新大陸エスティリオ

概略技術魔道機その他


 

概略


○自然

 新大陸エスティリオは、エルモア地方の3倍もの面積を持つ大陸です。この地はエルモア地方ほどには大変異現象による影響は受けなかったのですが、それでも非常に多くの人口を失った地域です。
 気候的にはエルモア地方よりも暖かく、大部分の地域は温帯から亜熱帯域に属しています。大変異現象より後には全域を森林が覆うこととなり、これを食料とする『トカゲ竜』という生物が大増殖することになりました。
 大陸の中央部を山脈が縦断しており、原住民たちは主にこれより東側の地域に住んでいるため、彼らにもこの向こう側の地域には何があるのかわかりません。また、南部にはトカゲ竜が集中しているため、西部と同様に原住民たちにとっても未踏地となっています。


○略史

 かつてこの土地にどのような国家が存在していたのかはわかりませんが、複合民族国家があったのか、あるいは多数の国家が乱立していたかのどちらかのようで、現在の住民も様々な人種で構成されています。彼らは住みやすい東部に集まり、村や小さな集落をつくって生活しています。
 原住民たちは数百年ほど前から、『聖域連合』(ユナイテッド・サンクチュアリ)と呼ばれる連合体制をつくり、協力して変異体やトカゲ竜から身を守っています。この中心となるのが『中央聖域』と呼ばれる高台に位置する土地で、ここには旧世界の遺跡が存在しています。付近にも聖地として崇められる場所が集中しており、この地は政治の中心でもあり宗教的な中心としての意味あいも持っているのです。遺跡を管理する人々は、政治を司る『長』と神官としての役目を負う『守護役』の2つに分かれており、人々の指導を行うとともに、旧文明の技術を代々伝えてゆくようになりました。
 中央聖域の遺跡は別名『地下道都市』といい、高台の下には入り組んだ地下道がつくられています。地下道の大半の通路には土砂が堆積し、原住民たちも奥の様子を正確には知りません。この都市そのものが旧文明の遺産であり、人々は現在も地下道都市の復旧に取り組んでいます。


○現況

 エルモア地方から移民者たちが訪れた現在でも、この連合体制は堅く守られたままであり、人々は協力して侵略者から身を守っています。トカゲ竜の脅威によって狭い土地で暮らさねばならなかった原住民たちにとって、更に耕作地となりうる場所を奪われることは生活に関わる大問題です。
 原住民たちはトカゲ竜を倒すために発掘した技術を用いて、移民たちの侵略に辛うじて耐えている状況です。こうした混乱の渦中にあって、機神と呼ばれる存在が侵略者たちの間に現れたことは、聖域連合の中に数々の波紋を投げかけることとなりました。原住民の間にはかつてない不安が広がっており、守護役たちが管理している聖域の封印を解くべきだとの声も上がっています。しかし、守護役たちは頑としてそれをよしとせず、住民たちとの間に亀裂が入りつつあるようです。


○文化

 新大陸の原住民の文化レベルは、エルモア地方のものに比べると遥かに低く、原始的な農耕と狩猟によって成り立っています。ようやく鉄器が使われるようになりましたが、鋼を加工する技術はありません。武器も剣や槍、あるいは弓矢といった簡単なものしか使われていません。
 食事はスナモロコシやムラサキハルイモというサツマイモの仲間、あるいはレッドポテトといった温暖な気候に適応したジャガイモなどを主としています。この地方には独特の植物が多く、チーズ・ナッツという油脂分の多い木の実や、ヒノコツルクサという香辛料などが生えています。しかし、なんといってもユラムという植物を忘れることはできません。これは高さ2mほどになるイネのような形をした栽培植物なのですが、万能植物として多用途に活用されています。茎は甘く、葉も食用とすることができ、根からは石鹸が取れ、秋には小さな甘い実をつけます。この植物はロンデニアの移民たちも栽培を始めており、いずれは彼らの間でも主要な食物となることでしょう。


先頭へ

 

技術


 原住民たちの技術レベルは非常に低く、戦いにおいても槍や斧、あるいは弓などによる攻撃が主体となります。もちろん、蒸気機関や銃のような優れた技術は、移民たちがこの大陸に訪れる以前には目にしたこともありません。
 文化レベルにこれほどの差がありながら、未だに彼らが征服を受けずにすんでいるのは、旧科学魔道文明の発掘技術を用いた、非常に特殊な戦闘法を身につけているからです。

 こういった発掘技術の1つに、原住民たちが『魔道蟲』と呼んでいるものがあります。魔道蟲には再生蟲や神経蟲などといった種類があります。これらは培養してある組織塊からつくられ、目的に合わせてプログラムされます。このようにして様々な能力を獲得した蟲は、人体に埋めこまれると組織や器官と同化し、人間に驚異的な戦闘力や他生物の能力などを与えることになります。翼で空を飛んだり、手足を自在に伸縮させたり、あるいは毒の息を吐いたりといった能力が、変異体の脅威や移民たちの武器から人々を守っているのです。
 ただし、これらの蟲を体内に埋め込むときは、考えられないほどの苦痛が伴うため、誰でもが身に付けることができるわけではありません。この試練に耐えたものは『蟲使い』として、人々から最大の尊敬を受けることになります。蟲使いはこの賞賛に応え、自らの力を惜しむことなく使って仲間たちを守ります。

 魔道蟲と並ぶ有用な戦力には、『宝珠』と呼ばれる石の力があります。この宝珠を使うものは『宝珠使い』(ジュエル・マスター)といい、蟲使いと同様に恐れられています。宝珠使いは別名『獣魔使い』とも呼ばれ、魔獣を操る技術を持ちます。使役する獣魔の特徴は、額に第3の瞳をもつことです。
 獣魔使いの能力とは、自分に向けられた感情や術法といった情報を力に転換し、それを利用するものです。この力を第3の瞳に蓄えているのが、獣魔という存在なのです。この獣は精神の具象化であり、受諾した情報によって様々な形態を取ります。
 獣魔の中には非常に特殊な存在のものがいます。使い魔のようにただ1人の宝珠使いに仕えるもので、宝珠使いたちはこの魔獣を『従魔』と呼んで、常に身近に置いています。これは残留思念の結晶体であり、死を迎えた人々の獣魔使いを思う心によって生まれた獣なのです。多くの場合は、これは家族や恋人の願いで構成されています。つまり、従魔とは愛する者から最後に与えられた涙でもあり、そして死んでいった人間そのものでもあります。ですから、宝珠使いたちは従魔を何よりも大事にし、常に自分の側から離さないのです。逆に従魔たちも主からは決して離れようとはせず、死してなお愛する者を守り抜く力として存在し続けるのです。

 新大陸でもいくつかの術法は使われています。特に、不思議な紋章や模様を体にペイントすることによって力を得る化粧系や、獣化系の術法がよく知られています。蠱使いや宝珠使い、そしてこのような変身に関わる術法を多く使用することが、エルモア地方の人々に原住民を化け物だと誤解させる要因となっているようです。


先頭へ

 

魔道機


 蠱使いや宝珠使いは確かに強力な戦士なのですが、その数はあまりにも少な過ぎます。そのため、ほんの少しの訓練で使用できる銃をもつ移民たちは、戦いを有利に進めています。そして、この状況が更に悪化するであろう事態が起こりました。それは789年の初め、つまり最近のことです。

 ロンデニアの移民の1人であった『バーニッシュ=ビー』という青年軍人が、原住民との戦いで深手を負い、そして森の中で気を失ったまま倒れていました。偶然それを原住民の娘が助け出し、ある村に保護されることとなったのですが、このことをよく思わない他の村の人々は、バーニッシュの引渡しを要求してきました。
 しかし、いつしかバーニッシュと心を通わせるようになっていた娘は、ひそかに彼を連れて逃げ出したのです。ですが、結局は2人とも捕らえられ、聖域の中心地に連行されることになりました。そして、しばし投獄生活を送ることとなったのですが、彼は大型のトカゲ竜が現れて混乱する人々の隙をついて、脱獄することができました。しかし、地理に明るくないことから、彼は聖域の更に奥地に向かうことになりました。そこで彼が見たのは、真昼だというのに水面の向こうに星々が煌めいている小さな泉でした。
 不思議に思った彼がその泉に手を浸した時、異変が起こりました。彼の体は不意に泉の中に引き込まれ、気がついた時にはまわりに無数の星が煌めく不思議な暗黒の中に漂っていたのです。
 どれくらいの時間が経ったのでしょうか、水も食料もないまま漂流を続け意識が朦朧となった頃に、運良く彼はボロボロになった建物にたどり着きました。そこで発見したのが1体の機械製の巨人です。半ば破損していながらもまだ可動するその機械は、強大な力を秘めた戦闘兵器だったのです。

 まだ活動可能な内部の機械頭脳の助けもあって操縦法を身に付けた彼は、しばらくするとそれを自在に操れるようになっていました。そして、建物内部にあった装置の力を借りてこの星の海を脱出し、仲間たちのもとへこの機械を持ち帰ることになりました。しかし開拓村にたどり着いた早々に、バーニッシュは仲間たちがトカゲ竜の群れに襲われている光景に出くわすことになります。彼はこの戦いで死亡することになりましたが、トカゲ竜を追い払うことには成功しました。
 こうして、はじめはこれを恐れていた移民たちも、破損していながらも何体ものトカゲ竜を倒したこの機械に羨望の眼差しを向けるようになったのです。人々はこの戦闘機械を『機神』と呼び、その秘密をどうにかして解明しようとしました。しかし、機神自体がバラバラに破壊されてしまったこと、本国から遠く離れていて技術者がいないこと、そして何よりバーニッシュが死んでしまったことから、機神の秘密についての情報はほとんど得られていません。しかし、たった1機でさえ戦局を大きく変える力を持つだろう機神という存在は、この大陸に進出する上で最大の魅力となったのです。なお、科学魔道の技術をこらしたこの戦闘機械を、旧科学魔道文明の人々は『魔道機』と呼んでいました。

 現時点では、この最初の1機を除いた他の魔道機は全く発見されていません。そして発見されたばかりであるため、まだロンデニアの移民たちしか魔道機を知る者はおりません。ですが、ひそかにカーカバートを出発した船も新大陸に到着しており、手練の密偵や冒険者を多く抱えている彼らにこの情報が知られるのも、おそらく時間の問題となるでしょう。そして、これから植民地が拡大するにつれ、いずれ星界の遺跡で眠る多くの魔道機は必ずや発掘されることになるでしょう。


先頭へ

 

その他

○星界

 エスティリオには星界への入り口が多数存在しており、原住民たちはそれらの場所を聖地として崇め、厳重に管理しています。バーニッシュ=ビーが入り込んだのも聖地のうちの1つで、星の泉と呼ばれている場所です。
 星界の基地には魔道機の他にも様々な兵器が隠れています。大型の鎧のような外見をもつ、簡易型の魔道機ともいえる『魔道装甲』や、星界を飛ぶ戦闘機、そしてそれらを積む戦艦といったものも数多く存在しており、いつか人間の手によって再び動かされる日がくるのかもしれません。


○星の泉

 泉そのものが星界への門となっており、聖地の1つとして守られています。水面には星界の様子が映し出されています。エスティリオには、このような星界とを繋ぐゲートポイントがいくつも存在しています。


○黄金郷エデン

 新大陸について囁かれる噂の中に、『黄金郷エデン』伝説というものがあります。これはロンデニアから広まったもので、真金でつくられた都エデンがエスティリオの奥地に眠っているという内容です。
 金よりも正しい金であるといわれる真金は、霊子機関の重要部分に使用されています。これは霊子金属と総称されている金属で、霊子を通過させると微細な構造を変化させることができる、極めて珍しい金属です。その分子構造の形態によって、テトラニウム、ペンタゴニウム、ハニコニウムなど様々な呼び方があります。
 この一連の、まったく根も葉もない噂というわけではありません。この霊子金属の大規模な鉱脈がエスティリオにあるのは確かです。もし、この鉱脈がどこかの国に独占されることになれば、軍事バランスは大きく崩れることとなるでしょう。また、聖域連合は真金をつくる技術をもっていますし、その生産工場がどこかに埋もれていることも確かなのです。もちろんこれは聖地の1つであり、そこを守る部族もいます。


○竜骨街道

 昔の高速道路の跡で、それが竜の背骨のようにも見えることから、このように呼ばれています。現在はボロボロで近づくのは危険です。この街道沿いに聖地が点在していますが、それは科学魔道文明の都市がこの道路の脇に埋もれているためです。


○黄金のカタレリナ

 黄金像となったといわれる少女像で、中央聖域の建物の奧にあります。これは聖者として崇められている存在であり、聖域連合のシンボルとなっています。


○涸れ谷

 水が涸れてしまった切り立った断崖なのですが、巨石の紋章と呼ばれる大きな彫刻が施されています。これは軍事基地の扉が変異現象で石化してしまったものです。


○移民の中の影

 ロンデニアおよびエリスファリアの移民の中には、それぞれ裏教会の暗殺者や密偵が数人まぎれこんでいます。彼らは魔道機や旧科学魔道文明の秘密が広まらないように活動しており、もし歴史を変えるような事実が移民たちに知れた場合は、開拓村のすべての人を抹殺する計画を企てています。


先頭へ

 


概略技術魔道機その他