高階杞一詩集

<早く家へ帰りたい>より

ゆうぴー おうち

せまい所にはいるのが好きだった

テレビの裏側

机に下

本棚とワープロ台とのすきま

そんな所にはいってはよく

ゆーぴー おうち

と言っていた

まだ助詞が使えなくて

言葉は名詞の羅列でしかなかったけれど

意味は十分に伝わった

最近は

ピンポーン どうぞー というのを覚え

『ゆうぴー おうち』の後に

ピンポーン と言ってやると

どうぞー

とすきまから顔を出し

満面笑みであふれんばかりにしていたが……

今おまえは

どんなおうちにいるんだろう

僕は窓から顔を出し

空の呼鈴をならす

ピンポーン

どこからか

どうぞー

というおまえの声が

今にも聞こえてきそうな

今日の空の青

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