カイテイン帝国/南方政策 

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 カイテイン帝国は現在、ルワール大公国への侵攻を考えております。これはエルモア全域に影響をもたらす大事件であり、ことによっては全国家を巻き込む大戦へと発展しかねません。しかも、ルワール大公国は黄人の反乱という大きな問題を国内に抱えており、自国の戦力のみで大国カイテインの武力侵攻を止める力はありません。

 このような状況から歴史の展開がいくつか考えられるわけですが、それについて少し解説しておきましょう。


 カイテインの侵攻に対して、ルワールはまずロンデニア王国の援助を頼むことになるでしょう。しかし、ロンデニアの思惑としてはカイテインをアリアナ海に出さないことであり、ルワールが侵略されること自体については、非常に冷ややかな目で見ております。よって、自軍を派遣するのではなく、物資を援助する程度にとどまることでしょう。とはいえ、まったく武力の強化を行わないのではカイテインの思うつぼですから、それに対する対策も立てなければなりません。そのために利用されるのが、ルワールで活動している黄人解放連盟(イール)です。
 この組織には裏で法教会が援助を続けており、今では反乱軍の大半は法教会の信者です。そのため、もしイールがカイテインに攻撃されることがあれば、神聖同盟としては黙っているわけにはゆきません。また、もとよりカイテインはユークレイ王国、カスティルーン王国といった神聖同盟の国家とは不仲であり、参戦に躊躇う必要はありません。
 しかし、ユークレイはライヒスデールと戦闘状態にありますので、背後に対して隙をつくるわけにはゆきません。そのため、カイテインと直接戦闘を行うのはペトラーシャとなるでしょう。ペトラーシャはエルモア地方でも最強クラスの国家と考えられており、カイテインとしても単独で神聖同盟およびルワール大公国と戦い続けることは望みません。そこで、神聖同盟と対立しているライヒスデールおよびフレイディオン共和国の軍事同盟と手を結ぶことを考えるでしょう。これら軍事同盟は、ブルム内海での制海権問題でロンデニアと敵対関係にある国家であり、そのことからもカイテインとは利害が一致します。同盟締結を躊躇う必要はありません。

 さて、まとめてみますと……
 

ルワール大公国

 カイテイン

神聖同盟

VS

 ライヒスデール

ロンデニア

 フレイディオン


 

 といった図式が成り立つわけですが、実はこれは表向きの情勢だけを表すものでしかありません。そして、あくまでも戦力バランスとして都合がよい状況というだけに過ぎず、すんなりとこのような図式ができあがるわけでもないのです。実際にはルワール内部の対立、聖母教会の干渉、それからその他の国々の思惑といった要素が絡むことになります。


 他の国家が第一に考えることは、アリアナ海の交易問題です。これにはメルリィナ、ルクレイド、エリスファリア、そしてカーカバートなどの利権が関係します。
 メルリィナ、ルクレイドの両国はルワールと敵対的な国家です。ただし、アリアナ海にカイテインを進出させることには反対ですので、ルワールからの要請があれば小規模の軍隊を派遣する可能性はあります。というのは、ルワールとこれらの国家の王族は姻戚関係にあるためです。しかし、もしカイテインを退けることができ、その時にルワールが弱体化していれば、あわよくばルワールの一部割譲を……などという目論見もないわけではありません。表向きには、最悪でも不干渉の立場を取る程度でとどまるでしょうが、状況次第によっては機に乗じてルワールを乗っ取るぐらいの事態は起こりうるのです。
 次に隣国エリスファリアについてです。この国家も反カイテインの立場なのですが、法教会およびロンデニアとの関係が問題となります。もし、なんらかの利益があると思えば参戦することも考えられますが、ギリギリまで不干渉の姿勢を貫くかもしれません。同じく隣国のジグラットも、しばらくはそのまま見守る意向でしょう。
 カーカバートは決して表だって動くことはしません。しかし、立場としては反カイテインです。もしこの都市が何か行動するとすれば、ルワール国内の災いの芽を秘密裏に摘み取ることでしょう。どのような手段をこうじるかは状況次第といったところでしょうが、彼らが暗殺ギルドを抱えているということを忘れてはなりません。カーカバートという都市は、利益のためには手段を選ぶことをしないのです。

 しかし、最も問題となるのはルワール政府と神聖同盟の関係でしょう。ルワール政府は黄人解放連盟と敵対関係にあり、そして神聖同盟は黄人解放連盟を支援する立場にあります。そして何より、ルワールは聖母教会を国教とする国なのです。そのため現在の状況のままでは、ルワールは最も頼りになるであろう神聖同盟に助けを求めることはしないはずです。もし、この一連の事態を利用してシナリオをつくるとすれば、これに絡んだものになるでしょう。


 さて、ルワールと神聖同盟との距離を近づけるためには、現行の政府のままでは不都合です。だとすれば、他国はどう動くでしょうか? 例えば暗殺者ギルドを抱えるカーカバートは何を考えるでしょう? ルワール国内の貴族たちは?
 ルワールは今、対外強硬派と平和外交派の2つに大きく割れています。対外強硬派は他国の干渉を極限まで排除しようと考えています。これはメルリィナやルクレイドの思惑のところでも書いたように、自国の領土を守るという理由があってのことです。しかし、ルワールにはカイテインに対抗するだけの力はありません。だとしたらどうするのか? 他国に借りをつくらずに戦争に引き込むことができるのならば、それは非常に都合のよいことですが、黙って見ていてもそのような状況が訪れることはありません。それではどのような策を打てばよいのでしょうか。例えば、カイテインがルワールに侵攻する際に、もしペトラーシャの国境を侵害していたらどうなるでしょう? もちろん、本当にカイテイン軍が踏み込む必要はありません。
 平和外交派にしても同様です。いくら平和外交を唱えてみたところで、いざ攻められた時に十分な戦力がなければ、カイテインに蹂躙されるだけです。ですから、できるだけ自分の腹を痛めないようにしながら、他国をうまく味方に引き入れる必要があります。そのために障害となるのは誰かというと、対外強行派になるわけです。さて、もし平和外交派が政権を取ることも含めてこの状況を打開しようと考えるなら、どのような手段をとりうるでしょうか? さらには、この一党とカーカバートが手を結んだら? カーカバートが仲裁に入ることも考えられますが、秘密裏に過激な手段をとる場合もあるでしょう。対外強硬派の結束が乱れればどうなるか? あるいは中心人物が死亡したとすれば?
 さらには、ルワール国内には黄人解放連盟という存在があります。彼らに対して戦力を割くのは避けたい。ならばどうするのか? 内部撹乱による一部足止め、あるいは和解といったことが考えられますが、そこにもまたカーカバートが介入するチャンスがあります。

 そうそう、シークレットパートまで読んだ方は、さらに大きな組織が1つ、事態に介入することをお忘れなく……


 このように、カイテインの侵攻については非常に複雑な状況が考えられます。ですが、ルワール国内の勢力図式さえ決めてしまえば、自ずと他の立場も決まってくることでしょう。あとはキャラクターの立場をどこに置くかによって、キャンペーンシナリオを構築することが可能かと思われます。民衆、貴族、反乱組織、あるいは密偵となってもいいかもしれませんね。
 なお、これらの事態に関してシナリオを作製する場合、ポーランドの歴史が非常に参考になることでしょう。他のTRPGで歴史に絡んだシナリオを遊ぶ場合にも、参考になるのではないかと思います。


 


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