アイリストール市/概要

基本情報環境


 

基本情報


 アイリストール市はエルモア地方の西端に位置する島国、ロンデニア王国の首都です。ここは古くから政治、経済、文化の中心地として栄えてきた街で、一帯には旧王朝時代の遺跡も数多く残されています。エルモア地方でも最大規模の都市の1つとして知られており、国家で最も人口が集中している場所となります。


○位置/区分

 アナリシア島北部の『ロニエル地方』にあり、行政区としては『エンデミール州』の下に置かれている市となります。「詳細地図」に書かれていない区域でアイリストール市に含まれるのは、旧市街、埠頭街、新興住宅区(フォーダー地区)、移民街、南部貧民街、ウェッジ工業地帯となり、エーゼルバイン、ヴォーデン、ゼクセス(海軍街)といった町は市外地に分類されています。


○規模

 旧市街や周辺町村も合わせると人口は100万人に達しており、現在も増加の一途をたどっています。市街地は南へと少しずつ拡大しており、新しく誕生した南部の街区は新市街と呼ばれています。


○誕生

 ミュンフ朝ロンデニア王国の王都として建設された都市であり、聖歴97年に誕生しています。その前の王都はバローシャ市(現在の旧市街)に置かれていました。


▼由来
 市名の由来は高アヤメというアヤメの品種で、聖母アリアの娘である『風の聖カナタ』が最も愛した花でした。初代ロンデニア国王ベルゼール1世は、建国に際して聖母教会への永遠の忠誠を誓っており、教会への寄進として「聖カナタ教会」前の広場に1万本の高アヤメを植えています。

▼高アヤメ
 普通のアヤメよりも50cmも背丈が高い品種です。古くは魔除けとして軒先に吊しておく習慣があり、今でも夏になるとこの花を飾っているのを見かけることがあります。


○住民

 主要民族はシリーシア人となります。しかし、ロンデニアは海上貿易国家であり、またアイリストールは観光都市でもあることから、街では様々な民族の人間を見かけることでしょう。また、黒人や赤人の奴隷もいるため、これらの人種に出会うことも少なくはありません。


▼民族

◇シリーシア人
 亜麻色やプラチナプロンドの髪に、青い瞳の白人です。ロンデニアの主要民族であり、アイリストールで最も多く見られる民族となります。

◇クルヴィス人
 古くからロンデニア北島(大カルドレン島)に住んでいた民族で、やや浅黒い肌を持つ白人です。少しくすんだブロンド色の髪と褐色の瞳を持ちます。

◇トアルクレア人
 旧フィアン王国(現ソファイア)が支配していた頃から住んでいる民族で、茶系統や赤い髪と瞳の、そばかすの多い白人です。

◇アデン人/レグラム人
 黒髪に黒い瞳の黒人です。ペルソニア大陸から連れて来られた奴隷です。

◇その他
 これらの他にも、エストクレア人やユノス系セティア人などが、昔からロンデニアで生活しております。


▼外来者

◇浮遊人口
 観光客、交易商人、物資の運搬人など、市民以外の住民もたくさん存在します。

◇留学生
 ロンデニアは優れた技術力を持つことから、学問のために他国から訪れる留学生も数多く住んでいます。

◇移住者
 ロンデニアは移民や亡命者を積極的に受け入れている国家で、最近は戦乱から逃れて来た移民が増加しています。これら国外からの移住者の多くは、都市南部の移民街と呼ばれる地区や、西部郊外にある一時受入地で生活しています。
 なお、ロンデニアがこのような方針を取ってきたのは、他国の優れた技術や国外の情報を入手することが目的となりますが、このことが原因で治安の悪化を招いているという一面もあります。


○経済・産業

▼金融
 アイリストールは政治のみならず、金融面でも国家の中心的役割を果たしています。都市の中心部には国立銀行が設立されており、その付近には株式・為替の取引所や、商社や保険会社などが集中しています。

▼産業
 ロンデニアはエルモア地方でもトップクラスの技術力を誇り、工業品の輸出によって大きな利益を得ている工業国家です。その首都であるアイリストールの主要産業も工業で、南のレムリル山から採掘される鉱産物を用いて、様々な機械製品や鉄鋼などの生産を盛んに行っています。また、化学工業にも力を入れており、新しい染料や医薬品の開発も進められています。

▼物流
 その人口が必要とする物資の量も多大なものであることから、商業活動も活発な地域となります。都市東部の市場街には青果や海からの魚介類が卸され、エルザ運河や街路を通じて小売店へと運ばれます。それから、市の中心部にはショッピング街が形成されており、エルモア中から取り寄せられた様々な品物を手に入れることが出来るでしょう。


○観光

 アイリストールは観光名所の1つとしても名高く、国内のみならず国外からも観光客が訪れます。昔からの祭りや名所旧跡といったものも人気ですが、新しい技術によって生み出された見せ物や、鉄骨を利用した建築物などを見物するために訪れる人も増えています。


○宗教

 ロンデニア国民は古来より聖母教会を信奉してきましたが、現在では国教とはされておりません。特に近年は、科学の発達とともに、宗教の影響は縮小される傾向にあります。しかし、『風の聖カナタ』教会は中央教会でもあることから、巡礼に訪れる人は今でも多く、観光名所の1つとしてエルモア中に知られています。


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環境


 アイリストールはロニエル地方の中心都市で、ロンデニア南島(アナリシア島)の北部に位置しています。


○地勢

 アイリストール市は周辺地域に比べてやや土地が低く、北と東をなだらかな傾斜地に囲まれる平野部となっています。


▼東部
 都市東部の郊外は、かつては湿地帯が広がっていた場所で、現在も放置されたままの場所が多く残っています。この周辺にはところどころに岩の突き出た丘陵地があり、全体に寂れた印象を受けます。しかし、そこから少し離れると大規模な耕作地帯が形成されており、一面に畑が広がっています。

▼西部
 かつて、西部の郊外には森林地帯が広がっておりましたが、工業の発展に伴い木材として伐採され、現在は畑作地帯へと姿を変えてしまいました。しかし、市から離れた場所にはまだ荒れ地が多く残っており、耕作地はあまり見られなくなります。
 市から南西に20kmほど進んだ辺りには、パルムの丘と呼ばれる石切り場があり、剥き出しの岸壁が連なっています。ここから市へと真直ぐに伸びる道は石切街道と呼ばれています。

▼南部
 南部には広大な面積を誇るゴルゴーニュの森があります。都市は南へと拡張を続けておりますが、ここは呪われた森として恐れられており、いまだ開発の手を逃れています。

▼北部
 
北西部は旧市街へと続き、エルザ=ロンドと呼ばれる大運河を通じて物資のやりとりを行っています。市の真北には建国前から存在する遺跡の街パトリュークがあり、観光名所の1つとして知られています。
 遺跡の街と市との間には高さ200mほどのローズデン丘陵があり、その東側をマーム川の本流が北上しています。この周辺には、かつて王族が狩猟場としていた荒鷲の森が広がっており、その東には保養地として名高いヴォーデンの街があります。


○水域

 南に200kmほど離れたレムリル山からは、ミンキッシュ川とレスターファ川が流れ、市内へと水を注いでいます。ミンキッシュ川の水の一部は、ウェッジ運河を通って工業地帯の東へと運ばれ、埠頭街の貯水湖へと流れ込みます。
 東部にはマーム川が流れておりますが、これは市の東端で2つに分岐し、一部はミンキッシュ川と合流してエルザ運河に変わります。また、西からはフランジィ川の流れがレスターファ川へと注ぎ、市内を北上してエルザ運河と合流します。
 これら4つの河川が集まって流れるエルザ運河は、河幅200mにも達するエルザ=ロンドとして北へ向かいます。そして旧市街を抜けて北の港町カルスレンを通り、海へと到達します。


▼一般河川

◇ミンキッシュ川
 南部のレムリル山から流れる大河川で、狭いところでも150mを超える川幅があり、最大幅は200mを上回ります。都市南部の工業地帯では、この豊富な水を利用して様々な品の生産・運搬を行なっています。しかし、そのため市内を流れる水の汚染はひどく、社会問題の1つとなっています。
 
◇マーム川
 都市の東端をかすめるように流れている川で、幅は80〜100m程度となります。ここから引いた水は、上水の一部として利用されています。
 
◇レスターファ川
 ミンキッシュ川と同じくレムリル山から流れて来る河川ですが、こちらは川幅が50m程度となります。そのため、大きな船の運行には向かず、航行は中型の以下の船舶に制限されています。
 
◇フランジィ川
 アイリストールから南西に50kmほど行ったところにある、グレンディル山からレスターファ川まで続く小河川で、幅は20〜30mほどとなります。この川は昔から、パルムの丘から切り出した石を運ぶために使われてきたもので、川沿いの道は石切街道と呼ばれています。なお、水深は浅いため大きな船の通航は出来ず、荷物や人の運搬は小型汽船やボートで行なわれています。


▼運河

◇エルザ運河
 エルザ運河はマーム川、ミンキッシュ川、レスターファ川、フランジィ川の4つが集まって流れる、平均幅200m以上にもなる大運河です。これはミンキッシュ川の氾濫を解消するためと、水上交通網の整備を目的として造成されました。川底は増水にも耐えられるよう深く掘り下げられており、かなり大型の船舶も航行することが出来ます。
 東部から市内へと引き込まれたマーム川の分水流は、南から流れ込むミンキッシュ川と合流し、環状道路の北側を流れゆきます。そして、フランジィ川およびレスターファ川の水を合わせて、エルザ・ロンドと呼ばれる大運河となり、旧市街を通過して港町カルスレンまで北上し、最後には海へと注がれます。通常、単にエルザ運河と言った場合は、マーム川の分岐を始点とした全流域のことを指します。このうち、運河始点からミンキッシュ川との合流河川の終点までをエルザ・ステップ、レスターファ川が合流してからの河川のことをエルザ・ロンドと言います。
 なお、運河に流れ込む水は、それぞれ貯水湖や水門で流量を調整できるようになっております。また、もし限界を超える水量が流れ込んだ場合でも、多少であれば市内の地下を流れる分水路や、下水口へと逆流するようになっているため、滅多に氾濫することはありません。
 
◇ウェッジ運河
 都市の東部を流れる運河で、ミンキッシュ川の水を工業地帯の東側にも流すため、聖歴740年代に新しく掘られました。ここから出る水は北にあるチェスター人工湖(ブラウン湖)を通り、エルザ運河へと注ぎ込みます。
 
◇ロルネット運河(赤波水路)
 レスターファ川から西へ向かって流れる小運河で、農業用水の供給と水量調整のために用いられています。正式にはロルネット運河といいますが、かつて市場の近くに置かれていた屠殺場から流される血で、運河の水が真っ赤に染まっていたことから、一般には赤波水路の名で呼ばれています。なお、市場の移転とともに屠殺場は都市外部へ移されたため、現在は澄んだ水が静かに流れています。
 
◇イーデン水路
 ミンキッシュ川からチェスター人工湖(ブラウン湖)へと繋がる小運河で、水量調整のために造られました。工業資材の運搬のなどにも活用されており、大小の船が行き交っています。


▼水量調整施設

◇ブルックリン人工池
 埠頭街の南岸につくられた、マーム川からの流入水を調整するための人工池です。ここは船舶の停泊場としても利用されているため、一般にマーム・ポートと呼ばれています。
 
◇チェスター人工湖(ブラウン湖)
 ウェッジ工業地帯の北にあるチェスター人工湖は、ウェッジ運河とともに建設された水量調整湖です。これはダム湖の一種で、縁部は盛り土で周辺地域より高くしてあり、その周囲を岩でしっかりと固めてあります。周囲は何もない湿地で、管理棟以外に建物はつくられておりませんが、最近は勝手にバラックをつくって付近に住み着く人も増えているようです。
 ウェッジ運河から捨てられる廃水はこの湖へと流れ込み、マーム・ポートから流れ出る水と合流して、エルザ運河へと注がれます。なお、ここから出る水は汚染物質が自然に沈澱するためか、流入水よりはだいぶ浄化された状態になっています。
 湖自体は中央部分の水深の深いところと、周辺の水深の浅い場所の2つに分かれています。深さのある場所は、普段から船が通れるように掘り下げてあり、運河と同じ構造を取っています。周辺部は河川増水時のオーバーフローを溜めるためもので、普段は干潟のような状態になります。ここには鉄屑などが落ちていることがあるため、屑拾いの子供や老人たちが泥をさらっている姿がよく見られます。
 
◇ヴォーデン湖
 郊外の町ヴォーデンにある湖です。もともとこの場所には湧水池があったのですが、エルザ運河の建設時にマーム川の調整湖として拡張されました。
 
◇分水路
 河川の流量調整のために、エルザ運河やミンキッシュ川には分水路が設けられています。入り口は堤防沿いに開いており、暗渠の中を水が流れるようになっています。
 分水路には2つのタイプがあります。1つは水が常時流れている地下河川で、これらの一部は地下の貯水施設などに繋がっています。もう1つのタイプは増水時にのみ水が入り込むもので、普段は中を歩くことが出来ます。
 後者のタイプはゴミ拾いや犯罪者が勝手に入り込んだり、中に浮浪者が住み着くこともあるため、入り口に鉄格子をはめ込んで封鎖している場合もあります。しかし、格子の一部を外したりメンテナンス口から入り込むなど、様々な手段でこれを利用する者は後を絶たず、入り込んだ浮浪者が増水時に溺死する事故も少なくないようです。


○霧の街

 アナリシア島は霧の発生しやすい条件下にありましたが、かつてのアイリストール市はさほど霧に覆われることはなかったといいます。現在のように霧の街とまで呼ばれるようになったのは、聖歴200年代に行われたエルザ運河の建設に原因があるようで、工事の完成後、市内では頻繁に霧が発生するようになりました。
 以降の数百年もこの状況は変わらず、ひどい時には真昼でも街は乳白色に覆われ、数歩先も見えない状態に陥ることがあります。そして聖歴700年代に入ると、この薄くたれこめた水蒸気の幕は蒸気機関の吐き出す黒い煤煙と結びつき、灰色のスモッグが監獄の高塀のように市を取り囲むようになったのです。スモッグが街の空を覆う様が、かつて市街地を取り囲んでいた大市壁(グランドウォール)を思わせることから、このような霧のことをグレイウォールと呼ぶこともあります。


○緑化運動

 このような環境の悪化により、聖歴700年代後半になると富裕層を中心に、市内から住居を移して郊外へと移り住む人が多くなりました。これによって空白となった土地には、市民公園や広場が新たに設けられるようになり、都市内部でも緑を見る機会が増えています。
 このほかにも、庭園を設けていた貴族の邸宅や、火災によって空白となった宅地などを改造して、市内の各所に公園や緑地が造成されるようになりましたし、南太陽通りなどの中心道には街路樹が植えられ、かつての劣悪な環境から比べれば都市の汚染状況はかなり改善されつつあります。なお、ロンデニアが霊子機関を推進してきたのは、煤煙による都市の環境汚染を軽減する目的もあってのことです。


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