福島-2012年春
鉛筆+透明水彩 F10 2012.6.6
「練馬文化の会美術展」に出品


(日本科学者会議・電気通信研究所分会機関誌「新しい風」2012年6月号「桜と震災支援で東北2週間」から抜粋)

 ここ10年、桜旅を続けてきましたが、今年はやはり東北、かねての希望の弘前城と角館のリベンジを計画、 二週間のドライブをしました。その間、復興支援のための個展を伊達市の公共の宿「つきだて花工房」で開 かせていただきました。

 4月21日に東京を発ち会津若松に一泊、22日の昼ころ伊達市月舘町の公共の宿「つきだて花工房」に到着。 花工房のロビーに私たちの寄せ書きが掲示されました。今回、連れ が東京からの支援の気持ちを伝える寄せ書きを発案。まわりに呼びかけたところ、72人から集まり、大きな 紙に満開の桜の形に貼り込んで持参したものです。
 「福島のモモとリンゴ‥今年も絶対買います」「いつまでも応援してます‥」「お日様はいつも平等にみ てますよー」‥‥花工房のYさんが、「東京と福島を繋ぐことばの架け橋‥応援メッセージを届けてくれま した。たくさんの思いやりと勇気をありがとう!」と寄せ書きと並べて貼りだしてくれました。

 昨年、桃やリンゴを購入、枝葉付きのリンゴをいただいたS果樹園を訪ると、リンゴの授粉で忙しい時期 なのに雨天でお休み、ご夫妻と母上からいろいろなお話を伺うことが出来ました。
 サルスベリと間違うほど木肌が剥がれた柿の木が目立ち、桃は木肌が変らないと質問すると、柿は木の皮 を剥いでも果実が育つが、桃などは生育に影響するから洗浄にとどめるなど、除染法も違うとのことでした。 伊達はあんぽ柿生産量が日本一ですが、生柿を乾燥加工することにより放射性セシウムが濃縮され、昨年は 出荷停止とされました。今年こそは出荷しようと、放水でカッパが凍るような寒さのなか、お年寄りも総出 で懸命に除染作業が続けらたとのこと。昨年の柿や樹の皮、伐採した枝など放射性廃棄物の保管場所も苦労 の種だそうです。

 たとえ自分の作物が基準をクリアしても、もし同じ地区に基準オーバーが出れば、全て出荷停止、捨てる ざるを得ません。風評被害で収入も激減のなか、他の仕事もするなど、原発事故が福島の人々に与えている 苦しみを今更ながら知りました。
 果樹栽培の実際のお話も興味深く伺いました。リンゴの授粉には前年の開花前に摘み取った花粉を使いま す。花から葯だけを採集し、20〜25度の温度で1〜2日間加温して開葯させて花粉を採取、農協に1年間あず け冷凍保存、授粉直前に増量剤のピンク色の粉を混ぜて希釈し、ボンテンにまぶし、五つまとまって咲く真 ん中の花の中心につけます。その花が一番良い実になるからで、他の花は摘み取ります。
 花粉の品種は同じではだめで、出来るリンゴの実のおいしさは雌しべの方で決まり、授粉は単なる引き金 の役割という話にも驚きました。一方、桃の授粉はもっと大きな毛羽たきを使い、たくさんの実を成らせま すが、枝の下にぶら下がる実を残して、他は小さいうちに摘果します。この摘果した小さい実を甘く漬けて ゼリーに入れたお菓子が、花工房で販売されていて、賢いと思いました。
 今年、桃は実がある段階に成長したら測定し、基準値をクリアすれば生産を続けることになっていて、ク リアしたら知らせて下さるそうです。

水彩風景画の目次ヘ /  国内スケッチの目次ヘ /  風景画の目次ヘ /  Homeヘ