基本情報
○解説
ロンデニアでは発狂現象と呼ばれる変異現象によって、精神に何か悪い影響を受けることがあります。この地域にはその犠牲者を治すための術法師や、心理学の専門家などが集まっており、近年では精神治療のための国立病院も建てられました。
ここはもともと労働者階級や賃金の少ない市民階級の人々が住む街だったので、古くこじんまりとした建物が目につきます。その外観も暗いものが多く、全体に陰鬱な雰囲気を与える町並みですが、逆に神秘的で良いという人もいます。というのは、この付近では夢使いたちが魔法屋を開いており、夢占いや夢売りといった商売が行なわれているからです。占い小屋は若い女性たちに人気で、特に女学生たちが恋の悩みなどを相談しに来るようです。
▼歴史
この地域が夢見街と呼ばれるようになったのは、夢使いの一門が術法協会によって招聘された聖歴750年代のことです。ちょうどこの頃、主に夢使いが活動するルクレイドで共和主義革命が起こり、協会は夢使いを守るためと精神治療の2つの理由から、アイリストールに大勢の夢使いを呼び寄せたのです。
やがて革命戦争は終わり、殆どの夢使いは祖国へと戻りましたが、中にはアイリストールに残って治療を続ける者も少なからず存在しました。彼らはこの地に住み着いて弟子を育て、新たな夢使いの育成を行ないました。その中には新たな商売を始める者もおり、より一般にも広くその存在を知られるようになります。現在もこの近辺には夢使いたちが多く住んでおり、治療から娯楽まで様々な目的で人々に夢を見せています。
▼分類
・種別:
住宅地(中層〜中下層)
商業地
・交通:
やや少ない
・治安:
普通
・警察:
環外北警察署
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施設・名所
○種類
▼公共
術法協会/国家支部、ブルーフォード国立精神病院、ファレリア薬草店、占い広場(ガナード広場)
○術法協会/ロンデニア国家支部
術法協会の支部の1つで、ロンデニアとロニエル地方の支部を兼ねています。この国の術法師を束ねる中心的役割を果たす機関で、ルクレイドにある術法協会本部との連絡を行なったり、各地方から集められる情報を管理します。ただし、ロンデニアでは術法師の数はそれほど多くないため、実際の術法に関する業務はあまり活発に行なっているとはいえず、魔術学校も付属しておりません。
・関連:術法協会/市南小支部
○ジェナの占い小屋
この近辺には占いの店が多いのですが、その中でも「ジェナ=リベルテ」の占い小屋は、若い女性たちに絶大な人気を誇ります。というのは、彼が飛び抜けて美しい容貌の持ち主であり、とても親身になって客たちの相談に乗ってくれるためです。特によく当たる占いというわけではありませんが、彼に会うためだけに頻繁に訪れる女性も多く、小屋の前にはいつも若い娘たちが大勢並んでいます。
・関連:ジェナ=リベルテ
○オレーリアの夢見館
夢系の術法を用いる魔法屋、「オレーリア=ウェルバ」が経営する店で、人に望む夢を見せるという商売を行なっています。ハーブでリラックスさせてから眠りに誘うようで、庭や窓際にハーブの鉢がたくさん置かれています。
本業は夢売りとなりますが、依頼があれば精神治療も行ないます。彼女の師匠は有名な精神治療師で、誰もがその跡を受継ぐものと考えておりましたが、彼女はその役目を弟の「ウーリー=ウェルバ」に譲り、のんびりと日々を過しています。
▼限定情報
彼女が精神治療を本業としないのは、夢を見ることが出来ないという特異な性質を持っているためです。これは術法をもってしても不可能であり、他人の夢の中に潜り込むどころか、見ている夢を覗くことすら叶いません。なお、術法による彼女の精神治療は、主に感情操作系の術を用いて行なわれています。
○ブルーフォード国立精神病院
精神病質と判断された犯罪者を収容する精神病院です。国立病院として設立されたもので、現在は試験的に運営されている段階にあります。患者は日中、併設されている更正院や特別病棟に隔離された状態で服役しており、治療のときだけ病棟へと移されます。鑑定を行なうのは精神科医と術法師で、双方の鑑定結果をもとに総合的な判断がなされます。
○ファレリア薬草店
夢見街の北の端にある小さな薬草店で、裏手に個人の小さな薬草園がつくられています。店長の「ダドリー=ファレリア」氏は、薬師であると同時に市井の博物学者でもあり、朝方や休みの日に郊外に出かけて、植物の採集や観察を行なっています。
彼は放浪民とも深く関わりをもっており、互いに薬草や情報を交換しています。そのため、一般的な医学では知られていない効果的な治療法も知っていて、近隣の人々にとても頼りにされています。しかし、それは医学会で認められるものでありませんし、放浪民と親しくしていることを心良く思わない者も大勢おり、あくまでも庶民の味方といった存在でしかありません。
○占い広場(ガナード広場)
もともとは首都防衛のための小砦が置かれていた場所ですが、その必要がなくなってから広場に改装されました。もともとは砦の名前を取ってガナード広場と呼ばれていたのですが、この街に夢使いが訪れてからは占い小屋を開く人々が多くなったために、一般には占い広場で知られています。
この広場の周囲には湧水を流している掘があって、鯉などの魚が放してあります。休日になると、この水掘には釣りやボート遊びをする人々が集まり、のんびりと憩いのひとときを楽しんでいます。
▼ベル=ジャックの塔(身投げ塔)
占い広場にある高さ50mほどの塔で、もともとは郊外を監視するために建てられた物見の塔です。市内にある様々な塔から鐘を盗んだ「ベル=ジャック」と呼ばれた犯罪者が、最後に身を投げた塔であることから、このような名前で呼ばれるようになりました。
その後、この塔では飛び降り騒ぎが定期的に起こるのですが、それらは自殺ではなく科学的な冒険と呼べるものでした。熱気球を背負って飛び降り、見事に自説の正しさを証明した科学者「アイノア=ピアソール」にはじまり、途中で翼が折れて大怪我を負ったものの、数秒間とはいえグライダーで空を飛んだ「ティエリー=クーリッジ」など、先人の偉業に憧れてこの場所から空を目指そうとする者は後を絶ちません。
この場所で飛び降り騒ぎが起こるのは、ちょうど塔の前に水堀があるためなのかもしれません。落ちても大怪我をする心配がないため、最近では羽ばたき用の翼を背負ったタワージャンパーが頻繁に出没するようになっており、ちょっとした街の名物となっています。このようなイベントがある時は、どこから噂を聞き付けて来るのか、広場には食べ物屋の屋台などが立ち並び、いつもは静かなこの街がちょっとしたお祭り騒ぎになります。
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人物・集団
▼狂気の人妻 ケティア=レンフィールド
種族:白人 性別:女 年齢:31 職業:主婦
居住:夢見街 出身:アイリストール市解説:背中に大きな刀傷のある女性で、2年ほど前に強盗に押し入られて、娘を惨殺されたという過去を持っています。彼女は辛うじて一命をとりとめましたが、その時の恐怖の記憶は未だに彼女の心に暗い影を落としており、夜になると殺されたはずの娘を探して、家中を探し回ります。時には家を抜け出すこともあり、裸足でふらふらとさまよう彼女の姿を見かけることもあるかもしれません。
一言:「返してよ、私の子供……」
▼ジェナ=リベルテ
種族:白人 性別:男 年齢:19 職業:占い師
居住:夢見街 出身:フォンデル地方解説:近隣で一番の人気を誇る占い小屋を開いている、女性のように繊細で美しい顔だちの男性です。とても人当たりがよく、誰にでも優しく接してくれるので、大勢の女性たちが小屋の前に列をつくっています。彼の振り子占いはあまり当たるとは言えませんが、若い娘たちの目的は彼に会うことなので、まったく問題にはしてないようです。
限定情報:ジェナは人には言えない大きな秘密を抱えています。それは、彼は本当は男性ではなく、ジェナリンという名の女性だということです。以前の彼女は、田舎で普通に暮らしていた農家の娘でしたが、3年前のある日、目覚めてみると自分の体が男性のものに変わっていることに気付きます。あまりの出来事に、ジェナは誰にも相談することが出来ず、しばらくそのことを隠したままでいましたが、いくら待っても状況に変化はあらわれません。また、ちょうどその頃、望まない縁談話が持ち上がっていたこともあり、どうせ誤魔化しきれるわけがないと考えたジェナは、そのまま家を飛び出してしまいました。
その後、紆余曲折を経て、彼女はアイリストールに住むネムという名の老占い師のもとに身を寄せることになります。そして、この老婆から仕事の基礎を教わり、やがて独立して店を構えるまでになりました。元の体に戻る日までと思って始めた占いの仕事でしたが、少しは困っている人の役に立てているようなので、最近はこの生活を続けてゆくのも悪くはないと思うようになっています。一言:「なるほど、それはお困りでしょう。私が助けになれるかはわかりませんが……」
・関連:ジェナの占い小屋
▼盲目のアントーニュ
種族:白人 性別:男 年齢:21 職業:術法師/夢使い
居住:夢見街 出身:アイリストール市解説:生まれつき目が見えず、それゆえ夢を通じて世界を見てきた青年です。独学で夢系の術法を身につけ、現在はその技術を精神治療に役立てています。常に目を薄く開けており、非常に穏やかな風貌をしていますが、意外と短気な面も見え隠れします。同じ街に住む「ケティア=レンフィールド」の治療を受け持っていますが、彼女の心に残された傷は深く、なかなか良い兆候は見られないようです。
一言:「駄目だよ、彼女は忘れたかったのに……」
・関連:ケティア=レンフィールド
▼呪医 ナゼル=ボードレー
種族:白人 性別:男 年齢:37 職業:術法師/呪医
居住:夢見街 出身:カンカーレ市解説:非常に珍しい呪医としての技術を持つ男で、犯罪の多いこの街では人々に頼りにされる存在です。常にのんびりとした口調で話し、彼が慌てる姿を見たものはおりません。しかし、その実は情熱家であり、患者に対しては非常に親身になって対応してくれます。というのは、彼は妻と子を流行り病で亡くしており、その辛い経験から医者を志したからです。
一言:「あの子は小さく丸くなっていたよ……」
▼自称看護婦 キキ=アイアラン
種族:白人 性別:女 年齢:17 職業:看護婦(自称)
居住:夢見街 出身:アイリストール市解説:ナゼルの手伝いをしている少女で、看護婦を自称していますが、看護学校で知識や技術を学んだわけではありません。もともとはスリで生計を立てていたのですが、仕事でミスをして袋叩きに合って倒れていたところを、ナゼルに助けられました。それ以来、半ば強引にナゼルのもとに転がり込み、その手伝いをしています。彼女の治療は非常に荒っぽいのですが、その態度はいつも真剣で、非常に好感が持てます。
一言:「人って、けっこう簡単に死ぬんだね……」
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