うささぎ「ギャーテ、ギャーテ、」
カステラ「うささぎ、何ブツブツ言っているの?」
うささぎ「お経をあげているんだ。」
カステラ「お経? なんでまたヨーグルトに向かって、お経なんかあげているの?」
うささぎ「このヨーグルトの中で死につつある乳酸菌の葬式をしているんだ。」
カステラ「なにそれ?」
うささぎ「人間が死ぬと、葬式を出すでしょ。」
カステラ「うん。」
うささぎ「最近は、飼っていた犬や猫が死んでも葬式をする場合があるよね。」
カステラ「まあ、そういう人もいる。」
うささぎ「生き物が死ぬと、葬式をする。
だからヨーグルトの中で乳酸菌が死んでいくから、
うささぎが葬式をしてあげているんだ。」
カステラ「別に細菌の葬式なんてしなくていいだよ。」
うささぎ「なぜ?」
カステラ「なぜって。よくわからないけど、しないんだ。」
うささぎ「この生き物の葬式はして、この生き物の葬式はしないってどうやって
決めるんだ?」
カステラ「基準はない。人間はいいかげんにできているんだから。」
うささぎ「ふーん」
カステラ「乳酸菌が死んで悲しいと思うかい?」
うささぎ「別に。」
カステラ「悲しいと思わなきゃ、葬式をする必要はないさ。
生き物が死んで悲しいと思った時葬式をすればいいのさ。」
うささぎ「死んでくれてよかった、と思った時も葬式をするよね。」
カステラ「なかにはそういう人もいるかもね。」
うささぎ「それって、魚屋のお嫁さん。
魚屋のおばあさんが死んだ時、”やっと肩の荷が降りた”って
よろこんでいたもん。」
カステラ「まあ、そういう人もいる。」
うささぎ「乳酸菌死んでも、うれしくも悲しくもないから、
ヨーグルト食べちゃおう。」
カステラ「そうだね。」
終わり