ほーだい日記

46

ヴィンセント

星がこぼれそうな夜 パレットをブルーやグレイに

僕の心の底の暗い部分を知ってるその目で  夏の日を眺め

丘の上の影

雪におおわれたリネンの様な大地の色で

木々や水仙を描き 冬の冷たさとそよ風をつかまえ

今僕は、君が何を言いたかったのか分かる

どんなに君の正気のために苦しんでいたか

彼等を自由にしようとしていたか

彼等は聞こうとしなかった

その方法がわからなかったんだ

多分、今は聞くだろう

星がこぼれそうな夜

キラキラと輝く 燃え上がるような花たち

すみれ色のもやのなかの渦巻くような雲

チャイナブルーのヴィンセントの目に映されて

微妙に変る色合い

朝の草原のエンバーグレイ

苦痛でしわになった日にやけた顔は

画家の愛撫するような手で慰められる

今僕は、君が何を言いたかったのか分かる

どんなに君の正気のせいで苦しんでいたか

彼等を自由にしようとしていたか

彼等は聞こうとしなかった

その方法がわからなかったんだ

多分、今は聞くだろう

彼等は君を愛さなかった

そして君は本当に愛していたんだ

そしてどこにも希望が見つからなかった星がこぼれそうな夜

恋人たちがしばしばそうするように 自分の命を消してしまった

でもきっと僕なら言えたよヴィンセント

この世界は君みたいな人が生きていくようには作られていない

星がこぼれそうな夜

だれもいないホールに掛けられた肖像画

額縁もなく、名前もなく

世界をまっすぐみつめている目

まるで何処かであった見知らぬ人のよう

薄汚れた男、薄汚れた洋服

血の様に赤いばらのとげが、降ったばかり雪の上につぶされている

今僕は、君が何を言おうとしてたのか分かる気がする

どんなに君の正気のために苦しんでいたか

彼等を自由にしようとしていたか

彼等は聞こうとしなかった

そして今も

多分、これからも

プリン訳

 

2007.8.12

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