カルネア/奴隷解放戦争 

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 昨年より始まったカルネアの奴隷解放戦争は、現在までは南部有利の展開で進んでいます。しかし、今夏にも北部では南部へ大侵攻を開始する予定があり、北部はこれで内戦に決着をつけるつもりでおります。


 こちらは表向きの図式としては非常に単純で、北部vs南部となるわけですが、はっきりと態度を決めていない西部の動向も非常に気にかかるところです。そしてカルネアの植民地フリスタスもまた、この内戦の先行きに大きな影響を与えかねない存在です。

 たとえば西部が南部と手を結んだ場合には、北部は両者に挟撃されることになります。そうなれば、南部側にばかり戦力を割くこともできず、侵攻は失敗に終わるかもしれません。あるいは、侵攻が開始されてから西部が突然北部を攻撃したとしたらどうなるでしょうか? いとも簡単に首都陥落という事態にもなりかねません。
 また、フリスタスの立場も重要です。北部の工業主義を支えるのは、フリスタスから産出される霊石の力にあります。もしフリスタスが南部に荷担することがあれば、北部の産業はまったくの幻となってしまい、その結束は一気に崩れさることになるでしょう。

 このような政治的な問題をシナリオの題材とすることもできます。たとえば、南部の使者がこれら2つの地域に接触するのを防いだり、あるいはその動向を調査するといった密偵シナリオが考えられるでしょう。また、政治家の駆け引きを主体としたシナリオや、議会のクーデターを演出することも可能です。実際に、カルネアでは過去にこのような政治的陰謀がありました。


 かつて逃亡奴隷虐殺事件というものが起こったわけですが、その理由というのは実は北部政府のプロパガンダにあったのです。北部は国際的な支持を得るために、南部の軍人にあえて奴隷たちを虐殺させ、西部やフリスタスが南部に荷担しづらい状況をつくりだしました。この計画を考え出したのがイライアス=ハルトという政治家です。彼はこうして世論を味方につけると同時に、地下鉄道の中枢で働いていたカルシェという青年を葬り去ることに成功しました。カルシェはかつての人権革命の英雄の孫であり、黒人たちの支持を集めていた人物です。しかし、イライアスは純粋すぎる彼の思想はいずれ政策の邪魔になると考え、密偵を派遣し逃亡の計画をあえて南部側に漏洩したのです。結果的に奴隷たちの殆どが死亡し、わずかに生き残ったのは、南部貴族の息子ユリアンとその恋仲であった赤人の少女ステラ、そして逃亡の途中に生まれたメリーアンという赤子だけでした。そしてこの3人の子供たちもまた、宣伝材料として利用されているのが現状です。

 このように、北部といえども決して清廉潔白な存在ではないということは、頭の中に入れておくべきでしょう。人道主義を装いなら政権の維持だけを目論む者もいれば、純粋に奴隷制度を廃止しようとする者など様々です。こういった主義思想の違いから北部の結束が崩壊することもあり得るわけです。たとえば、イライアスの行ったことが明るみに出たとすればどうなるでしょうか? そういったこともまた、シナリオのネタとして利用することができると思われます。


 しかし、この一連の事態において主役になるのは、なんといっても黒人や赤人といった奴隷たちの存在です。カルネア奴隷解放戦争というのは、人種問題を扱う上で最大の題材となるものです。この戦争の結果如何によっては、エルモア地方での黒人の立場は大きく変わることでしょう。
 戦争という題材を与えられてまず考えつくシナリオは、おそらく軍務に関わるものかもしれませんが、できれば人種問題を最大限に活かしたシナリオを考えるべきでしょう。
 たとえば、北部の黒人志願兵がイライアスのような人間によって使い捨てにされることも考えられますし、南軍の奴隷たちと戦う羽目になることだってあるわけです。あるいは南部侵攻が順調に進んだとして、もしかつての主人と出会ったらその志願兵は何を考えるでしょうか? 憎しみのあまり殺してしまうでしょうか? あるいは逆に南軍に所属していたとして、逃亡奴隷を殺すという任務を与えられたら、PCたちは何を考えるでしょうか? そういったシナリオを考えることができるのが、カルネア奴隷戦争という舞台なのです。


 また、戦争が終結した後のことを考えてみてもよいでしょう。少し前に革命が起こったエストルークの現状などを見れば自ずとわかることですが、戦争に駆り出されるのは主に働き盛りの男たちであり、そういった年代の人口が減少することは社会の空洞化を招きます。国家が弱体化すれば他国の干渉を招きかねませんし、産業を立て直すまでに他国にその地位をとってかわられる可能性もあります。特に現在のエルモア地方のように、各国で工業が急速に発展している時代においては、このような事態は致命傷になりかねません。こういった危機を回避するためにも、黒人や赤人といった存在は重要なのです。彼らの労働力が重要になれば、その地位も向上するかもしれません。しかし、それによって古くからいる労働者たちとの間に問題が生じることも考えられます。
 それから、南部の戦後処理もまた重要です。政治家たちは当然自らの利益についても思索を巡らせるでしょうし、地主たちから接収するであろう土地の扱いについてもまた、様々な問題を引き起こすことでしょう。それになんといっても、南部の人々に根づいた差別主義的な思考をぬぐい去るのが困難であることは、想像に難くありません。当然、自由を与えられた奴隷たちとの間に様々な軋轢が生じるでしょう。北部でさえ、人種間の溝が完全に埋められているわけではないのです。


 人種問題は非常にデリケートな題材なのでシナリオに組み込みづらいかもしれませんが、これらを避けて通れないのがエルモア地方という場所なのです。ぜひ、この問題を積極的に絡めたシナリオで遊んでみましょう。他のTRPGではあまり経験できないプレイを楽しむことができるかもしれません。


 


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