リルカ:「それでは、アイリストールについて……」
アイリストールってのはロンデニアという島国の首都で、エルモア地方でも指折りの大きさを誇る大都市です。とはいっても、ただ大きいだけって感じもしますけどね。あ、ロンデニアについてはこっちの説明を見て下さい。アイリストールっていう名前はアヤメの品種の高アヤメが語源で、街にはアヤメ広場なんてのもあります。その一角にはアヤメがたくさん植えられていて、夏が近づいた頃にはアヤメ祭なんかも開かれます。
昔は城塞都市だったんですけど、今はもう城壁はなくなっています。でも、その名残で建物がごちゃごちゃしてて歩きにくいし、都会っていうと聞こえはいいけど、よくありがちな貧富の差ってやつを見せつけられるような、そんな歪んだところでもあります。この街の特徴は霧と犯罪。エルザ運河ってやつをつくってから、なぜか霧が多くなって、「霧とアヤメが咲く街」なんて呼び方もあるくらいです。それにともなって犯罪も急増しちゃって、今ではエルモアでも有数の犯罪多発都市……とはいっても、クラッサスとかアスペリオスなんかに比べたら、まだ全然ましな方なんですけどね。あと、霧死人っていうアンデッドなんかもよく現れるので、そのつもりで歩いて下さいね。それから、悪魔もいっぱいいるみたいで、教会の人はとにかく忙しいみたいです。悪魔みたいな人はもっといるので、警察の方が多忙らしいですけど。
さて、アイリストールには七つの顔があるっていいます。
1つめは中心部の環状道路の中の平和な街。あとで地図を見てもらえばよくわかるんですけど、街の真ん中あたりをぐるっと囲んで、環状の道路が敷かれてます。これって昔の城壁の跡なんですけど、ロンデニアって海の国で、しかもここしばらく海軍は負けてなくって、しかも王朝時代も終わって内乱も起こらなくなったから、もう城壁なんて必要ないってことで、とっぱらって道路にしちゃったわけです。まあ、大量輸送の時代だし、自動車なんて新しい交通手段も普及しつつありますからね。この中だけで都市の行政はほとんど十分で、まあまあ安全な地区です。あくまでも危険な場所と比較しての話ですけど。
2つめは環状道路の外。いわゆる庶民の住む場所で、特に南側はごちゃごちゃしてます。ほんと、計画が甘いんですよね。今も人口が増えるにつれて、都市はどんどん南に伸びていってます。
3つめは暗黒街。北西地区にあるギャングが支配する街で、麻薬の取り引きとかがあって、けっこうやばい場所です。まあ、とはいっても大通りの辺りは比較的安全ですけど。でも、警察官でもおいそれと手を出せるもんじゃないわけで、裏通りには不用意に立ち入らない方が無難ですね。
4つめは地下道。アイリストールは早くから下水道が整備された都市なんですけど、けっこう無計画に建て増ししてったので、もうごちゃごちゃして何がなんだかわからない状態になってます。しかも、勝手に地下墓地とつなげちゃったりした人なんてのもいるもんだから、どこに出るものやらさっぱりわかりません。で、この地下道を利用している組織(とはいっても、横の繋がりなんですけど)があって、地下ネットワークって呼ばれてます。都市浮浪児とか乞食とか、あるいは逃がし屋なんかで構成されていて、情報の交換とか、その他さまざまなことをしているみたいです。
5つめは旧市街。昔の首都で、アイリストールのすぐ北西に位置してます。エルザ運河を通じて簡単に行き来できる場所で、けっこう大きい街です。最近は、こっちの方でも人口が増えてるみたいです。
6つめは遺跡の街。市の真北、旧市街の東に位置する大きな遺跡で、建国前からあったらしいです。今では観光名所となっています。まあ、古い建物が並んでるだけの、つまらない場所なんですけどね。
7つめは夜の街。昼間の賑わいとはうってかわって街は静けさに包まれ、霧と闇に支配されます。そして悪魔や犯罪者が現れて、犠牲者を求めて闇の中をさまよう……これがアイリストールの本当の顔かもしれません。有名な仮面紳士事件も、ここアイリストールで起こったものですしね。
ちなみに7つ知ってしまったからといって、べつに呪われる心配はありませんので……
リルカ:「まあ、概要はこんなとこ。あとはそれぞれの街の説明を聞いて下さい」
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