身分


 


○身分の影響

 情報収集にはキャラクターの身分が少なからず関係します。その身分固有の情報ルートというものが存在しますし、身分が違えば態度も変わります。

 自分より高い身分の者と会話をする場合には、身なりや口調、それから礼儀作法などに気を配る必要があります。相手を不快にさせればそこから情報を得られなくなるでしょうし、そもそも最初から面会を断られる可能性さえあるのです。また、何かを依頼しても予想以上に待たされることもあれば、足元を見られて料金を過剰に請求されることも考えられます。それから、自分の方が先に依頼をしたにもかかわらず、身分が高い人間の注文が優先されるなどということも、往々にして起こるものなのです。
 しかし、これはエルモア地方ではむしろ当然のことであり、とりたてて騒ぐことではありません。たとえば、警察や役所といった公共機関でもこういった場面にでくわすことがあります。もし情報収集において身分の高い者に先んじる必要があるのであれば、身分が低いなりの方法を模索するしかないでしょう。逆に貧民街のような場所でなければ手に入れられない情報もあるのですから、必ずしも不利になるとは限りません。与えられた状況の中での最善手を選択すれば、きっと明るい道が開けることでしょう。


○上流身分

 上流身分に含まれるのは支配階級と名誉階級になります。これらの階級の人間は、その多くが社交界の一員であります。宮廷での晩餐会やパーティ、それから貴族のサロンといった場所では、政治や国際情勢に関する会話が頻繁に行われますし、社交界の裏のスキャンダルなどが密かに囁かれるものです。また、劇場や音楽ホールのボックス席というのは一種の密室であり、そこで貴族たちがさまざまな密約を取り交わすこともあります。貴族たちの娯楽の場は、常にこういった情報が飛び交っています。


○神聖身分

 聖職者たちは自らが務めている教会が最大の情報収集場所となるでしょう。得られる情報は限られるでしょうが、教会というのは人々が最もよく集まる場所でもあるのです。毎週の礼拝やその他の儀式には必ず近隣の人々が顔を出します。困ったことがあれば教会へ相談に来ますし、懺悔をしに訪れることもあるでしょう。また、聖母教会はエルモア中に広く分布する組織であり、他国の伝道者や旅の巡礼者が宿を求めてやってくることもあります。
 それから教区記録というのも非常に重要な情報源となります。子供が産まれれば洗礼の儀式を、誰かが死亡した時には葬儀を行うことになりますが、これらはすべて記録として保管されています。つまり、戸籍と同じ情報が手に入るのです。また、教区に住んでいる人間の住所や家族構成、それから職業といったものも当然把握しておりますし、教区を直接歩きまわれば人々の様子も知ることができます。教区外のことでも、近隣の教会に問い合わせればさしたる苦労もなく情報を入手できるでしょう。


○中層身分

・富裕階級
 富裕階級に含まれるのは会社や工場、あるいは大農場の経営者たちです。こういった人々は社交界との繋がりを欲することが多く、貴族や名士たちと知り合いであってもおかしくはありません。それから、何より自分が雇用している者たちから広く情報を集めることができます。ただし、不当な条件で働かせるなど日頃から恨みを買うような真似をしていれば、わざと情報を隠すこともあるでしょう。

・知識人階級
 知識人階級に特異的な情報収集の場というのは、学会や学校といった場所になるでしょう。理系では最先端の研究が主な話題となりますが、社会学や経済学などの研究者たちが集まれば、政治や経済の在り方について討議されることになるでしょう。事実、近代的な選挙政治を行っている国家では、学者から政治家へと転進する者も決して少なくないのです。こういった学者たちは、政界や貴族たちと繋がりを持っている場合があります。それから軍や企業と共同で開発を行っている場合は、そちらの技術者や関係者からも情報を仕入れることができるでしょう。
 さらに知識人階級に属する者の利点としては、学校や研究機関に付属する図書館を自由に使用できるということです。自分が所属している組織以外でも、申請すればほぼ問題なく入館許可が得られるはずです。

・市民階級
 いわゆる市民階級の人々の社交場といえば、酒場や喫茶店、あるいは公園といった場所になるでしょう。酒場は市民だけでなく旅行者や流れ者たちも集まる場所です。また、どんなに口が固い人でも、酒が入ればうっかり口をすべらせてしまうということもあります。それから公園や路上に黙って立っているだけでも、人々の話は耳に飛び込んできます。井戸の周りでは主婦たちがよく噂話をしていますし、街の子供たちから話を聞いてもよいでしょう。公衆浴場もまた市民の社交場の1つで、のんびりとサウナで汗を流しながら情報を集めることも不可能ではありません。


○下層身分

・労働者階級
 労働者階級の人々は日々働き詰めの生活を送っているので、行動範囲はそれほど広くありません。情報の入手先は自分が働いている職場か住処の周辺、あるいは大衆食堂や安酒場などに限られるでしょう。仕事を求めて各地を放浪している者であれば、多くは木賃宿と呼ばれる素泊まりの宿屋に住んでいます。そこには似たような境遇の人間がたくさんいるので、他国の情報が手に入る場合もあります。貧民街の安アパートを借りている場合は、近隣の住民から話を聞くことができるでしょう。貧民街の住人同士は比較的結束が固いので、日頃の態度がよほど悪いというのでもなければ、それほど苦労もなく情報を手に入れることができるはずです。

・放浪階級
 放浪階級はいわゆる浮浪者と呼ばれる人たちと、各地を旅して放浪生活を送る者とに分けることができます。
 乞食は乞食組合という組織をつくって、情報の売買を行っていることがあります。組合に加入していれば乞食組合ばかりではなく、裏社会の情報を手に入れることも不可能ではありません。都市浮浪児も仲間同士で情報のやり取りを行うことがあります。ただし、彼らにも縄張りというものがあるので、余所の街では振る舞いに気をつけた方がよいでしょう。
 放浪民族はだいたい一定の土地を移動しながら生活しているので、各地に顔見知りがいてもおかしくはありません。ただし、彼らのことをよく思わない人は多いので、情報の入手は比較的困難といえるでしょう。


○最下層身分

・犯罪者階級
 犯罪者には犯罪者同士のネットワークがあります。裏組合やギャングというのがそれで、組織に属している者はここから情報を集めることができるでしょう。これらの組織は、情報屋や乞食組合などとも繋がりがあります。

・奴隷階級
 奴隷は奴隷以外の者と会話することはまれであり、情報を得る手段は非常に少なくなります。奴隷仲間以外では主人とその家族の情報を知っている程度で、あとは買い物に出た先で会話をするくらいとなるでしょう。


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