○自然
ブルム内海、アリアナ海の双方に接する国です。南北で気候は異なり、北部はエストルークと同様に夏に涼しく冬は温和で、南部はアリアナ海型気候になります。ソファイアとの国境にナイキストア山脈が走るほかは平野が広がっており、土質のよさから小麦や大麦の穀倉地帯として知られています。近年は都市人口の増加に伴う食料の需要から、南部の山脈近くで農耕地が拡大されつつあります。
○変異
変種現象の中でも特異な、『時限変異』と呼ばれるものがあります。この変異は不安定な変種現象で、時間がたつにつれ次々と異なる種族に変化するというものです。時限変異と呼ばれるのは、この変異が一定期間ごとに起こるためで、周期は個体によって異なりますが、変化するまでの時間は常に正確です。変異自体は系銃だったものではなく、人間が竜族に変わったかと思えば、次には植物になってしまうこともあります。もちろんこれは、絶対変異地帯に近い東南地方で起こります。
他に知られているのは、『無限の道』と呼ばれる現象です。南西部でよく起こるのですが、まれに空間が歪むことがあり、道を歩いていると違う場所に瞬間移動しているのです。ほとんどの場合は、そう遠くない場所に飛ばされるだけで済むのですが、交通の発展という面では大きな妨げとなっています。
○略史
前聖暦152年に、他国の侵攻を受けたセティア人の一部が、生まれ故郷であるセルセティアを離れて新たなる地を目指しました。そして聖母教会の支援を受け、この地に住み着くことになったのです。しかし、ここはベルメック王国(現ロンデニア)に支配されていた地域であり、土地を追われたセティア人たちは南部の辺境で細々と暮らすようになりました。聖母教会の助力でどうにか生活を維持していたのですが、この時まではマイエル教への信仰が続いていました。しかし後に、彼らを改宗させる契機となる一大事件が起こります。それが『ユナスの降臨』です。このことがあって、一族はユノス(ユナスに導かれた者の意)と民族名を改めることとなりました。
この後、ベルメック王家の血が途絶え、ソファイアとの間に起こった55年戦役の後にロンデニアが誕生することとなったのですが、これで弱体化した本国に対してユノス民族は反乱を起こし、現ユノスの土地を奪い取ることに成功しました。そして国名をユノスとし、国教は聖母教会に制定されました。
ユノスの住民は近隣の国とは文化的に相容れないことから、幾度も戦乱に見舞われてきました。特にロンデニアとの不和は続き、制海権問題で何度も戦闘を繰り返しています。そのため軍事に重点が置かれた政治が長く続き、ついに3年前の聖暦786年には、突出した軍部の一将校がクーデターを起こして、政権を奪取してしまいました。しかしクーデター後の混乱と、それに続くロンデニアとのポラス海峡通航問題による戦争の隙をつかれ、領土エストルークの独立を許すことになります。これによって国民の信用を失い、そして国内の意見を武力で押さえつけようとしたことから民衆の蜂起をまねいて、この軍事政権は例を見ないほどの短期間で崩壊することになりました。この後、穏健派が支持を受けることになり、現在は与党として政権を握っています。
○制度
近代的な政党政治が行なわれています。国王は象徴として存在し、政治に関する権利は一切もちません。
・貴族:名誉階級。主に政治家として活動しています。
・騎士:存在しません。
・軍隊:行政に属する近代的な組織構成です。
・司法:独立した司法組織によって裁判が行われます。
・警察:行政の管轄下に置かれています。
○現況
聖暦789年の現在は、動乱期にある国際状況に対して国民の意識が再び軍事に傾き、軍事推進主義の急進派が支持を増やしています。これに対して、穏健派のユノス人民党を第一党として4党が連立内閣をつくり、急進派の台頭を阻止しているのが現状です。
こうした中、過去の民衆蜂起の際に逃亡した将校たちが、再び軍事クーデターを企てているとの噂があります。首都の郊外には、『クラリール監獄』と呼ばれる軍事政権時代の恐怖の象徴ともいえる建物があります。現在、ここには多くの将校たちが投獄されていますが、もしこれが解放されて、地方に強い影響力をもつ旧将校たちが短時間で組織をまとめることができたとしたら、革命の成功は時間の問題となるでしょう。このため、最近ではクラリール監獄の周辺は警戒が厳重で、軍によって完全に封鎖されてしまっています。
○国家関係
・友好国:セルセティア
・敵対国:エストルーク、ロンデニア(制海権問題)
○首都:サイファ
交易の中心地として発展した大都市で、郊外にはクラリール監獄があります。軍事クーデターとそれに続く民衆蜂起の影響がまだ残っており、現在は雑然とした雰囲気の中に置かれています。
○民族
・セティア人
やや浅黒い肌をもち、瞳や髪は茶系統の白人です。
目が吊り上がっている者が多いようです。
○宗教
聖母教会を国教として信奉しており、メイヨには『水の聖ラサ』教会があります。ユナスが降臨した地であることから国民の信仰は非常に篤く、特に8月の『降臨祭』は国をあげて盛大にこれを祝います。
なお、セルセティアからの移住者たちの国なので、もともとはマイエル教を信奉しており、今でも南部の一部地域ではこれを崇める者が残っています。
○要所
・シェア地方
ユナスが降臨した土地であり、聖母教会の聖地の1つです。サイファ、ラシェンタ、カドバのほぼ中間に位置する農村地帯です。・クラリール監獄
軍事クーデターを行った多くの将校たちが投獄されている場所です。周囲を湖に囲まれた島で、国内で最も厳重な監獄です。・ナイキストア山脈
ソファイアとの国境線となっている山脈で、ふもとでは放牧が行われています。鉄や銀などの鉱山資源が豊富です。・アルトリディアム
ナイキストア山脈の最高峰です。その山頂は常に雲に隠れており、姿を見せることは決してありません。
○産物
小麦、大麦、エンドウ豆、羊、石炭、鉄、銀
○文化・生活
軍事政権時代の治世は国民の生活にも実直さを求め、贅沢は敵という観念を植えつけるものでした。政権そのものは短期間で倒れたため、こういった風潮が人民に根付くことはありませんでしたが、彼らは人民に思わぬものを残しました。それが自民族文化の復興です。
貿易時代になって他国の文化が入ってくるにつれ、ユノス民族独自の文化は少しずつ廃れてゆくようになりました。もとより住む土地が異なれば文化も変わってくるわけで、細かな生活習慣などはセルセティアにいた頃とはだいぶ違ったものになっています。しかし、軍事政権は自民族意識を高めて国民の意思をまとめあげようとしたため、自分たちに都合のいい民族の習慣などを復活させました。この顕著なものが武道の復興で、廃れかけていた昔ながらの戦闘術を教える町道場なども、最近では見かけるようになりました。これらの武道は精神性を伴うもので、親たちは喜んで子供を道場に通わせています。
こうして見直されるようになった自民族文化には、マイエル教の托鉢巡礼者たちが用いていた巡礼鈴が、後に細工を施した工芸品として広まることとなった『飾り鈴』や、移民当時の格好をして生の喜びを祝う『古祭』などといったものがあります。
逆に、軍事政権によって禁止されたものが大衆浴場です。この国では大衆浴場は民衆の交流には欠かせないものであり、これが反体制組織の温床となることを恐れた旧政府は、建物の取り壊しまで行ったこともありました。なお、ユノスの大衆浴場には『歌い子』と呼ばれる少年がいて、歌ったり背中を流したりといったサービスをしてくれます。また、大道芸人なども大衆浴場と同じ理由で広場や大通りから追いやられ、一時は職を失いかけたのですが、軍事政権が打倒された今は活動を再開しています。
○食事
ユノスの人々は魚介類をよく食べます。しかも、ナマコやウミウシといった、普通ではあまり食べないような食材を上手に調理します。刻み野菜とヒゲナマコのクリームコロッケやアンコウのたらこソースがけ、あるいはクロヒトデの海藻の和え物といった、非常に風変わりな料理もあります。
調味料として特徴的なものに、魚の身と内臓を混ぜ合わせてペースト状にし、塩漬けにして発酵させたボーエル・ソースという、ちょっと癖のあるソースがあります。また、この国はカキ貝がよくとれることで知られており、オイスターソースがよく使われます。
○組織・集団
・黒蜥蜴
数ある反政府組織の中でも最も過激な集団で、穏健派の現支配者層を批判し、強力な軍事力と規律を求めています。・パルデスの宝剣
軍事クーデターの際に最大の功績を残した陸軍大隊です。しかし、後に軍事政権の上層部と意見が合わなくなり、民衆蜂起の際に切り捨てられるような形で利用されました。生き残ったのはわずか7名のみで、彼らは旧軍事政権の将校たちに深い恨みを抱いています。もちろん、現政権からも追われる身であるため、スラムに隠れ住みながら復讐の機会をうかがっています。
○人物
・国王レノアール 38歳 男
かつては軍事政権の傀儡として利用された人物で、再びクーデターの噂が持ち上がっている現在は、身辺の警護が厳重です。非常に気弱な性格で、彼のことをよく知る者は、まるで人形のようだと口を揃えて言います。・クリューニル 52歳 男
かつては陸軍少将として、軍事クーデターの成功に多大なる影響を及ぼした人物です。手段を選ばないタイプであり、現在もあらゆる手段を駆使して、政権の再奪取を試みようとしています。・シェアの老女(故)
ユナスの降臨の際に託言を受けた老女で、聖遺骸として教会にまつられています。・ヴァリ 34歳 男
千の腕のヴァリと呼ばれるテロリストで、爆発物の取り扱いに関しては並ぶ者はいないといわれています。旧軍事政権を打倒する際に腕を振るった人物ですが、現在は行方をくらましています。・ロナウィ 2歳 女
無垢なる災厄と囁かれている彼女は、自らに愛を注ぐ者に対して常に不幸を呼びこみます。まず、彼女を生んだ際に母親は死亡し、それまで順調だった父親の事業は急に不良債権を抱えることになります。結局、父親が首を吊った後は叔父夫婦に引き取られるのですが、そこでも火事が起こり、ロナウィを除く全員が死亡することになりました。その後、親戚のもとをたらい回しにされることになりますが、その全てに死や不幸が絡んでいます。現在は教会に引き取られていますが、ここでも何か起こるのではと囁かれています。・シリオス=クレアスティー 27歳 男
パルデスの宝剣の生き残りの1人で、大隊長だった人物の弟でもあります。今までにも何度か逃亡将校の暗殺に成功しており、その成功率は100%という狙撃の名手です。・静姫クローディア 12歳 女
ある地方領主の一人娘で、馬車の事故で喉をやられて声を出せなくなってしまったため、静姫と呼ばれています。クリューニルと父親との同盟の証として、クーデターが成功したあかつきには、クリューニルのもとへ嫁ぐことが決まっています。
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