「詩織ちゃんて昔から可愛かったのね…」
「やーねえメグったら本当のことを」
 仲良くアルバムなど見ている詩織と愛。しかしそんな中愛がふと1枚の写真に目を留める。
「詩織ちゃん、これ…」
「そっそれはっ!」
 かなり幼いころの詩織のようだが、髪の色が今と違う。流れるような金髪だ。
 なんで?という目でこちらを見る愛に、詩織は仕方なく真実を語った。
「実は私は外国の血が入っていて、もとは金髪だったのよ」
「ええっ!?それがなんで赤い髪に?」
「隣の公のせいよ!あいつときたらとんでもない金髪フェチで…。毎日のように私を追い回すし、いい加減疲れてあいつを遠ざけるために髪を赤く染めたのよ」
「そ、そうだったの…。詩織ちゃんかわいそう…」
「ふっ、昔のことよ…」
 遠い目で嘆息する藤崎詩織。だが過去の忌まわしい危機がまた再現されようとしていることなど彼女には知る由もなかった…



詩織パロディSS: 愛と勇気と希望の大決戦!





 一日の授業が終わった放課後。
 愛が詩織と一緒に帰ろうとA組に行くと、可愛らしい金髪の女の子の人形を抱えた公とばったり出くわした。
「やあ、愛ちゃん」
「あ、主人さん…とエリザベスちゃん」
 愛の挨拶に人形が返事を返す。
『あら、わたしの名前も覚えてくれたのね。嬉しいわ』
「は、はい…。あの…、可愛いですね」
『ありがとう。でも愛ちゃんも可愛いわよ』
「は、恥ずかしいです…」
「あはははは。エリザベスはお上手ですねぇ」
『あら公、わたしは本当のことを言ったまでよ☆』
「いい加減にせんかいこの変態ーーー!!」
 いきなり背後から詩織の蹴りが炸裂し、公は壁に激突した。
「し、詩織ちゃん…」
「痛いじゃないですか詩織ちゃん」
「腹話術で人形と会話してんじゃないわよ気色悪い!」
『詩織ちゃん怒ってばかりだから小ジワが増えてるわよ』
「なぁんですってぇ〜〜〜!」
「まあまあ、エリザベスの言うことですから」
「あんたが言ってんでしょうがぁぁ!!!」
 いつもの光景にうーんと額を押さえる愛。幼なじみなのにどうしてこう仲が悪いんだろうか。
 そこへ廊下の向こうから何者かが土煙をあげて突進してくる。
 ドドドドドドドド
「公くぅ〜〜〜〜〜〜ん!」
「主人さまぁ〜〜〜〜〜〜!」
「まずいっ!」
 とっさに公がオレンジのカツラをかぶって変装したところへその少女――朝日奈夕子と館林見晴は急停止した。
「ああっ公くんがいないわ!公くんはどこ?」
「夕子ちゃん…」
「あっはっは。わたしはただの通りすがりの早乙女好雄です」
『そしてわたしはただの通りすがりの早乙女優美よ』
「ヨッシーなんかに用はないわよ!」(げしっ!)
「さようなら〜」
 夕子に蹴り飛ばされ校舎の壁を破って飛んでいく公とエリザベス。一方の見晴は愛を締め上げる。
「めぐちゃん!主人さまをどこへやったの!」
「ど、どこへもやってないよ」
「しぇからしかー!」(べきっ!)
「み、見晴ちゃんやめてよ後ろ回し蹴りは」
「なら反復横飛び三段蹴りよっ!ちぇすとーー!!」(ずごしっ!)
「見晴ちゃん…痛いの」
「(あんな変態のどこがいいのかしら…?)」
 頭痛を押さえながら首をひねる詩織。これもまたいつもの光景だった。

 そーゆーわけーでどんなわーけでー

 やっとのことで2人から逃れた詩織と愛が外に出ると、校庭のはずれに何やら人だかりができている。
「みんな、どうしたの?」
「おっ藤崎さんいいところに。この学校に伝わる真実の樹の話を知ってるかい?」
「はあ?」
 首を出した本物の好雄の話によると、伝説の樹の反対側のはずれに真実の樹というものが生えていて、その下に立つとその人の本音がすべて聞こえてくるらしい。
「で、俺の長年の調査によりこの樹がそれだと判明したってわけよ」
「真実の樹ねぇ…」
 見たところなんの変哲もない常緑樹である。しかしうさんくさそうに見てる詩織の頭上で葉がざわめいたかと思うと、不意にどこからか声が聞こえてきた。
『真実の樹ぃ〜?バッカみたい。これだからこの学校の男はレベルが低いのよね』
「え!?」
 紛れもない詩織の声に周囲の視線が集中する。
「藤崎さん…」
「詩織ちゃん…」
「わ、私そこまで思ってないわよっ!」
『思ってるわよーだ。あーあ、どこかにこの美しくて賢い私につりあう男がいないものかしら?』
「藤崎さんおいおい!」
「あなたには根性が足りないわ」
「ちょっとぉぉぉ!メ、メグは信じてくれるわよね!?」
『ホントは愛なんて邪魔なだけなのよね。まあ引き立て役にはなるからそばに置いてやってるけど』
「…詩織ちゃん…」
「違うーーーっ!!」
 絶叫する詩織の耳に一番聞きたくない笑い声が流れてくる。
「あっはっはっ、いけないですねぇ詩織ちゃん。やはり君の相手は僕でないと」
 しかし今度は公の上で樹の葉が音を立てた。
『詩織ちゃんみたいな性悪女は大嫌いですね。幼なじみだなんてまったくいい迷惑です』
「え゛」
「ふ〜〜〜〜んそう、それがあなたの本音なわけ」
「ち、ちょっと待ってください詩織ちゃん」
『その狂暴な性格なんとかした方がいいわよ』
「しっ!聞こえますよエリザベス!」
「あんたが言ってんでしょこの変態!!」
 斧を振り回して公を追い掛け回す詩織。唖然とする愛の横をすり抜けて今度は見晴が樹の下へ躍り出た。
「ふっ、わたしは藤崎さんなんかとは違うわよ。ああっ主人しゃまぁ〜、見晴はあなたにラブラブですぅ〜」
『主人なんてただの変態じゃない。一目ぼれなんて幻想よ〜』
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!!」
「ふ〜ん、見晴ってばそんなこと考えてたんだ」
「そ、そういうひなちゃんはどうなのよっ!」
「あたし?あたしはもちろん」
『公くんみたいなイモなんて願い下げよ』
「ちょっとぉぉぉ!?」
 そして一気に樹が大きくざわめき、それぞれの声が聞こえてくる。
『あたし男に生まれたかったな。花なんて大嫌いさ!』
「おいっ!」
『未緒ちゃんの面倒見るのもいい加減うんざりなのよね。ずっと家の中にいてくれればいいのに』
「沙希ちゃん…」
「お、思ってないよそんなことっ!」
『沙希ちゃんていい子ぶってるだけでとっても偽善者ですね』
「‥‥‥‥」
「思ってません!」
 てんやわんやの大騒ぎに愛は信じられない思いで後ずさる。背中に樹の幹が当たり、自分の声が聞こえてきた。
『いつも私を見下してる詩織なんて嫌いよ』
「う、うそ…」
『ウソツキはあんたよ。みんな嫌い、大っ嫌い!』
「いやぁぁぁーーー!」
 悲鳴を上げて泣き出す愛。周囲もようやく我に返る。
「メグ…」
「私、ウソツキじゃない。私、私、みんなのこと好きなのに…」
『嫌いよ』
「ふぇぇぇ〜〜〜ん」
「泣かないでメグ。私はメグを信じるわ」
「詩織ちゃん…」
「本当のウソツキはこの樹の方よ!」
 おおーーーーーー!(ポン)
 一同が納得して手を打ち、詩織はキッと好雄をにらみつけた。
「ご名答…。しかしもう遅い!」
 そう言って樹の陰から引きずり出したのは、縛られ猿ぐつわをされた本当に本物の好雄!
「モガモガガーー!」
「さ、早乙女くん!?するとあなたは…」
 ニセ好雄の身体が変化しローブをまとう。背の高い帽子が目と鼻まで隠し、口だけが笑みを浮かべるその姿は…
「我が名はPETのミラード魔人!貴様らを仲違いさせてその間にキューティメグを倒そうという作戦よ」
「な、なんて卑劣なの!」
「すでに貴様らの精神は大きなダメージを受けた。後は一網打尽にするのみ!」
 ビカァッ!
 ミラード魔人の剣が雷光を放ち生徒たちに無差別攻撃を始める。
「うわぁぁっ!」
「きゃぁぁーーっ!」
「メグ大丈夫っ!?…メグ?」
「大丈夫、詩織ちゃん!」
 愛の手にコンパクトが現れ、その体が光に包まれた。
うさぎの耳!
 ねこグローブ!
   きつねのしっぽにライオンブーツ、胸に光るは虎さんフェイス!

画:狐鉄丸さん
「キューティメグにおまかせよ!」
「そんな…キューティメグの正体はメグだったの?」
「今さら何を言ってるのだワン…」
「ムクっ!?」
「動物愛護キューティメグ、いきますぅ!」
 その場のほとんどが倒れた中、ひとり敢然と敵に立ち向かうキューティメグ。詩織も思わず手に汗握って応援する。
「メグ、頑張って!」
「いや、愛ちゃんも先ほどの精神的ダメージが大きいのだワン」
「そ、そうなの?」
「そこでここはひとつ親友の詩織ちゃんの協力を頼みたいのだワン」
 すざざざざざざざ
「なんで逃げるのだワンーーーー!?」
 校舎の壁まで後ずさった詩織はいやいやと首を振った。
「へ、変身して友達とかに噂されると恥ずかしいし」
「友達と親友とどっちが大事かワン!」
「ほ、ほら、私って一応きら校の模範生だからそれなりの行動が」
「自分で言うかワン…」
「そ、そうよ私はメグを信じてるわ!メグ、頑張って!」
「詩織ちゃぁん…」
 しかし敵は手強く、キューティメグは明らかに押されている。
「動物殺法、ねこぱんちーー!」
「素晴らしきかな少女の技。ならば見せよう、ミラーソード、鏡の舞!」
「やーーん!」
 分身したミラード魔人から光の矢が降り注ぐ。熾烈な攻撃についにキューティメグは地に倒れた。
「メ、メグっ!」
「詩織ちゃん!さあこのメダリオンで変身だワン!」
「いやでも世間体というものが…」
「詩織ちゃんは真面目ですねぇ」
『冷血って言った方が正確ね☆』
「何よ公くんまだ生きてたのっ!」
 ミラード魔人はとどめをさすべくじりじりとキューティメグに近づいている。どうする詩織!
「(ああっメグがやられちゃう!でもでも、成績優秀品行方正の私があんな格好したらすぐ学校中の噂になって「あの藤崎さんがねぇ」「ふーん」とか言われるんだわ!私いったいどうしたらいいの…)」
「おほほのほーー!」
「しょせん優等生さんには無理って感じ?」
「あなたたちはっ!」
 いつの間にか公にひっついてる少女2人に、詩織は思わずむっとする。
「なんの用よ!」
「や、やあ朝日奈さんに館林さん…」
「大丈夫よ公くん!あたしたちにおまかせっ!」
「主人さまに届け見晴の想い!コアラ印の対戦ぱずる玉エーーックス!」
「なにっ!」
 突然魔人の頭上に大玉が降り注ぎ、あわてて後ろへ飛びすさる。
 ちゃーちゃーちゃちゃーちゃーちゃちゃーちゃーちゃちゃーちゃちゃー(「Chance!!〜君のそばに〜」)
 BGMが流れ、コアラずきんの女の子と可愛くわがままな美少女が大玉の上で名乗りを上げた!
「天が呼ぶ、地が呼ぶ」
「公くんが呼ぶ!」
「主人さまのためならどこまでも!」
「公くんのためならどこまでもっ!」
「われら、星をも霞まん」
「美少女コンビ!」

「爆発!かしまし娘ーー!!」「放課後プリンセスとお付きがひとりーー!!」

   「むーすめーー!」「ひとりーー!」(←エコー)


 ‥‥‥‥‥‥‥

「ひなちゃん何よそれは!お付きってわたしのこと!?」
「見晴こそ何それ超ダサ!漫才コンビじゃないんだかんね!!」
「ええい消えろ!!」(ちゅどーん)
『あ〜〜〜れ〜〜〜』
 登場したのと同じくらい唐突に2人は空のかなたへ消えていった。
「あーもう結局なんなのよあの子らは!」
「だったら最初から詩織ちゃんが変身すればいいんですよ〜」
「う…」
「さあこのメダリオンを!」
「うう…」
 ムクは詩織にメダリオンを押し付けると愛のもとへ走る。
「むっ!なにをする気だ犬!」
「犬じゃないワン。ワンダフル星人なのだワン!」
「ムク…ふわふわのもこもこ…」
「愛ちゃんしっかりするのだワン!さあこの指輪を!」
 愛が指輪を、ムクが腕輪をつけ、変身の準備が整った。
「さあ詩織ちゃん!メダリオンをかかげ「愛よ!」と叫ぶのだワン」
「恥ずかしいなぁ…」
「詩織ちゃぁん」
「わ、わかったわよっ…」
 周囲の視線にせっつかれ、詩織は渋々とメダリオンを掲げた。
 ちゃんちゃーん、ちゃんちゃーん、ちゃんちゃーちゃーらーらーらーらー
「めぐみよ!」


 しーーん

「詩織ちゃぁぁ〜〜〜ん」
「往生際が悪すぎるワン…」
「だ、だってほら「愛」だなんて堂々と言うには心の準備が」
『詩織ちゃんてばわがまま☆』
「やかましいっ!」
「あ、ほらほら敵さんも怒っちゃってますよ〜」
「‥‥‥‥‥‥」
 無言で剣をかざすミラード魔人の頭上に強烈な光が集まってくる。もはや変身している暇もなさそうだ。
「お前ら全員消え去れ!」
「絶体絶命だワンーーー!」
「あーあー詩織ちゃんのせいで」
「うるさいーーっ!」
「きゃぁぁぁっ!」
 光が一同を襲う…世界が真っ白に包まれた、かに見えた。
「‥‥‥‥?」
 ゆっくりと目を開けると…
「あらあらあら、まあまあまあ」
「はーーっはっはっはっ!どうした庶民どもーー!!」(ぴしー)
「こ、古式さんと伊集院くん!?」
「愛君!」
「は、はいっ」
「…ラァブリー」
「‥‥‥」
「あ、あの女このミラード魔人の攻撃を謎の眼力で弾き返すとは…ただ者ではないな!」
 そのただ者ではない古式ゆかりとムチを振り回している伊集院レイが、詩織たちにかわって魔人に対峙する。
「あらあら藤崎さん。みんなで力を合わせないといけませんよ」
「ここは我々が押さえる!すぐ変身するんだ!」
「で、でもっ」
「いいからしろ!さっさとしろ!うまくできたら花丸・二重丸だーーーっっっ!!!」
「そうね、そうね」
「(みんなが私のこといじめる…)」
 ムチ二刀流の伊集院が魔人と斬り合い、ゆかりは意味もなくお茶をすする。いじけて地面に字を書く詩織に、愛がそっと手を握った。
「ねえ詩織ちゃん、一緒に戦おうよ」
「メグ…」
「一緒にやれば美少女戦士も楽しいよ…。(たぶん)」
 しばらく見詰め合う2人だが、詩織が軽くため息をつくと意を決したように立ち上がった。
「そうね。メグと一緒ならそんなに恥ずかしくないかもしれないわ」
「詩織ちゃん、大好き…」
「私も好きよ、メグ…。さあムク、変身よ!」
「ありがとうだワン!」
『ようやく恥を捨てる気になったのね詩織ちゃん』
「あんたは〜〜〜〜!!」
「やだなぁ誉めてあげたんですよ」
「あーーーっ無性に腹立つっ!!」
 公への怒りをぶつけるように、詩織はメダリオンを掲げて絶叫する!
「愛よ!」
「勇気よワン!」
「希望よ!」
 ちゃんちゃーん、ちゃんちゃーん、ちゃんちゃーららーららーらー
 詩織の周囲に光が輝き、その髪が流れる金髪に変わる。ヘアバンドが翼のついた髪飾りに変化し、清楚な衣装にたなびくスカーフ、右手に輝く聖なる弓矢。伝説のときめきプリンセスの誕生だ!
「愛と、勇気と、希望の名のもとに
 ときめきプリンセス、ホーリーアップ!」

「おおっ!でかしたぞーーーっ!!」
「あらあら〜」
「詩織ちゃんかっこいい…」
 しかし一番反応したのは公だった。
「あーーっ!金髪の詩織ちゃんだぁーーーっ!!」
「ひっ!」
 愛が思わず悲鳴を上げる。それもそのはず、公は滝のように涙を流して感激している。
「あ、あの…主人さん?」
「金髪まきまき、金髪まきまき、うふふふふ…」
 すでに目が正気じゃない。
「僕の詩織ちゃぁぁぁ〜〜〜〜んっ!」
 狂喜して詩織に飛び掛かる公!しかしその前に詩織が弓矢を構えた。
「ビューティしおりんアローーー!!」
「金髪ま…」
「ときめきシューート!!!」
「ぐはぁぁーーー!!」
 星屑となって消える公。聖なるアローの力は絶大だった。
「邪悪は滅び去ったわ…」
「っておい!」
「詩織ちゃん、魔人さんが怒ってるよ」
「分かってる」
 無表情で答えると、天に向かって矢を放つ。
「セイントシープ、ナビゲーション!」
 パンパカカパンパンカパンパパーーン
『メェェェェ〜〜〜!』
 荘厳なファンファーレとともに、黄金の羊が舞い下りる。
「ライトニングウール、スキルアップ!」
 詩織の手に止まった羊がその姿を変えていく。大きな扇子の形をした聖なる剣。これが噂のハリセンクリス!
「クックッ、何を出そうが無駄なこと」
「あなたも光の戦士なら、邪悪な心を捨てなさい!」
「我は魔人なり」
「ミラード魔人!」
「我は鏡、我は光なり!」
 ミラード魔人の光が詩織を襲う!一瞬の差で高く飛び上がる詩織に、魔人の剣が狙いを定めた。
 しかしその視界から詩織の姿が消える。太陽を背に、光に溶け込んだのだ。
「あなたに光は使わせない!」
「ひ…光が!」
「ハリセンクリス!爆弾ニングフラーーッシュ!!」
 詩織の剣から放たれた衝撃は不死鳥の形を取り、ミラード魔人の剣を打ち砕きその身体をついに捉えた。
「今こそ目覚めん、まことの光よ。聖なる光、彼を包め」
「な、なぜだーーー!」
「あなたは独りぼっちだったから。私は一人じゃない。私はメグと一緒に戦う、愛と勇気と希望のときめきプリンセス、詩織」
「うわぁぁぁーーー!」
 ミラード魔人は光に浄化され消える。学校はいつもの平和な姿を取り戻し、詩織の髪もゆっくりと元の色に戻っていった…。


 そーゆーわけーでどんなわけでっ

「それじゃこれは返すわ」
「そんなあっさりーー!」
「さよならときめきプリンセス。もう一人の私…」
 ムクにメダリオンを突っ返した詩織に、愛が悲しそうな視線を向ける。
「詩織ちゃん一緒に戦ってくれるんじゃなかったの…」
「またあの変態に追い掛け回されるなんて真っ平よ!」
 詩織が指差した先では人形を抱いた公がぶちぶちと草をむしっていた。
「金髪の方がよかった。絶対よかった。なんですかあれは…」
「なあに?言いたいことがあるならハッキリ言ってみたら?」
 その言葉にうらめしそ〜に詩織を見た公がぼそりと一言。

「ぶす」


「な…な…」
「どぶす、凶暴、大ウソツキ、トウガラシ頭の鬼ババァ」
「きーーーーーーーーっ!!」
 頭から湯気を吹いた詩織がハリセン片手に公を追いかける。相変わらずの2人に、愛とムクは深々とため息をつくのだった。
「なんでああ仲が悪いのかワン…」
「でも主人さんて本当は詩織ちゃんが好きなんじゃないかな?」
「なぜだワン?」
「だってほら、ウソツキの樹が主人さんの声で『詩織ちゃん嫌い』って言ってたもの」
 あらためて2人を見る愛とムク。追いかけっこはいつ果てるともなく続き、終わるにはまだしばらくかかりそうでしたとさ。




<END>



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