第1回

お煎茶席の楽しみ方

昨今はいろいろな展示場やホテルのコーナーに茶席が設けられて おりますので、「是非どうぞ」と案内を受けたご経験のある方も いらっしゃると思います。 作法を知らないからなどと敬遠なさらず、時には主催者のお招きに 応じてみましょう。 造詣の深い主人ほど行きずりの人々をも困らせない心配りをなさる ものです。 初めての方でも、日本独自の美の世界で、おいしいお茶、美しいお菓子が お楽しみいただけます。 通常は30分ほどのものです。

hotel.gif 新宿京王プラサホテルロビーにて

初めての時は何も用意していなくて構いません。その旨を入席口で お伝えになれば、ご配慮いただけます。 前もってお席があることがわかっている場合は、できれば 茶席用の扇子、懐紙、楊枝等を茶道具店、茶店等で入手しておき、 あまりカジュアルでない格好をされて行くのがよいでしょう。 一度茶席においでいただいた方が、外出される時に このようなものをバッグに入れて行かれるようになられれば、 茶の道に親しんでいるものとして大変嬉しく思います。

では、茶席が全体としてどのように進んで行くのかをご説明 いたしましょう。

まず入席口で茶券を渡して、お席への案内を待ちます。 お知り合いなどから前もって茶券を頂いて招かれた場合以外にも、 一日の人数確認のために一度茶券を渡されることがあります。 またこの際に整理券のような番号札を渡されることがりますが、 これは一席の人数を確認するためのもので、席の順番とはあまり 関係がありません。

お席にお進み下さるよう声がかかりましたら、順次入席いたします。 上位三客位までが主人との会話の中心になりますので、 初心者はその旨を伝えて中間位のところへ座らせていただき、 まずは話を伺いましょう。

席が始まりますと上客と主人との間で茶席にふさわしい挨拶や話題が 交されます。 床の間の軸の書や絵が誰の作であり、どういう内容のもので あるか等は必ず話題となります。それによって、祝の席であるとか、 故人を偲ぶ席であるとか、春夏秋冬の季節を楽しむ席であるかなどが わかります。

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また床の花は、この日のために主人があれこれ苦心して山や野、 自庭で採取し、水揚げをして、最も美しい姿でお客に供する ものです。十分に心して拝見し、名前を知らないときは伺う などして、その色、形の良さを讃えます。 花よりも花入れが名品である場合もあります。その由来や窯元を お聞きすることも楽しいことです。

話しを伺っているうちに、菓子が運ばれて参りますので、 上客より順次、懐紙の上に頂いていきます。 追ってお茶も色香よく運ばれて参りますので、 上客がいつどのようにして茶菓を頂くかを拝見していて、 一手遅れて同じ様になさるとよろしいでしょう。 初心の方は細々した所作を気にすることはありません。 茶席全体の雰囲気や今日のこの席のための陰の努力に感じる心があれば、 その人の姿に自然と現われるものです。 なれた主人であればあるほど、そのような心は十分に受け止めて 下さるものです。 それが「和敬」の心です。

茶菓を頂くとその茶の産地やお詰めをした茶店や 茶銘が話題となります。菓子も同様です。 その席の主旨が茶銘や菓子の銘に表現されることがありますので、 これも茶席の楽しい趣向の一つです。

もちろん茶席で使われる道具類もそれぞれに名品であったり、 著名人の愛用品であったりいたしますので、陶器、磁器、漆器、 竹工芸品、金工芸品、名物裂など、美術や歴史の知識があると より楽しく話を伺えます。 臆することなく茶席の数を踏めば、日本の文化がより身近に 感じられるようになると思います。

さて、茶器が下げられ、席が終わりに近づきますと、 主人と上客との間でお礼と挨拶が交されます。 退席の前に銘座(お道具類)をもう一度近くで拝見させて頂くことも 出来ます。 退席は、順次、自由に行ないます。適宜、入席口で軽く一礼を して、退席いたしましょう。

段々と慣れて参りますと、茶席での所作、扇子の扱いも会得できますので、 今回は省略いたしました。なによりも緊張しすぎないことです。

ではまた、次回まで。

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田中 慎一郎(hamadaen@iris.or.jp)