戸台川/シモニゴリ沢支流/モンキーフォール(初登)

ARIアルパインクラブ/有持真人、宮川良成


< 記 録 > 有 持 真 人


<山行日>     1998年1月31日(土)〜2月1日(日) 

<登攀日>   1998年1月31日(土)
<初登者>   ARIアルパインクラブ/有持真人、宮川良成
<情報提供者> 無所属/山本泰司
<場所>    南アルプス/戸台川/シモニゴリ沢支流
<ルート名>  モンキーフォール
<グレード>  V級(98.1.31現在) ※ 発達すればV+になると思われる。

 ★ 記録写真 ★ ルート図
          今回初登した氷瀑は、カミニゴリ沢の1本下部にあるシモニゴリ沢に掛かっているもので、カミニゴリ沢のす ぐ近くにあった。  昨年の3月にカミニゴリ沢、小百合沢を初登した時、南アルプス林道を登り方向に偵察に行ったのだが、逆方 向には行かなかったため、その時には見逃してしまっていた。  しかし、昨年の年末に、いつも氷瀑の氷結情報を提供していただいている、山本泰司さん(無所属)が偵察に 行った時にこの氷瀑を発見し、私に情報提供していただいた。そして今回我々が初登する事になった。  当初、年末年始山行の滝谷が終了後、帰りにその足で登攀する予定であったが、今年は暖冬で各地の氷結状態 も今一で、カミニゴリ沢の氷結状態も良くないとの情報もあり、しばらく発達するのを待つことにした。  大雪が2回も降ったのは予想外だったが、寒気の流入で寒い日が続いていたため、1月31日に登攀する事に なり、有持、宮川の2名で出発する。  31日の朝に戸台に到着したときには、10人ほどのパーティがいそいそと出発準備をしていた。彼らは赤河 原方面に行くようだ。  昨年に来たときは、全くと言って良いほど雪が無かったが、先日の大雪のためかなりの積雪量である。トレー スを外すと膝まで埋まる箇所もあった。1時間でカミニゴリ沢出会に到着。  昨年の夏に、山本泰司さんがカミニゴリ沢のアプローチを整備していただいたおかげで、立派な道標や目印が あり、初めて訪れたクライマーでも間違える事は無いだろう。  出会にテントを張り出発する。先週に数パーティ入山したらしくしっかりしたトレースが付いている。40分 ほどでカミニゴリ沢/F1に到着。すでに先行パーティがおり丁度林道に抜けた所であった。  F1は、昨年初登した時の面影は全くなく、ほとんど発達していなかった。中央部が一部登攀可能なだけで、 傾斜のない所は雪で埋没してしまっている。  我々は、F1は登らずに右側の斜面をラッセルし林道に出た。林道を右側にしばらくラッセルしていくと隧道 のトンネルがあり、このトンネルを出たところがシモニゴリ沢である。このトンネルの中は結構広くて風も通ら ないのでテントを張るには丁度良いかもしれない。  シモニゴリ沢には小さな堰堤が何カ所かあり、それを巻きながらラッセルしていく。雪がサラサラのため固ま らず結構大変だ。しばらくすると上部から雪崩れた大きなデブリになり、少しは歩きやすくなった。  デブリのあたりから左を見ると大きな氷瀑が掛かっており、これが目的の氷瀑である。この氷瀑は、上部で二 俣に分かれており、右側が氷柱、左側が滑滝になっていて2ルートとることができる。取付までは、トンネルの 出口から約15分程度である。  今回は、宮川にトップを譲り、宮川リードで登攀を開始する。下部は、見た感じではIV級程度だったのだが 実際に取り付いてみると以外と傾斜があるようだ。IV+〜V−ぐらいだろうか。  下部の短い垂直部分を抜けると傾斜が落ちる。この辺りは、雪と氷が混じっているためグサグサでバイルの刺 さりが悪い。宮川がスクリューをきめてテンションをかけたところ、いきなり宮川が吹っ飛んできた。よく氷質 を見ずにスクリューを入れたために抜けてしまったらしい。5〜6mは落ちたが怪我はなかった。  しかし、バイルとピッケルをシュリンゲでハーネスに結んでいなかったため、バイル、ピッケルは氷に刺さっ たままになってしまった。仕方なくロワーダウンし、私にリードを交代した。  下部の垂直部分は氷結状態もよく快適に登れる。宮川が落ちた辺りは傾斜はないが氷質が悪い。残置された宮 川のバイルとピッケルを抜いて投げてやり登攀を続行する。  この上部は二股になっている。今回は、右側のV級の氷柱を登ることにした。ここは、しっかりと凍っており ダブルアックスで快適に登り切った。しかし、滝の落ち口辺りでザイルがいっぱいになってしまった。ここは雪 のためビレーポイントを作る事もできないので、仕方なくビレーを解除してもらい、3m程上部の氷にアイスピ トンを打って終了点とした。  下部から見たときは45m/1pで抜けられそうだったのだが以外とスケールがあり間抜けな事をしてしまっ た。この上部には小さなF2があったが、ほとんど氷結していなかったため今回は登らなかった。F2の上部は もう空が見えていたのでこれ以上は滝はないように思われる。  この氷瀑は、我々が登攀している時に猿が物珍しそうに見ていたので<モンキーフォール>と命名した。  <モンキーフォール>は、今年の様に氷結状態の悪い時でもあれだけ凍っているので、昨年のようなコンディ ションの良い年ならV+には発達すると思われる。 <下降>  下降は、同ルートの懸垂下降だが、45mザイルだとちょっと厳しい。今回は、氷の発達が悪く取付の上が雪 のバンド状になっていたのでそこまで届いたが、昨年の様に氷が発達して雪の少ない年には、下までザイルが届 かないかもしれない。  下降支点には立木を使い、黄色いシュリンゲを残置してある。これより上部の立木を支点にした場合は、ザイ ルが足りなくなるので注意が必要だ。 <使用ギア>   スクリュー×8、スナグ×2、ザイル(45m)×2 

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