○自然
ミースカント川流域に位置する国で、ルワール、カイテイン、ジグラットと接しています。ジグラットとの国境にはサイルハッド山脈があり、そこから北に向けてゆるやかに傾斜しています。大陸性の気候で、夏期は高温で冬期は寒冷です。北部は冷帯で、残りの大部分は温帯に属します。東部の海岸では漁業が盛んで、貝の養殖も行なわれています。
○変異
『呪震』と呼ばれる地震現象が起こります。この呪震が一般的な地震と異なるのは、非常に局地的なものであって、その範囲は地割れでくっきりと切り取られ、そこから1歩外に出ただけでも何の影響も受けないということです。都市は比較的、呪震の起こらない地域につくられていますが、過去に二度起こった大呪震は死傷者合わせて2万人を超えるほどの大規模なものでした。この経験から、エリスファリアの建物はほとんど階が低くつくられています。また、呪震の影響で道路状況も悪く、自動車などの新しい交通機関は普及しにくくなっており、大規模な輪送は主に海や河川を利用することになります。同様に、軍も戦車を利用することができず、いまだに中心戦力となるのは馬と騎士です。
もう1つの大きな変異は『立ち枯れの庭』というものです。これは植物が原因もなく急速に枯死するという現象です。かつてこれが広範囲で起こった時には、たくさん餓死者が出ることとなりました。国内の全域で起こるものですが、多くは数m四方の小さな範囲に限られます。
○略史
聖暦224年に、現在のテンプルナイト(宮廷騎士)であるファリア騎士団と、旧エクセリール国の貴族により建国された国です。
この国はログリア内海という穏やかな海を通じての貿易を主軸として、国内経済を発展させてきました。しかし聖暦495年に、ログリア内海の交易問題に関してラチェン人との間で諍いが起こり、ログリア通商戦役と呼ばれる紛争に発展することになりました。エリスファリアはこの戦いで一度は勝利をおさめます。しかし、この戦役で一族の大多数を失ったラグというラチェン人がアリアナ海で海賊行為を始め、そして大量の武器と傭兵を引き連れて復讐戦を行いました。これが聖暦510年のことです。ラグは一時は3つの都市を陥落させるほどの奮闘ぶりでしたが、不慣れな陸地での戦いで苦戦し、ついには破れることとなりました。しかし、ラグの残した遺恨は新たなる問題を引き起こしたのです。
聖暦534年、ラグによって滅ぼされた一族の領土を巡って、貴族同士の争いが表面化することとなりました。こうして勃発した内戦が『貴族戦争』と呼ばれるものです。この争いは約30年ほど続き、法教会の介入でようやく決着がつくことになりました。
この後、法教会主導のもとで国内の建て直しがはかられ、かつての平穏を取り戻したかのように見えました。しかし、聖暦678年のことですが、今から4代前の国王『レイシア4世』が結婚間題で法教会より破門されるという事件が起こりました。これはエルモア地方の貴族ではよく行われている二重結婚に関して取りざたされた問題で、法教会はこの不貞とされる行為を激しく非難したのです。レイシア4世はこれに反発し、『エリスファリア国教会』を設立して自らを教皇としました。それ以来、この国では王が教主である教皇を兼任することとなりました。レイシア4世はこの直後に国内の法教会の財産を没収し、地方行政の有力者である地主階級や富裕農民にこれを分け与えたのです。この財産は国内の改革に向けられ、こうして貴族主義体制が強化されることになりました。
○制度
絶対主義的な政治を行っていましたが、現在では地方の力、特に議会を通じて中央集権体制に食い込んできた富裕農民階扱の影響が大きくなり、議会の大多数を占めるようになりました。これらの中には金で貴族位を買った者もいます。これに対して血統による地主階級には、建国に携わった騎士団と純粋貴族がいます。騎士団には赤、青、黄、白、黒、銀、金、緑、紫の騎士がおり、それぞれの団長は『9人騎士』と称されます。9人騎士と候爵以上の純粋貴族が国土を大きく分割し、9人騎士の領地はさらに騎士たちへ、公爵、候爵の領地は純粋貴族の中の爵位が下の者へと分け与えられます。奴隷制度は許可されており、肉体労働者として工業化の推進に従事させられたり、それぞれの荘園で働かされたりしています。
・貴族:支配階級。非常に強い権力を持っています。
・騎士:領主としての権限を持ちます。
9人騎士が騎士団長を務め、下位の騎士は軍人として活動します。
・軍隊:国王が統括しています。
・司法:国王の名の下に裁判が行われます。
・警察:行政の管轄下に置かれています。
○現況
『国王ラヴィアン1世』と『女王シーリアネス』の名のもとに統治されています。中央の結束はきわめて強固で、今のところはうまく地方の力を抑えています。特に女王が傑出した人物で、早くから霊子機関を搭載した大型船で海上貿易を行ない、昨年には『新大陸エスティリオ』に向けて船を送り出しています。しかし、その利権問題に絡んで、ロンデニアを相手に小競り合い程度ですが戦闘を行なうことが多くなっています。
○国家関係
・友好国:なし
・敵対国:ロンデニア(海上の通商問題)、ジグラット
○首都:フィアンリー
この国では例外的に呪震が一度も起こったことがなく、中心部には高い建物もつくられています。
○民族
・マイリール人
金髪で碧眼の白人です。・アデン人(黒人〉
黒髪に黒い瞳の黒人です。
○宗教
エリスファリア国教会を信奉しています。国教徒以外の者は公務につくことは許されていません。
○要所
・ミースカント川
ヴァンペルト山脈から発し、ログリア内海まで続く長河川です。・リッシュ=スプリングス
ノイエブルクとフェルダインの中間あたりに位置する街で、温泉が出る保養地として賑わっています。中には変異の影響を受けたものもあります。・「蜘蛛の巣」森
オーランドの南西部に広がる森林で、複雑に絡み合った木々の梢が森の上空を覆っていることから、このように呼ばれています。この森には有用な薬草がたくさん生えています。
○産物
牛、酪農産品、羊毛、小麦、とうもろこし、豆類、ブロン染め
○文化・生活
エリスファリアの都市のほとんどでは建物が低くつくられているため、つながった屋根の上を通路として使う者が現れました。これが通称ルーフランナーズと呼ばれる少年ギャングたちで、彼らはその身の軽さをいかして屋根を逃走経路に利用しています。中でもオークハイムのハウィン兄弟がひきいる『ハヤブサの尾』が有名で、彼らは屋根の上で盗品を投げ合って、大人たちの追跡を巧みにくらまします。
この国では、貴族や富豪の間でツリーアートという芸術が長く流行しています。これは庭木をドラゴンや建物などの形に刈り取って、中にランプをつるす贅沢なもので、高価な家具や洋服のような一種のステータスです。というのは、この国では立ち枯れの庭現象が起こるため、こういったいつ無駄になるかわからないことに多額の金銭をかけられるのは、逆に裕福であることの証明になるのです。
○食事
酪農が盛んな国であり、料理にも牛乳やバターがふんだんに使用されます。主食は乳と小麦を混ぜてつくるミルクパンで、それにたっぷりのバターをつけたりチーズをはさんで食べます。家庭料理としてホワイトシチューやグラタンがよくつくられますし、堅くなったパンはミルクスープにつけて食べたりします。また、お茶にもバターと塩を入れる習慣があり、ティーケーキといわれる一口大のケーキが添えられます。もちろんこのケーキにもふんだんにバターや牛乳が使われています。
酒にも乳練酒というミルクを混ぜて発酵させたものがあります。これはやや粘性のある甘い酒で、疲労回復に効果があるといわれています。
○組織・集団
・「破滅の紫」大隊
ロンデニア海軍と並ぶ屈強な海兵隊で、紫の騎士が統括しています。・ルーフランナーズ
屋根の上を逃走経路として使う少年ギャングの総称です。・ハイランダー
サイルハッド山脈に住む人々で、縄張り意識が強い閉鎖的な社会を形成しています。狩猟を主として生活を送っています。
○人物
・国王ラヴィアン1世 35歳 男
話術に優れた国王で、立ち回りのうまさは天才的といえるでしょう。・女王シーリアネス 30歳 女
先を見通す能力のある聡明な女性で、うまく国王を補佐しています。教会の反対意見を押し切ってエスティリオへの入植を決定したのもこの女王です。・ルーカス=ハウィン 14歳 男
ルーフランナーズの中でも最大のグループ、「ハヤブサの尾」のリーダーです。勝ち気でひねくれた考え方をします。・リュード=ハウィン 12歳 男
ルーカスの弟で、非常に知恵のまわる少年です。人を欺くことが大好きで、特に警察官を引っかけては笑いものにしています。・屋根の上のリュナン 12歳 男
ハヤブサの尾と対立している煙突掃除の少年です。明るくて前向きな性格をしており、それがハウィン兄弟の気に障るようです。音楽が好きで、よく屋根の上にのぼってハーモニカを吹いている姿を見ることができます。・ジェレミー 27歳 女
もとは国王の鑑賞奴隷でしたが、現在はオーランドの郊外の別荘で暮らしています。国王との間に子供が1人います。・混血王子ヘンドリック 9歳 男
国王の隠し子で、赤人の鑑賞奴隷ジェレミーと間にできた子供です。国内で乱れが起こるとすればこの子が唯一の原因となるでしょうが、彼の存在を知る者は国王とジェレミー、そしてその世話係の者たちだけです。・ルン=ルーフ=ルクス 32歳 男
ころころした小男で愛嬌のある顔立ちで、おしゃべり狸というあだ名があります。その小柄さを活かして、普通は子供しかできない煙突掃除夫をしています。キャリアから非常に信頼はあるのですが、煙突掃除夫の例にもれず肺を患っています。
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