リボーンが勧めるアトピー治療のありかた(『Reborn』71号より)
構成・曽我部ゆかり
監修・江部康二(高雄病院理事長)
外用療法(プロトピック軟膏とステロイド外用剤)の位置づけ
くすりに頼ることなく、症状を改善させていくために
患者さん自身の取り組みが一番大切
アトピー性皮膚炎はなぜ発症するのでしょうか? 食べ物やダニなどのアレルゲン説がいちばん多く語られているようですが、実は原因を一つに特定するのはむずかしい病気です。そのためこれといった特効薬がなく、患者さんは様々な情報に翻弄されているのが現状です。
しかし、不快な症状をスキンケアで改善させたり、外用療法でコントロールすることは充分可能ですし、それにともないライフスタイルを見直すことで、根治につなげていくこともできます。
ライフスタイルを見直すということは、すなわち治す力を邪魔しているモノを見直すことです。治す力を邪魔しているモノ…。それは食生活であったり、夜更かし・朝寝坊の生活や、ストレスの多い人間関係だったりもします(アトピーコップの図参照)。
つまり、生活習慣病といわれているアトピーは、患者さん自身の取り組みでいくらでも症状を改善させていく余地のある病気ともいえるのです。
不快な症状を改善させることの意味-「生活の質を守る」
ところで、アトピー・ネットワーク・リボーンから『Reborn』別冊第一弾の『ステロイドの上手なぬりかた』に引き続き、第二弾『プロトピックの上手なぬりかた』を発行しました。
監修は、高雄病院理事長でリボーン運営委員代表の江部康二dr.と、同病院内科医長の松本哲宜dr.の二人の医師です。
プロトピック軟膏は、一九九九年十一月にアトピー患者さん用に保険収載され発売された免疫抑制剤で、アトピーに用いる場合には坑炎症作用を期待して使います。
この新薬は、アメリカでは「ミラクルドラッグ」とうたわれているほど、アトピー患者さんにとってありがたいくすりです。それは、最も気になる顔や首の症状をコントロールするため長期にわたって使うことができるからです。
これまで強力に炎症を抑える力のあるぬり薬はステロイド外用剤しかありませんでした。しかし、顔や首などに「しっかり症状をコントロールできるまで」ステロイド外用剤を用いれば、年数とともに副作用が出現する可能性を否定できません。
しかし、プロトピック軟膏なら、後に尾を引く副作用がないため、長期にわたって使うことができるのです(もちろん使用上の注意を守った上での話ですが)。
ただ、使いはじめに一時的にヒリヒリしたりという副作用が出現するため、それをどう乗り切って使いこなしていくかが、このくすりの最大のポイントでもあります。
症状を改善できれば心理的にとても楽になります。心理的にポジティブになることで、自己治癒力が高まり、全体としてアトピーが改善していく可能性を大いに秘めているのです。
高雄病院では、このようなメリットを治療の上で最大限に生かすため、積極的に処方してきました。それは高雄病院では「生活の質を守る」ことをアトピー治療において最も大切なことの一つに考えているからです。
プロトピック軟膏が発売されて以来、その使用量は高雄病院が日本一だということなので、おそらく臨床例も日本一でしょう。その豊富な経験をもとに、二人の医師が執筆し、ぬりかたのノウハウを一冊の本にまとめたというわけです。
このぬりかたのノウハウは、「副作用を極力ださないため」「くすりに頼ることなく症状を改善させていけるため」のテクニックです。
| アトピー治療の優先順位 |
1.生命を守る |
2.生活の質を守る |
3.副作用をださない |
真に良薬と認めたからこそ
しかし、一部の消費者ならびにNPOの団体からその安全性をめぐっての物議がかもしだされ、一部の新聞や雑誌で安全性についての疑問を投げかける記事が載りました。
それを読んだ患者さんが不安になり、高雄病院や『Reborn』編集部にも問い合わせが
来たりもしました。
それを受けて、『プロトピックの上手なぬりかた』を発行以来、幾度かにわたり、『Reborn』誌上でもプロトピック軟膏の安全性についてを特集してきました。今号の徒然日記で江部康二dr.と松本哲宜dr.がもう一度、詳しく「新薬が世にでるとはどういうことか」また「新薬を世にだすためにどのようなプロセスがとられているか」などをふく
め、プロトピック軟膏の安全性について解説しています。併せてご一読ください。
ここでお断りしておきたいのは、アトピー・ネットワーク・リボーンも高雄病院も、藤沢薬品工業から頼まれてこの小冊子をまとめたわけではないということ。また、一つのくすりに頼った治療法を推奨しているわけでもないということです。
そのことをもう一度強調したく、今回の巻頭では、アトピー・ネットワーク・リボーンが考えているアトピー治療のありかたを総論としてまとめることにしました。
アトピーコップを思い出しましょう!
アトピーが発症する原因は一体なんでしょうか? ここで、もう一度アトピーコップを思い浮かべてみましょう。新しい会員の人ははじめて耳にされる言葉かもしれません。
1.体質
2.年齢
3.皮膚生理機能異常(易刺激性とバリア機能低下)
4.ストレス(心理的・生理的・物理的)
5.自律神経異常
6.アレルギー(食物・ダニ・真菌・花粉etc)
7.刺激(機械的・物理的・化学的)
8.食生活(油・乳製品・砂糖の過剰摂取etc)
9.季節の変化
10.気象(暑さ・寒さ・湿気・乾燥etc)
11.空気汚染(室内・大気)
12.感染(ウイルス・細菌etc)
13.運動不足
14.その他
この考えを治療のベースにすると、あれもこれもと治療法の選択に迷っていた頭がすっきりします。
このコップが意味することは、アトピーは1から14までの項目が複雑にからみあって、人体の治す力(コップ)から溢れてしまうと、症状が発症するというわけです。もちろん、ストレスが強い人、アレルギーの原因が強い人と、人それぞれですが、この十四の項目をそれぞれ見ていくことが大切なのです。
外用療法の位置づけ
さて、本題の「外用療法の位置づけ」を考えてみましょう。アトピーコップの十四の項目のうち、3.皮膚生理機能異常(易刺激性とバリア機能低下)の対策にはまさにスキンケアと外用療法が要になってきます。
アトピーは十四の項目が複雑にからみあって発症すると述べましたが、3.皮膚生理機能異常(易刺激性とバリア機能低下)がベースとなっていることははっきりしています。
普通の肌に比べ、アトピーの肌は、刺激に対して敏感という特徴があります。刺激というのは、項目7にあるように、機械的・物理的・化学的で、一体なんだろうと思われるかもしれませんが、たとえば衣服が肌にこすれることによる刺激(物理的)とか、衣服に残留している洗剤が刺激(化学的)となったりするということです。入浴の際の石鹸やシャンプーなど、また、汗やほこり、よだれなどや、泥や油汚れなども刺激となる場合があるのです。
普通の肌の場合には、バリア機能が正常に働いているためにちょっとしたことでは刺激にはなりません。でも、アトピーの敏感な肌はバリア機能がおとろえているために、様々な要因が刺激となってしまうというわけです。
ですから、そのバリア機能を修復させるために、スキンケアが大事になってくるし、炎症を起こしているような場合には、外用療法で一旦炎症を鎮めることが必要になってくるのです。
あなたのアトピーはどのタイプ?
では、あなたの皮膚の状態について、みていきましょう。
| 1.白くカサカサしているが痒みがない |
→ |
炎症のないタイプ |
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2.赤く熱を持ち、腫れて、痛がゆい
3.赤く熱を持ち腫れて、ジュクジュクと
汁がでている部分もあり、痛がゆい
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→ |
炎症のあるタイプ |
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1.このタイプはいまの季節に症状が悪化しやすいようです。冬が近づき、大気の乾燥が進むと肌の状態も乾燥しやすくなります。また冬には、暖房器具の使用で室内の空気もますます乾燥するため、症状が一層深刻になることもあります。
このタイプでは、皮膚炎の炎症は認められません。したがって、抗炎症作用を期待して使う外用剤(プロトピック軟膏やステロイド外用剤、非ステロイド系の炎症作用のある軟膏)を使う必要はありません。
まず保湿効果の高いローションや乳液などでしっかり保湿し、肌の水分を閉じこめるためにワセリンやスクワランオイル、ホホバオイルなどのオイルをしっかりぬりましょう。
そうすることで皮膚のバリア機能が高まり少々の刺激を受けても大丈夫になります。
このタイプは日ごろのスキンケア次第で症状は改善し、根治にもっていくこともできます。
2.このタイプは炎症があるので、まず、ステロイド外用剤などの抗炎症作用のある軟膏で炎症を鎮めます。また、顔や首には長く尾を引く副作用の少ないプロトピック軟膏を用いるとよいでしょう。顔や首などはプロトピック軟膏をしっかり使うことで、症状を軽くしていくことができます。
3.このタイプの場合には、ステロイドで抑えていた症状が、ステロイドの使用を中断したことにより悪化してしまった(元疾患の悪化)リバウンド現象である可能性があります。まず、皮膚科を受診してきっちり炎症を抑えることから治療をはじめてください。
その場合、程度によりますが、まれにはステロイドを内服しなければならない場合もあります。しかし、一般的にはしっかり外用剤でコントロールできる場合がほとんどですの
で、医師と相談しながら、外用療法を再開し、まずは炎症を抑えてください。その際には、患者さん自身の知識として『ステロイドの上手なぬりかた』をじっくり読んでおいてもらえば役立つと思います。
炎症が治まってきたら、自然治癒力を高める治療法やスキンケアとの併用で、ステロイドの強さ・量もだんだんと弱くしていくことができ、やがては離脱できるようになっていきます。
上記のことを念頭に置いていただいて、それぞれ自分にあった治療を模索する上での目安にしていただければ幸いです。
その上で、徐々に、食生活の見直し、ライフスタイルの見直し、さらには心の持ちかたを変えてみたりということに取り組んでいっていただければと思います。アトピー治療はあせることなく、じっくり取り組んでいくことです。そうすれば、必ずや明るい未来が待っていることでしょう。
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