この地球上には多種多様な多くの生き物が生息する。
 しかし人類文明が発達した今、彼らが幸せに暮らしているとは限らないのだ。
 彼女はそんな動物たちを守るために現れた愛の使者…なのかもしれない。





美樹原SS:動物愛護キューティメグ!!







「うっ、うっ…」
 はらはらと涙を流す私を、ムクが心配そうに見つめています。
 あの、あの、私、美樹原愛といいます。ちょっと内気なきらめき高校の1年生です…。
 それがなんで今は泣いてるのかといいますと、ニュースで象牙の密売の話をやっていたんです。あのために何匹もの象が撃ち殺されているなんて…。
「かわいそう…。でもどうすることもできない私を許してください…。ああ、私にもっと力があったら…」
「それは本当かワン?」
「うん、本当…えっ?」
 いきなり響く謎の声。きょろきょろとあたりを見回しても何もいません。も、もしかしてお化けかしら。きゃっ、嬉しい…。
「違う違う、僕だワン」
「え…ええええっ!!?」
 いきなりムクがぺかーと光ったと思うと、なんと2本足で立ち上がったのです!
「今まで黙っていてすまなかったワン。実は僕はワンダフル星の王子だったのだワン!」
「そ、そうなの?ムク」
「そうなのだワン。宇宙船が壊れて星に帰れなくなっているところを愛ちゃんに拾ってもらい、以後美樹原家の一員としてご厄介になっていたのだワン…。そして今、ついに愛ちゃんに恩返しをするときが来たのだワン。さあ、両手を上に掲げるのだワン!」
「う、うん…。こうかな?ムク?」
 目をびっくりさせたまま言うとおりにする私に、ムクも同じように両手(前足かな)を天に差し出しました。いったい何が始まるんだろう…。でもムクとお話が出来るなんて、私、嬉しいです…。
「愛ちゃんの優しい心よ、戦士となって弱きを救うのだワン!
 カモーーーンワンダフルパワーーーーーー!」
「きゃあああっ!?」
 わ、私の部屋が閃光に包まれます。ど、どうしようっ!
♪シュビドゥバ〜〜パッパパヤパヤ パッパパヤパヤパパッパ〜ン
「ム、ムク。変なBGMが流れてるんだけど…」
「んー、名曲だワン」
 シャキーン!シャキーン!シャキーーン!
 美樹原愛の動物を愛する心とワンダフルパワーがひとつになったとき、そこに奇跡の戦士が誕生するッ!
 これがッこれがキューティメグだッ!!そいつに触れることは死を意味する!!アニマルドフェノメノンッ!!!
「しかもナレーションが勝手なこと言ってる…」
「気にしたらいけないのだワン」
 ばひゅーーーん
 …私がおそるおそる顔を上げると、部屋はもとの通りに戻っていました。ほっ、きっと悪い夢だったのね…って、あれ?
「こ、この手は!?」
 手が変になってることに気づいた私は、あわてて鏡の前に立ちました。そこにいたのは…

画:狐鉄丸さん
 うさぎの耳!
 ねこグローブ!
 きつねのしっぽにライオンブーツ、胸に光るは虎さんフェイス!
「こ、これって一体…」
「ウム、愛ちゃんは動物愛護の戦士キューティメグの力を得たのだワン」
「ええええっ!?」
「喜んでくれたかワン?」
「え゛」
「くれたかワン!?」キラキラキラー
「…う、うん。ありがとうムク…」
 ムクの輝く瞳を見たら私なにも言えません…。それにこの格好もよく見たらなんだか可愛いような気もしないでもないような気が…。
「でも、なんで胸に虎さんの顔がついてるの?」
「それは…かっこいいからだワン!!」
「‥‥‥‥‥‥」
 ピピピピピピピピピ…
 呆然としている私の耳に、不意に謎の怪音が鳴り響きました。こ、これって?
「うさぎイヤーは動物のピンチを察知して警報を鳴らすのだワン。さあ、音のする方へ急ぐぞワン!」
「う、うん…。でもこんな格好で外に出られない…」
「大丈夫、お約束で正体はバレないことになってるワン。カモーン、ピジョンウィング!」
 ムクが一声かけると、私の背中にばさっとハトさんの羽根が生えました。わぁ、一度鳥さんになってみたかったんです…。
「それでは行くのだワン」
「う、うんっ」
 私はムクを抱いて外へと飛び出しました。ばさささささー
「ママー、変な鳥が飛んでるー」
「シッ、見ちゃいけません!」
 ‥‥‥‥‥‥‥。
「あっ、あれは!」
「エーン、タマー」
「ニャ〜〜〜」
 音のする方へ駆けつけてみると、猫が一匹木の上で震えています。どうやら登ったはいいけど降りられなくなったようです。
「大丈夫よ、今助けてあげるからね」
「え!?あ、あなた誰!?」
「えーと…」
 飼い主らしい女の子は目をぱちくりさせています。な、なんて言って説明しよう…
「彼女の名は動物愛護キューティメグ!動物を守るために現れた、愛と希望と勇気の戦士なのだワン」
「そ、そうなのよ」
「ふーん…」
「さあキューティメグ、決めセリフを言うのだワン」
「え?えとえとえっと…だ、大自然のおしおきよ」
「おしおきしてどうするんだワン…」
「だってだって〜他に思いつかないよぉ〜」
「‥‥‥‥‥」
 ああっ女の子が不信の目で見てる!キューティメグ最大のピンチですぅ…
「にゃ゛〜〜〜〜〜!」
「あ、ご、ごめんね。今助けるからね」
 私はばささささーと飛び上がると、子猫に手を差し出しました。
「おいで」
「フーーッ」
「あ、あの…。こんな格好してるけど、別に怪しくないから…」
「…ニャァ」
 あ…気持ちが通じたみたいです。子猫ちゃんは私の腕の中にするりと飛び移りました。
「よしよし…怖かったね」
 私は下へ降りると、子猫を女の子に手渡します。その子はとっても嬉しそうにお礼を言いました。
「ありがとう、キューティメグ!」
「う、ううん」
「おおー新たな美少女戦士か!チェックだチェック!」
「キ、キューティメグだって?」
「(えええええっ!!?)」
 な、なんで主人さんがここにいるんでしょう?それに主人さんのお友達のなんとかさんと…はっ!気がつくとギャラリーが大勢っ!
「ほほー、キューティメグか」
「うむうむ、キューティメグじゃのう」
「すげェぜキューティメグ!」
「ありがとうキューティメグ!」
 わーーーパチパチパチパチ
「は、恥ずかしいっ」
 私はあわてて家へと飛び去りました。腕の中で、ムクはとっても嬉しそうです。
「よかったワン。キューティメグの華麗なるデビューだワン」
「(ふぇぇぇぇ〜〜〜んっ)」


 動物たちに危機迫るとき、ポケットにしまったうさぎイヤーが鳴り響きます。私は物陰でキューティメグに変身すると、動物を救うため駆けつけるのです。
「きゃぁーっ!ミーが車にひかれちゃうーーっ!」
「キューティメグ参上!」
 キキーーッ!ばばばばばっ!
「さあ、もう大丈夫よ」
「ありがとうキューティメグ!」
「ニャーニャー!」

「ウウーーワンワンワン!」
「ああっうるせぇなこの駄犬!」
「あ、あの、この子の気持ちもわかってください。動物の気持ちがわかるビーーム!」
 pipipipipipipipipi
「ううっ俺が悪かったよぉ!今度からはちゃんと散歩に連れてくよぉぉぉ!!」
「クーンクーン」

 最初は恥ずかしかったけど、やっぱり動物たちが喜んでくれるのは嬉しいです。そうですよねムツゴロウさんシートンさん…。
 そんなある日学校で、私は彼の言葉を聞いてしまったのでした。
「キューティメグってキューティだよな!」
「お前そりゃそのまんまだぜ…」
「いいや、きっと正体は動物を心から愛する素直で優しい女の子に違いない。ああ俺はそう信じてる」
「願望でものを言うなよ」
「キューティメグ!一目でいいから君に会いたい!」
 そ、そんな、恥ずかしい…。でも、嬉しいです。主人さんがそんなこと言ってくれるなんて…。私、キューティメグでよかった…。
「ムク、ありがとう。お礼に今日はサバ缶を開けてあげるね」
「‥‥‥‥‥‥‥」
 せっかくお礼を言ってるのに、ムクはなんだか不機嫌そうです。ていうか、主人さんの話になるといつもこうなんです。
「別にあの男はキューティメグが好きなのであって、愛ちゃんが好きなわけではないワン」
「そ、そんないぢわる言わなくても…」
「だいたい浮かれている場合ではないのだワン!ついに悪の組織「PET」が動き出したのだワン」
「そ、そんなのあるの?」
 闇の動物密売組織PET…彼らはワシントン条約で保護された動物たちを次々と売りさばき、あまつさえ生物兵器に利用しようという、まさしく邪悪の化身なのである!しかしキューティメグがいる限り、この世に悪は栄えない。戦えキューティメグ、愛と希望と勇気とアンド正義の戦士よ!
「またナレーションが勝手なこと言ってる…」
「とにかくそういう事なのだワン。動物の敵である奴らがキューティメグをほっておくわけがなく、いつかは手を出してくるのだワン」
「そ、そんな…」
 そんな怖い人たちと戦うなんて、気の弱い私には無理です。ああ、でもでも…動物たちがそんなひどい目にあってるなんて、私…
 ピピピピピピピピピピ
 ポケットに入れたうさぎイヤーが音を立てます。私、私、行かなくちゃ…。
「気をつけるのだワン、愛ちゃん」
「う、うん…。ワンダフルパワー!」
 私はキューティメグに変身すると、大空をかけていきました。もうすっかり有名人になったらしく、子供たちも手を振ってくれます。やっぱり、嬉しいな…。
「はっ、あれは!」
「ホーーッホッホッ、女王様とお呼び!」
 見れば女物の黒い下着に変な羽根仮面を付けた怪しいおじさんが、小学校のウサギ小屋の前でムチを振り回しています。ウサギさんたちがおびえていて可哀想です…。
「あの、やめてください」
「ホーーッホッホッ、来たわねキューティメグ!」
「あの、なんでその名前を?」
「ふっ、そんな変な格好をしている者が他にいるわけないじゃないのォ」
 この人に言われたくないです…。
「私の名はムチ怪人。しかしもう遅いわ。このウサギたちはハンバーガーにして売りさばくのよ」
「そ、そんなのダメです」
「そうだそうだ!」
「帰れー変態ー!」
 遠巻きに見ていた子供たちも騒ぎ出しました。みんな動物が好きなんですね。嬉しいです…。
「キーーッ!戦闘員たち、やっておしまい!」
「クェーーーッ!」
 謎の女王様おじさんが一声かけると、全身黒ずくめの戦闘員さんたちがわらわらと出てきました。ど、どうしよう…。
「キューティメグ、戦うしかないワン!」
「う、うん。らいおんキーーック!」
 すかっ。
 ライオンブーツから放たれるらいおんキックは発泡スチロールすらへし折ります。でも当たらないと意味がないです…。
「クェッ、クェクェッ」
「チョコボール?」
「クェーーーッ!!」
「やーーんっ」
 なんだか怒らせちゃったみたいで、戦闘員さんは次々と襲いかかってきました。
「キューティメグ、タイガービームだワン!」
「う、うん。たいがービーーーム!」
 BEEEEEEM!
「クェーーーーッ!」
 胸のタイガーフェイスから放たれたタイガービームは、閃光となって敵をなぎ倒しました。くすん、かわいくない…。
「ええい、なかなかやるわね。こうなったら最後の手段よ!」
 ビシッ!
「ギャゥッ!」
「ム、ムクっ!?」
 ムチ怪人さんのムチがムクの首に巻き付きました。あわてて駆け寄ろうとする私の前に、戦闘員さんたちが立ちふさがります。
「ホーホッホホホ、この子を帰してほしければ明日の夕方に1人で採石場までいらっしゃい。タップリタップリタァァァ〜〜ップリと可愛がってあげてよ。オーーホホホホホホホ!」
「これは罠だワン!僕のことはいいから…ギャンッ!」
「ム、ムクぅぅぅっ!」
 ムチ怪人さんはムクを殴りつけると、いずこともなく消えていきました。ひどい、ひどすぎます…

 次の日の夕方、私は近所の公園にいました。向こうから主人さんが走ってきます。
「み、美樹原さん。どうしたの?」
 彼を電話で呼びだしたのは私でした。どうしても最後に一言言っておきたかったから…
 でも、いざ彼を前にすると、私は何も言えなくなってしまいます。
「美樹原さん?」
「あ、あの…。その、見ていてください!」
 ワンダフルパワー! ♪シュビドゥバ〜〜
「動物愛護、キューティメグ!」
「何ィーーーッ!?」
 主人さんは目をぱちくりさせていました。そうですよね、キューティメグの正体が私だなんて嫌ですよね…。
「あの…、最後に会えて嬉しかったです。それじゃ…」
「ま、待ってくれ!」
 彼は私の手をしっかとつかみました。あっ…
「最後ってどういうことだ!?まさか悪の組織と対決とか!」
「は、はい…。そうなんです…」
「それなら俺も!」
「ダ、ダメです!私1人で来いって…。それに、これは私の戦いだから…」
 主人さんは悔しそうに拳を振るわせていました。でも変身できない彼にはどうしようもありません。
「キューティメグ、いや、美樹原さん。そこまでの決意があるなら俺はもう何も言わない…。でもせめて、これを持っていってくれないか…」
 そう言って彼が差し出したのは、一片の紙切れでした。
「これは…?」
「フッ、俺が寝ないで考えたキューティメグの決めセリフさ…。こんなことしかできないけど、よかったら使ってくれ…」
「あ、ありがとうございます。嬉しい…」
 私のためにここまでしてくれるなんて…。そっと涙を拭くと、紙切れを抱きしめて私は翼を出しました。
「あの、それじゃ…行ってきます」
「ああ、必ず無事で帰ってくれ!」
「は、はいっ」
 主人さん。私、必ずムクを助けて帰ってきますね。そして私はきっと…。


「あの、来ました…。ムク帰してくださいぃ…」
 採石場は人っ子1人なく、風がぴゅうぴゅうと吹くばかりです。時間間違えたかしら…。
 ぴしーー!
「オーッホッホッホッ!来たわねキューティメグ!」
「キューティメグ、逃げるのだワン!」
「ム、ムク!」
 夕日を背にした崖の上に、ムチ怪人さんと戦闘員さんがずらっと並んでいました。100人くらいはいそうです。
「えっと…決めセリフ言うので、ちょっと待っててください…」
「そんなもの待てなくてよ」
「でも、せっかく主人さんが考えてくれたんです…」
「そう、ならさっさとしなさいな」
「(なんだってそんなもの持ってきたのかワン…)」
 私は小さく息を吸うと、主人さんの愛の決めセリフを読み上げました。
「♪ちゅちゅ〜ら〜ちゅらっちゅらちゅら、ちゅちゅらちゅらちゅらちゅらっら〜
 天が呼ぶ、地が呼ぶ、獣が呼ぶ。動物守れと彼女呼ぶ。
 見たか奇跡のキューティ戦士。その名もメグ〜キューティメグ!
 今日も生き物守るため、愛の力で決戦だ、ヘイ!
 地球はみんなの宝物。広げよう、生き物の輪っ!」
「‥‥‥‥‥‥」
 ああ、なんて心のこもった決めセリフなんでしょう。まるで主人さんの愛が伝わってくるようです…。
「(あの男、やはり一度シメてやる必要があるワン…)」
「とにかくっ!私はあなたたちなんかに負けません!」
「あらそう。でも抵抗すればこのバカ犬の命はなくてよ」
「そ、そんなの困ります…」
 あの、それじゃ私どうすることもできません。そう言ってる間に戦闘員さんたちは次々と崖をすべりおりてきます。
「あの…そんな…。ちょっと待ってください、ねえ…」
「オーーホホホホホ!私たちの勝ちよ!」
 ムチ怪人さんが高笑いをしたときでした。いきなり小さな固まりが、ムチ怪人さんにぶつかってきたのです。
「鉄山靠!」
「きゃぁっ!?」
 ぶつかり際に、彼女は敵の手からムクを奪い返します。あ、あのサングラスに個性的な髪型は…。
「愛と勇気と一目惚れの戦士!キューティコアラただ今参上!」
「キューティコアラ!間に合ったかワン!」
「エヘヘ。ムクちゃん、大丈夫?」
 見晴ちゃんはムクを救い出すと、ぴょんぴょんと私の方へ降りてきます。
「はい、キューティメグ。もう放しちゃダメよ」
「ムクぅぅぅぅっ!」
「キューティメグぅぅぅぅぅっ!」
「ありがとう、見晴ちゃん!」
「み、見晴じゃないよ。キューティコアラなのおっ」
 サングラスの女の子はそう主張しますが、髪型で全部バレてます。でも今はそんなこと気にしてる場合じゃないですよね。
「きいっくやしいっ!おまえたち、やぁぁぁっておしまいっ!」
「クェーーーッ!」
 戦闘員さんたちがいっせいに襲いかかってきます。でももう、私たち大丈夫です。
「いくわよ、キューティメグ!」
「う、うん…」
 キューティコアラちゃんは奇妙なポーズをとりました。
「スターコアラ!」ズキュゥゥゥゥン
『NIYARYYYYYYYY!』
 見晴ちゃんの背後から目つきの悪いコアラさんが飛び出します。すごいです見晴ちゃん、とても今まで唯一のまともキャラとして扱われてたとは思えません…。
「ほっといてよぉぉっ!だってだって、しょうがないじゃないっ!」
「ご、ごめんね…」
「2人とも、それどころじゃないワン!」
 キューティコアラちゃんに殴りかかろうとする戦闘員さん。でもコアラさんがニヤリと笑うと、猛烈な速さのパンチを繰り出したのでした。
『コアラララララララァァァァッ!!!』
「ブッギャァーーーッ!!」
 戦闘員さんはまとめて吹っ飛ばされます。わ、私も頑張らないと…。
「ねこパーーンチ!」
 ぱすっ
「メロメロ〜」
 私のパンチで戦闘員さんはメロメロになっていきます。敵の数は多いけど、2人の力を合わせればなんとかなりそうです。
「なにをやっているの!全員一斉にかかりなさい!」
「クェーーーッ!」
「あの、行こう、キューティコアラちゃん!」
「うん、キューティメグ!」
 私たち2人は、襲い来る敵さんたちに敢然と立ち向かっていきました。

(うおーー嵐のよーな戦いの描写だと思いねぇ!!)

「さあ、残るはあなた1人よ!」
「あの…、降参してください」
「い、いつの間に…」
 追いつめられたムチ怪人さんは、それでも不敵に微笑みました。
「ふ、ついに私の本当の力を見せるときが来たようね。見るがいいわ、このムチ怪人のムチさばきを!」ぴしー!
「2人とも、時間がないから必殺技だワン」
「う、うん。ムク…」
「それがいいよね」
「え、ちょっと、そりゃないんじゃない?」
「みはりん爆弾!」
 キューティコアラちゃんは爆弾を取り出すと、私へとパスしました。私はもう1個爆弾をつけ加えます。
「メグトン爆弾!」
 2つの爆弾を同時に投げられ、さすがにムチ怪人さんも受け止められません。
「いやぁぁぁぁーーーっ!」
「どっかんV!!」
 BOOOOOM!!
 爆弾はみごとに爆発し、後には灰になったムチ怪人さんが残りました。
「フッ、どうやら私の負けのようね…。さあ、煮るなり焼くなり好きにするがいいわ…」
「(あんまりこんな人好きにしたくないな…)」
「あの、大丈夫ですか?」
「キューティメグ!?」
「何をしているのかワン!」
 ムチ怪人さんを介抱する私に、周囲から驚きの声が上がります。でも…
「こ、こんな私を助けてくれるというの…」
「は、はい。だってムチ怪人さんて悪い人じゃないみたいだし…」
「(おいおい!)」
「…フッ、どうやら私が間違っていたようね…。ありがとうキューティメグ…」
「ムチ怪人さん…」
 ちゃらら〜ちゃららら〜〜ら〜〜〜。感動的なBGMが流れます。みんな本当は優しい人なんですね…。
「この愚か者めが!」
「だ、誰ですか?」
 いきなり空気が揺らいだかと思うと、黒いズルズルをまとった長髪の男の人が現れました。顔はきれいだけど、何だか目が怖いです…。
「そ、総帥!」
「キューティメグを倒せなかったばかりか敵に寝返るとは…。貴様のような能なしはこうだ!」
「お、お待ちください!いやぁぁぁーーっ!」
 ボウン!
「うきっ、うききききーーっ」
 総帥さんが目から変な光線を出すと、なんとムチ怪人さんはお猿さんになってしまったのです!
「な、なんてことするのよぉっ!」
「あの、ひどいです。(でもちょっとだけうらやましいです…)」
「フン、キューティメグにキューティコアラだったな。ムチ怪人など我が組織では一番の小物!「PET」の力はこんなものではないのだぞ!」
「で、でも私負けません。絶対動物を守ります!」
「クッククク。せいぜいイギリスの某動物愛護団体みたいにならぬよう気をつけることだ。フッハハハハハーーーッ!」
 あんまりシャレにならない一言を残し、総帥さんはいずこともなく消えていきました。く、悔しいです…。
「キューティメグ、気を落とすことはないワン。正義は必ず勝つのだワン」
「そうよ、キューティメグ!わたしだっているんだもの!」
「ムク、キューティコアラちゃん…。ありがとう、私、最後まで戦うね」
 そしていつか動物と人間がともに幸せになれる世界を…。
 見守っていてください主人さん。私たちの戦いは今始まったばかりです!



<第1部完!>




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