○単位系
エルモア地方での単位系は、我々の現実世界のものと殆ど変わりません。呼び名は違いますが、実際の長さや重さといったものは同じ基準でつくられています。また、暦についても1年が360日で1か月が30日という以外は、現実世界と同様です。
○霊子(エーテル)
霊子(エーテル)はエネルギー物質の1つとして考えられています。聖暦789年のエルモア地方では、石炭や石油のような化石エネルギーだけではなく、霊子エネルギーを含む『霊子物質』(エーテルマター)も用いられています。霊子物質は微かな青い光を放つ粒子なのですが、固体や液体などの様々な形態を取ります。一般に知られているのは、液体状で存在する『霊水』(エーテルウォーター)、固体状の『霊石』(エーテルストーン)の2つです。霊子物質は『霊子機関』の燃料として利用されています。霊子物質かどうかは見た目でもだいたい区別することができますが、正式には霊子機関の基盤の一部を流用した、簡単な検知器によって鑑定しています。
○動力機関
聖暦712年に、『霊子物質』(エーテルマター)をエネルギーとして変換する『霊子機関』(エーテルリアリター)が、旧科学魔道文明の遺跡から発掘されました。発掘を主導したのは法教会の付属機関である『学問院』です。霊子機関は現在ある蒸気機関に比べて数多くの利点を持っています。たとえば、燃料の重量当たりの出力は蒸気機関よりもはるかに上ですし、『霊子蒸気』(エーテルスチーム)と呼ばれる蒸気を出すものの、石炭を燃やす時とは違って煤煙(すす)が出ないことなどがあります。なお、この2つのエンジンが出す煙の色の違いから、霊子機関のことを『ホワイト・エンジン』、蒸気機関のことを『ブラック・エンジン』と呼ぶこともあります。
○科学時代
2つのエンジンの実用化によって生活のあり方は一変しました。従来までは手作業だったものの多くが機械仕掛けになり、大量生産が可能となりました。786年には霊子機関を積んだ大型船によって西海の初渡航に成功し、『新大陸エスティリオ』へと到達しました。各国は競って新大陸の開発を試みようとしており、熾烈な争いを繰り広げています。また、輸送船の発達により、エルモア地方の真南に位置する『ペルソニア大陸』からの奴隷の輸送も大規模化しました。しかし、すべてがよい方向へと働いているわけではありません。人口増加に伴う耕地や牧草地の拡大によって森林は伐採され、そこで暮らしていた人が立ち退きをせまられたりしています。また、植民地農場での労働力としてたくさんの奴隷が犠牲になっていますし、新大陸への進出は原住民との激しい衝突を生み出しました。工場ができたことで昔ながらの職人たちが被害を被ることもあります。
とはいえ、科学の発達が人々の生活を豊かにしたことは間違いありません。堕落した旧文明の悪しき遺産として霊子機関を否定している聖母教会といえども、この普及を止められない状況にあります。これからも科学はますます発展してゆくことでしょう。しかし、その過程において様々な衝突が生まれているという事実も、決して忘れるべきではありません。
○交通機関
陸の交通手段として最も利用されているのが馬であり、普段の生活でもよく見かける日常的なものです。殆どの都市では駅馬車が整備されており、荷役の運搬やちょっとした旅行にも使われています。近年では蒸気機関や霊子機関の発達によって、自動車やオートバイ、列車などが開発されています。これらは非常に速く、大量の荷物を運搬できるということで人々の注目を浴びています。それから、大型化された蒸気船や霊子汽船は大量輸送時代の現在には不可欠といえるでしょう。一般の人々に人気のある新しい乗物は、工業の発展によって大量の生産が可能になった自転車です。現在はまだ少々高めですが、いずれは人々の間に広まることでしょう。
交通機関として珍しいものには、空を利用する気球や飛行船などがあります。飛行船は霊子機関を利用したプロペラの開発によって、ようやく実用化が可能となった乗り物です。しかし、霊子機関は燃料が高価なため、一部の人々にしか利用されることはありません。このような新しい交通手段を用いるのは国家機関が多く、主に軍隊で試用されています。また、試作戦車といったような、軍でしか使用されていないものもあります。軍の次にこのような交通機関を利用しているのは、貿易や運輸関連の会社です。
○教育機関
この世界の教育機関は現実世界のものと大差ありません。初等学校は6年間で、卒業は12歳になります。これは義務教育ではありませんが、たいていの国家では授業料は無償となります。このような制度となっているため、学校に通った経験のある者は多く、一般市民は共通語の読み書きと計算を行うことができます。中等学校は12歳から15歳までの3年、高等学校も15から18歳までの3年間です。大学校は4年が通常で、助手や研究生として研究室や講座に残ることもできます。このような近代的な教育制度が成立できたのは各教会組織の協力と、機械技術の向上にともなって、社会がそれを使いこなす学力を要求しはじめたという事実があってこそです。
通常の学校の他に、神大学、学問院、専門学校、兵学校などといったものもあります。中等学校以上に進むのはある程度裕福な家庭の子女に限られ、多くは専門学校で必要な技術を学んだり、そのまま仕事につくことになります。
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