、貸本屋といって行商人のように本を背負って個人宅を訪ね、本を貸し出して歩く商売もあります。貸本は1週間あたり100エラン程度と非常に安いので、中層の市民がよく利用しています。あまり借り手のない本を、貸本屋が安く売ることもあります。
 もっと安くというのであれば、図書館を訪ねるのが一番よいでしょう。ただし、大きな都市でなければ、図書館や書店に探し求める書物が必ずあるとは限りません。取り寄せるとなれば非常に時間がかかるということを覚えておいて下さい。


▼閲覧店鋪
 大きな都市になると、たくさんの蔵書や百科事典などを揃えた読書室と呼ばれる机つきの貸本屋や、ティーハウスと呼ばれる閲覧室を備えた喫茶店も存在します。こういった店は新聞閲覧所も兼ねており、登録料を払えば自由に書物や新聞を読むことができます。
 平均の利用料金はだいたい1か月に3000エランくらいになります。これらの店はわりと遅くまで開いていることが多く、貧しい学生は照明や暖房の代金を節約するため、こういった店を利用することがあります。
 
◇ティーハウス
 新聞や雑誌、あるいはその他の書物などが置いている喫茶店や軽食店のことで、様々な情報を得ることができます。店によっては常連客や文化人が仕事をするために、百科事典や専門書の類が置いてあるような喫茶店も存在します。書物を読むための費用は食事と別料金になりますが、週あるいは月単位で支払いが出来るシステムの店が多く、まとめて支払うほど割安になります。

◇読書室
 基本的には貸し本屋で、一定料金で好きなだけ書物、雑誌、新聞を読むことが出来ます。食事などのサービスは行なっておりませんが、ティーハウスよりも百科事典や専門書を揃えている店が多く、主に学生、執筆家、研究者などを中心とした、専門知識を要する人々が通う店となります。彼らは店に備えてある個人用の机で読書や仕事をしたり、ホールで談笑したりして時間を過ごします。古くから経営しているよく知られた店は、知識人たちのサロンのような役割を果たすこともあります。


▼個人
 個人の蔵書も情報源として期待しうるものです。貴族や地主といった人々の家には、だいたい大型の書架が並ぶ書斎があります。これは知識の象徴であり、ピアノやシャンデリアなどと同じようにステータスシンボルとなっています。


○その他

 以上の他にも、たくさんの印刷物が発行されています。たとえば、各種団体や職業組合では機関紙を配付していますし、町中や酒場などにはビラやポスターが多数貼り出されており、演劇の出し物や探し人についての情報を得ることが出来ます。他にも個人発行の新聞や、政治結社や思想家などが路上や公園で配っている地下新聞と呼ばれるものも、様々な角度から情報を集めたい場合には役に立つはずです。


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新聞


 輪転印刷がはじまってから、低廉な日刊新聞紙が売り出されるようになりました。新聞には政治、事件、広告など様々な情報が記載されています。広告からは死亡記事や求人といった情報を集めることができますし、少しタイムラグはありますが外国の情勢も当たり前のように知ることができます。それから、最近はビジュアル面での情報も増え、絵や写真によって視覚的情報を手に入れることができるようになりました。
 新聞は特に中間的な市民階層によく読まれています。これは新聞が廉価で売り出されていることと、中間層の社会的地位が上昇していることを意味します。つまり、産業の改革によって安価な労働力が確保できるようになったことと、都市の労働者の知的水準や生活水準が上昇したということです。


○購読

 紙面が少ないものや大量販売されている大都市の新聞の場合は、50〜100エランほどで買うことができます。
 普通は街角に売り子が立っていて、そこで買い求めるようなシステムになっており、個人宅への配達を行っている会社はまだまだ少ないようです。なお、わざわざ自分で購入しなくても、新聞は酒場やレストラン、あるいは床屋などで読むことができますし、図書館でも新聞を置いている場所があります。


○種類

 ほとんどの新聞には都市名が冠されており、全国紙や広域紙はあまり存在しません。まれにそういった新聞があっても、地方版のような形の地方色の強い紙面が殆どで、題号にも都市名がついています。
 その地域で手に入る新聞には、その日もしくは前日に起こった出来事が書かれています。しかし都市では、1週間程度のタイムラグはありますが、経済新聞や国外の新聞を手に入れることも出来ます。田舎の場合は、地域外の新聞を取り扱うことは少ないので、出入りする人間が直接運んでくる情報が非常に重要となります。


○発行

 普通は1日に朝刊が発行されるだけで、夕刊はよほどネットワークがしっかりしている大会社でなければ、ほとんど発行することはありません。しかし、何か突発的に大事件が発生した場合、要点だけを印刷したビラを売り子が無料でバラ巻いて歩きます(もちろん、翌日の朝刊の宣伝という意味あいも含めてのことですが)。


○イエローペーパー

 新聞にもいくつかの種類があり、信用できる記事を載せている大新聞もあれば、スキャンダル記事やセンセーショナルな事件ばかりを取り扱う通俗新聞も存在します。このようなゴシップ紙をイエローペーパーと呼ぶこともあります。
 下世話な話題というものは人々の興味を引くもので、イエローペーパーの発行部数は飛躍的に上昇しています。ロンデニアの新聞王クレスト=フェラードは、通俗新聞の発行で一財産を築き上げたことで有名となりました。こういった風潮もあって、最近の若者では新聞記者を将来の職業として希望するものが増えています。


○過去の記事

 過去の新聞記事を調べる場合は、それらを発行している会社を訪ねるのが一番手っ取り早い手段でしょう。記者の紹介があれば、保管庫を開放してもらえるでしょうし、そうでなくても申請すればいくらかの料金を払って閲覧することができます。各社によって情報はまちまちですが、だいたい1時間につき300エラン程度で済みます。ただし、小さな地方局ではスペースの都合で保管してない場合もあります。このような場合は、中央の親会社を訪ねるしかないでしょう。


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図書館


○規模

 図書館の規模は様々ですが、およそ地域住民の人口に比例します。都市であれば数万冊の蔵書を誇る図書館もありますが、10万冊を越えるような場所は大都市に限られるでしょう。確実な品揃えが期待できるのは、法教会の付属施設である学問院の図書館や大都市の市民図書館、それから大学図書館といった場所になります。


○種類

 普通の書物だけでなく、教科書や科学論文、それから新聞や雑誌などを閲覧できる図書館もあります。それから、動植物や鉱物などの標本も併せて収集している場所もあり、たいていは入館料を払えば見学することができます。観光名所の1つとなっていることもあり、そのような場所では学芸員が詳しく解説してくれます。学問院の図書館はこのような傾向が強いようです。


▼付属図書館
 より専門性が強い書物や論文などを検索するとなると、研究機関の付属図書館を訪ねるとよいでしょう。ただし、こういった施設に入館するには、通常は誰かの紹介が必要となります。


▼地域図書館
 個人の寄付によって豊富な蔵書を誇る地域図書館もあります。このような図書館は、地方史や土地の名士の家系図といった資料を調べるのに適しています。好事家の遺産や個人の蔵書として公開されている場合は、個人図書館や〜文庫のような呼ばれ方をするのが一般的となります。なお、蔵書の種類はその施設の性質だけではなく、国家や民族といったものにも左右されることがあります。


○閲覧

 基本的に、公共の図書館は一般市民に広く開放されているのが普通であり、単に書物を調べるだけならば特に制限はありません。ただし、地域によっては一般市民の閲覧を制限していたり、あるいは維持費としていくらかの料金を徴収する施設も存在します。大学図書館や私設図書館などは制限がある方が普通でしょう。仮に閲覧は無料としても、受け付けで許可を得る必要があったりします。また、あまりに汚い格好をしている場合は、入館を断られる場合もあるので注意して下さい。


▼貸し出し
 図書を借り受ける場合には、まず身分証明書や住民証明書を提示して利用者登録を行わなければなりません。だいたい1〜2週間くらいの館外貸出が許されますが、返却期限を越えた場合は督促状が来て、一定の手数料の支払が求められることになります。


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通信手段情報と印刷一般印刷物新聞図書館