1997年4月

**** うそばっかりのうささぎの話 *******

うささぎ「ギャーテ、ギャーテ、」

カステラ「うささぎ、何ブツブツ言っているの?」

うささぎ「お経をあげているんだ。」

カステラ「お経? なんでまたヨーグルトに向かって、お経なんかあげているの?」

うささぎ「このヨーグルトの中で死につつある乳酸菌の葬式をしているんだ。」

カステラ「なにそれ?」

うささぎ「人間が死ぬと、葬式を出すでしょ。」

カステラ「うん。」

うささぎ「最近は、飼っていた犬や猫が死んでも葬式をする場合があるよね。」

カステラ「まあ、そういう人もいる。」

うささぎ「生き物が死ぬと、葬式をする。

     だからヨーグルトの中で乳酸菌が死んでいくから、

     うささぎが葬式をしてあげているんだ。」

カステラ「別に細菌の葬式なんてしなくていいだよ。」

うささぎ「なぜ?」

カステラ「なぜって。よくわからないけど、しないんだ。」

うささぎ「この生き物の葬式はして、この生き物の葬式はしないってどうやって

     決めるんだ?」

カステラ「基準はない。人間はいいかげんにできているんだから。」

うささぎ「ふーん」

カステラ「乳酸菌が死んで悲しいと思うかい?」

うささぎ「別に。」

カステラ「悲しいと思わなきゃ、葬式をする必要はないさ。

     生き物が死んで悲しいと思った時葬式をすればいいのさ。」

うささぎ「死んでくれてよかった、と思った時も葬式をするよね。」

カステラ「なかにはそういう人もいるかもね。」

うささぎ「それって、魚屋のお嫁さん。

     魚屋のおばあさんが死んだ時、”やっと肩の荷が降りた”って

     よろこんでいたもん。」

カステラ「まあ、そういう人もいる。」

うささぎ「乳酸菌死んでも、うれしくも悲しくもないから、

     ヨーグルト食べちゃおう。」

カステラ「そうだね。」

終わり


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