******** うそばっかりのうささぎの話し ********

  

【第3部 第11話】1999年1月

 

シャックリ発生装置の実験台にされてしまった、うささぎ。

実験装置は不気味な音を立てながら、その力を発揮しはじめました。

 

ヤギ先生「うささぎさん、気分はどうですか?」

うささぎ「くすぐったい感じがします。

     それより、先生。実験はすぐに中止にしたほうがイイと思います」

ヤギ先生「それは、またなぜ?」

うささぎ「鍋釜(なべかま)職人の町に伝わる言い伝えを知りませんか?」

ヤギ先生「いや」

うささぎ「それはいけません」

ヤギ先生「なぜ?」

うささぎ「実は、言い伝えによると

    『2匹の動物が同時にシャックリをすると、災いが訪れ、

     炎に焼かれたりしてしまう』そうです」

ヤギ先生「ほう」

うささぎ「くまったさんも、きっと炎に焼かれてしまいますよ」

くまった「えっ!? 先生、やっぱり実験は中止にしたほうが」

ヤギ先生「うーん」

うささぎ「先生、中止の決断を」

ヤギ先生「うーん」

クロクロ「先生、うささぎの言うことデタラメに決まってますよ。

     実験台になりたくないからこんなこと言っているんだ。ヒック」

ヤギ先生「いやいやクロクロさん。言い伝えの存在を頭から否定してしまうことは

     科学的な態度とは言えません。

     実際にそのような言い伝えがあるかもしれません」

うささぎ「そうです。そのとおりです」

クロクロ「でも。ヒック」

ヤギ先生「仮にそのような言い伝えがあったならどうするか」

くまった「危ないから実験中止にしましょう」

ヤギ先生「いやいや、その言い伝えどおりの事が起こるかどうか、真偽(しんぎ)を

     確かめるのが科学者の役目」

クロクロ「というと? ヒック」

ヤギ先生「実験続行です。

     うささぎさんにシャックリを起こさせて、実際に火災が起こるかどうか

     確かめます」

うささぎ「ドッヒャー

     ヤギ先生、止めてください。

     あんな、真っ黒焦げになっちゃうのはヤダよ。ヒャッポ」

クロクロ「クロクロは元々黒いんだ。ヒック」

くまった「そうだよ、実験のせいで黒くなったわけじゃないんだ」

クロクロ「先生、もう電流最大にしちゃいましょう。ヒョック」

 

グイーン

 

ヤギ先生「あっ、クロクロさん、それを触ってはいけません!」

 

ボン

 

くまった「うわー、先生。電源から火花が!」

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うささぎ「ふっー。もう少しで黒焦げになるところでした。ヒャッポ」

くまった「危機一髪だったね」

ヤギ先生「クロクロさんが消火活動の専門家だったとは。

     助かりましたよ」

クロクロ「いえいえ。もとはといえばクロクロのせいですから」

ヤギ先生「それにしても、言い伝えがほんとうだったとは。

     うささぎさん、この言い伝えはどこで耳にしたのですか?」

うささぎ「いや、、その、、記憶が定かではありません。ヒャッポ」

ヤギ先生「そうですか。

     もっと詳しく調査したいのですがね。

     まあいいでしょう」

うささぎ「それより、先生。シャックリが止まらないんですが」

ヤギ先生「では、『シャックリを止める薬を』、と言いたいところなんですが、

     ほら、ごらんのとおり、どれがどの薬だかわかんなくなって

     しまいました」

うささぎ「ボヤ騒ぎで、もうグシャグシャですね。

     でも、それらしい薬はどれだか見当がつきませんか? ヒャッポ」

ヤギ先生「このあたりですかねえ、、」

クロクロ「先生、これが、さっきクロクロが飲んだ薬に似ています」

ヤギ先生「それはたぶん、二日酔いを三日酔い、四日酔いにする薬でしょう」

クロクロ「何ですか? それは」

ヤギ先生「アルコール中毒患者用に開発しました。ずっーと酔っ払っていれば、

     お酒を飲み続けなくてもいいのでは、と思ったんですがね」

クロクロ「同じ酔っ払うのなら、お酒の方を飲みます」

ヤギ先生「確かにそうでした。

     それはそうと、クロクロさんのシャックリ止まりましたね」

クロクロ「ボヤ騒ぎで驚きましたから」

ヤギ先生「なるほど」

うささぎ「それなら、もう一度火事を起こしましょう。

     そうすれば、うささぎのシャックリもおさまるかも。ヒャッポ」

ヤギ先生「それはいけません。

     第一、何が起こるのかわかっていたら驚かないでしょう」

うささぎ「そうですね。何か驚くようなことが起きないかなあ。

     いん石が降ってくるとか」

ヤギ先生「そんなことが起きたら、シャックリだけでなく、息の根も

     止まってしまいます」

うささぎ「じゃあ、やぶれかぶれで、この薬を飲んでみます。ヒャッポ」

ヤギ先生「好きにしなさい。どうせ私の研究はボヤ騒ぎ程度のものにも

     かなわないのです」

うささぎ「では遠慮なく。ヒャッポ」

くまった「はい、水」

クロクロ「クロクロみたいに余計にひどくなっちゃうかもよ」

うささぎ「いただきまーす」

 

・・・・・・

くまった「どうだい?」

うささぎ「うーん、、、、、、」

くまった「シャックリ止まったね」

ヤギ先生「えっ!」

うささぎ「確かに止まった」

ヤギ先生「どの薬を飲んだんですか?」

うささぎ「適当にそのへんにあったやつを」

ヤギ先生「ちゃんと思い出しなさい」

うささぎ「そう言われても」

ヤギ先生「もう一度シャックリを起こして確かめましょう」

くまった「先生、機械はもう壊れていますけど」

ヤギ先生「あー、まったくー」

 

つづく

 

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