ユナスフィール教国


 


○自然

 フォリル半島の突端に存在し、全土がアリアナ海型の穏やかな気候です。温帯に属しており、非常に過ごしやすい環境にあります。山地は少なく、国土の大半は平野になっています。アリア=ステアの周辺は高台となっていて、その周囲には農業地帯が開けています。


○変異

 聖母教会の力により変異はほぼ完全に掃討されています。カーカバートと並んで、変異の起こらない平和な土地です。


○略史

 聖母アリアの最後の娘ユナスが死亡した土地で、最も古い歴史をもつ国でもあります。その成立は前聖暦846年まで遡り、1600年以上の歴史を持ちます。現在では人口5万程度の都市と、その周辺に位置する町や村を合わせて、ユナスフィール教国として存在しています。
 多くの国が聖母教会を国教としているため、他国から攻め入られたことは一切ありません。この国に手を出すことはエルモア中の聖母教徒を敵に回すことになるため、ラガン帝国のような他の宗教国家でさえ兵を出すことはなかったのです。そのため、現在でもアリア=ステアは建国以来の街並みを保ち続けています。


○制度

 『大主教』が国王を兼ねており、立法、行政、司法の全権を掌握しております。軍隊も神官戦士と彼らが束ねる志願兵で構成されています。
 都市の収入は国内からの税と、各国の教会に集められた寄進の2つの財源があります。こういった財産は各国の貧しい人々の救済などに使われるので、都市の人々で寄進を躊躇する者はおりません。

・貴族:存在しません。
・騎士:存在しません。
・軍隊:神官戦士が軍人を兼ねています。
・司法:聖母教会の管轄下に置かれています。
・警察:聖母教会の管轄下に置かれています。


○現況

 産業資本家の台頭や政教分離の思想が広まってきているため、近年では聖母教会の力は全域で弱まってきています。中でも霊子機関やその他の機械の利用を教会では認めていないため、人々の堕落が始まり新たなる不幸が生み出される状況を、深刻な間題として受けとめています。
 この国では機械を利用しないため、非常に古いままの生活が営まれています。しかし、不便な部分は術法で補われますし、人々は苦難さえも試練として甘んじて受け入れるため、住民の不満はないようです。


○国家関係

・友好国:聖母教会を国教とする国家全般
・敵対国:敵対というわけではないが、他宗教を信奉する国家とはあまり国交がない


○首都:アリア=ステア

 術法師によって明かりが灯されるこの都市は、夜のない街とも呼ばれます。高台に位置しよく目立つため、この付近では夜でも迷う者はいません。


○民族

 様々な人種、民族が入り混じっています。これは聖母教会が人種差別をしていないという証明なのですが、他国では神書の記述を理由に公然と差別を行っています。


○宗教

 聖母教会の総本山であり、首都アリア=ステアには『聖母アリア』教会が存在します。民衆は厳格な聖母教徒であり、非常に信心深い人たちです。


○要所

・リンリック
 ロウソクノキ(蝋燭の木)というロウを出す樹の産地として知られる街で、飾り蝋燭を特産物としています。この街では秋に蝋燭祭という祭が開かれ、様々な形の蝋燭をつくって軒下に吊す風習があります。大きい物は何mもの大きさになり、1週間続く祭の間中、消えることなく街を照らし続けます。

・リリス=レア
 真珠貝の養殖で知られる街で、他国からも大勢の業者が買い付けに訪れます。

・ファリアメイル
 歴史ある漁港で、エルモア地方でも最古の街の1つです。人々は昔ながらの素朴な生活を営んでおり、贅沢を何よりも嫌います。


○産物

 トウモロコシ、真珠貝、ひなたカボチャ


○文化・生活

 アリア=ステアの中心には聖母アリア教会があり、都市周辺に住む人々はまずこの鐘の音で目を覚まします。そして祈りの歌が響きわたり、信者たちは教会へ祈りを捧げます。この祈りは食事の前と朝昼夜に捧げられます。
 都市は一年を通じて巡礼者で賑わっています。巡礼者は修道院や巡礼宿という施設を中継宿として、聖母アリア教会を目指します。都市では使徒をモチーフとしたタペストリーやペンダント、陶器などが売られており、貴重な観光収入となっています。特に聖母アリアの誕生祭である6月13日、そしてユナスの降臨祭8月1日には、各国から巡礼者が訪れ、都市の人口は何倍にも膨らみます。


○食事

 穀物を主体とした、非常に質素な食生活を送っています。タンパク源となるのは主に魚介類で、肉食はあまり好まれないようです。
 主食はトルテポルカットという薄焼きパンで、原料はトウモロコシです。これは鉄板の型にトウモロコシとミルクを混ぜたものを挟み、少し焦げ目がつくくらいに焼いたもので、これで野菜を巻いたりスープにつけて食べたりします。
 この国の特産物として知られるのがひなたカボチャというもので、普通のカボチャに比べて甘みが少なく煮くずれもしにくいので、様々な料理に使われます。揚げ物にしたり、炒めて魚に添えて出されたりすることが多いようです。


○組織・集団

・13星座の騎士
 聖母教会の秘蔵の神官戦士たちで、その強さは並ぶ者がないとさえ言われています。各国を放浪し、変異体の掃討にその力を振るっています。

・ロストビレッジ
 北部の山中に住む一族で、自らの存在をひた隠しにしています。かつては密偵の一族だったのではないかとの噂もありますが、正体どころか出会った人もほとんどおりません。ただ、この村の近くに踏み込んだ者には警告を発し、それを無視した者には死を与えるという不穏な噂だけが伝わっています。


○人物

・大主教クリム=クァゾン   64歳  男
 歴代の大主教の中でも随一の変わり者として知られています。時折、身分を隠して市街に赴き、子供たちと遊んだりしているようです。

・聖賢者アスフィル   43歳  男
 主教の1人であり、大主教を補佐しています。その知識の深さではエルモアでも指折りの人物で、かつて神大学を主席で卒業したという経歴の持ち主です。

・セラ=レッテンドルン   33歳  男
 3度の食事よりも噂話が好きという宿屋のマスターで、その騒々しさからミスター・フィンチと呼ばれています。アリア=ステアのゴシップが知りたければ、まず彼を訪ねてみることです。しかし、本当に知りたいことの何倍もの無駄話につきあわされることになるでしょう。


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