目的
ここでは聖母教会の最高機密である『裏教会』についての説明をします。
裏教会の目的は科学魔道技術の管理と封印です。彼らはかつての科学魔道時代の過ちを繰り返さないために、人々は科学に頼るのではなく、人間自身の力で未来を切り開いてゆくべきだと考えています。そのため、人々の目に発掘品が触れないようにしたり、遺跡の封印を行ったりしているのです。
また、彼らは表教会と同様に、変異の拡散を防ぐために戦っています。この顕著な例が聖母アリアとその娘たちによる中央都市の封印です。中央都市には霊子機関や霊子物質が集中していたため、過去はもとより現在に至ってもなお変異源として機能しているのです。アリアが現在のユナスフィール教国を中心に活動していたのも偶然ではありません。聖母アリア教会の真下には世界でも最大級の中央都市が沈んでおり、その封印を行いながら布教活動を続けていたのです。しかし、アリアの力をもってしても、封印と布教を両立させることは難しく、彼女は娘ユナスに人々を託して封印儀式に集中することとなったのです。しかし、原因はわからないのですが、後にその封印が弱まってきたため、最後の娘ユナスもまたアリアとともに封印の儀式に入ることになりました。(余談ですが、裏教会のメンバーはアリアたちが生存していることを知っているため、彼女たちをさして『千年の乙女』と呼んでいます。これは裏教会だけの隠語であり、一般社会や表教会ではまったく通じません。)裏教会は再び封印が弱まることを恐れ、アリアと12人の使徒が封印した都市の上に、それに対応するアリアや使徒たちを祀る教会を作り上げました。そして人々の祈りによって生じる霊子エネルギーを封印の儀式に利用するため、教会の敷地一帯に魔術儀式を施したのでした。祈りに用いられる『聖言』(神聖語)は呪文とすりかえられ、魔力を集めやすい形状である『円十字』(アンク)を聖印として定め、偶像崇拝の対象として用いたのです。こうして人々は知らずのうちに教会の地下にある中央都市の封印儀式に参加することとなり、現在の平和が維持されているのです。しかし、近年になって教会の勢力が衰えたことで、いずれこの封印が弱まるのではないかと考えられており、裏教会の上層部では新たなる対応策を検討しています。
(追記)
聖母教会がこれほどまでの勢力を誇る組織になり得たのは、ひとえにこの裏教会の存在があったからです。彼らの強さの秘密は、ほぼタイムラグなしで行われる情報伝達です。他の組織と比べてけた違いに術法師を抱えているため、このようなことが可能となります。もちろん、これはエルモア全域に広がっているスパイ網があってこそです。
この時代は、現在以上に情報が重要です。これは現実の話ですが、たとえば戦争でも昔は同士討ちというのが多く、そのために中世ヨーロッパでは紋章学というものが発達したくらいです。逆に敵側の通信士や伝令係にスパイがいたとしたら、どのような計略も可能となります。これは戦争だけに限らず、情報をいち早く知りそれを操作することは、政治や経済など様々な場面で優位に立つことができるのです。エルモア地方で即時通信が可能になるまで、このような事態は続くことでしょう。
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組織構成
○位置づけ
裏教会は、一般社会はもちろんのこと、教会内部にさえその存在が秘匿されている存在です。裏教会の存在を知っているのは、表教会でも主教以上の者と司祭長の中でも選ばれた者だけです。こうして、裏教会は完全に影の組織として独立して行動することになりました。裏教会に所属するものは、自らを『ロストメンバーズ』と称し、完全に影の存在に徹しています。
表裏の教会はどちらが格上ということはなく、まったく同じ地位にあります。双方の機能は分化していますが、協力要請という形でお互いを支えあっているのです。しかし共同作業を行う場合、表教会側では裏教会の存在をまったく知らないというのは不便であるため、表向きは普通の聖職者を装った裏教会のメンバーが存在します。こういった存在を『ダブルメンバーズ』といいます。
○メンバー
裏教会の構成は表教会とはまったく異なっています。
裏教会の組織を束ねているのは、『ファーザーズ』と呼ばれる12名の幹部たちです。メンバーからも不可侵の暗黒と呼ばれるぐらいの存在で、その正体は表裏の教会の上層部だけが知っています。裏教会の活動はすべて彼らによって計画され、下部の組織が実行することになります。ファーザーズと呼んではいますが、別に男性だけがなれるわけではありません。なお、12名というのは使徒である12名の娘たちに対応するもので、その呼び名は彼女たちが起こした奇跡にちなんでつけられています。つまり、暁、月、霧、雪、雲、氷、雨、風、夜、星、水、火の12人となりますが、使徒たちの生まれた順番が位の上下をさすものではなく、彼らは全員同じ地位となります。
その次の地位が『認定者』と呼ばれる者です。彼らはメンバーの入門を認定する役目を負っており、その他の活動はしません。彼らは入門の儀式を司る神官であり、『呪眼契印』という秘術を代々受け継ぎます。これは術法的な呪いであり、契約の印を瞳に刻まれた者が裏切り行為を働いた場合、その者には死が与えられることとなります。メンバーの瞳をよく覗き込めば、円十字(♀)がうっすらと逆さに映っているはずです。
これ以下の者は、発掘調査機関、密偵機関、研究機関、軍事機関、術法機関、そして暗殺機関のいずれかの組織に属することになります。これらは『マスター』と呼ばれる地位にある者が統括しており、その下にいる一位から十二位までの『ナンバーズ』と呼ばれる幹部たちが組織を運営しています。それ以下の実行部隊の者は『ノーナンバーズ』と呼ばれています。ノーナンバーズたちは一般人として社会に溶け込んでいる者も多く、彼らは裏教会のメンバーとして以外の仕事を持っています。ノーナンバーズたちの顔ぶれは多彩で、一般人はもとより、貴族や黒人奴隷、あるいは法教会やマイエル教の内部にも潜り込んでいます。
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内部機関
裏協会は以下のような機関によって構成されています。
○発掘調査機関
科学魔道文明の遺跡を探索したり、発掘品を買い上げて封印したりといったことを行っています。冒険者から発掘品を買い上げる店などは、この機関が運営していることが多いようです。
○密偵機関
これは個人で活動する情報屋のような者から、他の密偵機関に入り込んでいるような者など様々です。エルモア地方最大の情報機関でもあります。
○研究機関
科学魔道文明の技術や、変異についての研究などを行っています。現在は『混沌の檻』と呼ばれる、変異源の選択封印技術についての研究に力を入れているようです。
○軍事機関
戦士としての訓練を受けた者たちで構成されており、主に変異体を掃討するための活動を行っています。
○術法機関
別名『術法教室』と呼ばれており、学校のような形態をとっています。術法を正確に伝承してゆくためのみに存在する機関で、数人の優秀な術法師とその弟子で構成されています。多くの教室は術法系統ごとに分かれており、他の機関のメンバーたちに術法を教授する役目も負っています。
○暗殺機関
裏教会の活動の妨げになるもの、あるいは科学魔道技術の発掘を行うものなどを暗殺するために存在します。内部の粛正機関としての役割も持ちます。
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術法
裏教会が保持している知識は以下のものになります。メンバーであれば、任務や役割に応じた術を、術法機関のメンバーから教えてもらうことができます。ただし、何が必要であるかということは、個人では選択することはできません。全て、組織の決定に従わなければなりません。
他の宗教機関や術法協会などに潜入している場合は、ここにはない術法を習得することもできるでしょう。実際、個人で呪芸術や武術を習得している者も存在します。しかし、こういった外部の術を習得することが任務に支障をきたすようであれば、組織から習得をやめるよう命令されることになります。
術法系統 魔力操作/浄化/聖戦/天授/罰罪/地/火/風/水/光/闇/氷/雷/砂/植物/自然操作/治癒/生命/肉体操作/感覚/変身/魂/精神操作/感情操作/使役/情報、知識/感知/空間/力/変化/創造/魔力戦闘/身体戦闘/霊糸/幻覚/映像/音声/香味/生物/獣化/誓約/盗賊/隠身/夢/魔鏡/回復/精霊/予知/錬金/呪詛/悪魔/不死/霊体/魅了/瞳眼/声/肉体破壊/影
習得条件 特に素質が重視され、幼い頃から術を叩き込まれる。
スタイル 自由。
使用条件 使命の内容に応じて各自が判断する。
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その他
○隠された庭(アナザー・ガーデン)
聖母アリア教会の地下にある、アリアとユナスが眠る場所のことをいいます。ここは仮想空間としてつくられた場所で、通常の手段では絶対にたどりつくことはできません。ここに立ち入ることができるのは、大主教とファーザーズだけとされています。
○「白亜の塔」連盟
旧科学魔道文明の知識を管理する機関で、『知識の塔』と呼ばれる場所で働いています。ここは表向きは雲の聖サラーシャ教会(ルクレイド)に付属している神大学の図書館となっていますが、地下にはまだ稼働する霊子機器が多数並んでいます。
○青薔薇館
娼館をよそおった情報機関で、ここに務めているすべての人間が裏教会のメンバーです。特に貴族の側におかれる高級娼婦は重要な情報源で、時には薬を使って相手の貴族を操ったりすることもあります。娼婦や男娼たちはみな戦闘訓練を受けており、いざという場合は戦士として戦うことができます。
○古物商ルー=ファーリー
発掘品の買い上げと封印を行っている男で、ペトラーシャの首都ペトルラーンで大きな古物商店を経営しています。表向きは人のいい老人を装っていますが、本当は裏教会でも指折りの術法師です。
○天界奇書
大変異現象に至るまでの真実の歴史が記された書物で、世界に数冊しかありません。そのうちの1冊は表教会の大主教が、他は裏教会のファーザーズたちが管理しています。
○天命写本
別名を絶対計算機という霊子機器です。簡単に言えばシュミレーション・プログラムの1つなのですが、与えられる情報さえ正しければその予測は絶対に間違うことはありません。これとほとんど同じ物が、ペルソニア大陸の閉鎖実験場で用いられています。
○生体博物館
悪魔や精霊といった変異の影響を受けた生命体兵器を狩り、その仕組みを解明しようという研究機関です。ここには様々なサンプル体が並んでいることから、このように呼ばれるようになりました。
○回らぬ運命の書
かつての中央都市の1つが計画していた、『狭間』と『虚粒子』を利用した兵器の設計図のことです。この2つに関する技術は、科学魔道時代でさえ不可侵と言われていたものです。この設計図は不完全なものですが、動力となる霊子機関は完全なものですから、現在は厳重に封印されています。
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