******** うそばっかりのうささぎの話し ********

  

【第3部 第6話】

 

いよいよ、船に乗って「くじらの来る町」へと旅立った「くまった」と

「クロクロ」

 

船長  「よし、くまった、仕事だ。見張りに立ってもらおうか。

     遠くに何か見えたら知らせてくれ」

くまった「了解。船長」

船長  「まかしたぞ」

くまった「船長、見えました!」

船長  「何!? 障害物か? この船はブレーキをかけてから

     止まるまでに1キロも進むぞ。何が見える?」

くまった「遠くに空と雲が見えます」

船長  「・・・」

くまった「あと、鳥が飛んでいるのが見えます」

船長  「おーい、クロクロ、いるか?」

クロクロ「はい、船長」

船長  「クロクロ、くまったの代わりに見張りに立て」

クロクロ「了解」

船長  「遠くに何か見えたら知らせてくれ」

クロクロ「まかしてください」

くまった「あのー、船長、くまったは何をすれば、、、」

船長  「クロクロの脇で『見張り』とはどういう仕事か勉強しろ」

くまった「はい」

 

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くまった「クロクロ、変わったものは何も見えないね」

クロクロ「見えたら大変さ」

くまった「見張りの仕事ってほんとうにヒマだね」

クロクロ「将棋でもして時間をつぶすかい?」

くまった「だめだよ。そんなことをしたら見張りにならなくなっちゃうよ」

クロクロ「大丈夫、大丈夫。川に氷山があるわけじゃないし」

くまった「そうやって油断したときに限って事件が起こるんだよ」

クロクロ「油断してもしなくても、事件が起きるときには起きるさ」

くまった「それは言えてるけど」

クロクロ「くまった、見張りにとっては、『異変があること』と『何もないこと』、

     どちらが幸せなんだろうか?」

くまった「障害物にぶつかって船がだめになるのはいやだし、何も起こらないって

     ことも物足りない感じがするね。どちらが幸せなのかはわからないや」

クロクロ「あーあ、何か起こってくれないかな」

くまった「何も起こらない方がいいよ」

クロクロ「ふーん」

くまった「不満かい?」

クロクロ「ちょっとね」

くまった「じゃあ、神様にお願いして事件を起こしてもらうかい?」

クロクロ「よせやい」

くまった「やっぱり無事がいいよね」

クロクロ「ちがうんだ。クロクロも神様にお願いしていたところさ。

     『くまった』までもが頼むと、事件が2倍になってやってきちゃうだろ。

     それは避けたいってことさ」

くまった「えー、それじゃあ、くまったは無事をお願いしようっと」

 

船長  「くまった、クロクロ、異常はないか?」

クロクロ「はい、いまのところありません」

くまった「ときに船長、異常はあった方がいいですか、それともない方がいいですか?」

船長  「無い方がいいに決まっている」

くまった「やった。2対1で『異常なし』が優勢だね」

クロクロ「つまんないなあ」

船長  「異常がないから生きていられるんだ。異常だらけだったら、船が沈んで、

     おまえさんはとっくに川のゴミになっているさ」

クロクロ「ありゃま」

 

つづく

 

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