2017年 若松倫夫の植物画カレンダーの絵についてのコメント
 
表紙
センリコウ(千里香)
バラ科[Prunus lannesiana ‘Senriko’] 
 千里はなれても香ると名づけられた桜です。オオシマザクラやヤマザクラの系統の桜には芳香があり、それらの交配で生まれた特に香り高い里桜は「匂い桜」と呼ばれています。他に「御所匂い」「八重匂い」「駿河台匂い」など。都市農業公園で撮った写真から。
1月
シンビジウム
ラン科 [Orchidaceae Cymbidium]
 妻の友人Yさんが、育てている鉢から一本切ってご持参下さいました。蘭はこれまであまり描いていませんでした。白い花の彩色は、見つめて微かに見えてくる色を使うようにしています。
2月
キンカン
ミカン科[Nerium indicum]
 この時期、花屋さんで買う題材よりも、お庭にある植物の方が生き生きとした魅力があります。Iさんのお庭からご提供いただき、アトリエ教室で皆さんとご一緒に描きました。この実はよく食べますが、描くのは初めて、キンカンらしい実になったでしょうか。
3月
ジンチョウゲ
ジンチョウゲ科[Daphne odora]
 講習にいい題材の少ないこの時期、きれいに咲いて良い香。個展開催中のカフェ・グリーンテールの玄関に咲いていたこの花を、客待ち時間に描いてみました。
4月
コマツナギ
バラ科[Prunus serrulata ‘Komatsunagi’]
 白い花の場合は、花の形をハッキリさせるために背景に色を置くことをよくします。
 桜・駒繋はかつて京都の青蓮院にあり、親鸞がこの桜に馬を繋いだという故事にちなんでいます。小金井公園で撮った写真から。新宿御苑では太白とよんでいます。直径5.2cmと、花は大きいです。
5月
ガザニア
キク科[Gazania Gaertn]
 ホーム教室で描きました。日中咲いていたのに夜、閉じてしまい電球で照らし続けても開きません。もし教室でもダメなときの代役にニチニチソウも持参したところ、ガザニアはそれに気づいたのか土壇場で開花しました。
6月
アジサイ
ユキノシタ科[Hydrangea marcrophylla]
 まだ東伏見植物画教室をひらいていたころ、Iさんのお宅まで、車にバケツを積んで行きいただいてきて、その夜描きました。
7月
ムクゲ
アオイ科[Hibiscus syriacus]
 ホームの教室で、皆さんと一緒に描きました。団地の樹から前夕に採った花が、全てしぼみ、思えば一日花だから当然でした。急いで再度採り、持参しましたが、 連休でお出かけとか、暑さで欠席の方が多かったです。
8月
キョウチクトウ
キョウチクトウ科[Nerium indicum]
 アトリエ教室の朝、団地の緑化作業者の方にお断りして、7本切らせていただいておいたのを皆さんとご一緒に描きました。花の中心部の構造が意外に複雑で、皆さんと「ウーム、難しい」などと言いながら。
9月
ヒメリンゴ
バラ科[Malus×cerasifera]
 福島市の「四季の里」には、このリンゴを鈴なりに付ける木があり、管理作業の方が一枝下さったので宿のつきだて花工房で描いたのは13年前のこと、今回は落ちていた実と葉を拾いました。
10月
サツマイモ
サツマイモ科[Ipomoea batatas]
 アトリエ教室の題材当番のFさんが近くの畑で予約をして当日掘り出してもらってご持参、サツマイモは初めて描きました。葉も蔓も画面に入れたいので大きな画用紙が必要です。私の手持ちのF6スケッチブックの画用紙を使っていただきました。題材は皆さんに優先して分けたので、私の描く芋は残ったバラバラの芋、蔓との繋がり部分は目の前に無く、絵のなかでなんとか繋げて描きました。
11月
ススキ
イネ科[Miscanthus sinensis]
 アトリエ教室の題材に、Iさんがお庭の冬ミカンを葉付きでご提供下さり、一時退院中のご主人が、車で運んで下さいました。一緒にこのススキも抱えて来て下ったので。大きな紙を水貼りし翌日描きました。翌年新宿御苑で開いた教室展に展示した一番大きな絵で、意外にうけました。その夏に亡くなられたご主人との思い出の絵です。
12月
ハゼ
ウルシ科Toxicodendron succedaneum]
 みごとに紅葉したハゼを、団地で見つけました。江戸時代頃に琉球王国から持ち込まれ、それまで木蝋の主原料であったウルシの果実を駆逐したそうです。古い時代には 現在のヤマウルシやヤマハゼといった日本に自生するウルシ科の樹木のいくつかを、ハゼと称していたようで、俳句の世界では秋に美しく紅葉するハゼノキを櫨紅葉(はぜもみじ)とよび秋の季語としているとのことです。