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実際のプレイにおいては、キーパーは様々な役割をこなさなければなりません。キーパーの仕事は大きく分けて、シナリオ作成者、司会進行役、審判役、管理者の4つに分類されます。
■ シナリオ作成者 ■ |
キーパーはプレイの前にシナリオを作成し、果たすべき課題を設定しておかなければなりません。それから、シナリオのバランスを取るのもキーパーの役目です。もちろん、これは登場するキャラクターに向いた目的でなければなりませんし、キャラクターが持ちうる手段で解決できる可能性がなくてはなりません。戦闘などが起こって死の危険が予想される場合は、なおさらバランス調整を慎重に行うべきでしょう。なお、シナリオはメモ程度で構いませんので何かに記述しておくべきです。
シナリオの他にも、よく使うルールや参照項目はコピーしておいた方が便利ですし、プレイ中に使用する小道具などを準備しなければならないこともあります。プレイ中によく使われる小道具には、地図や情報を記したメモなどがあります。
■ 司会進行役 ■ |
キーパーはシナリオの全貌を知る唯一の人物ですから、自動的にセッションの進行役も務めることになります。司会進行役としてのキーパーは、シナリオを基にプレイヤーを誘導したり、世界の描写や設定の説明を行ったり、PCの行動に対してリアクションするなどの役目を負います。
▼情報の提示
PCがいる場面を描写し、どのような状況にあるかを説明しなければなりません。また、質問があった場合には、PCやプレイヤーが知りうる限りにおいて情報を与える必要があります。
▼リアクション
プレイヤーのアクションに対してリアクションを返すのもキーパーの仕事の1つです。
▼発言の管理
キーパーはセッションの進行を主導する立場ですから、プレイヤーの発言や行動の管理を行う役目も負っています。また、何かもめ事が起こった時には調停役を求められることになります。
▼行動の管理
ルールに基づいて判定する必要のある状況においては、プレイヤーに指示をして判定をさせたり、場が混乱しないよう行動の順番を決めるなどして、セッション進行がスムーズに行わなわれるよう努めなければなりません。
■ 審判役 ■ |
キーパーは必要に応じてプレイヤーに行為判定を行わせ、審判としてその結果を判断しなければなりません。
▼ルールの把握
キーパーは審判役を務めるため、ルールを熟知している必要があります。ルールを知らないプレイヤーがいた場合には説明したり、質問に対する回答も行わなければなりません。
▼ルールの適用
状況に応じてルールを適用し、どのような判定を行うかを決定します。判定の基準を示したり、出来ることと出来ないことを明らかにする必要もあります。また、最終的に結果を評価し、それに応じて状況を変化させるのも仕事の1つです。
▼ルールの補完
ルールは世界の全てを網羅しているわけではなく、その中でゲームに必要と思われるものを抽出してルール化しています。もし、ルールに記載されていない事態が生じた場合、それをどのように判定するのかはキーパーが決定することになります。
▼プレイの評価
キーパーはセッションの終了後にプレイの評価を行って、与える経験点を決定する役目も負います。
■ 管理者 ■ |
時間管理やストーリー管理、あるいはNPCを含めた世界の管理を行わなければなりません。セッションの展開を考える上では、シナリオがどこまで進行したのかをしっかり把握しておく必要があります。
▼状況の管理
舞台世界の管理を行うのはキーパーの役目であり、状況や時間の変化といった全てをキーパーが統括します。
▼NPCの管理
TRPGでは、プレイヤーが管理するキャラクター以外の存在は、全てキーパーが担当することになります。NPCは人物ばかりではなく、怪物などの存在も含まれます。NPCはPCと同じようにルールに従って活動しますので、必要があれば事前にデータを作成しておかなければなりません。
▼物語の管理
TRPGはプレイヤーの判断やPCの行動結果に応じて、先の展開が変化する構造になっています。キーパーは物語の管理者として、シナリオの流れに応じてセッションの展開を調整する必要があります。
▼時間管理
プレイ時間に応じて場面の転換を早めるなど、セッションの時間管理を行うのもキーパーの役目となります。
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キーパーはプレイに際して、以下のような事柄に注意しておく必要があります。
これらの注意点の中には、プレイヤーにも当てはまることが幾つか含まれています。プレイヤーも一通りはルールを覚えておくべきでしょうし、ゲームを楽しくしようという努力は行わなければなりません。また、自分が特別扱いされることを望むべきでもありません。わがままは控えて、まず周囲をよく見ることを心がけましょう。プレイヤーはお客様ではありません。楽しみを与えられて当然と思うべきではありませんし、自分だけの楽しみを追求して他人をないがしろにしてもいけないのです。自分の楽しみをほどほどに押さえて、他のプレイヤーのフォローを行うべき場面もあるでしょうし、必要があればキーパーを補佐してあげるべきなのです。TRPGは全員で楽しむことを目標とする遊びであることを、まず第一に認識しておいて下さい。
■ エンターテイメント性 ■ |
まず、キーパーはプレイヤーを楽しませる要素を提供しなければなりません。そもそもプレイヤーは楽しむためにゲームに参加しているのですから、最低限何らかの楽しみが保証されなければ、ゲームに参加する意味自体がなくなってしまいます。キーパーはプレイのあらすじを決めておく権限が与えられていますが、まずは考えたシナリオがプレイヤーの嗜好に合っているか、課題がプレイヤーの熟練度やキャラクターの能力に適した難度であるかを考慮する必要があります。
また、キーパーはストーリーテラー(語り手)ではありますが、実際にストーリーを進行させるのはプレイヤーに他なりません。プレイヤー自身が全く動こうとしない場合は別ですし、導入や展開の一部で多少強引に話を進めても構わないこともあります。しかし、キーパーの語りだけで話が進んだり、NPCだけが活躍してPCの見せ場を全て奪ってしまうようなシナリオでは、プレイヤーは楽しいはずがありません。プレイヤーはキーパーが書いた小説を読むためにゲームに参加しているわけではない、ということをよく覚えておいて下さい。
かといって、これらのことを過剰に考える必要はありませんし、キーパーは一人でゲームを盛り上げる義務を負っているわけではないのです。キーパーもゲームの参加者であり、プレイヤーと同じようにゲームを楽しむ権利があります。全員で楽しく遊ぶためにはどうすればよいのか、そのことを第一に考えて下さい。
■ 公平な判断 ■ |
次に、キーパーは公平な存在でなければなりません。ルールを適用する審判であることはもちろんですが、全体を見て話を進行させる必要があります。特定のプレイヤーだけが出しゃばって、全く活躍ができないプレイヤーがいるというのは、TRPGというゲームでは非常に好ましくない状況です。当然のことながら、特定のプレイヤーをひいきしてはいけませんし、逆にいじめるようなことも厳禁です。わがままやルールに反した行為には注意、もしくは警告しなければなりませんが、それは攻撃ではなく審判による裁定でなければならないのです。
それから、プレイヤーを甘やかしてもいけませんし、厳しすぎてもいけません。また、その基準をキーパーの都合でコロコロと変えるべきでもありません。判定の難易度や敵の数などのバランスを取ることは必要ですが、シナリオの結末を決めるのはプレイヤーの選択です。プレイヤーのミスはミスとして扱わなければなりませんし、キーパーが想定していなかった選択枝を取った場合でも、それは正当に評価されなければならないのです。何があっても同じ結末にたどり着くような予定調和的なシナリオ進行は、プレイヤーの意志や行動を全く評価していないことになります。たとえプレイヤーに気づかれていなくても、それはプレイヤーに対して失礼な行為に当たります。キーパーはプレイヤーの行為や選択に対して、(ルールや世界設定に応じた)的確な結果を返す必要があるのです。
■ 態度 ■ |
最後に、キーパーは常に毅然とした態度でプレイヤーに接して下さい。キーパーといえども人間ですから、ルールの適用を間違えることもあります。しかし、本来ゲームにおいて審判に対して意義を挟むことはプレイヤーには許されない行為なのです。もちろん、キーパーがおかしたミスを知らせることは構いませんが、プレイ中に意義を挟むべきではありませんし、それに対して変更・訂正を行うかどうかはキーパーに権利が委ねられます。仮にルールの適用を間違っていたとしても、とりあえず決定的なミスでない限りはそのままゲームを続けた方がよいでしょうし、1つのシナリオを遊んでいる間にまた同じ場面が出てきた時は、なるべく統一した方法で判定を行わせるべきです。そして、ゲーム終了後にミスを詫びるなり説明を行うなりして、次回のプレイへと備えるようにして下さい。
かといって、キーパーはルールを好きに変更してよいわけではありませんし、変更を行ったり選択ルールを使用する場合は、ゲームを行う前にプレイヤーたちにそれを説明しておく必要があります。キーパーの横暴が許されているわけではありませんので、その点は間違えないように注意して下さい。
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キーパーは脚本家であり、審判であり、演出家でもあるという、非常に大変な役目です。セッションの前にはシナリオを準備しなければなりませんし、苦労してつくったシナリオがいとも簡単に崩壊してしまうこともあります。プレイヤーに比べると、キーパーの方が圧倒的に労力と時間を費やさなければなりません。
キーパーにはこのように大変なことが多いですが、ゲームにおいて大きな権限が与えられている分だけ、プレイヤーにはない楽しみを味わうことが出来ます。一般にキーパーが楽しむことが出来るのは、以下のような要素についてです。
▼エンターテイナー
まず1つ目の楽しさは、人を楽しませ喜ばせることに対するものです。これはキーパーがエンターテイナーでなければならないということではなく、エンターテイナーとして楽しみを提供できる可能性を意味しています。もちろん、プレイヤーもこの要素を持っていますが、シナリオとその展開を考え、コントロールすることが出来るキーパーこそ、最もこの楽しみを味わえる役目といえるでしょう。
▼舞台の創造
キーパーは自由にゲームの舞台を設定することが可能です。システムによって予め決定されている部分も多くありますが、何を利用するか取捨選択する権限が与えられているのはキーパーだけです。また、決められていない部分については、シナリオに合わせてキーパーが自由に配置することが出来ます。
▼キャラクター
キーパーは1つのセッションにおいて、多彩なキャラクターを操れる楽しみを持っています。キーパーはプレイヤーとは異なり、一般的なパーソナリティを持つキャラクターだけでなく、悪人や怪物といった存在を自由に操ることも出来ますし、PCには許されていない職業や術法といった手段を選択することも可能なのです。
▼物語の構築
シナリオを作成するのはキーパーの役目となります。これは大変な作業ではありますが、自分の好みのストーリーを構築できることも意味しています。自分が生み出した物語によって他人を楽しませるということは、現実の世界ではなかなか経験できるものではありません。
キーパーもゲームの参加者の1人であり、世界そのものを演じるプレイヤーという考え方も出来ます。負担ばかりに目を向けず、まずはゲームを楽しむことを第一に考えて下さい。
残念ながらキーパーに向いていないという人も存在するでしょうが、最初から諦めずに何度か試してみてから結論を出して下さい。当然、最初のうちは失敗はつきものです。熟練したキーパーも最初は初心者だったわけですから、まずは恐れずに挑戦することです。そして、セッションを繰り返してゆくうちに、自分なりのマスタリング手法を身につけてゆくことでしょう。
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