(1)スキンケアの意味
赤み、熱、腫れ、黄汁、痒みを持っているときは、炎症を起こしている状態です。
そのようなときは、抗炎症作用のある軟膏を、上手に使いこなしていきます。抗炎症作用のある軟膏についてはこの章の最後に記述してあります。
アトピーの症状が安定して単にかさついているだけならスキンケアの出番です。皮膚を清潔に保つことはもちろん大切ですが、汚れてもいないのに、毎日毎日石鹸を使う必要はありません。一方、泥や油がついていたり、軟膏が残ってベタベタしていれば、当然、石鹸を使ってきれいにしてください。
また単なるカサつきだけならわざわざ石鹸を使って皮膚を洗い落とすことはありません。それでなくてもアトピー皮膚は乾燥しているのですから、シャワーで汗を流してさっぱりすれば充分でしょう。
皮膚を清潔にしたあとはぬり薬をぬって保湿し、皮膚のバリア機能を保護し、維持することが、種々の刺激から痒みを防ぐポイントになります。
(2)軟膏療法の前の準備
1. 皮膚を清潔にしよう
外用療法でいちばん大切なのは、患部をよく洗い清潔にしたあとで、薬をぬることです。黄汁が固まってコペコペになっていたり、よごれがついたままだったり、以前にぬった軟膏がベタベタ残っている皮膚に、外用薬をぬっても効果は期待できません。
アトピー性皮膚炎が悪化して、ひっかき傷があると痛いからと入浴しない人や、入浴してもちゃんと洗わない人がいます。また、ヘルペスや細菌感染を起こしているときは、入浴してはいけないと思っている人も多いようです。
でも、このようなときこそ、入浴したりシャワーを浴びて患部を清潔にしないと、皮膚の常在菌が繁殖して、アトピーを悪化させたりしますし、ひどいときは二次感染を起こすようなこともあります。
2. 石鹸、シャンプーの種類と使いかた
自然食品店などに売っている無添加のシンプルな百円から三百円程度の石鹸で充分です。ナイロンタオルは厳禁です。やわらかい綿タオルでやさしく洗います。強くこすると皮脂や表皮がとれすぎてバリアー機能が低下し、痒みを誘発することがあるので、こすりすぎないように注意しましょう。また熱すぎるお湯は皮脂をとり過ぎるし、痒みを誘発することがあります。ただ、炎症が強い部位は、石鹸の泡を手にとって、そのままそっと手で洗います。
シャンプーもやはり自然食品店などに売っている無添加のシャンプーが刺激性も少なく安全性も高いようです。リンスはしなくてもよいようなものですが、髪のきしみが気になれば、洗面器一杯のお湯に酢を大サジ一杯強の割合で入れて、髪の毛をすすいでさっとお湯で洗い流すとよいでしょう。面倒くさければ、石鹸シャンプーのメーカーがだしている無添加のリンスもあります。合成リンスは合成シャンプーと同様に刺激性が強いので注意が必要です。
3. 軟膏やかさぶたのとりのぞきかた
亜鉛華軟膏やサトウザルベは、皮膚にべっとりつくので、とりのぞきにくいことがあります。このようなときは、オリーブ油などをガーゼに充分浸して、皮膚の上から軽くたたいたり、押しつけるようにしてふきとりましょう。
黄汁がかたまったものやかさぶたは、入浴でふやけさせたあと、軽くこすりとれる範囲で処理します。無理やりはがす必要はありません。
また、かさぶたに亜鉛華軟膏をぬったガーゼを貼って、半日ぐらいあとでオリーブ油などでぬぐうとスムーズにとれやすいようです。
(3)皮膚の消毒・超酸化水
1. 皮膚の常在菌の繁殖を抑える
アトピーの皮膚はもともとバリア機能が弱いので、健常な皮膚に比べると常在菌(皮膚表面に日常的に住み着いている細菌)の数が多いのです。また、はっきり化膿していなくても、黄汁がでたり、掻き傷があったり、ゴワゴワしているようなときは、黄色ブトウ球菌が増加しています。その毒素が炎症を悪化させ、痒みを引き起こします。このようなとき、皮膚を消毒すれば菌の数は減少し、アトピーの悪化を防ぐことができます。
2. 超酸化水
イソジン、ヒビデンなど、もともとある消毒剤は、まれに接触アレルギーを起こすことがあり、除菌効果も不充分でした。
超酸化水は、安全性・効果の面で、現在もっとも優れた皮膚消毒剤です(超酸化水は単なる酸化水とは違います)。半年〜一年、イソジンで消毒し続けても消えなかったMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が、超酸化水の使用により、一〜二週間で消失した例もあります。しかも、高雄病院では一九九四年七月に、超酸化水による消毒をはじめてから、すべての患者さんの皮膚のMRSAが一〜三週間で消失しています。
適切な使用方法が、効果獲得のポイントになるので、超酸化水の性質の解説と使用法のノウハウを説明します。
なお、「超酸化水でアトピーが治る」と書いてある本もありますが間違いです。あくまでもアトピーの悪化要因の一つである細菌増殖をコントロールしているのです。
3. 超酸化水の性質・役割
PH2.7以下、酸化還元電位1000mv以上の水です。水道水に少量の食塩を加えて電気分解して作ります。この水は、いままで理論的には優れた殺菌効果があることはわかっていましたが、電気分解の技術が追いつかず、作ることができませんでした。それが特殊電極の開発により、数年前から可能になったのです。
1)殺菌作用
溶存する活性塩素(HOCL)、活性塩素(O3)の働きで強力な殺菌効果を示します。細菌に接触すれば、瞬間的に酸化殺菌し電子を放出し、酸化還元電位が下がり、中性の水になります。一般細菌、白癬菌、カンジタなど真菌(カビ)、ウイルスと広範囲の微生物菌の殺菌に効果があります。
2)消毒
皮膚、手指、まな板、床、テーブルなどの消毒液として使用できます。
3)安全性
超酸化水は塩素独特の臭いがします。しかし、皮膚・粘膜などの有機物に触れると、速やかにただの水になるので、刺激性はなく極めて安全です。
4)酸化注意
酸化作用で錆びるおそれがあるので、金属容器の使用は避けてください。
4. 皮膚への使用方法
超酸化水は血液や滲出液に触れると速やかにただの水になります。殺菌作用の低下を防ぐため、できるだけ使用部位の汚れを洗い落してから使用してください。一日も二〜四回使用してください。
超酸化水をガーゼなどに浸し、しぼらないでドボドボにして、消毒する部位に“軽く押しつけて皮膚にしみこむように”しながらあてていきます。できれば、ぬれた状態を三十秒ぐらいは保ってください。その後、ガーゼをしぼってふいてください。時間がないときは、数秒から十秒ぐらいでもよく、ウエットティッシュのような感覚で、超酸化水を浸したガーゼで汗をふくようなやりかたでもかなり効果はあります。
超酸化水は殺菌したあとすぐにただの水になり、持続性がないので、消毒回数がポイントです。なおガーゼに浸した超酸化水は、じょじょに効力が減るので、速やかに使用してください。
霧吹きでふきつける方法は、健常な皮膚にはそのままで効果がありますが、アトピーの症状がある皮膚では、肌理(きめ)に超酸化水が浸透しにくので、上記のやりかたを併用するのがもっとも効果があります。
5. 超酸化水を加温(40〜45度)する場合
寒い季節は冷たい水を肌につけると、子どもなどはいやがることがあるので、温めて使うとよいでしょう。直接火にかけて、加温することはやめてください。必要量だけフタ付きのの容器に移してフタを閉じ、温水につけて温めてください。
なお、加熱〜冷却を繰り返すと効力が低下します。必ず必要量だけを加温してください。
6. 保存上の注意
1)保存方法
超酸化水はデリケートです。保存状態が悪いとすぐに普通の水になってしまいます。保存には充分配慮してください。写真現像液用の容器が遮光にはもっともよいでしょう。容器をさらに黒いビニールなどでおおうことをおすすめします。
a. 遮光……日光に当てないようにしてください。
b. 密封……栓をしっかり閉めて、容器の外の空気に触れないようにしてください。
c. 冷暗……暗くて涼しいところで保存してください。
2)PH濃度のチェック
時々、PHをチェックして効果がある常態かどうかを確認してください。容器上部にたまった塩素特有の臭いが強くあれば、まず大丈夫です。確認するには専用の試験紙(ヨウ化亜鉛澱粉紙)を浸して、すぐに濃い青紫色に発色すれば効力があります。
3)保存状態と使用期限
a. 遮光なし・密封なし状態……明るい部屋のなかで、コップに入れて放置しておくと、およそ数時間で失効します。二〜三時間以内に使い切ってください。
b. 一般的な遮光・密封状態……毎日使用して、その都度開けたり閉めたりしていても、二〜三週間程度使用可能です。
c. 完全遮光・密封状態……まったく開閉せずに、遮光・密封状態であれば、四〜六週間程度使用可能です。
7. 超酸化水を手に入れるには
最近は、医師・看護婦の手洗いや、器具・手術場の消毒などに、超酸化水を使用する医療機関がじょじょに増えてきています。消毒効果・安全性にすぐれ、手荒れもしないからです。衣服・シーツの消毒にも使えます。近くに使用している医療機関があれば利用させてもらいましょう。高雄病院でも患者さんにわけています。
また業務用は、百三十万〜三百万円しますが、小型の家庭用の超酸化水製造器が、六万〜九万円で各メーカーから発売されています。
余談ですが、ゴルフ場でも農薬の使用料を減らすため、超酸化水を使用している良心的な施設もあります。超酸化水をわけてもらえるかもしれません。
(4)スキンケアのためのぬり薬
1. 民間薬
1)椿油
古来から、日本の女性の髪に使用してきました。人の皮膚に成分が近く酸化しにくく安定しています。乾燥した皮膚に油分を補給し保護します。顏でも頭皮でも体でもどこにぬってもよいでしょう。椿油は日本薬局方薬品として、軟膏基剤としてもよく利用されています。
2)オリーブオイル
古代エジプトやシュメールまでさかのぼる歴史ある化粧オイルで、クレオパトラが使っていたので有名です。効能は椿油と同じようなものです。
3)馬油
少しドロッとしています。乾燥皮膚にはよいでしょう。
4)スクワランオイル
深海鮫の肝油から抽出した油で、人間の皮膚の成分でもあります。臭いがいちばん少ないので使いやすい利点があります。
※いずれも純度100パーセントのものがよいでしょう。自分にあうものをみつけてください。
2. 保湿剤
炎症がおさまって皮膚がカサカサのときに、皮膚のバリア機能を作ってあげる役割で使います。
1)ワセリン
透明で無臭の軟膏基剤で石油から抽出した鉱物油です。油分補給により皮膚を保護し乾燥を防ぎます。数十年、世界各国で使用されていますが、副作用の報告はほとんどありません。使用感はベタベタしています。
2)サンホワイトワセリン
極めて純度の高いワセリンです。単なるワセリンよりは紫外線を吸収しにく特徴がありますが、日焼け止めではありません。ぬったときのベタツキも単なるワセリンよりも少ないので顏や首にはぬりやすいようです。サンホワイトワセリンは保険が効きませんが、10グラム100円ぐらいと比較的安価です。
3)尿素系
尿素入り軟膏には、パスタロン、ウレパール、ケラチナミンなどがあり、どれも効果は同じです。角質化した皮膚の水分を保持し潤いをあたえます。べたつきがないので通学時や通勤時にも使用しやすいようです。ただ、尿素入り軟膏の一つの欠点は、掻き傷があった場合に、しみて痛がる人がいることです。しみても使用感だけの問題でとくに問題はありません。パスタロンが臨床的にいちばんしみにくいので、しみるのが気になる人におすすめです。
4)ヘパリン類似物質系
ムコ多糖類のヒルドイドという皮膚の水分を保つ薬があります。ヒルドイドは、牛の肺臓をすりつぶして作るヘパリン類似物質がふくまれています。人間の体にも似たような物質がありますす。だらだらぬっても問題ありません。
5)ビタミンA含有剤
ザーネはビタミンAをふくみ保湿作用があります。ユベラはビタミンEがふくまれています。血行を良くするので、霜焼けなどには適していますが、アトピーで炎症があるときには痒みを増すことがまれにあります。ザーネのほうが、アトピーの人にはおすすめです。
※なお油分をぬったとき、油焼けを心配する人がよくいますが、正常の皮膚にもアトピー皮膚以上に皮脂があります。いずれにせよ、適度の日光を浴びるのは結構ですが、日焼けはアトピーか否かに関わらず、皮膚によくないとされています。
(5)抗炎症作用のある軟膏
赤み、熱、腫れ、黄汁、痒みを持っているときは、炎症を起こしている状態です。このようなとき、副腎皮質ステロイドホルモンを使うかどうかは別として、抗炎症作用を持つ外用剤(軟膏)をぬる必要があります。ステロイド外用剤以外の安全性の高いぬり薬を上手に使いこなして、日常生活のなかで自分の皮膚を管理し、コントロールしてあげれば、そのままアトピー性皮膚炎の活動性を減らすことになります。皮膚症状が安定してからの治療法がスキンケアです。外用薬療法とスキンケアを上手に使い分けてください。
1. 西洋薬の軟膏
抗炎症作用をもつもので、最も強力なものはステロイドですが、ステロイドは次の章で詳しく述べることにします。ここでは非ステロイドで炎症を抑える薬について説明します。
非ステロイド軟膏で炎症を抑える薬はだらだら使っても問題はありません。ただ、百人に一人か二人の割合で、痒くなったり、赤くなったり、かぶれる人がいます。使用中に、痒みや赤みが生じたときには、医師に相談するか、他剤に切り替えるなどしましょう。
1)アズノール
胃潰瘍の薬アズレンを、ワセリン、ラノリン(羊の毛から得た脂)に溶かし込んだものです。半透明のブルーで臭いのあまりない軟膏です。皮膚、粘膜の傷、ザラつき、カサつきを修復し、抗炎症作用もあります。
2)亜鉛華軟膏
主薬は酸化亜鉛でワセリン、サラシミツロウが基剤の古典的外用薬です。湿潤、発赤、腫脹、熱をとります。単独でぬり続けると乾燥することがあります。
3)サトウザルベ
やはり酸化亜鉛が主薬で、菜種油、サラシミツロウが基剤として使用されています。比較的のびがよくぬりやすい軟膏です。湿潤、発赤、腫脹、熱をとります。亜鉛華軟膏をいやがる人に使えることがあります。
4)非ステロイド系抗炎症外用薬
アンダーム軟膏、スタデルム軟膏、ベシカム軟膏、トバルジック軟膏などがあります。副腎皮質ステロイドホルモン外用薬に比べると、抗炎症作用は劣ります。しかしステロイド外用薬のようなあとに尾をひく副作用は少なく、西洋医学的にはステロイド外用薬から離脱するためなどに使用します。かぜ薬の鎮痛解熱薬を皮膚に応用したものなので使用時に局所のアレルギー反応などがまれに発生することもあります。その時は使用を中止し、他の軟膏に切り替えるてください。
2. 漢方の軟膏療法
漢方の軟膏は一般に安全性は高く副作用の心配もないので、虫さされ、火傷、痔などあらゆる皮膚のトラブルに使えます。ただし、臭いがきつく、衣服に色がつくのが難点です。また、漢方薬でもまれにアレルギーを起こすこともあるので、合わないときは中止してください。下記の軟膏の特徴はおおよその意味なので、各自でいろいろ試してみてください。混ぜて使うこともあります。
ほとんどの漢方の軟膏は保険に通っていません。紫雲膏だけ保険に通っているのですが、適用は火傷と痔に限られています。アトピーの患者さんで、紫雲膏が大好きな人がいても、アトピーの場合は全身にぬるケースが多いので、それだけの量を「痔」のためとするわけにはいきません。アトピーの患者さんに処方する場合には苦しくなってきます。
1)紫雲膏(しうんこう)
紫根、当帰が主薬で、ゴマ油、ミツロウ、豚脂が基剤です。赤紫色のややきつい軟膏で、ほとんどの皮膚病に使用できます。とくに肌を潤す力がいちばん強いので、カサカサした皮膚病に適しています。炎症をとる力も少しあります。明代、外科正宗の潤肌膏に豚脂を加えたもので、江戸時代の華岡青州(全身麻酔為たに乳ガンの手術をした医師)の創方です。
2)太乙膏(たいつこう)
当帰、桂枝、大黄、芍薬、地黄、玄参、白〓がふくまれ、ゴマ油、ミツロウが基剤です。黄土色のやや臭いのきつい軟膏で、ほとんどの皮膚病に使用できます。抗炎症作用が紫雲膏よりやや強く、乾燥皮疹に効果があります。北宋・和剤局方が出典です。薬局で売っています。
3)中黄膏(ちゅうおうこう)
黄柏、鬱金が主薬で、ゴマ油、ミツロウが基剤です。黄色の軟膏です。バランスのいい薬で、赤く腫れた炎症を冷ます力が少し強くあります。薬局で売っています。
4)黄連膏(おうれんこう)
黄連、苦参、黄柏、蒼朮、竜脳のエキス末をワセリンに混ぜ込んだものです。焦げ茶色のやや臭いのきつい軟膏で、抗炎症作用が強く、発赤、腫脹、湿潤のある皮疹に効果があります。潤す力はあまりありません。黄連膏は高雄病院の院内製剤です。
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