紫雨林(Jaurim)
 韓国メディアには、ほとんど登場せず、地道なライブ活動により知名度を高めていった韓国No.1ロック・バンド。ライブ活動と聞いてアンダーグランドなイメージが連想されますが、実際にはメジャーとマイナーの間を浮遊する音楽性を示しており、それがジャウリムの特徴とも言えます。具体的な音楽内容ですが、ノリノリのアメリカン・ロックと冷たく凍り付きそうなUKロック(ネオアコやゴシック・ロック)の二面性をもっています。しかし紅一点女性ヴォーカリスト、キム・ユナも言っているようにジャウリムの真の姿は後者にあると言えます。個々の楽曲の出来も実に素晴しく、本家UKバンドに負けないだけの力量を兼備えたバンドだと言えるでしょう。

Released
(Up)date
Jacket
Title
Comment
1997
1集

Purple Heart

 若さと才能感じるデビュー作。音の薄さや音のバランスの悪さが目立ちますが、荒削りながら、デビュー作ですでに自分達のスタイルを確立していたことは立派です。
 特にジャウリム代表曲の一つでもあるネオアコ・サウンドの"パエ"(破愛)、唯一のバラード曲とも言える"アンニョン ミミ"、そして氷の女王"スージー・スー"を連想させる"vIOLenT VioLEt"の完成度は抜群です。中でもアイリッシュ・サウンドに韓国語が見事溶け合った"パエ"は絶品で、一度しか登場しないサビ・パートは泣けます。
1998
2集

戀人

 ジャウリムのもつダーク・サイドが見事爆発した傑作アルバム。コンセプト・アルバム形式をとっており、なかなか充実した選曲になっています。
 特にシングル扱い曲"ミアンヘ ノル ミウォヘ"(ごめん、あなたを憎んでいる)の楽曲は素晴しく、個人的には一番好きな曲です。
 このアルバムはジャウリムの1ステップの完了を位置づける重要な作品だと言えます。 
1999
2.5集

B定規作業

 新曲3曲を含んだリミックス集。前半をテクノ・サイドそして後半をアコースティック・サイドに分けており、企画物を超えて十二分に楽しめる作品に仕上がっています。
 テクノ・サイドでは、デジ・ロックあり、トリップホップありと既発曲をかなり大胆に解体しており、彼らのセンスが伺われます。
 新曲3曲はすべてアコースティック・サイドに収録されており、なかでも"レテ"は隠れた名曲です。
2000
3集

Jaurim,
The Wonder
Land

 充実した選曲の好盤。2.5集の成果が見事に現れており、音質共パワー・アップしたジャウリムを堪能することができます。
 今までにないハードな暗黒骨太ロックを聞かせる"ミス コリア"、本家アイリッシュ・サウンドを完全に超えた"セ"(鳥)、そしてデジ・ロックに挑戦した"チョクル"(赤涙)等秀作揃いです。
2001
Jaurim
'True'Live
 ジャウリム初のライブ盤2枚組。スタジオ・ワークも決して悪くない彼らですが、やはり彼らの本質がライブ・バンドであることを実感できる作品になっています。スタジオ・ワークとライブをきっちり分けて考えているようで、楽曲の多くがライブ用にアレンジされています。
 特に聞きどころはアメリカTVドラマ「スパイ大作戦」のテーマ曲を導入した"ポルレ"(虫)と韓国ミクスチャー・バンド"Funny Powder"とのコラボが冴える"Boxing Helena"です。そして止めは"ミアンヘ ノル ミウォヘ"のオシャレ・バージョンに尽きます。
2001
日本限定
Best盤

紫雨林
Jaurim

 ジャウリムの代表曲をほぼ網羅した日本限定完璧ベスト盤。収録曲12曲中6曲は楽器およびヴォーカル・パートを再レコーディングし、3曲は再トラック・ダウンしています。また全曲リマスタリングしているので、音質が強力に良いです。ジャウリムの作品を全部持っている方が買っても絶対に損はしません。
2002

(02.9.22)

4集
 もう韓国そしてアジアだけのバンドとは言わせないだけの力量を聞かせてくれる、ジャウリムの傑作アルバム。今まで陽(USロック寄り)と陰(UKロック寄り)の楽曲が明確に別れていた部分を楽曲の出来やキム・ユナのヴォーカルによってカバーしていましたが、今作では、見事にその壁をぶち破っています。
 またギターとキム・ユナのヴォーカルが今まで以上に全面に押し出されており(ベースもう少しがんばって欲しいです)、ギターVSヴォーカル対決も今作の聞き所の一つです。
 パティ・スミスを思わせる正統派ロックから内なる爆発に突き進む、アルバムの選曲順は実に見事です。
 確かにシングル向きの曲はありませんが、今までジャウリムにはなかったタイプの重量感ある曲"ベルベッソロウ"、"only one"、"望郷"のギターの歪みには痺れました。
 蛇足ですが、以前オムニバス・アルバムに収録されていた"イレブン"が隠しトラックに収録されています。
2003

(03.6.22)

日本限定
1st

#1

 ジャウリム、日本における正式1stアルバム。以前日本でベスト盤(1集〜3集より)を発表しているためか、4集より8曲、デビュー曲"Hey,Hey,Hey"、1集より"Waxing Helena"(ミルラプチョンサ)、"マロン人形"(マロン インヒョン)そして3集より"オレンジ・マーマレード"(オレンジ マルレイド)という選曲になっています。
 日本での先行シングルとなった"Hey Guys"(4集より)や"Hey,Hey,Hey"のようなポップ・チューンはJ-POPファンにも受けそうなのですが、日本の洋楽ファンに好まれそうな4集の他のヘヴィ・チューンが、どのように日本で受け入れられるかが最大のポイントだと言えるでしょう。
 そして今作では初とも言える日本語歌詞("Hey,Hey,Hey"、"Hey Guys"、"#1")を披露しており、賛否両論だと思うのですが、個人的には特に違和感はありませんでした。
 また"Waxing Helena"、"マロン人形"は再録ですが、特に"Waxing Helena"のアレンジは見事で、オリジナルより数段良い出来に仕上がっています。
 一つ残念なのは4集の"ペニヤ"(ファンよ)がカットされていることで、できれば収録して欲しかったところです。
 韓国にも勿論ロックバンドは数多く存在しているのですが、ジャウリムはメジャーとマイナーのサウンドをひじょうに上手くコントロールできるバンドだと言えます。
2004

(04.11.7)

5集

All You Need Is Love

 ジャウリム、久々のオリジナル新譜。前作4集はジャウリムがもつダウナー面の集大成的作品でしたが、今作ではジャケットからも分かるように、180度正反対のアッパー面を全面に押し出した作品になっています。
 残念ながら、個人的に好みのオルタナ色の強い曲は、大分減りましたが、キム・ユナのソロ活動の影響か、音楽性も、今まで以上に広がり、彼らの、さらなる成長を感じとることができます。
 本国韓国の(アンダーグランド)ロック・ファンから批判されることもあるようなジャウリムですが、彼らの音楽性の広さ、楽曲の構成力そしてアレンジ能力は他の韓国ロック・バンドより群を抜いているように思います。
2005

(06.10.21)

リメイク集

青春禮讚

 ジャウリムによるセルフ曲3曲含んだリメイク(カバー)集です。韓国音楽業界でのリメイク・ブームに倣ったかどうかは分かりませんが、ジャウリムもついにリメイク集を発表してきました。
<収録曲>
01.Another Day In Paradise/Phil Collins
02.Girl,You'll Be A Woman Soon/Neil Diamond
03.Starman/David Bowie
04.Angel/Jimi Hendrix
05.Take A Bow/Madonna
06.Social Life/Jaurim
07.ヌグラド クロハドゥシ(誰でもそのように)/Alain Barriere
08.Gloomy Sunday/Rezso Seress Laszio Javor
09.Penny Royal Tea/Nirvana
10.Lover's Rock/Crash
11.Summertime/George Gershwin
12.Even Flow/Pearl Jam
13.セ(鳥)/Jaurim
14.Goobbye To Romance/Ozzy Osbourne
15.ジョンチュンエーチャン(青春禮讚)/Jaurim

なんでも100曲以上のリメイク候補曲から選曲したらしく、ジャンルそして時代を越えた選曲になっています。私自身、原曲を知らない曲もあるので、比較はできませんが、聞いた限り、どの曲もジャウリムらしい解釈になっているように思います。
個人的にはグランジ代表バンドであるニルヴァーナとパールジャムのリメイク曲が良かったです。また、セルフのリメイク曲は3曲共プログレを思わせるシンフォニックなアレンジになっており、ひじょうに美しい曲にリメイクされています。
今作の本国韓国での評価が気になるところですが、いずれにしてもジャウリム・ファンにとっては彼らの音楽ルーツを探る興味深いアルバムなのではないでしょうか。
2006

(06.10.29)

6集

Ashes To Ashes

 ジャウリム、新境地に挑んだ最高傑作。タイトルからデビッド・ボウイを連想してしまうわけですが、今回のジャウリムの新譜、ポップ・ナンバー及びロック・スタイルな曲は一切収録されていません。
 4集では彼らの神髄であるダーク・ロックを、そして5集では彼らの、もう一つの顔とでも言えるポップ・ソングの集大成を作ってしまった為か、今作は彼らにしては珍しくスタジオ・ワーク的作品でジャンル不問の無国籍音楽を披露しています。
 またヴォーカルのキム・ユナもソロ作品で自信をつけたのか、今作は彼女のソロ作品とも思える程にヴォーカルに趣が置かれた作品に仕上がっています。
 とにかく秀作揃いでハズシは、ありません。ポーティスヘッドを思わせる"Seoul Blues","Loving Memory","Jester Song"、そしてフレンチ・ポップを彷佛させる"You And Me"、深海を彷徨う美しきナンバー"Beautiful Girl"、唯一、従来のジャウリムらしさを発するオルタナ・ナンバー"Old Man"は特にオススメです。
2008

(08.6.20)

7集

Ruby Sapphire Diamond

 ダークサイドとポップワールドの二面性をもつジャウリムの新作。従来ですと、この二面性を一つのアルバムに混在させていましたが、4集以降、どちらかに寄った作品作りを意識しているようにみえます。キム・ユナも以前、インタビューで偶数集は暗くて、奇数集は明るいアルバムなんて冗談まじりに発言していた記憶がありますが、その発言通り、今作は、これでもかと言わんばかりにポップワールドを展開しています。ギター、ベース、ドラム以外にも多彩な楽器を導入し、ディズニー風音楽、フレンチポップ、60年代ロック、アダルトソング等どれも鮮やかな楽曲が並んでいます。個人的好みで言えば8集に期待と言ったところですが、5集の妙な明るさよりは緻密で完成度の高い作品と言えます。
2009

(09.10.11)

(Untitled Records)
 ジャウリムの新作が通常なら8集と考えるべきなので、偶数番なら、自分好みのダーク系と期待していたのですが、ダークをすっかり通り越してダウナーな世界に突入したタイトル無しの6曲入り作品を発表してきました。1曲目"Magnolia"がモロにポーティスヘッドしてたり、2曲目"Glitter"に4・6集の焼き直し感もありますが、通しで聞けば特段、問題にはなりません。
 今作の意図が、架空の映画音楽なのか、ジャウリムのリセットなのか、ポップ・バンドになったと思われていることへの回答なのか、インタビューに触れていないので分かりませんが、いづれにしても、通常のファンを裏切るような非商業的作品には間違いありません。

Yuna Solo Project

Released
(Up)date
Jacket
Title
Comment
2001

(02.1.3)

1集

Shadow Of
Your Smile

 キム・ユナ初のソロ作品。バンド形態のヴォーカリストがソロ作品を作ると必ずスタジオ・ワーク的作品になってしまうのですが、案の定こじんまりした作品になっています。基本的にピアノをバックにした楽曲が多く収録されています。
 ただし、この作品ではキム・ユナのヴォーカリストとしての存在感、そして彼女がもう韓国国内だけの存在ではないということを再認識することができます。また作詞作曲の9割をキム・ユナが手掛けており、"タム"、"City Of Soul"はなかなか名曲です。
2004

(04.8.12)

2集

琉璃假面

 キム・ユナ・ソロ第2弾。前作ではジャウリムとは違った面を確かに見せてくれたものの、地味な作品という印象でしたが、今作では多彩な楽器をフューチャーし、幅広い音楽性を聞かせてくれます。個人的にはバンド・サウンドでの彼女のヴォーカルの方が好みですが、今回はダレることなく聞けるアルバムに仕上がっています。
 ピアノをバックに歌いあげる"夜想曲"、打込みサウンドに歌を切り込ませる"チュンオヌン ナエ ヒム"(憎悪は私の力)は、なかなかイケます。
2010

(10.5.2)

3集

315360

 キム・ユナ・ソロ第3弾。1及び2集でも、勿論、バンド・サウンドとは異なった展開を提示していましたが、ソロへのプレッシャーか、妙に、仰々しい曲も収録されていた印象がありました。しかし、今作、結婚そして出産を終え、肩の力も抜けたのか、全般的に、ひじょうに柔らかいサウンド作りに仕上がっています。透明感そして浮遊感中における彼女の力強く美しい声は一段と輝いており、個人的には1,2集と比較し、大絶賛と言いたい作品です。
 ここで、どの曲がというコメントは、敢えてしませんが、特に、3曲目"カマニ トゥセヨ"(そっとしておいて下さい)から7曲目"エトワール"の流れは絶品です。

Perfect Kiss