錬金学派


 


 錬金術には幾つかの分野があり、それぞれが独自の発展を遂げてきました。しかし、組織や派閥は存在するものの、1人の錬金術師が1つの分野だけを学ぶわけではありません。
 もちろん、錬金術を習得するには多大なる努力を要するもので、複数の分野を身につけるのは困難を極める作業です。実際、全ての分野を極めた錬金術師は存在しないとも言われています。しかし、最終的には全てを統合した学問分野を修めるのが彼らの目的であり、それこそが真の秘教科学の姿だと考えられています。そして、この境地にたどり着いた者だけが、万物を司る黄金数秘(あるいは黄金定理)と呼ばれる絶対真理を解き明かすことができると言われているのです。錬金術師の多くが一般に錬金協会と呼ばれる組織に属しているのも、真の秘教科学を求めるがゆえであり、決して連帯感や仲間意識によるものではないのです。


○学派

 錬金術の基本分野は、元素秘学、生物秘学、精神秘学、心霊秘学、生命秘学の大きく5つの基本系統に分かれています。これを錬金術の世界では学派と呼んでいます。この他の学派として、錬金新派と錬金術派という2つが知られており、特に錬金新派はここ数十年で勢力を増しています。なお、これ以外にも小さな学派は存在するようですが、錬金術の世界でも殆ど知られておりません。


・生物秘学
 生物の構造と機能を解析し、完全存在である生命体を創造することを目的とします。

・元素秘学
 物理化学に関する学問で、生物秘学と並ぶ最大規模の学派です。金属の精製や磁界の制御、電気の利用などが行われています。

・生命秘学
 不死などの生命力に関する研究を行っています。しかし、錬金術の中では最も遅れている分野であり、この道に進む者は現在では少ないようです。

・精神秘学
 精神や感情に関する研究を行う学問で、見えない精神世界を定義し、その法則を見つけだすことを目的とします。

・心霊秘学
 霊魂と物理法則との関連などについて研究を行います。精神秘学と結びつきの強い分野です。

・錬金新派
 統合秘学、集合秘学とも呼ばれる新しい分野で、複数の分野を統合した新しい技術を模索しています。彼らは自らの分野を黄金秘学と呼ぶこともあります。

・錬金術派
 術法による存在への影響とその作用過程を解き明かそうとする学派です。独自の術法系統を所持しているようです。

・錬金小派
 その他の小さな学派のことをさす言葉で、特定の派閥を呼ぶ固有名詞ではありません。


○学会

 錬金術の世界にも学会があり、学派ごとに1つずつ存在します。これは錬金術の世界での公的な存在としての学会であり、私的に討論を行う場を設けて、学派を越えた交流を行っている者も大勢います。
 個人の研究内容は一般社会と同様、最終的に1つの技術として確立されるまでは秘匿されています。そして、論文としてまとまった時点で学会で発表し、そこで初めて他人の研究成果を技術として利用することが許されます。個人が自分の研究内容について秘匿したままで一生を終えても咎められることはありませんが、公開してしまった以上は権利を主張することはできず、どのように利用されても文句を言うことはできません。なお、他人の研究を盗もうという行為は、倫理的制約のない錬金術の世界で唯一の禁忌とされ、最大の恥と考えられています。


○地位

 1つの有用な技術を確立した錬金術師は、秘教博士と呼ばれるようになります。これを認定するのは各学会で、認定された者は教師として弟子に錬金術を教える資格を得ます。ただし、これは組織に所属している場合だけであり、個人で研究している者が秘教博士として認定されることはありません。また、弟子を取ることに許可を得る必要もありません。なお、全ての分野を極めた者を全科博士と呼びますが、実際にこの名を与えられた者はおらず、あくまでも目標としてのみ存在する言葉です。


○錬金名

 錬金術師は一般社会から見れば異端の存在なので、自らの名を秘匿して活動しています。そのため、戸籍に記載されている名称とは異なる、錬金術師としての名を持つのが普通で、この名前のことを錬金名といいます。錬金術分野で『〜の』という名前がついている技術や物品は、全てこの錬金名を冠しているものです。

・命名法則
 錬金名は自ら名乗ることが出来ますが、博士号を貰うまでは名までしかつけることは許されません。錬金博士として認められた者は、所属している組織から姓名と称号が与えられ、名=称号=姓という具合に名乗ることが出来るようになります。この時に与えられる姓名を博士姓といいます。
 それ以降の功績に対しては称号だけが与えられるだけになり、名のある錬金術師ほど名前が長くなることになります、ただし、初対面の時以外は称号を省略するのが普通です。


先頭へ