基本情報
○解説
暗黒街とともに発展してきた新興の商店街です。広い通りの東側は整然とした家並みが続いています。大通りに面している建物はわりとゆったりとした造りですが、環状道路に近づくほど家々の間隔が狭まり、都市らしい風景へと変わってゆきます。
元々この場所は、歓楽街に訪れる人々を目当てとしたパブや食事処が並ぶ、夕方から人通りが増える街でした。しかし、30年ほど前のことですが、一帯で裏組合同士による抗争が勃発し、数多くの人がこの町を去ってゆくことになります。この時に著しく悪化した治安を回復させたのが、現在の暗黒街を支配するコンウォーリス一家で、彼らは周辺住民と協定を結んで裏組合を壊滅させ、歓楽街の支配者の座におさまったのです。
こういった経緯から、この町は暗黙の了解のうちに一般社会と裏社会との境界として機能するようになり、通りから東側は安全地帯として認識されるようになります。また、貧民街が近いために地価が安いという理由もあって、少しずつ様々な業種の店が増えはじめ、やがて現在のような商店街が形成されることとなったのです。
しかし、一家をおさめていたディドリー=コンウォーリスが亡くなり、現在のボスであるテオドア=ナルフィシスに代替わりすると、少しずつギャングとの関係に変化が生じはじめます。直接の支配下に置かれたわけではありませんが、最近では安全が保障されるのは夕方までのことです。大きな事件が起こることは滅多にないものの、夜の営業はやはり危険が伴うため、新しく出来た店は早くに店じまいしてしまうようです。
▼分類
・種別:
商業地
住宅地(中層〜中下層)
・交通:
やや多い
・治安:
普通〜やや悪い
・警察:
環外北警察署
▼慟哭通り
黒羽根通りと監獄通りの間にある通りで、この一帯に監獄の建物から聞こえる罪人の叫びが響き渡ることから、このように呼ばれるようになりました。周辺は中層市民の住む住宅街となっています。
○カラス問題
この通りが黒羽根通りと呼ばれるのは、付近に食物を取り扱う店が多く、それを狙うカラスが集まるようになったためです。ここのカラスたちは人間を恐れることはなく、店先どころか人の手から直接食べ物を奪ってゆくこともありますし、理由もなくいきなり攻撃してくることも珍しくありません。また、最近では人間を追い払うためにわざと上から糞をするという、非常に腹立たしい習性を身に付けています。
付近の住民から市側への苦情があまりに多いため、つい数カ月前にカラスの一斉掃討作戦が決行されました。そして、実に3ヶ月を費やして美しい街の景観を復活させましたが、これは一時的なことに過ぎませんでした。その半月後にはカラスが戻って来て、すぐに元通りの状態へと戻ってしまったため、今度は付近の住民が集まって対策を考えているようです。また市では懸賞金をかけて、有効な対策について募集しています。
▼限定情報
一部のカラスに限られますが、変異現象の影響を受けて人間の子供並みの知恵を身につけたり、不思議な特殊能力で鳥の集団を操ったり出来るものが存在します。また、犯罪者現象によって狂暴化し、人々を襲うカラスもまれに出没しています。これらのカラスがこの地域に集中する理由はわかりませんが、彼らが鳥とは思えないほどの悪知恵を身につけていることは間違いありませんし、人々を困らせて楽しんでいる様子もうかがえます。
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施設・名所
○種類
▼公共
カラス広場▼一般
酒場「屋根の上の黒猫亭」、ボドール薬局▼個人
猫屋敷
○カラス広場
特にこれといった名所や見所もない、昔からあるごく普通の広場となります。広場の外縁には木々や芝生が植えられているため、かつては夏に木陰で休む人が大勢見られたのですが、それもつい10年ほど前までのことです。人間から食べ物を掠めることを覚えたカラスたちは、人々に憩いの場を提供していた木立をねぐらとするようになり、やがて現在のように人間と敵対関係を築くまでになったのです。
大量に住みついたカラスたちは、もはや人間を怖がることもなく、我が物顔で公園中を飛び回っています。そのため、市側ではカラスが住みついている区画の木々を伐採したり、3ヶ月もの時間をかけた掃討作戦を決行するなどしたのですが、その効果は一時的なものでしかありませんでした。そのため、今度は懸賞金をかけて、有効な対策について募集しているようです。
○猫屋敷
「セルナ=フォーレンス」という名の老婦人の家で、方々で捨て猫を拾って来て育てているうちに、猫屋敷と呼ばれるほどの数が住みついてしまいました。彼女の飼い猫以外にも、餌を貰いに集まって来るノラ猫たちもおり、朝晩の食事の時間には近隣に大量の猫の鳴き声が響き渡ります。
通常であれば、近所の者たちにとって迷惑この上ない行動ですが、猫が集まるこの周辺にはカラスが近づかないため、むしろ歓迎されているようです。なお、彼女の家の屋根の上には、敷地内にある離れから猫が登れるようになっており、見張り猫と呼ばれる一部の猫たちがいつも上でくつろいでいます。・関連:セルナ=フォーレンス
○大衆酒場「屋根の上の黒猫亭」
化け猫屋敷の斜向かいにある大衆酒場で、名前の通りに屋根の上に黒猫がたむろしています。ときどきカラスと戦ったりしており、こちらも街の人々に頼りにされています。なお、この猫たちは昔からこの家に住みついているもので、ノラ猫は混ざっておりません。
何やら、化け猫屋敷の見張り猫たちとは仲が悪いらしく、屋根の上で威嚇しあうことがあります。そもそも、彼らが屋根に登るようになったのも、猫屋敷の猫たちが屋根の上に居着くようになってからのことです。しかし、通りですれ違ったとしても喧嘩することはなく、お互い素知らぬ顔をして通り過ぎるだけで、周囲の人々も不思議がっています。
○ボドール薬局
▼限定情報
表向きは一般の個人薬局ですが、裏ではギャングの「コンウォーリス一家」と通じています。店長の「ヒース=ボドール」は毒物に詳しい人物で、ギャングの要望に応じて様々な薬物を調合します。といっても、彼はギャングから得られる金銭的な恩恵には、それほど興味を持っていません。
彼は薬物が人体にどのような影響を与えるのか、徹底的に調べてみたいという欲望に取り憑かれており、時々思うままに人体実験を行なう夢を見てしまうほどです。しかし、体力には全く自信がないため人攫いも出来ず、対人恐怖症の傾向があり他人を言葉巧みに誘えるわけでもないので、これまでずっと店の地下室で動物実験を繰り返すだけの、悶々とした日々を送っていたのです。
ギャング団が彼に声をかけたのは、独り身で交際範囲が狭く、外部に秘密が漏れる心配が殆どないためでした。逆にボドールの側にとっても、余計な手間をかけずに思うままに自作の薬物を試せるというのは、非常に魅力的な条件でした。こうして双方の思惑は見事に合致し、彼は喜んで闇の仕事を引き受けて、夜な夜な新しい薬物の調合にいそしんでいるのです。しかし、投与した薬物の効果についてきちんと報告するという、彼が交換条件として出した唯一の注文が守られることが少ないため、強く不満を抱くようになっています。そして、最近ではときどき夜道に出て、じっと非力そうな女性たちを眺めるようになっており、いずれ衝動が抑えきれず何か騒動を引き起こしてしまう可能性があります。・関連:コンウォーリス一家
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人物・集団
▼セルナ=フォーレンス
種族:白人 性別:女 年齢:64 職業:無職
居住:黒羽根通り 出身:アイリストール市解説:化け猫屋敷に住んでいる老婦人です。他に身寄りのない彼女は、夫を亡くした後、広い屋敷で1人暮らしをしています。心優しい女性で、捨て猫を見つけると拾ってこずにはいられませんが、もしかしたら独りぼっちの自分の境遇と、猫たちの姿を重ね合わせているのかもしれません。彼女は猫だけに優しいわけではなく、ストリートチルドレンに施しを与えたり、時には家に連れてきてご飯を食べさせることもあります。そのため、付近の子供たちには「猫のおばあちゃん」と呼ばれて親しまれています。
一言:「ああ、可哀想に……さあ、家へおいで」
・関連:猫屋敷
▼クルメル=ウェルチ
種族:白人 性別:女 年齢:18 職業:ウェイトレス
居住:黒羽根通り 出身:アイリストール市解説:酒場で給仕係をやっている、元気と健康が取り柄の娘です。とにかく食べるのが大好きで、周りを気にせず豪快な食べ方をします。大食いではありますがずっとスリムな体型を保っており、周囲の女性たちから羨ましがられています。食事の次に好きなのが噂話で、よく仕事を忘れて客とおしゃべりをしています。
限定情報:彼女が太らないのには理由があって、実は体内に変異虫と呼ばれる怪物が潜んでいるのです。そのことは本人も気づいておらず、特に何もなければこのまま無事に一生を終えることができるでしょう。
一言:「そうそう、こんな話があったのよ……」
▼アーネスト=ロベルディ
種族:白人 性別:男 年齢:27 職業:趣味人/犯罪研究家
居住:慟哭通り 出身:ヴォーデン解説:猟奇・怪奇事件の研究をライフワークとする変わり者で、伯父の遺産で暮らしている趣味人です。幼さの残る顔だちをした青年ですが、彼の語る内容はその風貌に似つかわしくない事件の話ばかりです。しかし、犯罪に関して多くの知見を持つことは間違いありませんし、表には出ていない未解決事件を独自に調査したり、犯罪心理学についても深く学んでいることから、警察や探偵が彼の知識や知恵を借りに来ることも珍しくはありません。
趣味のことに関しては話し出すと止まらない人間で、たとえ初対面でも役に立つ情報や助言を与えてくれるでしょう。しかし、被害者やその関係者のプライバシーに配慮してか、捜査関係者以外に実名や犯行現場について具体名を挙げることは控えているようです。情報提供によって何者かに害が及ぶ可能性が考えられる場合も同様で、たとえ話や伝承になぞらえてヒントを与えるなど、非常に慎重な対応を取ります。一言:「なるほど、それは興味深い事件ですね」
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